pixivより転載
ケープコッドには伝説のブサイクがいる。
女の子からは毛虫の如く嫌われ、大人からも眼を背けられ、終いには根っからのペドフィリアの変質者すら彼を避けたという話だ。
そんな伝説のブサイクには、友達がいた。アスランと言う、天使のような美少年だった。
「アスラン、お前友達甲斐のない奴だなぁ」
そのブサイクは、今はほとんど大人になった。ブサイクは成長してもブサイクだったが、幸い同性には愛されるブサイクだったので、それ程ひねくれずには済んだ。そんなブサイクは、ある晴れた日のこと。墓の前にいた。
アスラン・J・カーレンリンスの墓である。
アスランの死には、十重二十重に思惑が重なっていたらしい。最初に「アッシュ・リンクス」の死が伝えられたのはテレビでのことだ。そうでなくとも、いつの間にかケープコッドからいなくなった
アスランが凶悪な少年犯罪者になっていたことにも驚いたのに、その直後に死が伝えられたのだ。正直な話、彼は現実感が湧かなかった。アスランの遺体は司法解剖に回されるともニュースで聴いた。どちらにせよ第1級殺人罪に問われていたアスランは、死刑は免れなかっただろう。彼はそのニュースを聞いてからしばらく呆然自失していたと思う。
ところが、アスランの遺体が帰って来た。アスランの父は強盗に遭い後妻を喪っていたのもあり体調が思わしくなかったところに、息子の遺体が帰って来た。どういう気持ちだっただろうと、彼は思う。アスランは思ったより厄介なことに巻き込まれていたらしく、どうやら最初の死は誤報……というより虚報だったようだった。何があったかは、彼は知らない。彼はただの田舎の人間だった。
葬式にも出た。アスランの父は、ひたすら俯いていた。それに、彼は何も言えなかった。
──そして、数日。掘り起こされたばかりの土の跡が残る墓の前で、彼はそれを見下ろす。彼は言った。
「お前、あの監督に何度も強姦されてたって話、俺にしてくれなかったよな。俺に言ったら俺に類が及ぶかもしれないと思ったのか? 安心しろよ、俺のブサイク面には誰もがチンポ萎えるから。まぁ、他の殺された子どもみたいにはなったかもだけど……そっちの方が有り得るな。何にもされずに真実を知ったから殺されるってやつ。アスラン、お前、頭の良い奴だったよな。俺がそうなるかもしれないって、あんなガキだったのに想定できたのか? ……お前、頭良いけど馬鹿な奴だったよな。ひとりで全部背負い込む馬鹿だった。そんなだからストリートキッズのヘッドになんてなったし、色々巻き込まれたんだろ」
彼は、顔に反して聡明な人間だった。もし、タイミングを逸していなければ、彼はアスランの良き友となっただろう。
時は巻き戻らない。アスランと彼は既に永遠に分かたれた。
──彼はしゃがみ込む。そして頬杖を突いた。
「なぁアスラン。俺とお前、ツラが反対だったらどうなったんだろうな。お前が伝説のブサイクで、俺が絶世の美少年。そうだったら、お前、ずっとケープコッドにいてくれたか?」
繰り返す。時は巻き戻らない。それを、彼はひしひしと感じていた。
立ち上がった彼は、墓に向って言う。
「俺さ。カノジョできたんだ。俺なんかのこと好きって言ってくれる女の子。多分2度とないから絶対に結婚しようと思う。お前が結婚してたら、子どもと遊び合わせられたのにな」
彼は言った。
「それじゃあな、アスラン。また来るよ」
そこで、彼の「ひとりごと」は終わったのだ。
End.