気が向いたら投稿していきます。
ほぼ初の二次創作への挑戦となります。
本編のネタバレを含む為、読まれる場合はご注意ください。
年末の物語です。
「お正月の予定?」
クリスマスが終わり、年末に差し掛かった頃。大晦日に備え大掃除をしていたメアリーから、改まって正月の予定について聞かれた。
しかし正月──正月か。
元旦は聖母マリアの誕生日である為、神父である僕は新年礼拝を行う事が恒例である。
それなりに毎年準備を行い、開催している為予定はあるといえばあるのだが……
まあ1人で神父をするようになってから、誰1人新年礼拝に顔を出していない為、実際のところ行う必要があるのかどうかと言われるとアレなのだけれども。
「だって去年はあんな事があったから、いつの間にか過ぎちゃってて……」
あははと笑いながら、箒を片手にいじらしい表情でこちらを見つめてくるメアリー。
その表情にグッと来るものを感じながら僕は去年の事を思い返す。
……確かに。去年は僕が吸血鬼の力を吸収した事で、3ヶ月も意識を失い、みんなに非常に迷惑をかけてしまった。
その間の行事なんかも碌に行えなかったらしい。
あれ以来相変わらず闇の王子様としての力があるのは感覚的にわかるのだが、メアリーの吸血鬼の力が抑止になっているのか、望まない限り表に出てくることはない。
相変わらず学園の外に出ることはできないが、安定した状態にはなってるのだろう。
「それにね、律くんと2人きりでね、年越ししたいっていう理由もあって……」
2人きり──実は、今この屋敷には僕とメアリーの2人しかいない。
あかりは実家の方で大きな祝い事があるらしく、既に帰省している為、学園にはいない。
小夜はなにやら卒業後の準備があるとの事で、年末から年始にかけて少し遠出をするらしい。何やら企んでいるみたいだけれど、悪い予感もしないので放っておいても問題ないだろう……多分。
理沙は今年は赤錆家で重要な集まりがあるらしく、今年は学園には残らないようだ。美果子が今年度で卒業するという事もあり、何やら忙しいらしい。
一番重要なのは電話の悪魔についてだ。
あいつについてはさっぱり行方がわからない。僕が意識を取り戻して以来、一切連絡が来なくなったのだ。救世主としての力を封じた僕に用がなくなったのか、それとも何かしらの企みのために長期間潜伏しているのか。
メアリーという魔の中継点を失った事で、単純に連絡が取れなくなっただけかもしれないが……警戒するに越した事はないだろう。
「そうだね、去年は僕のせいでお祝いできなかったようなものだし。新年礼拝も毎年人が来ないんだし、1回くらいお休みしたって神様も怒らないだろうしね。2人きりで一緒に過ごそうか」
「ほんとっ?ありがとう律くん!ふへへ、楽しみだなぁ……」
まあそもそも可愛いお姫様からの提案なのだから、断るという選択肢自体あまり持ち合わせてはいない。
僕にとっての愛しい人。全ての始まりの夜、あの時彼女と出会えて本当に良かったと、今更ながらに実感する。
「それで、なにか準備が必要?」
「ううん、特別な準備は必要なくてね、一般的な年越しと、お正月を一緒に過ごしたいなーって。ほら、わたしって吸血鬼だった時は初日の出なんて絶対お目にかかれなかった訳だから……」
100年近く昼の世界で生きれなかったメアリーにとって、たとえ一般行事であっても参加できないものが多かった為に、大切していきたいのだろう。
「なら、ちゃんと年越しできるように、大掃除頑張ろうか」
「そうだね、おそうじがんばろー!」
笑顔になったメアリーが、箒を片手に廊下を駆けていく。
さて、僕も早くサロンの掃除を終わらせようか。
そうして年越しの予定を決めた僕たちは、その予定を守るべく再び大掃除へ集中していくのであった。
──────────────────────────────────────────────────
そして来る12月31日の夜、年越し蕎麦を食べ終えた僕とメアリーは、いつものように温室に赴いていた。
いつもは対面に座って会話をしているが、今日はどちらともなく隣同士で座り合い、手を繋いでいる
なんとなく、お互いがそうしたい気分だった。
「今夜はいっとう、いい夜だね──もちろん、あの時よりも」
もう間も無く新年を迎える時間に、しみじみとした口調でメアリーが呟く。
あの時──去年メアリーが死を覚悟した時のやり取りを思い出す。
メアリーも思い出しているのだろう。
あの時の出来事がなければ今の僕たちは存在していない。
あの夜を乗り越えたおかげで、メアリーは普通の女の子へ戻ることができ、僕は闇の王子様の力を抑え込めることができた。
「どうして、そう思うの?」
あえて僕は、あの時と同じ質問で返す。メアリーの心境が知りたかったのもあるけど、どういう返事をしてくれるかがとても興味があったからだ。
「律くんが隣にいてくれるから」
見惚れるような笑顔でメアリーはそう言った。
「もう物語はおしまい──ってつもりだったわたしに、新しい物語を紡いでくれた、そんな律くんが隣に居てくれるから、今夜はいっとう、いい夜なんだよ」
「だから、ありがとう。こんなわたしを救ってくれて。そして──」
繋いで手の指を絡めて、胸元へ持っていくメアリー。
僕の手は彼女の両手に包まれ、彼女の胸へと置かれていた。
「愛しています」
そうして彼女はとびきりの笑顔でそう言った。
僕を愛していると言ってくれたメアリー。
ならば、あの時誓えなかった文句を、今度は僕から切り出そう。
「病める時も、健やかなる時も──」
唐突に僕が切り出した文句に、少し驚いた表情をしたメアリー。けどすぐ穏やかな笑顔へと変わり、僕に続いて文句をいう。
「富める時も、貧しき時も、互いに敬い、慰め、助け、支え」
「幸も、悩みも、喜びも、苦しみも、ともにし」
「死が2人をわかつまで、変わらぬ愛を」
「誓います」
僕たちは同時に、その誓いを口にした。
「律くん……」
「メアリー……」
湧き上がる感情そのままに、僕らは身体を抱きしめあっていた。
………………
…………
……
そうして少し時間が経った頃、午前0時を告げる鐘が教会の方から響き渡る。
「あけましておめでとう、メアリー」
「あけましておめでとうだね、律くん」
お互いの体温を感じながら新年の挨拶をする。鼻をくすぐるメアリーの香りが、欲情を刺激してくるのを気合いで抑え、くすぐったそうな笑顔を浮かべるメアリーを抱きしめながら彼女の髪を撫でつける。
ゆっくりと流れる、穏やかな空気。
体に伝わるメアリーの温もり。
心地よく聞こえるメアリーの声。
けれど、あの時とは違う。今後、ずっと聴き続けられるもの。聞いていたいモノ。
今ここに彼女がここにいるだけで、嬉しい感情が湧き上がってくる。
「んふぅ……」
腕の中でメアリーがもぞりと動く。彼女は僕の首筋へと顔をうずめと匂いを嗅いでいた。その感触をくすぐったく感じながらも、彼女がこんなにも好いてくれる事への嬉しさが募った。
「律くんの匂い……わたし大好きだなぁ。いつまでも、ずっと嗅いでいたくなるよ……」
「僕も、メアリーの匂い好きだよ。おひさまの香りがして、すごく落ち着くんだ」
「にへへ……お揃いだね?」
彼女と啄むようなキスをする。これ以上は僕の理性の限界だった。
「律くん……いいよ。わたしもしたくなっちゃったから……しよ?」
瞳を潤わせたメアリーに誘われるまま、今度はディープなキスをする。積極的に舌を絡めてくる彼女に驚きながら、負けじと唾液を啜り、舌を絡めていく。
「あむっ……んっ……んぁ……」
互いが互いを高め合い、行為がエスカレートしていく。
こうなるともう、止まることなどできなかった。しかし、メアリーが僕のモノを探ろうとした手を止める。
「……ダメ?」
「やるなら部屋で、ね?」
「なら、今夜は──朝まで付き合ってくれるんだよね?」
あの時と同じセリフを、今度は違う状況で、くすりと笑いながらメアリーが腕を絡めてくる。
「もちろん──今度こそ、最後までずっと一緒だ」
僕とメアリーは温室を後にした。
この後行われるであろう行為を、互いに期待しながら。