ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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147 曇らせ③

 

『あんたねぇ……あの状況で私じゃなくてあの森人に反応するってどういうこと? 我が使徒としての自覚ある? わかってる? 神の使徒なのよ? 全盛期の時には民が私を敬い尊び姿を見せて声をかけるだけで泣いて喜んだのよ? その使徒よ? 今で言う国家の王みたいなものよ? 寵愛を一身に受ける使徒だってのに、よりにもよってあの邪神の手先を優先しやがってえぇ……!!』

 

 ぐ、ぐえええっ!!

 や、闇マリストップ!

 首がッ息が出来んッ!!

 

『あはははっ!! どうせ悦ぶんだしいいでしょ!? あんた相手じゃ何しても罰にならないんだからお仲間を傷付けて無力感煽るくらいしか打つ手がないの! ストレス発散くらいさせなさい!!』

 

 お、おっほおおおおお!?

 く、苦しすぎて視界が明滅する!!

 こ、これが……アリシアさんの気持ち、なんだな……♡

 

『……そ、そういえばやってたわね……やっぱりオスって最悪だわ。汚らわしい……って、こんな生娘みたいな感情はどうでもいいのよ! このっ変態使徒が! 精々苦しんで力になりなさいッ……!』

 

「フィン? ……フィン? ちょっと、フィン!? 大丈夫!?」

「っ、あ、が、あ、き……」

「っ、こ、これ……首が……!?」

 

 あ、これ本当に絞められてるんだ。

 道理でいつもより苦しいと思ったら……

 

『……あら、もう抜け出し方見つけたの?』

 

 抜け出し方?

 ……あっ、確かに呼吸できてないんだからこんな冷静でいられるわけないもんな。

 前に海獣と戦った時海に引きずり込まれた時なんかは普通に気絶したし、窒息は俺も常に警戒している詰み手の一つ。意識があればなんとかなるが、意識を保てないとマジで詰む。

 

『いま、なぜ意識が残っているかわかる?』

 

 今?

 闇マリが緩めて……る、わけではないな。

 なんなら首に絞めつけられてる感触があるし戻った視界でアストレアが必死に首元を触ってる。なんか触られてる感覚が重なってて変な感じ。

 

 間違いなく首は絞まってる。

 めちゃくちゃ苦しいんだが、視界は元に戻ったし意識も普通だ。

 

『それこそが我が使徒の求めた力の一つ。死なない肉体に不倒の精神。やろうと思えば生命として必要とされるもの全て無視して活動する事だって可能にする、神の御業よ』

 

 おお。

 それは凄い。

 つまり、これまでの俺は『既に死なない状態』だったがそれを明確に理解したことで『死なないことを利用して今より盾役として活動できるようになった』ということでいいか?

 

『……細かい部分は違うけど、それでいいわ。我が使徒は己で力を扱うことが出来ないけど、その不死性は権能と言って差し支えない領域まで昇華された。ほんの数年でここまで濃密な魔力を浴び続けた成果ね』

 

 よくわからん。

 俺にもわかるように説明してくれ。

 

『…………我が使徒は精神的に不死の化け物になったのよ』

 

 精神的に不死の化け物?

 それって開き直りがすごいってこと?

 なんか、闇のマリアンヌの説明難しくてよくわかんないや笑

 

『死ね』

 

「おッ、ぐッ……!!? う…………!!」

「フィンッ!? ど、どうしよう、どうすれば……!? しんじゃう、フィンが死んじゃうッ……!!」

 

 あ、アストレア……!

 そんな泣きそうな顔しないでくれ。

 闇マリに首絞めなんてエッチな行為をされて悦んでいる身としては、本当に申し訳ないので心配しなくていいと言いたい。まあ首絞められてて言えないんだけど。精神的な不死とやらでもどうにもできないのになぜか思考は大丈夫なんだよな。

 

 ……ん?

 あ、そういうことか?

 皆みたいにとんでもない力があるわけではないから無茶は効かないけど、これまで俺が必死こいて何とか避けて来た機能停止を防げるようになると。

 

 ……とんでもなくね?

 いや、俺自身盾役としてそれなりにやれる自信はある。

 ただ、盾役って所詮盾だから対策は簡単なんだよ。

 魔王軍の連中みたいに知能のある奴らとの戦いじゃよく手も足も出せなくなりがちだからな。対策された上で勝てるのが仲間達で、対策されたら勝ち目がないのが俺。

 

 その対策を無理矢理突破できるようになると、俺自身の使い勝手がかなり変わる。

 

 マジかよ……。

 す、すげぇぞ闇のマリアンヌ!

 海の中に引きずり込まれても大丈夫だし溶岩に落ちても戦えるってことだろ?

 これまでやれなかった無茶が出来る! 

 死ぬから出来なかったけど死なないならなんとでもなるしな。

 これで俺の戦い方もぐっと広がる。

 ありがとう、我が神よ。

 闇のマリアンヌは本当に最高だな。

 

『……ふふ。そうでしょう? 誰よりも我が使徒を理解し愛しているのですから、当然です』

 

「──ブハッ、はっ、はぁっ、はっ……!!」

「あ、ああっ! フィンッ! 大丈夫!? 息は!? 私が見えてる!?」

「はぁっ、はっ、ふっ、ふうぅ……大丈夫だ、アストレア。まったく、俺に憑りついた神様は嫉妬深くて仕方ない」

 

 別に癇癪はいくらでもしてくれていいんだよ。

 その対象が俺である限りはどれだけしてもらっても構わない、寧ろして欲しいとすら思ってる。

 

 生身の皆はやっぱりほら、常識があるから一本超えて来ることはないし……

 唯一ギリギリの線を責めて来るのはアリシアとシャルロットくらいのもので、俺の身体に傷がつくような行為は敬遠されがちだ。フィンフィンに脳が支配されつつある俺でもそう感じるのだから気遣いされているのだろう。

 

 その点闇マリは違う。

 そこまでするの!? という驚きを常に更新してくれるし何より躊躇も後悔もない。

 俺のことを本当に理解してくれているからこそ出来る芸当だ。

 

『え……え、えぇそうね。そうですよね。私はフィンさんが求めるからそうしてるんですよ』

 

 うんうん、そうだよな。

 でもな闇マリ、さっきのはやりすぎだから。

 マリアンヌとかあまりの気持ち悪さに完全にドン引きしてただろ。確かに仲間にキモすぎてドン引きされるのは興奮したが、【払暁】がなくなるようなことはするな。

 

『ええと……我が巫女があんな様子になってたのはそうじゃないのだけれど……』

 

 いやいや、どう考えてもそうだろ。

 普通に考えて成人男性(性的な目で特に見てはいない相手)が苦しみ悶えてるから力を使えましたって気持ち悪いじゃん。これが逆だったら俺も耐えられないかもしれないが、俺は盾役で可憐な美少女でもない。

 同情もしないだろ。

 マリアンヌは心優しいから醜い俺が相手でも心配してしまったんだろうけどさ。

 

『…………森人、あとは頼みましたよ』

 

 ……?

 

 なんでそこでエルフが出てくるんだ?

 

 ハッ……!

 

 つ、つまり、エルフ特有の容赦のなさで痛めつけろってことか……!?

 物わかりの悪い俺に対してしびれを切らした闇マリの怒気!?

 胸がドキドキする! 怒り狂ったアリシア、アストレア、アリーシャの本気の責め苦……う、ううっ、想像もできない……!

 

 どれだけの快楽なんだ!?

 

『もうそれでいいです……』

 

 あっ消えた。

 

「し、嫉妬……? じゃあやっぱり、今のも……?」

「ああ。闇……いや、女神様の機嫌を損ねちまった。でもまあ、俺も今言われたんだが、どうにも死なないことを理解したお陰で得られるものもあってな」

「え、そ、それってホントなの?」

「まあそうなんじゃないか? 冷静に考えればこれまでなんで死んでないんだろうと思うこともあったし、文字通り神の奇跡だろう」

 

 とはいえ、闇マリが脳内に誕生するより前でもそういうことは度々あったのだが……運が良かったんだろうな。師匠に育てられたから身体が丈夫になったんだと思う。

 ほんと、師匠には頭が上がらない。

 

「それでなアストレア。どうやら俺の身体は死なず、それを意識していると意識が遮断される様なことも対策できるようになるらしい」

「…………え……」

「これまで死ぬから避けてきたが、これからは海中での戦闘や溶岩に飛び込んでの強引な戦いなんかも出来るようになるんだ。毒沼だって平気だ。酸で溶かされても死なないし、空に連れ去られても肉体が弾けるだけで死なないんだ。蘇生さえしてもらえれば死なずに済む。俺がそれをわかっていれば意識も失わない。とうとう俺も、皆の足を引っ張らなくて済むんだ……!」

 

 もちろん死なないだけで損壊はするのでそこは気を付けなければいけないが、でもそれだってある程度ケアすれば全く問題ない。

 

 欠損も指や腕程度ならマリアンヌが治してくれる。

 酷くても死なないなら神殿に運んでもらえば下半身失っても平気なんだろ?

 おいおいおい、歴史上他にいない盾役になれるんじゃないか?

 いや、決して調子に乗ってはいけないのだが、これまでの経験からこの進化がとてつもないものだとわかるのだ。

 

「いやあ、死なないってわかるとこれだけ楽になるんだな。痛みなんて我慢すればいいだけだし実質ノーリスクで無限に修復できる盾になれる。アストレア、今後は胸を張って生きれるように俺も努力する。これまで以上に皆を支えられるように、頑張っていくよ」

「え? …………いや、何言って……ぇ……」

「……あ、す、すまん。ちょっと思い上がったな。悪い、こんなんで皆に追い付けるなんて思っちゃいないんだ。ただ足を引っ張らなくて済むと思うと、どうにも嬉しくて」

 

 何を言っているのかわからないという表情のアストレアに言い訳をする。

 

 やべっ、恥ずかしい。

 そりゃまあ皆からすれば五十歩百歩、どんぐりの背比べだ。

 その効果が実感できなくても仕方がない。

 盾役が仲間を守るのなんて当たり前だしな。

 

「とにかく、俺はこれまで以上に使える男になったってことだ」

「は、は……? つ、使え? っなんで、そんな、私達、そんなつもりじゃ……」

 

 ──しかし、アストレアに俺の気持ちは伝わらなかったらしい。

 

 彼女は俺の言葉を聞いてひどく動揺し、口元を両手で覆いよろよろと後退って、壁で躓き、そのままへたり込んだ。

 

「……アストレア?」

「ち、ちがっ、違うっ、私はそんなっ、そんなつもりで、そんなッ……!!」

 

 顔色は真っ白、震えて頭を抱えてしまった。

 そ、そんなに変なこと言ったか?

 行為中ですらなかった様子に啞然とするが、このまま放置するわけにもいかない。

 

「あ、アストレア? どうした? よしよし、大丈夫、大丈夫だぞ」

 

 そっと頭を撫でて抱き締める。

 

 あー……

 この震え方は、かなり精神にダメージが来てる。

 まあ、なんだ。

 この手の怯え方にはそれなりに慣れてるから対応できるんだが、一体どうしちまったんだ……? そんなに俺の言葉がおかしかっただろうか。

 

 はぁ……闇マリが好き放題やるからだぞ。

 

『申し訳ありませんが、それだけは遺憾の意を表明させてもらいます』

 

 急に現れた挙句俺の頭を叩いていくな!

 

 興奮するだろ……♡

 今は興奮しちゃいけないからしないけど。

 

 そんなことをしていると、外で気配。

 ドタドタ走る音と共に駆け込んできたのは、震えて抱き締められているエルフの姉だった。

 

「ふぃ、フィンくんっ!? アストレア!? 何がッ……あっ……」

 

 非常に焦った様子で走って来たアリシアさん。

 

「こ、これは、違っ、俺じゃない……いや、多分俺なんだが……正直、なんでこんな風になってしまったのかわからんのだ……」

「……闇のマリアンヌちゃんいるかしら」

『……全部我が使徒が悪いのに……』

「あ、そう。納得してないと。フィンくんが原因?」

『ええ、そうよ。多分そう、部分的にそう』

「……何とも言えない感じね。うーん、これは闇のマリアンヌちゃんが原因だけど傷口を広げたのはフィンくんのパターン?」

『! さ、流石は森人です。よくわかっている……!』

「よ、喜び。じゃあこれで正解かしら」

 

 もう俺必要なくね?

 アリシアさんが察しいいことは理解していたが、もう完全に俺がいなくてもわかり合ってるじゃねえか。

 ふ、フフッ……

 あーあ! 闇のマリアンヌとはあんなことやそんなことをする仲なのに!

 言葉も通じないアリシアさんに寝取られた!

 あーあ!

 あーあ~……ああっ、うっ、おおふっ♡

 

「……フィンくん、私は別に闇のマリアンヌちゃんを奪おうとか思ってないからね』

「!?」

『!?』

 

 そう言いながらアリシアさんは俺とアストレアを引きはがし、妹を抱きかかえてベッドに寝かせた。震える妹に膝枕しつつ、俺に告げる。

 

「ここは私がなんとかする。だから、フィンくんはマリアンヌちゃんとアリアをお願いできるかしら」

「二人を? それは良いが……大丈夫か?」

「ええ。あ、マゾバレだけはやめてね。これ以上あの娘たちに負荷はかけないで、話を聞くだけでもいいから。あの娘たちを助けられるのは、フィンくんしかいないの」

「……わかった。尽力する」

 

 元を辿れば俺が弱っちいから招いたことだ。

 俺がアリアと同じくらい特別だったのならば、闇マリを招き入れることも無かっただろう。

 

 責任は取るさ。

 それは、俺にある唯一の長所だ。

 

「……あの、お願いだから無理はしないで。ヤバいと思ったらカルラを頼って。私も、アストレアを介抱したら向かうから、頼むからヤケクソ特攻だけは……」

「俺に信用がなさすぎるだろ……」

「信用はしてるのよ? 悪い意味での信頼も含まれてるだけで。闇のマリアンヌちゃん、煽ったりしたら許さないからね」

『……べ、別に森人に嫌われようがどうでもいいけど、まあ、何もしないでおくわ。そこまで鬼畜じゃないし』

 

 そうかな……?

 闇マリは十分鬼畜だと思うが……

 

『黙れ豚』

 

 はひいいいっっ!!

 ぶひぶひっ、ぶひいいぃぃいぃいん!

 黙りますッ!

 

「…………」

『…………』

「…………じゃ、行ってくる。アストレアを頼んだ」

 

 部屋を出て心底呆れた目付きで睨まれた興奮を抑えつつ、俺は元居た会議室へと足を運んだのだった。

 

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