新年あけましておめでとうございます。2026年もよろしくお願いいたします。今年最初はイントレピッドさんとの自然デートです。

1 / 1
真の居心地はここにある

巨大峡谷の先端に佇むイントレピッドはサングラスを外しながら快晴の空を見上げていた。赤みがかった大地の割れ目を前にしながら、雄大な自然を身体全体で感じ取っていた彼女は、背後から近づいてくる提督へと振り向いた。

 

「遅いわよAdmiral♪」

 

「すまない。・・・・それにしても、初めて着いたが思ったよりも近かったね」

 

同じくサングラスを外しながらイントレピッドに近づいてきた提督は、巨大な峡谷と快晴の空を同時に見て海とは違う雄大な自然に驚いていた。世界にはこんな美しい神秘的な場所があるとは、思いも、しなかっただろう。

 

「それにしても、気持ちの良い風ね。背伸びしたくなっちゃうわ・・・・」

 

アメリカのとある西海岸に位置する母港かイントレピッドと2人だけで内陸へと旅行しに来た提督は世界的にも有名な巨大峡谷をイントレピッドと眺めに来ていた。

 

「大きな時の流れを感じさせるとてもいい場所ね」

 

笑顔のまま自然の世界へと視線を向けるイントレピッドは川の流れによって削り取られて数千万年の月日を感じさせる巨大な峡谷を覗き込んでいた。アメリカの空母娘として生まれ、あらゆる戦場を目に焼き続けていたイントレピッドにとって、人間の生よりも長い年月を感じさせるこの場所には、なにか特別なエネルギーを頗る染みていた。

 

「で?こんな近い所で良かったのか?」

 

「ふふっ、何言っているの?ここでもそれなりに時間はかかったでしょ?そ・れ・に 遠くまで行けば良いってもんじゃないわよ?」

 

彼女の母国であるアメリカは領土が広大だ。西海岸から内陸まで半分進む前に日本の本土の端から端まで渡れる大きさだ。今回イントレピッドと提督が訪れている峡谷も、母港から移動した距離は・・・・。想像つくだろう。

艦娘としてそれ以上の距離を移動することなど稀ではないが、それは海の上をかなりの速度で移動した状態の話である。整備された道路をバイクで走ってここまでやってきた2人にとってすれば、海を移動するよりもとても長い間旅をした気分ではあった。

 

「私としては、世界1周の旅なんてものも気になるけど・・・・。まぁ、海でのあと片付けした後ね。だとしても、Admiralと2人で出掛けるなら何処だって構わないわよ」

 

笑顔のまま告げるイントレピッドに、提督は苦笑しながらも隣に立って自然へと視線を向けた。自分達が普段海で守っている国の姿を目に焼き付けながら、自然の中で2人の心が近くなっていくのをイントレピッドは感じていた。エセックス級の1人として誕生した彼女は、まだ生まれたばかりだったのか戦闘経験があまり少ない。戦争末期で世に放たれてしまったのだから仕方がない。彼女の中にあるのは、戦争が無くても強く生き続けている事だ。大した武勇伝が無くとも、多くの人達との出会いの元で生きていけば乗り越えられる代物だ。故にイントレピッドは、旅行と言う行為に興奮している。それは今も変わっていない。

 

「Admiral。あのね・・・・。貴方は今のこの世界に満足している?」

 

「聞いてるってことは、知ってるんだろ?」

 

互いの顔を見ずに谷底を眺めながら交わる言葉には、互いに確信がある声色をしていた。

イントレピッドから見た提督と言うのはどこまでも飢えた人間だった。生まれ故郷である日本から取り残されてもなお戦い続ける彼は、愛情にも仲間にも勝利にも飢えているように、イントレピッドには見えていた。彼がどんなひ弱で、雄々しい性格だとしてもその飢えが無ければ人間は艦娘の1人を女性として囲い込んだら、それはそれで誤解が生まれてしまう。女として設計された彼女達は、女として人間よりも優れた形で生み出されると言ってもいい。さらに提督から見たイントレピッドはどこまも満たされている艦娘だった。史実通りに生み出されていたのではなく、艦娘として生まれた今も生きる意味と見たい景色を追い求めて彷徨い続けているのだ。

 

「自分の手の中に何があったら満足するか理解できているの?」

 

「分らんな。だが、身近な物なのかもしれない」

 

イントレピッドの言葉に苦笑しながらも、最初に思い浮かんだ大和の顔を頭の片隅に追いやって提督はイントレピッドの顔を向けて伝えた。

 

「自分の居場所が見つかったか?イントレピッド」

 

「ふふっ、Admiralには構わないわね♥」

 

提督として超優秀な人間で、男としてもとても優秀なのだろうとイントレピッドは簡単に思っていたが、まさか自分の中にある空虚な感情まで読み取られていたことに、改めて自らの従えるに相応しい男だと心の中で頷いていた。これほどに相応しい、騎士道溢れる人はいないだろう。遠く飛ぶ鳥を見つめながらイントレピッドはその場に座り込んだ。

 

「私の居場所なんて、考えた事もなかったわ。でも、巡りにめぐっての終着点なんて誰も持っていないもの。結末は自分自身で決める事。そうじゃない?」

 

「人間は自分を探し続けている、か。哲学的な話だな」

 

「大げさよぉ~・・・・」

 

冬の澄んだ空気がどこまでも青い空を遠く感じさせ、赤茶色のひび割れた大地は命の息吹を感じさせる。母なる海とは正反対なその姿に、海と同じ命の息吹を感じることに笑みを浮かべながら彼女は提督を見上げた。

 

「第一に、私にとって今の居場所はAdmiralとの絆よ♪」

 

「そうか。ならしばらくはそのモットーを預かっておこう」

 

筋の通った彼女の言動に提督はこう返した。

 

「そうしてくれ。なんなら、俺にも指輪渡して一緒に背負ってくれたっていいんだぜ?」

 

「ふふっ、Of course!」

 

笑みを浮かべる彼女に肩を竦めながら提督はバイクに向かって歩き始めた。

 

「もう行くの?」

 

「もう少し違う場所から見てみよう。それだけの価値が、この大地にはある」

 

「そう・・・・。OK!」

 

ヘルメットを被りながら言う提督にイントレピッドは苦笑しながら、数千万年の時を感じさせる大地に感謝の言葉を心中で述べ、追い風を感じながら提督の元へと歩き始めた。

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。