宇宙暦797年 帝国暦488年十一月十五日、同盟での生活に慣れてきたオフレッサーはヤン提督の要請を受け司令部に出頭した。
「オフレッサー、出頭しました」
オフレッサーはヤンのデスクの前まで歩くと立ち止まり敬礼した。
「突然呼び出して済みません中将、実は頼みたい事がありまして」
ヤンも立ち上がり答礼を返してから用件を話す。
「頼みたい事……でありますか?」
「えぇ、中将に陸戦隊を一つ指揮してもらいたいのです」
オフレッサーは予想外の話に少々面食らった。
「小官に陸戦隊を……ですか?」
「はい、中将のご存じの通り我が軍は先のアムリッツァの戦いで取り返しのつかない損失を被りました。それは陸戦隊も例外では無くて、イゼルローン要塞に詰めている陸戦隊もローゼンリッター以外は言い方が悪いのですが練度は今一つ低い状況なんです」
ヤンは自身のベレー帽を外して頭を掻いた。
「成る程……閣下、一つ質問して宜しいですか?」
「……えぇ、どうぞ」
ヤンはベレー帽を被った。
「閣下のお陰でこれまで特に我々亡命者に対する不信は表だっておりません。ですが小官が言うのも可笑しな話ですがこれまで私のトマホークが同盟軍兵士の血を吸ってきたのは事実、その様な人物に兵を預けるというのは不満が出てきませんか?」
「……そうですね。そういう懸念が出てないかと言えば嘘になります」
ヤンは再びベレー帽を外して髪を掻いた。
「ですが、それを言ってしまえば私だって多くの帝国軍兵士の命を奪ってきました。私の号令一つで何十万の生命が消し飛びました……それを思えばオフレッサー中将の事を非難する言葉は私にはありません。帝国は帝国の、同盟は同盟の事情があり立場が違えば見えている物が違う……それだけだと思います」
「……では閣下は小官を信じると?」
「実はまだ私自身この決定に自信がありません」
ヤンは苦笑して本音を話す。
「ですが私が手本として中将達を信じなければ部下達も中将を何時までも不信を拭えないでしょう……私を頼ってくれたメルカッツ提督やオフレッサー中将には申し訳ないですが」
ヤンはそう言ってベレー帽を被り直した。
「……閣下は正直な方ですな、普通そこまで本音を言わないでしょう。帝国でも恐らく同盟でも」
オフレッサーはニヤリと嗤う。
「良いでしょう。このオフレッサー、ローゼンリッターに負けない同盟最強の陸戦隊を育てて見せましょう」
オフレッサーはそう言って敬意を込めて敬礼した。
後にオフレッサーが育てた陸戦隊はローゼンリッターに負けず劣らずの練度を誇る白兵戦集団になった……