『スーツ』と『デッキ』と『未来予想図』   作:河童の皿箱

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[ライフポイント、フルモード。デッキシャッフル。ディール。先攻は受験生です]

 

 チチチチチ、とデュエルのセッティングが終われば、ディスクのオペレーターに従い、5枚の手札を確認する。対する試験官も、同じように。友人たちとの復習を振り返りながら、朋克は宣言を行う。

 

「ドローフェイズ、先攻なのでドローはありません。何もなければ、メインフェイズの開始時までスキップします。何かありますか」

「いいえ」

「では、メインフェイズに移行します。開始時、何かありますか」

「いいえ」

 

 ……優先権の確認って、面倒くさいな。試験だから、やるしかないけど。そう思いながらも、朋克は自分の手札に向き合う。先攻は攻撃ができないし、今できる守りは…でも、相手のデッキもわからないし。手札から一枚のカードを手に取って、ディスクのモンスターゾーンに横向きで置く。

 

「おれ…違う。……私は、《パンダボーグ》を召喚します」

 

 ディスクがカードを読み取り、ソリッドビジョンを表示する。フィールド上には相手へと向いたカードが現れ、その上に乗るサイボーグのパンダがむくりと立ち上がり、今にも飛び掛からんとしている。……奇妙な見た目だけれど、戦闘で破壊されれば後続を呼べる。1ターン目としては、無難な選択肢のはずだ。

 

「ふむ。それなりの高打点です、か」

「…召喚成功時、何かありますか」

「いいえ」

「カードを1枚伏せます」

「どうぞ」

「カードをもう1枚伏せます」

「いいでしょう」

「メインフェイズを終了します。何もなければ、エンドフェイズの終了時までスキップします」

「えぇ、構いません」

「では、こちらのターンを終了します」

 

 自分のターンを終えて、ふっと一息つく。引きは、悪くない。けれど。やはり観衆の多さが気になる。ライブとか、演奏だったらむしろ嬉しいぐらいだけれど。今は……。

 

「それではぁ、こちらのターンといたしましょう。ドローフェイズ開始時」

「ありません」

「ドロー。メインフェイズ開始までスキップしますが?」

「大丈夫です」

「開始時」

「ありません」

「ふむ。で、は……ひとまず。《強欲で謙虚な壺》を発動すると致しましょうか。デッキの上からカードを3枚捲り、1枚を選んで手札に加えますが…?」

 

 朋克は伏せたカードを確認する。これは、引っかかったことがある。使うのは今ではない。

 

「チェーンはありません」

「で、は。処理を」

 

 デュエルディスクが公開情報として、3枚のカードをフィールド上に表示した。3枚とも、罠カードだ。……見たことのないカードだ、と読み込もうとした瞬間に、その表示はぷつりと途絶えた。

 

「では、このカードを手札に加え…セット。あります?」

「……いいえ」

「もう一枚」

「ないです」

「さらにもう一枚」

「……っ、ありません」

「最後にもう一枚と」

「ない、です」

「それで、は。ターン終了。…どうぞ?」

 

 ずらっと並んだ4枚のカード。講師の宣言と共に、デュエルディスクがターンの移行を示した。朋克はハッとする。今、発動したかったカードがあったのに、と。けれど、既にターンは移行した後。並んだ4枚のカードの右端のカードは、罠カード。エンドフェイズに破壊すれば、発動させることもなかったのに。…なら、攻撃をする前にやるしかないだろう。

 

「…おれのターン、ドロー」

「この瞬間。リバースカードオープン、《はたき落とし》!」

 

 注目していた右端のカードがぱっと開き、巨大な手がカードから伸びて来た。迫る手に何が起きるのかと身構えた瞬間、背筋にはぞっと寒気が走り、体は凍り付いたかのように動かなくなった。視界が一瞬、暗転し、明転し、ぐら、と激しいめまいに襲われ、思わず頭を抱え、転ばぬように耐える。

 

「…何もないようですねぇ。貴方がドローしたそのカード。墓地に捨てていただきますよぉ?」

 

 制御を取り戻した意識は、講師のニヤついた嫌な声と共に、振り下ろされる手を認識した。バチン、とこちらの腕を強くはじく幻と共に、ディスクの墓地へとカードが吸い込まれていった。墓地に落ちたのは《大嵐》…お互いの魔法罠をすべて破壊するカード。欲しかったのに。歯噛みして、けれど残りの手札2枚と、伏せ2枚から、勝ち筋を見出すために、朋克は再び、前を向いた。

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