ファウンデーション蜂起から二年。世界の表舞台から退いたキラ・ヤマトとラクス・クラインは幸せな生活を送っていた。世界が求めていた姿を捨て去った彼らに、世界は未だ”あの二人”を求める。
世界の中心で皆の指針となるような、絶対的な正義だと思わせてくれるような、そんな二人を求めた。

内容は目を覆いたくなるほどに真っ暗ですが、劇場版のようなお祭り感覚で読んでいただければと思います。あとこれはSEED世界です。つまりそういうことです

作者自身によるpixivからの転載となります。
ご了承ください。

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らら、と申します。

pixivからの作者自身による転載となります。
ご了承ください。


第1話

「もうすぐですわね、キラ」

「そうだね、ラクス」

 

膨れたラクスの腹をにこやかに見つめながら、二人はゆったりとした時を過ごしている。

 

アウラ、オルフェ率いるアコードら、ファウンデーションの蜂起から二年。

表向きはMIAとして世界の表舞台から退いてもう二年だ。以前からは信じられないような平穏とした日々。地球で何が起ころうとも、もう二人には関係ない。

二人は精一杯やった。やり過ぎたと言っても否を唱える者はいないだろう。

三隻同盟の一翼として、ディスティニープランを拒んだ者たちとして、二人は世界のために戦った。

 

『歌姫』としての彼女も、『コンパス総裁』としての彼女も、『オーブ軍准将』としての彼も、『コンパス隊長』としての彼も、もういない。

そこにいるのはただの仲睦まじい『一般人』ラクス・クライン改め、ラクス・ヤマトとキラ・ヤマトである。

 

二人が見つめる先には二つの命が宿っている。男の子、ティル・ヤマトと女の子、ミスティ・ヤマトだ。

出産の日は近い。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「キラ!」

 

「アスラン!来てくれたの?」

 

「あぁ。お前とラクスの子供だ。見たくもなるさ。流石にカガリは無理だったが」

 

「カガリが内密は無理だろうね」

 

「さすがのあいつでも無理だったらしい」

 

「ありがとう、アスラン」

 

「気にするな。お前とラクスは十分やったんだ。これ以上は関わらなくていい」

 

優しい言葉が沁みていく。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

火の手が上がった。

コンロや暖炉に灯る暖かな火ではない。忌々しい破壊の炎だ。長らく見ていなかったそれが、パチパチと音を立てて空気を焼く。

 

「逃げるぞ、キラ!」

 

出産を終えてすぐのことだった。ラクスの体力が無くなり、守るべき者が増えてすぐ。

明らかな害意の籠もった悪辣極まりない計画。数人警備もいたのだが、生存は望み薄だろう。

 

泣き叫ぶ二人の赤子。

 

「キ…ラ……これ…は……」

極度の疲労。その上での一酸化炭素中毒。意識も絶え絶えになりながらラクスは事態を把握しようと懸命に頭を働かせる。

 

「わからない、でも逃げないと!」

 

「!?!?キラ!!!!」

 

ラクスは疲れ切った体で駆け出した。

ラクスはアコードだ。だから見えるのだ。火の手の向こう側、壁の後ろに人がいることが。

 

耳を裂くような炸裂音。一切を破壊する絶望の音。

紅い華は咲き乱れ、憐れその花弁を散らす。

 

斃れる音は二つ重なる。

 

「ラク…ス……?アス…ラン……?」

 

足下が紅い。

 

「キラ・ヤマト、ラクス・クライン、アスラン・ザラ」

 

銃を構え、距離を詰めず、下手人は静かに酷く冷たく言い放つ。

 

「突然消えたと思えば、仲良く乳繰り合いやがって。世界を舞台に好き勝手したあげく最後は捨てるだと?!世界はお前たちのおもちゃ箱じゃないんだよ!!俺はお前たちに希望を見た!あの方なら、ラクス・クラインなら、世界を良い方向に導いてくれるって!なのに、なのに!」

 

下手人の顔は良く見えない。ただ、見覚えがあった。ターミナルにいた覚えがある。名前もわからないが、彼は僕たちと同じものを志して共に戦ってきたはずだ。

 

「お前たちが俺たちを捨てたんだ。なら、俺だってお前たちを捨ててやる」

 

目と胸に突き刺さる違和感。息苦しさと共にキラは意識を失った。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「……ん……」

 

半分だけ開けた視界に映るのは黒く煤けた場所だ。

 

「…僕は……」

 

撃たれた胸元を探る。冷ややかな物が指先に触れる。

ネビュラ勲章が銃弾を受け、二つに割れていた。

 

キラは下を向いた。向いてしまった。

 

斃れているラクスとアスラン。息をしていない二人の赤子。

 

視界がうるみ、耳には絶叫が聞こえる。それは自分のものだったのだろう。

 

覚束ないまま、外に出て、見えるのは破壊の跡。そこには希望なんてありはしない。

 

キラは無気力に座り込む。

感じるのは絶望さえも生温い。

頭が働かない。喪失感だけがしんしんとこの身に沁みていく。

 

自身の生まれを知って、争いを繰り返す人たちを見て、それでもと、抗った。

可能性を消し去る計画に明日が欲しいと、自由を求めて抗った。

 

僕は戦うと、そう、言った。

それを破ったから?

戦うと誓ったのにやり遂げなかったから?

 

脳に浮かぶのはラウ・ル・クルーゼとギルバート・デュランダルの二人。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

「シン・アスカ、フリーダム、行きます!」

「ルナマリア・ホーク、ジャスティス、出るわよ!」

 

今日もコンパスは慌ただしい。だが、今回は訳が違う。

 

毎日のように起きるテロ事件。標的となるのは地球も宇宙も関係ない。

 

「急ぐぞ、ルナ!」

 

「えぇ!分かってるわよ!」

 

宇宙から降りる二人の行く先は

 

 

オーブである。

 

 

小さい国土ながら今の世界で絶大な武力を誇るその国はナチュラル、コーディネーターを問わず多くの人々が暮らしている。

二度の大戦を勝利したその国は双方との橋渡しのような立ち位置にある。

良く言えば中立。だが、一部の者からは風見鶏だと忌み嫌われていた。

 

ナチュラル側でもコーディネーター側でもないその国は極端に見れば敵足りうる。

 

デストロイから放たれる咆哮が街を無差別に焼き尽くす。情景は四年前のベルリンさながらである。国土の狭いオーブにとってデストロイは十分過ぎる脅威だ。

アカツキを駆るムウもムラサメに乗るアグネスも大戦を生き残った猛者である。だが、全身に砲門を備えるデストロイ相手に街の被害ゼロは無理なお話。それも何体もとなれば尚更だろう。加えて連合、ザフト両陣営のモビルスーツまで降りかかって来るのだ。国防軍をもってしても被害の最小化に努めるのがやっとである。

 

「クソっ!数が多すぎる!」

 

ビーム兵器を反射するアカツキ。だが、この戦いに於いてはその本領は発揮し難い。

 

ビームに対する鉄壁を誇るアカツキだが、より正確に言えば本領は対人戦闘において発揮される。

今回のような『破壊』を目的とした攻撃において、わざわざ素早く動き回るモビルスーツを相手にする必要などないのだ。

破壊し、蹂躙する。その過程に対モビルスーツ戦闘は無駄と言っていい。

 

群れを成して進撃するデストロイ。それが織り成すは『死』か『破壊』。まさしく災厄。

 

その歩く天災に閃光が降り注ぐ。狙い澄ましたそれは的確にコックピットを撃ち抜き、デストロイの活動を停止させる。

 

「おせーぞ、ボウズ!」

 

高空から神速で舞い降り、敵モビルスーツを屠るその姿にどうしても六年前、地球連合軍として戦ったアラスカでの一戦を思い出す。違いは白と青に加えて赤い機体が加わっていることだろう。

 

舞い降りた二振りの剣。それに加わるアカツキとムラサメは確実に敵機を減らしていく。

やがて、敵勢は個別に退却を始めた。

 

被害は甚大である。居並ぶ住居で無事なものは見渡す限りゼロ、上がる火の手は絶えず、満ちている声は悲しみに染まっている。モビルスーツは狙わず、徹底した破壊活動。彼らの目的は十分に達成されたと言えよう。実際、モビルスーツの損害は極わずかなのだから。

 

目の前で炎が燃えている。シンは手を強く握りしめ、深く息を吐く。

 

「シン……」

 

「…大丈夫だ、ルナ」

 

四年前なら怒り狂っていただろう。もちろん今でも怒りはある。何の罪もないオーブの人々が犠牲になっているのだ。だが、それに支配されることはもう無くなった。

 

数日後、カガリ・ユラ・アスハ他多数のオーブ国民の死亡、オーブの壊滅が世界に報道された。

 

テロ行為への武力介入はどうしても後手対応になってしまう。突発的に起こる上に場所もわからない。そんなものだからこそ、仕方ないと思いつつも相応にやるせなさも感じてしまう。守れた命だったのかすらわからない。

 

けれど、全てが守らねばならない命である。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

『これは運命かな?キラ君』

「どうでしょうね、クルーゼさん」

 

以前とは打って変わった金属に囲まれた空間。そこにその機体は鈍く煌めいている。

 

体は親しんだストライクフリーダムのそれ、フリーダムのような薄い翼を挟み、背中には巨大な円形、プロヴィデンスのようにも見えるそれを背負っている。

 

『力はただ力なのかね?』

「………」

 

かつて自ら否定したそれが今の自分に突き刺さる。

 

「キラ様、本当にやるんですか」

 

彼らはこの機体“プロヴィデンスフリーダム“の開発に携わってくれた人たちだ。

 

「ラクスも、カガリも、アスランも、僕の子もみんな死んだ」

 

そう語る目は虚ろだ。遠い何処かを見つめている。

 

「僕が、僕が駄目なんだ。僕が、生きているから」

 

「ありがとう、みんな。……さようなら」

 

キラは一人フリーダムのコックピットへと入る。

 

「…キラ・ヤマト、プロヴィデンスフリーダム、出ます」

 

青白い光が辺りを包む。

推力を上げ、飛び立つフリーダムと随伴機ファトゥム-J。

 

「みんな、ありがとう」

 

広大な宇宙へと上がったフリーダム。その背に負うドラグーンと手に持つ二丁のライフルの砲門を今しがたいた基地に向ける。

 

「さようなら」

 

引き金を引き、基地が燃え上がる。そこにある一切を焼き尽くし、キラは飛ぶ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ユーラシア。そこは過激派のナチュラルが多く存在する地域。

 

「ファトゥム-Jのディスラプター起動。目標、ユーラシア」

 

「終焉への扉は開く。僕が開く。僕にしかできないんだ。争いを止めない愚かな人類に裁きを下せるのは、僕しか……」

『そうさ…私達にはあるのだよ。世界で、人類に裁きを下せるのは私達だ』

 

業炎。

破壊の極致。

 

知らせを受けて駆けつけたコンパスを迎えたのはそんな景色だ。

 

「一瞬で、こんな……」

 

デストロイであってもできない所業だ。それこそ核でもなければ不可能な所業。

 

だが、ここは連合である。なれば撃ったのはプラントだろう。

 

数日後、プラントも同じように焼き払われた。

 

〜〜〜〜〜〜

 

「発見しました!あの機体です!」

 

「拡大しろ!おのれ、よくもプラントをぉ!!」

 

そう吐き捨てたイザークは機体を見て絶句する。

 

色こそ鈍いが、機体は見紛うことなきフリーダムなのだから。

 

「フリーダム?!あの機体に乗っている奴は誰だ!誰があんなものを!」

 

「イザーク、お前やる気か?あれ絶対核エンジンだろ。じゃなきゃあんな重武装、バッテリーじゃ保たねぇよ」

 

「デュエルとバスターがあれば…!」

 

「!モビルスーツ、こちらに向かって来ます!」

 

「何?!クソっ!俺とディアッカが出る!撤退だ!絶対に堕とされるなよ!!」

 

「イザーク・ジュール、グフ出るぞ!」

 

「ディアッカ・エルスマン、ザク行くぜ!」

 

「撃墜しようなんて思うなよ、ディアッカ」

 

「あれを堕とせると思えるほど俺はバカじゃねぇよ」

 

退いていく艦船。相反するようにイザークとディアッカはフリーダムとの距離を縮める。

 

「おい!フリーダムのパイロット!貴様何者だ!!何のつもりでその機体に乗っている!!」

 

「…久しぶりだね、イザーク、ディアッカ」

 

「その声、キラか?!」

 

「貴様ぁ!なぜこんなところにいる!」

 

「……どうして…だろうね」

 

そんな言葉と共にフリーダムの背に赤い光が見えた。

 

「イザーク、来るぞ!」

 

赤い粒子を散らしながらフリーダムから放たれたドラグーンが二人を襲う。無数の火線が次々とグフとザクの四肢を破壊していく。

 

継戦能力を徹底的に奪うキラの戦い方だ。

ドラグーンを収容し、フリーダムは飛び去って行った。

 

「どうして、どうしてアイツがここにいる!?!!」

 

~~~~~~

 

「あんた、なんでここにいるのさ!ラクス様はどうしたんだい!」

 

「ラクスは死んだよ」

 

「っ!!どうして守れなかったんだい!あんたのせいだろう!」

 

「そうだよ。僕が駄目なんだ。僕がいるから、僕が弱かったから、ラクスは死んだ」

 

「そういうことを聞いているんじゃないって分かってるだろう?!!」

 

「分かっているよ。僕はスーパーコーディネーターだからね。君たちよりも優れているんだから。僕は君には負けない」

 

ビームナギナタでフリーダムに斬りかかるヒルダが駆るゲルググ。それを意にも介さずにキラは躱す。危なげがないどころか余裕さえ感じ取れる始末。実力の格差は圧倒を通り越して絶望的である。

 

ようやく正面に捕らえるも、フリーダムのレール砲が突き刺さる。爆ぜる黒煙。視界の封鎖。それは一瞬だが、フリーダムにとっては十分すぎる程の時間。

 

深々とビームサーベルが腹部に突き刺さり、ゲルググは爆発を起こし、大破した。

 

〜〜〜〜〜〜

 

「シン君」

 

「どうしたんです?マリューさん」

 

そう手渡された一つの映像。そこに映っていたのはかつてのバレンタインのようになったプラントから飛び去る一機のモビルスーツ。否、フリーダム。

 

「フリーダム?!隊長の機体を!よくも!」

 

「えぇ。私達としてもとても看過できないわ」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

“スローンズ“

先のファウンデーション蜂起の際に轟沈した大天使の名を冠する“アークエンジェル“、ヤキン・ドゥーエで沈んだ主天使を冠する“ドミニオン“に次ぐアークエンジェル級三番艦である。コンパスの地球での運用戦艦として配備されたそれにミレニアムから一本の通信と一つのデータが飛び込んできた。

 

曰く、我らフリーダムによって轟沈せり、と。

簡潔にして、深刻。共に送られたデータは件のフリーダムとの交戦記録のそれ。

 

それを見たシンは、シンだからこそ気付くのだ。フリーダムのパイロットがキラ・ヤマトその人であると。

 

三、四年前、シンがザフト艦ミネルバの搭乗員であった頃の話。シンは対フリーダムの訓練に心血を注いだ時期があった。

当時は思惑が分からなかったフリーダムとその収容艦アークエンジェル。幾度となく戦闘に介入し、双方に被害を出した。その最中、ステラを討たれたことに恨み、フリーダム撃墜を誓ったのだ。

 

そんなシンだからこそ、次々とモビルスーツを撃墜していくその動きが当時研究したフリーダムと、キラ・ヤマトと似通いすぎていることに嫌でも気付いてしまう。

唯一の違いはコックピットを狙っていることだろうか。

 

「隊長が…そんな、なんで…!!」

 

わなわなと瞳を揺らすシン。

 

映像の最後はブリッジに向けられる黒鉄の銃口とそれに灯る緑色のエネルギーであった。

 

 

「キラ君に何があったのかはわからないわ。あの人たちの居場所はほとんど知られていないもの。私だって知らないわ。けれど、キラ君がこうしているということは………」

 

詳細はわからない。けれど余程のことがあっただろうことは確実だろう。

 

「っ!アスランなら!」

 

首を横に振り、マリューは言葉を続ける。

 

「彼からも何もないわ。……事情はわからないけれど、こうなっている以上、あのモビル

スーツを止めなければいけない。分かるわね?」

 

「ということで、ここからは私の出番ね?」

 

エリカ・シモンズ、オーブの技術者である。

 

シンが案内されたのは先のファウンデーション蜂起の際にデスティニーを受け取ったあの場所。パッと光がつき、そこにある機体を照らす。

 

「これは………デスティニー!」

 

「う〜ん、半分正解、かしら?」

 

「え?」

「これは“ストライクデスティニー“。まぁ、系統はザフトの“インパルス“に近いのだけどね。当初のインパルスのデスティニーシルエットを私達オーブの手で形にさせて貰ったの。それに時代に合わせた改修を施したのがこの機体。使わないにこしたことはないのだけど、用意はしておくべきだとは思わない?」

 

かくしてシンはデスティニーを受領し、アークエンジェル級三番艦スローンズへと搭乗する。

宇宙に上がるのはシン。ルナマリアを加えたスローンズ搭乗員、そして

 

「メイリン!」

 

「久しぶりかな?シン、お姉ちゃん」

 

「アスランは?」

 

「……分かりません。オーブが焼かれたあの日から………その日はオーブにはいないはずなんですが」

 

何処に行ったのでしょう、そうメイリンは続ける。

 

「スローンズ、発進!」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

スローンズは宇宙に上がる。

 

そのすぐ前に”フリーダム”は現れる。

 

「隊長!」「キラ君!」

 

通信を入れているはずだが、フリーダムは返答代わりに銃口を向ける。

 

「っ!回避ィー!」

 

火砲は的外れな方向へと延びていく。

 

「わざと外したの?…モビルスーツ隊発進!」

 

「っ!シン・アスカ、フリーダム、行きます!」

「ルナマリア・ホーク、ジャスティス、出るわよ!」

「ムウ・ラ・フラガ、アカツキ、出るぞ!」

「アグネス・ギーベンラート、ギャン、出ます!」

 

続けざまに発進する四機。それをフリーダムは沈黙をもって見届ける。四機が揃うや否やフリーダムは背に負ったドラグーンを射出する。

ドラグーンから放たれるビームが追い立てるようにシンたちとスローンズとの距離を広げさせられる。一基につき三つの砲門を備えるそれはファウンデーション蜂起でキラのストライクフリーダム弐式が相対したブラックナイトスコード・カルラと酷似どころか同一に見える。

 

「隊長、どうして!!」

 

「僕を倒したら教えてあげるよ、シン」

 

「目を醒ませ!キラ!」

 

「目なら醒めてますよ、ムウさん。醒め過ぎたくらいに」

 

冷たくキラは返す。

 

ビームが迫るが、針を縫うようにフリーダムは躱す。

 

「なんだ?!」

 

ムウの背後からフリーダムへの追随を拒む違和感が迫る。

 

アカツキの足に噛み付くアンカー。その先からビームサーベルを展開し、殺意を剥き出しにしたファトゥムが迫る。機首と翼のビームサーベルによってアカツキの両足が破壊される。

 

「何っ!」

 

「ムウさん!」

 

飛来するファトゥムにビームを撃つが、備え付けられたビームシールドがそれを阻む。

 

「ルナはそれを!俺とアグネスがフリーダムを追う!」

 

「わかったわ!」

「わかったわよ」

 

~~~~~~

 

キラを相手に余裕などありはしない。シンはライジングフリーダムの武装を全て使い、キラのフリーダムへと攻撃する。八基あるドラグーンもこちらに割かれている。

ひらひらと舞うように躱すフリーダム。蘇るのはミネルバ時代の戦火の数々。

 

背後の翼を大きく広げ、計五門のビームを一斉に照射する。

 

「シン、本気の君を僕は待っているよ」

 

そう言って放たれるのはビームライフル二丁、腹部のトヴァシュトリ、両腰部のフォランスアスタ、さらには砲門を三つ持つ八基のドラグーンから放たれる総砲門二九の圧倒的な過剰火力。

頭部とスラスターを避けるように放たれたそれを受けたライジングフリーダムは一瞬で大破する。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

「シンばっかり見て私を忘れないでよね!」

 

放たれたフルバースト。圧倒的な火力と引き換えに避けがたい隙が生じる。

その隙を逃すまいとアグネスのギャンが上方から斬りかかる。

 

手にはライフル。防ぎようがないビームアックスによる一撃。第二次連合・プラント大戦で真剣白刃取りをしたという話は噓だろうけれどシンから聞いている。だが、このより質量の大きいビームアックスならばそんなことにもならないだろう。

 

フリーダムを切り裂く刃。それは憐れ、宙を舞う。

 

「え?」

 

アグネスは啞然とする。目の前に見えるのはビームサーベルの光だ。

当たったと思った、いや確信していた。撃墜とまでは言わずとも腕の一本くらいはと。

 

だが、目の前に見えるのは切断された自分の、ギャンの腕である。

 

目線を下げる。目の前に見えるビームサーベルの根元を探るためだ。

そして見つける。フリーダムの前腕部。そこから丁度逆手になる位置からビームサーベルが伸びている。

そして足にもだ。ジャスティスのように膝部からつま先にかけてビーム刃の光が見える。

 

流れるように、流麗に。ギャンの四肢を瞬く間に切り落としギャンは胸部を蹴り飛ばされた。

 

~~~~~~

 

「このぉ!」「えぇい!」

 

ファトゥムは小さい。その上、スラスターが一方向を向いている関係上、追いつくのも難しい。

できる攻撃はアカツキのドラグーンとビームライフル、イモータルジャスティスの全ての武装である。だが、用意周到にも上下に展開されているビームシールドがドラグーンの攻撃のほぼ全てを遮断している。

 

追いすがろうと懸命なルナマリアとアカツキのドラグーン。

反転したファトゥムの二門の火砲がジャスティスの腕部に直撃する。爆発と共に崩れるイモータルジャスティス。

生じた明確な間隙。ファトゥムから射出されたグラップルスティンガーがアカツキに噛み付く。

 

「しまった!」

 

ファトゥムが正面からアカツキの右腕を切り裂いた。

 

「クッソぉ……スローンズ!帰投願う!」

「分かりました、整備班!緊急着艦用意!」

「ありがとな、マリュー」

 

離脱するアカツキ。敵機はただ一つ、イモータルジャスティスのみである。

狙い澄まして接近するファトゥム。MA形態となり、距離を取ろうとするジャスティスの足にグラップルスティンガーが嚙み付く。ワイヤーの牽引も手伝ってファトゥムはぐんぐんと迫りくる。

 

「こんのぉ!!」

 

ファトゥムとジャスティスの左足が接触。その瞬間、ジャスティスを変形させ、残る右足にビーム刃を発生。回転蹴りの要領でファトゥムの片翼を破壊した。

そのままファトゥムは大威力の爆発を起こす。

 

「私だって『赤』なのよ!」

 

~~~~~~~

 

「マリューさん!デスティニーを!それとメイリンをオペレーターに!!」

 

「わ、分かったわ。デスティニー発進準備!」

 

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!!!」

 

~~~~~~~

 

ファトゥムを撃墜し、訪れる一息の安堵。そこに程離れた場所からフリーダムが襲い来る。

 

「ルナマリアさんを援護して!ゴットフリート、ヘルダート、てぇぇ!!」

 

迫りくる高威力ビーム砲と無数のミサイル群。

 

 

フリーダムの白い翼が厳かに開かれる。

 

 

金の小翼に白地にピンクのラインの走るそれから舞い散るナノ粒子。

巻き起こる強烈な放電現象。

それは放たれた攻撃を全て無力化させる。

 

 

紅い光を迸らせながら、フリーダムはジャスティスへと銃口を向ける。

 

「させるかぁあああああ!!!!!!!」

 

放たれたビームライフルの一射。それを機体を割り込ませて防ぎきる。

 

「さようなら、ルナマリア」

 

正面からのビームライフルそして、イモータルジャスティスの背後、回り込んだドラグーンが火を噴く。

 

「俺は言いましたよ、隊長。『させるか』って」

 

イモータルジャスティスとドラグーンの中空、そこに紛れ込む一基の円形のドラグーン。

それが半球状のビームシールドを発生させ、ルナマリアを守った。

 

「ルナ!後は俺が!早くスローンズへ!!」

「シン!!!」

 

一見は通常のデスティニーspecⅡだが、腰に備えられた尾羽のような武装だけが違っている。

 

シンは背後にマウントされたアロンダイトを抜き放つ。翼を広げ、淡い赤色の光の翼を発生させる。

ヴォワチュール・リュミエールを展開し、キラのフリーダムへと迫っていく。

ドラグーンが放つビームの間を縫い、シンはフリーダムへと追いすがる。

 

「アスランにもできたんだ!俺にだって!!」

 

シンは腰にマウントされた尾羽のような武装、合計十基のドラグーンを解き放つ。

 

十基のうち、二基はルナマリアを守る際にも使った円形の”プロテクトドラグーン”とでも言える代物。そして残る八基はビーム砲としても運用可能な他、ビーム刃を発生させて敵機を切り裂くこともできる”P”のような形をした”ソードドラグーン”とでも言えるもの。

 

デスティニーは多数の分身と幻影の刃と共にフリーダムへと斬りかかる。

向けられたフォランスアスタの一方を切り落とし、追撃にパルマフィオキーナを繰り出すが、流石にフリーダムは速い。後方へと飛び去り、手に持ったライフルと腕のビームサーベルでこちらのドラグーンを撃墜している。

 

距離の空いたフリーダムにむけてエネルギー砲を放つが、フリーダムもトヴァシュトリで応戦する。

ビームブーメランを投擲するも正確無比なキラの射撃の前ではあえなく爆散。

 

飛び回るフリーダムのドラグーンをアロンダイトで三基切り伏せ、ビームライフルで一基撃墜。残るドラグーンはあちらが四基、こちらがソードが三基とプロテクトが二基。

 

 

フリーダムと距離のある今が好機。

 

 

「メイリン!チェストフライヤーとブラスト!」「はい!」

 

 

スローンズから射出されるのはインパルスの上半身とブラストシルエット。”ストライクデスティニー”はインパルスガンダムspecⅡとの互換性があるのだ。つまりはデスティニーのエンジンのままインパルスのシルエットシステムを行使できる。

 

一抹の懐かしさを覚えながら、シンは素早く合体シークエンスを完了。機体色が深緑へと変化する。

近くに放っていたアロンダイトを手に取り、ソードドラグーンを一時的に回収。

まず排除すべきは残る四基のドラグーンである。

 

核動力によって強化されたケルベロスを照射し、退避したドラグーン目掛けてミサイルの雨を見舞い、一基撃墜。

接近してきたフリーダムのビームサーベルがストライクデスティニーの周りを漂うプロテクトドラグーンが破壊される。続けて放たれたレール砲を受けたが、用済みとばかりにブラストシルエットを射出。ソードドラグーン三基を射出したブラストシルエットに突き刺して爆破させる。

 

「ソード!」「はい!」

 

隙を消そうとソードドラグーンを放ち、ソードシルエットとドッキング。機体を紅に染め上げ、ビームブーメランを二本投擲。フリーダムはそれを脚部のビームブレイドではじかれる。デスティニーの時に見せられた白刃取りといい、キラ・ヤマトの操縦スキルは頭一つ抜けていると思わずにはいられない。

気を取り直し、エクスカリバーとアロンダイトを構え、増速するストライクデスティニー。迎え撃ったフリーダムのライフルが左腕と右足を破損させる。

 

「チェストとレッグ!」「はい!」

 

突き出したエクスカリバーは避けられ、フリーダムの腕部のビーム刃が頭部を破壊。だが、アロンダイトでフリーダムの左足の破壊に成功する。残っているもう一本のエクスカリバーを投擲、残っているソードドラグーンも射出する。

 

「フォース!」「はい!」

 

エクスカリバーはビームライフルによって破壊されたが、ソードドラグーンが残っていた方のクスィフィアスを貫いた。放たれたカリドゥスを残っていたプロテクトドラグーンの破壊で凌ぎ、手にしたライフルでドラグーンを一基、アロンダイトでもう一基撃墜する。

 

ライフルを放ちながらの追撃。接近するとフリーダムがビームサーベルを手に迫る。

 

フリーダムの繰り出すコックピット目掛けたビームサーベルの刺突。その裏には腕部のビーム刃による斬り払いが待っている。

シンはレッグフライヤーを分離させ、コアスプレンダーをフォースシルエットによって上昇させることで回避する。そのまま上昇を利用し、アロンダイトでフリーダムの左腕をバックパック諸共破壊する。

 

爆発の衝撃で吹き飛ぶフリーダム。持ち前の機動力で追い付き、右腕でフォースシルエットにマウントされたビームサーベルを抜き放つ。背後のドラグーンに右腕とフォースシルエットが破壊されるが、同時にこちらのビームサーベルがドラグーンを破壊した。

 

「これが!俺の全力だぁあああああ!!!!!!!!!!!」

 

レッグフライヤーに格納された対装甲ナイフを左手に持ち、それをフリーダムの頭部へと突き刺した。

 

「シン……ありがとう……僕を止めてくれて」

 

巻き起こる大爆発。瞬く光の奔流は核の光。

キラ・ヤマトは散ったのだ。

 

フリーダムの影も、形も、そこにはない。

 

~~~~~~~~

 

「シン………」

 

帰投したシンには血の気がない。かける言葉が見つからない。

シンはかつてのキラを倣い、コックピットへは一切攻撃していなかった。

その結果、こうなるとは思いもしなかったのだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「? メイリン?何してるの?」

 

ビクッと肩を震わせ、振り返る妹。

 

「お姉ちゃん、これ……」

 

手を開いて見せてきたのは青と緑の機械の鳥。

 

キラとラクスのトリィである。

 

どうしてここに?その疑問を口にするより早く、メイリンは答えを言う。

 

「キラさんのフリーダムが出てきた頃、二羽とも入って来たって。でも、この子、動かないの。シンが帰って来た頃から」

 

そう言ってメイリンは作業へと戻る。

 

「それで、何か無いかなって……あっ!」

 

鍵が開く。

 

「メッセージファイル?それと……住所?」

 

「お姉ちゃん…これ………」

 

「えぇ。艦長に見せるべきだと思う」

 

〜〜〜〜〜〜

 

とある辺境。時間の流れが遅いのかと錯覚するほどの平穏。その中に異様はある。

 

黒く焼け焦げたそれはこの空間にまったくそぐわない。

 

悲惨

 

ただそれだけである。

 

「あれ……」

 

少し離れたところ、隠すように遺体がある。メッセージの通りだ。

 

キラからのメッセージには謝罪と感謝、そしてラクスやアスラン、自分の子、当日その場にいて犠牲になった人を丁寧に葬って欲しいとだけ書かれていた。

 

“フリーダム“は世界から“もっとも人名を奪ったモビルスーツ“と成り果てた。その世論の声はコンパスにライジングフリーダムを制式採用機から降ろさせ、公然の前で破壊させる程だ。

 

そして世界は“フリーダム“を墜とした者を賛美する。

“フリーダムキラー“と。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「シン………ありがとう、あの時、私を守ってくれて」

 

「ルナ………」

 

暗い部屋。光の全く無い空間。昼も夜も忘れそうな、そんな空間。

 

「あの時、シンがいたから私は生きているの。だから、そんなに自分を責めないで…」

 

手探りでルナマリアはシンの頭を抱きかかえる。優しく、それでいて力強く。

ひやりとルナマリアの服に雫が落ちる。

 




恐らく掲示板発祥?のやつをみて勢い80%くらいで書きました。投稿者はシリーズは好きですが”ガチ”ではありません。色々と突っ込みどころがあるでしょうが気にしないでいただけると幸いです。

機体設定などはpixivの方で公開しております。興味のある方はどうぞ。

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