神力で荒れる嵐の中心に巨大な妖力が現れる。
「閻羅!?どうしてここに…」
加奈子に鉄の輪を掴まれ、勝ち筋の一つすら失った諏訪子の前に姿を現したのは、閻羅だった。
「戦争はもう終わっている。」
「何言ってんのさ!まだ終われるわけ「決着は着いている。」…。」
閻羅にはっきりと言われて戦闘態勢を解いて俯いてしまう。
敗北することが諏訪のみんなへの裏切りとなってしまうという思いが諏訪子の顔を引きつらせる。
「諏訪子、おまえまだ勘違いしていたのか?」
「…勘違い?」
何もわかっていなさそうな諏訪子にため息をついてしまう。
これが本当に神か?
「最初からおまえが勝つ必要だなんてないんだぞ。」
「え…」
閻羅の言葉に動揺を隠せない諏訪子は驚きで固まってしまう。
そして、そのすぐ近くにいた加奈子にも会話は聞こえており、「なに?」と問いただすようにして、閻羅の方へ向き直る。
「どういうことだ。この戦いに意味がなかったと?そもそも貴様はスサノオノミコト様と戦っていたはずだ。何故ここにいる?」
答えは一つ、
「簡単なことだ。俺がスサノオに勝ったのさ。」
この戦いの末に欲しい結果は民の信仰の維持だ。
つまり、欲しいのは諏訪子が勝ったこと以上に、
この戦力差でも勝負に勝った者がいるということだ。
重要なのは勝ち負けではなく、
スサノオは諏訪の者に負けた。
「間抜けなものだ。勝った数で勝負などとくだらんことを真に受けていたのか?この世は弱肉強食。」
「持ちかけてきたのは貴様だろう、何が目的だ。」
「そこの神を試したのさ。俺の予想以上に民を大切にしているみたいで安心した。だがな…」
民のためにと力を振り絞ることは素晴らしいことだと思っているのは閻羅も例外ではない。ただ、
「思いだけでは何も救えないとしれ、洩矢諏訪子。次に会うときを楽しみにしているぞ。」
想いだけでも力だけでも意味はない。本当に何かを変えたいと言うなら、その者は覚悟しなければいけない。未だ誰も知らない荒道を突き進んでいくことになる覚悟を。
「次に会うとき?何を言って…」
「また会おう。」
「「待(っ)て!」」
二人の制止も聞かずに飛び去っていく閻羅。
二人の力では到底追いつくことはできない速度で空を駆ける。
諏訪の国の今後を悟っていた閻羅は、少なからず満足したように、されど少しばかり退屈な、そんな感覚を覚えていた。
「待ってもらって悪かったな、ルーミア。」
閻羅の向かった先には、おそらく大和の戦力と思われる者たちが倒れており、その中心にはルーミアがいた。
「いいわよ、諏訪ちゃんとはもう遊んだしね。」
口元にはわずかに血が付いており、少し食べたのだろうと分かる。
「もういいの?」
「ああ、あれなら心配はないだろう。」
きっとあの国には大きな変化が訪れるだろう。
それでも、あの国には確かに、『不変』であるものがあった。
諏訪の国は良い国だ。国として消えることになっても、その絆はきっと残り続けることになるのだろう。それでこそ『国』だ。
いつかは朽ちるようにできているこの世界の中で『不変』。
たとえ小さな国でも、だからこそ見ることができるものもある。
そしてまた
変化とは、ただ身一つに収まるようなものではない。
地球で、宇宙で、世界中で、起こり続けるもの。
果たして本当に、
その実態は、この録の字列にすら現れているのだろう。
そうして、愚かにも小さな世界のなかで生きていく。
どうかこの物語を最後まで綴れますように…