『スーツ』と『デッキ』と『未来予想図』   作:河童の皿箱

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閑話3

 「…もう全部埋まってるぅ?」。アニマは素っ頓狂な声を上げては、書類とにらみ合い、次には事務方に何とかならないかと懇願した。けれど、「ごめんね、吹奏楽部がパート練習のために早めに部屋取っちゃったのと、デュエルスペースの確保でそもそも取れる部屋が減ってて…」、と。アニマは深くため息をついては、どうしたものかと頬をかき、「…じゃあ、ええと。また別の方法考えます。ありがとうございました」、と学園事務所を立ち去った。

 …来年度もバンド活動は継続したい。せっかく、朋克も、核唯も、トバルも頑張ってくれてるんだし。学園祭でいっぱいファンもできたし。アニマはちょいと端末を取り出しては、結稲町のリハーサルスタジオを検索した。あるにはあるが、1回の利用で、10パック買える。ちょっとこれは、学生の財布には厳しい。割り勘で…いや、それでも一人当たり毎日2、3パック買うってなるとやはり厳しい。あんまり負担をかけたくないし、練習の頻度を落とす…それもしたくない。朋克が作ってくれる曲なんだ、クオリティには、妥協したくない。みんな忙しいし、ならバイトを増やせばいいだろうか。

 

 アニマがそう悩んでいると、突然、後ろから小突かれる。振り返ってみれば、そこには核唯が居た。「悩み事か」と直球に聞かれれば、アニマは苦笑した。「あー…練習場所どうしようかなぁって。なんか、来年度からガレージ撤去して使えねぇんだってよ。んで、別の場所取ろうとしたけど…」、かくかくしかじか。アニマの言葉に、核唯は頷いた。

 「なるほど。ずっと、あのガレージで全体練習してたしな…なら、俺からの提案としては、集合練習はスタジオ借りて週1、料金は全員で出す。それ以外は自室での個別練習でどうだ。あいつのおかげで、俺たちも基礎はわかるようになった。お前のベースも、トバルのギターも、アンプで音量制御抑えられるし、ヘッドホンで練習できるだろ?」。けれど、アニマは唸った。「確かに俺たちのは自前のだからいいけど…お前のドラムは? 学校の奴だし、音やべぇじゃん」。懸念を口にすれば、けれど核唯は笑った。「心配しなくていい。電子ドラム、買った」、と。

 アニマはつい、目を見開いた。「マジかよ!?」。そうしている間にも核唯は端末で購入履歴を見せてきた。ドラムセットで有名なメーカーの、ハイエンドモデル。アニマからすれば目玉が飛び出る様な値段のソレが、購入済みになっていて…。まさか変なことに手を出してないだろうなと問い詰めようとすれば、「これ買うつもりで勝ってきたからな。それに、今までの優勝賞金もそのために貯めた」なんて、けろっというものだから。

 「ローエンドだと生と違いすぎるし、アウトレットセールでちょうど良かった」。「いや、でも…」。「おい、余計な事いうなよ。俺はこれが必要だと思って、金貯めて買ったんだ」。「だけどよ」。「だけどじゃない。いーんだよ、俺は俺の金の使い方する。お前は…あんだろ、仕送り」。

 アニマは閉口した。「…うん」、と。そればかりが精いっぱいだった。「んじゃ、そういうことで。あぁ、春休みの模様替えだけ手伝ってくれ。デカいから、共用スペース使わせてほしいんだ」、と。アニマは大きく息を吸い込んで、そして吐き出した。「…あぁ、そうだな……。それに教科書とかさ、これから俺たちの物も増えてくだろうから、それも整理しないとだしな!」。

 

 頷き、「それじゃあ、また後で」と。颯爽と去っていく背中が角を曲がっていくのを、アニマはぼうっと眺めては、けれどまた、大きく息を吐いた。

 

 「…思ってたより、重いかも」、と。

 

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