01
ずらりと並んだサンプルデッキが織りなす列。その間を、友人ことバンドメンバー達と一緒に歩いて、眺めては、グロテスクなアンデッド、授業でよく見るドラゴン、なぜか素っ裸に近い格好の女、キラキラしたイケメンの男、ごつごつな機械。眺めはするけれど、どうにもいまいちピンとこず、財布のひもが緩くならない。青年――海霧 朋克(じり ともかつ)は首を傾げては、また別のデッキを見る。デッキを決めず、持たなければ、冬休み明けに困るのは自分なのだと、カードたちから離れる心を叱咤して、わけもわからず吟味する。
けれど、並ぶ中に欲しいものはない。そう伝えれば、朋克の仲間たちは、パックの購入を勧めた。「全く初めからデッキを作ることになるけど、すっごい珍しいカードも手に入るかもだし!」と。…まあ、ここに並んでいるのは低レアだけで組まれたサンプルと聞いている。ピンとこないのも当然かと、朋克は背を押されるままに、パック売り場へとやってきた。
キラキラの包装には、いくつもの気合の入った絵が並んでいる。多分、レアカード…なんだろうけど。そろそろ17歳を迎えるのに、こうした場にやってくるのは、人生で初めてだった。実際、それを仲間たちに伝えたとき、あり得ないといわれてしまったほど。……珍しい自覚はある。でも、スーツを買うのと、革靴を買うのと、デッキを持つのが同列って…なんか変な気分だ。幾度も渦巻くその疑問を抱えたまま、いくつかのパックを手に取っていた。
「うーん……」
買うなら、強いほうがいいんだろうけど、何が強いのかわからない。絵で決めればいいって言われたけど、好きな絵も、わからないし。大人になったらデュエルしないといけないけど、それだってどうせ接待だし。ずん、と心にのしかかってくるこれは、いったい何なのか。
ふ、と。指先がとあるパックに触れた。
その瞬間、ざあ、と。
故郷の海の音が聞こえた、ような。
は、と気を取り戻せば、手の中にあったのは、蒼い龍が描かれたパック。……なんか、すごく派手だ。青に、赤に、黄色に。しかも、なんでかピアスもしている。派手だけど……でも、悪くない。
「これにする」。とうとう朋克が口にした言葉に、友人たちはわあっと沸きあがった。……そんなに心配しなくてもいいじゃん。若干のむかつきを覚えながらも、それを……悩んだけれど、どっちみちデッキは組まないといけないし。かれこれ2時間ぐらいつき合わせてもいるし。……絵も、嫌いじゃないし。奮発して、1箱。店員が持ってきた全く同じ絵の箱。しっかりきっかりお金も払って、空いているテーブルを4人で囲い込んでは、朋克がパックを開けるさまを、仲間たちは眺めていた。
ぺり。中身が破れないように、慎重に開けて。あぁ、これじゃあ裏だったと、表に返して見たのは……。
「えっと……ゆー、けー……ぴー、ゆー、えぬ、けー……?」
……なんだかすごく読みづらいカードだった。