『スーツ』と『デッキ』と『未来予想図』   作:河童の皿箱

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閑話1

 「なあ、トモ」。始業前の朝食時間、カレーを掬った朋克に、正面のトバルは訊ねた。「お前さ、【P.U.N.K.】を組んだ時のパック…あるだろ? あれの要らないカードがあったら、見せて欲しいんだが」。朋克はふと思い返した。そう言えば、勇者…とか、エクソシスト…みたいな、そんなのもあった気がする。

 「いいよ、放課後でいい?」。そう尋ねれば、トバルは笑って頷いた。「あんがとよ。アレに入ってるらしいやつで、欲しいカードがあってな。女のカードなんだが」。朋克は首を傾げた。トバルはそういうのを集める趣味があったのだろうか、と。「…意外」。カレーをぱくっと食べる合間に呟けば、トバルは眉間にしわを寄せた。「おい、誤解すんじゃねぇぞ。女のカードだから集めたいってわけじゃあねぇからな」、なんて。体が大きな彼が言うと、あんまりにも迫力があって。けれどその声でまた、周りも目を向けた。

 「…ともかく。授業終わったら、頼むぜ」。わずかにしぼんだトバルを見て、朋克はくつくつ笑った。

 

 そんなこんなの後。退屈な授業に頭をひねってひねって、ハァ疲れたとようやくの放課後。バイトに行ったアニマと、店の大会に行った核唯を見送っては、朋克とトバルは連れ立って寮の自室に戻った。朋克が持つ数少ないカードをテーブルの上に広げては、トバルは事前の宣言通り、少女が描かれたカードをピックアップしては、手元に入れていった。

 「これが欲しい奴が居てよ。でも女のカードってほら、人気あるだろ? だからストレージとか探してても、なかなか見つからなくってよ。助かった」。トバルが満足いくまで待ってから、少なくなったばらけたカードを朋克はまとめて、また箱に戻した。「まあ、おれは使わないし。…あぁそうだ。前、汎用を奢ってもらってただろ? これで足りてるか?」。朋克が尋ねれば、トバルは頷いだ。「あー、あれ、まだ気にしてたのか。んじゃ、それとこれでチャラな。結構レアなカードも貰えたし」。

 「…ちなみにさ。その…えーと、【エクソシスター】? って…どういうカード?」。興味本位で朋克が尋ねれば、トバルは手元からいくつかを並べた。「【エクソシスター】はエクシーズ召喚がテーマでな。これはレベル4とレベル4を揃えるから、ランク4のエクシーズモンスターが出せる。《エリス》と《ステラ》、《イレーヌ》と《ソフィア》が互いに互いを呼び出せるから、それでデカいのをバンと出してやる…っていうデッキだ。あとはまぁ…相手のカードが墓地から離れると、エクソシスターのエクシーズになるっていう効果もあるが…お前の《娑楽斎》や俺の《デモンスミス》と同じで、そもそもカードがない」。そんな説明を受けながら、朋克は愛らしくも、軍服のようなものに身を包み、荒れ果てた街に微笑んで立つ退魔師たちをじいっと見つめた。

 

 …もしかしたら、この子たちとも…話せるのかな。

 

 ふと、そんな疑問が浮かんだが、けれど朋克は口には出さなかった。おれはカードとお話をしたんだ、なんて、妄想乙と馬鹿にされるに決まってる。けれどその仮説が本当なら、なんとなく…男の手に渡るのは癪だとも思ってしまって。「…ちなみにだけど、どういう人に渡す予定?」なんて尋ねてしまったが、トバルは「あー…」としばらく言葉尻を濁し、けれどそっぽを向いて、小さく答えた。「…妹。絵が可愛いし、戦略もシンプルだし、相性のいいカードも多いし…さ、始めるには、良いかなって」。

 …それならいいか。朋克はほっと胸を撫で下ろしては、それ以上追及することはなかった。「喜んでくれるといいね」。「…まあ、そうだな」。

 

 ちらり見上げたトバルは、苦々しい顔をしていた。

 

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