『スーツ』と『デッキ』と『未来予想図』   作:河童の皿箱

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 いくつかのカードを見繕って会計を済ませてから、朋克はアニマとトバルに導かれるまま、3階の賑わうデュエルテーブルの一角を陣取る。「トモってデュエルどのぐらいやったんだったっけ?」。アニマが尋ねれば、「授業でちょっと触っただけ」と、朋克は答えた。「なら、ほとんど全くやったことないな」、トバルがその結論を口にすれば、朋克は否定することもなく、頷いた。

 「じゃあじゃあ、デュエルの流れも初めっからしっかり覚えてったほうがいいよな?」。そう言ってアニマがリュックサックから取り出し、テーブルの上に置いたのは、最新のルールブックだった。「いよっ、さすがは文巻」。トバルがアニマの本好きをけらけら笑って囃し立てては、その手がルールブックを捲るのを、隣から覗き込む朋克。……なんかたくさん書いてはあるけど、何が書いてあるのか、さっぱりだ。「あぁ、トバル。それは折り目つけていいから、閉じない様に広げてくれ。んでトモ。デッキを作る前に、まずはこの本と、オレとこいつでデュエルの流れの手本を見せるよ。その方が、何が必要かわかるだろうし、授業のデュエルってほら……ごちゃごちゃうるさくてつまんねーし?」。

 まあ、確かに。朋克は頷き、トバルもまた同意する。「あの先公、マジでうるっせぇからな……」なんて愚痴はさておいて。アニマとトバルは向かい合って、互いのデッキをケースからかしゃりと取り出しては、シャッフルする。

 

 「ライフポイントはお互い4000でいいよな?」。「あぁ、問題ない」。「ってな感じで、初めにルールの確認が終わったら、ゲームの準備をするぜ。メインデッキとエクストラデッキってのがあって、メインはこっち。エクストラはこっち」。「じゃあ、先攻後攻を決めるぞ。デュエルディスクやソリッドビジョンシステムがあるときは、勝手に管理してくれるが…アナログでやるなら、じゃんけんかサイコロかが無難だな」。「じゃんけんでいいよな。最初はグー、じゃんけんほい。…ちぇー、負けか」。「ひとまず、ここでの勝敗の勝者が選択権を得る。オレは先攻を選ぶ」。「んでオレが後攻。そしたら、いよいよゲームスタートだ」。「手札を確認。ドローフェイズ。その名の通り、ドロー…カードを山札から1枚引くんだが、先手と後手の有利の差を埋めるために、基本的には先攻はドローできない。次にスタンバイフェイズ。何もないよな」。「無いぜ……ってな感じで、相手の行動の有無を確認していくのがルールではあるんだが、まあこれは大会とか授業とか、そう言う時には意識すればいいと思う。いちいち面倒くさいしな」。「あぁ。だが、今は確認を挟みながらやるか」。「おっけ。じゃあ、そっちのメインフェイズ…」。

 

 

 

 ……そうして、デュエルの流れを確認している間に、未だ合流していなかった最後のメンバーが席についた。淡いグレーにブルーのメッシュを入れた、筋肉質な男は、「なんだ、もうやってるのか」、と。「いや。先にルール教えた方がデッキ組みやすいだろうなーって思ってさ」。アニマが破壊されたモンスターカード、《リブロマンサー・ファイア》を移動させていく様を、朋克は見て、本で流れをチェックして、また盤面を眺める。

 「トモ、どうだ。わかりそうか?」。『グロウル・スピリッツ』のドラムス……覇染 核唯(はぞめ さねただ)は尋ねた。「ん。なんとか」、と答えればニヤッと笑って、「なら良し」、と。

 核唯は、この中でも特にデュエルに精通しており、大会にも足繁く通っている常連でもある。時折、バンドの練習を休んで大会に出ることもあるが、朋克はまだ、彼がデュエルする姿を見に行ったことはなかった。けれど、強いカードをたくさん知っているんだろう、と朋克はひとまず、それだけはわかっていた。それがなんなのかまでは、まだわからないが。

 「…《魔を刻むデモンスミス》でアニマにダイレクトアタック。攻撃宣言時、あるか?」。トバルが確認を行う。アニマのフィールド上にはモンスターがおらず、1枚の伏せカードがあるが、「いや、無いぜ」と。「ミラーフォースみたいなカードじゃ無いのか」、「はは、残念ながらな。そして、これからもチェーンなし。……オレの負けだー! くっそー!」。計算機に残されていたなけなしのライフポイントが0になり、これにて勝敗が決した。

 「やっぱ、お前のそいつつえーよなぁ。なんだよ、デッキに戻しながら自己蘇生ってさ!」、「珍しい効果だよな。実際、1800打点を維持できるのは強い。だから光属性悪魔族は多めに入れてるしな」。ソリッドビジョンのないデュエルは、極めて淡々としていてシンプルであった。そのあまりの淡白さに、あれ、これだけなのかと、朋克はもう一度、今のやりとりを本の上に転がしてみる。……これなら、自分でもできそうだな、と。少しだけ、デュエルをするイメージができた、様な。

 「ほら、トモ。これ」。「あぁ、そうだった。これも」。核唯とアニマは、ポケットから小袋を取り出し、朋克は受け取る。購入済みのシールが貼られた紙袋をペリッとめくって開けてみれば、そこには合わせて指ぐらいの厚みになるカードの束が入っていた。「あとこれな。カードを保護するスリーブ。カードを大事にするやつには良いことあるって言うしな。それと、昨日の作りかけデッキ出してくれ。今渡したカードより、もっと相性いいのがあるかもしれないからさ」。

 

 ルールブックを片付けて、代わりに広げられたのは、『P.U.N.K.』と書かれたカードたちと、今しがた買ったばかりの汎用カードたち。本日のメインイベント、朋克のデッキづくりがとうとう始まった。

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