ぱたん、と。扉が締まれば、残されたのはアニマとトバル、ふたりきりであった。アニマは手を伸ばしかけ、けれどトバルはそれを止め、退室していった朋克と核唯には何も言えないまま、けれど溜息をついて頭を搔いた。
わずかに時を遡り、イロハを見送った後のことだった。曲は何をやるのか…今仕上がってきている曲でいいだろ。何曲やるか…3曲やれるらしいから、全部埋めるか。機材はどうする…ドラムだけは学園のを借りる。やっぱ生の方が良いからな、と。書類の項目を埋めた後、アニマはふと、「デュエルするんならさ」と、声を上げた。
「せっかくやるんなら、タッグデュエルにしないか? うちは4人だし、あそこをドーンと使えるんなら、そっちの方が派手なことができそうだし!」。
やれるなら、皆と並んで何かをやりたい。けれど、トバルこそ「いいぜ」と即答したが、朋克はわずかに俯き、落ち着かないように周囲を見渡し、核唯は渋い顔をして、「考えさせてくれ」、と。核唯が席を立って部屋を出ていった後に、朋克もまた、「…ごめん、おれも…ちょっと考える時間が欲しい」と。そう言って、ふたりは寮をあとにしたのだった。
…なにか、言っちゃいけないことを言っちゃったのかな。アニマはふと、ハッとした。思い返したのは、朋克と一緒にまねきやに行った時のこと。デュエルスペースを通り過ぎる時、異様に肩ひじ張ってて、話かけても全然反応をしないことがあった。それに、進級試験でのことも。よくあるソリッドビジョンにも彼は大きな悲鳴を上げたり、やはり反応がひどく鈍ることがあったり。
もしかして。アニマの頭に浮かんだそれは、けれど口に出すには余りに残酷で。それに、核唯のこともある。あっちはあっちでデュエル好きで、大会にも頻繁に出ているくらいなのに、タッグデュエルになるとダメ…というのは、どうしてだろう。…いや、言われてみれば、デュエルしようと誘っても、あいつはあんまり乗り気じゃあなかった。
そうして頭をひねっていると、とんとん、と。振り向けば、トバルがため息をついていた。「…どうする? どうにも様子が変だぞ。あいつらも、お前も」。そんな指摘に、アニマはアハハと笑った。「なんつーか、面喰っちまって。当然乗ってくれるだろうって思ってた。…オレ、ふたりと話して来るよ。トバル、ちょっとだけ時間くれるか?」。
その要求に、トバルは頷いた。「ちょっとじゃねぇ。じっくり話付けて来いよ、リーダー」。そんな言葉に、アニマは「任せとけよ!」と、また笑った。
部屋を出て、ふたりがどこへ行ったかはわからないけれど、ともかく追いかけないと。グロウル・スピリッツ解散の危機、なんてことにはならないとは思うけれど。
でも、ひとりでじっと黙って考え込んでいたって、何にもなりやしないんだ。アニマは懐のデッキケースから、お気に入りのカードを取り出した。
《リブロマンサー・ファイア》。真っ赤な髪の厳つい男が、パーカーの上にスタジャンを着て、ファイティングポーズを決めては、何やら上機嫌。
そして、その後ろにやれやれと立つ子供は、こっちのカード…《リブロマンサー・Gボーイ》。地に置いた本に手を当てて、渦巻く力に現るは、ヒーロー姿の《リブロマンサー・ファイア》。
…頼む、オレに力を貸してくれよ。あいつらとバラバラになんて、なりたくないんだ。
祈るように額に当てて、またしまい込む。まずは、ふたりの行き先の聞き込みから始めよう。