第2部終章が終わった後──第3部についての嘘予告。

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※注意/警告※


 本作は、Fate/GrandOrder第2部終章に関する致命的なネタバレを前提にした妄想二次創作です。


 終章未クリアの人は読まないでください。



Fate / Codes Order

 

 

 

 開位(コーズ)祭位(フェス)より下の階位。

 冠位指定(グランドオーダー)と比べれば遥かに格下ということ。

 

 

 


 

 

 

 デイビット・ゼム・ヴォイドは覚えている。

 彼に忘却という機能は無い。

 

 

 汎人類史はすべての異聞と決別した。7つではなく()()()とだ。

 デイビットにとって讃えるべき偉業だが、当の勇者はそれを覚えていない。……いや、忘れていることは構わないのだ。本人たちは覚悟の上でそうしたのだから。思い出して欲しい、などという感傷は湧かなかった。

 ただ、リスク管理という観点の問題は残る。最大の当事者たちは、『すべて解決したのかどうか』を評価不能になってしまった。これは断片(デイ)()時間(ット)を費やすに足る──他の誰にも担いがたい──(オー)(ダー)だろう。

 

 

 

 まず、手近なところから確認を始めた。時計塔の関係者だ。

 クリプターもカルデアスタッフも大部分はここに含まれるため、彼らが『この汎人類史にも存在・生存していること』は確かめ易い。とりわけ天体科の若きロードに関してはわざわざ確かめるまでもなく耳に届いた。相変わらずの天才ぶりで結構なことである。

 

 ゴルドルフ・ムジークあたりは『ある日を境に急に立派になった』などという評価も漏れ聞こえたが、記憶があるとは考えにくかったし、仮にあったとしても問題無いというのがデイビットの立場だ。

 ゴルドルフは生きており、そして『人理継続保障機関カルデアの新所長』などといった異聞の役職に就いていないという事実がある。それで充分と考えた。

 もちろん、顔や名前や役職といった要素(そとがわ)から分からないことは数え切れない。しかし知り得ぬ要素(なかみ)の存在など(デイビットにとっては特に)当然の日常である。

 

 

 それから、日本に飛んだ。

 魔術世界となんの関わりも無かった一般人。『どこにでもいる』という有り触れた特異性から最高のマスターとなった“後輩”。顔と名前だけを手がかりに探すのはそこそこに骨が折れたものの、最終的には生存を確認できた。

 デイビットの知る姿に比べてやや幼く、危機感の欠片も無いように見えるが……それは自然で妥当な変化なのだろう。

 一度だけ睡眠中に接触し、魔術的な要素が身体に残っていないかは念入りに確認した。令呪も魔術刻印も存在しない。というか、こんな貧弱な魔術回路で戦っていたのかと今さらに驚く。

 

 

 

 その英雄の生存を確めた後。デイビットは最後に、最大の懸案事項に目を向けた。

 結果的に後回しになった理由は、ひとつには早い段階でマリスビリー・アニムスフィアの死亡を確認できたからである。

 彼は2004年に死んでいる。遺体も刻印も回収済みで、偽装の可能性は限りなく低い。場所も時期も複数の証拠から明らかだ。

 

 冬木の聖杯戦争──その、第5次とされるもの。

 この調査には時間も手間もかかる。そう考えて、デイビットは他を先に済ませたのだった。

 

 この判断は、後から振り返れば間違いだったのかも知れない。

 

 


 

 

 デイビットの知っていた『冬木の聖杯戦争』は、マリスビリーが参戦し勝利した回が初回であった。そういう記憶しかない。つまり、マリスビリーが敷いた異聞の中でしか具体的な情報を得なかったのだろう。

 

 以前から違和感はあったのだ。都合が良すぎると。

 万能の願望機を生み出すなどという前例の無い大儀式は、どうしても実験的な試みを含むものである。初回から全てつつがなく進行するような例は稀だ。そんなレアケースを実現するほどに主体の御三家が完璧であったなら、外様に過ぎないマリスビリーが勝利したことが不自然となる。

 汎人類史に戻ってみれば、本来の(アニムスフィア異聞によって書き換えられる前の)聖杯戦争は自然な経過を辿っている。

 手探りで始めた後から新事実が発覚したり、ルール無用の殺し合いで全参加者が共倒れになったり、システムを整えてみればなんとも言い切れない有耶無耶な結果に終わったり……これでこそ人の営みと言えよう。

 

 こうした歴史を踏まえ、第5次と数えられる聖杯戦争は2004年。マリスビリーはこの時期に冬木に赴き、かなり早い段階で斃れている。

 改めて調べても、死亡自体は確かな事実だ。

 ただし詳しい状況については諸々の秘匿や情報工作のせいではっきりしない。彼が令呪を得たのかどうか。サーヴァントを喚んだか否か。

 

 確認できた事実は、むしろ厄介なもの。

 この世界においてもマリスビリーは召喚の触媒として『10の指輪』を用意しており、それを冬木に持ち込み、そしてそれらは全て未回収・行方不明である──。

 

 

 それは明確なリスク因子だったから、デイビットは更なる調査に乗り出した。

 

 とはいえ多くの情報を持っていそうなロード・エルメロイⅡ世とは面識が無い。特異点Xに端を発する異聞において、彼はウェイバー・ベルベットに過ぎなかった。面識があったところで異聞の記憶は無いのだから、デイビットが協力を求めるには不適格だが。

 キリシュタリア・ヴォーダイムであれば、記憶は無くとも大きな力になってくれるだろう。しかしひとまず却下した。彼が関与すると話が一気に大きくなり、核心にまで迫り過ぎてしまう。

 

 まだ問題が生じているとはっきりしたわけではない。予備調査の現段階では他の適格者がいる。

 今を生きる人類がみな忘れているというなら、()()以外(﹅﹅)に頼れば良いのだ。本人が隠棲しているつもりでも、魔術師にとっては探しうる対象である。

 

 

「芥ヒナコ。協力を要請する」

「はぁ?」

 

 星の触覚。本質的にガイアに属する彼女であれば、少なくとも『何らかの書き換えが行われ、あるいはそれが消去された』程度の欠落は把握しているはずだ。実際、この歴史においては名乗っていないはずの偽名で呼びかけられてもきちんと反応したし──、

 

「デイビット? ……そう、覚えてるのね。あんたなら、そうか」

 

──デイビットのことも既知であるらしい。

 決して好意的な態度ではないが些細なことだ。個人的な事情などを説明しなくて済む。

 

「ならば前提は省略する。冬木という地の霊脈について情報が欲しい」

「なんで私がそんな手間を割くのよ?」

 

 突き放すような物言いも、むしろ知己に再会した際の『お約束』のようなものかも知れない。デイビットには慣れぬやり取りだが、そうした文化があることは承知していた。

 

 

「“後輩”のその後はお前も気がかりだろう」

「……あんたのそういうところが気に入らないのよ」

 

 


 

 

 精霊種の知覚を通せば、霊脈が関わった事象を知るのは容易い。

 

 アルトリア・ペンドラゴン。

 クー・フーリン。

 エミヤ。

 メドゥーサ。

 メディア。

 佐々木小次郎(ならびに呪腕のハサン)。

 ヘラクレス。

 

 第5次において、ソロモンやゲーティアといった存在は喚ばれていない。

 あるいはその前も。

 

 アルトリア・ペンドラゴン。

 ディルムッド・オディナ。

 ギルガメッシュ。

 イスカンダル。

 ジル・ド・レェ。

 百貌のハサン。

 ランスロット。

 

 念のためと第4次に遡っても同様に、マリスビリーや異聞の影響などは見られなかった。

 ならばデイビットの懸念は杞憂であり、ここに『白紙化の解消および異聞との決別』は間違いなく達成されたのだと結論できよう。

 

 

 しかし、だとしても。

 

「マリスビリーは令呪を得るより前、サーヴァントも喚ばない内から他のマスターによって排除されたということか」

「…………」

 

 芥ヒナコは返答を避けた。焦燥を隠すこともなく、冬木の霊脈を注意深く探る。下手に触れれば汚染されると分かっているのだ。

 第3次聖杯戦争にて召喚された汚濁は──罪であれと願われたモノは──今も間違いなくそこにある。それは第4次でも溢れ出したし、第5次にいたっては初期の4日間に限りカタチを得ていた。

 

 そして、その4日の間にマリスビリーは死んだのだ。繰り返し死に続けた、とも言える。精霊種といえど、その閉じた揺り籠の内側までは知り得ないが……逆にいえば、芥ヒナコにも発見できなかった指輪はきっとそこにある

 

 

 

 人殺ししか能の無い復讐者の手に、10個揃った奇跡の指輪。

 この穢れた杯が、大人しく解体されるなど楽観が過ぎるというものだ。()()()内側(なかみ)無限(アンリミテッ)(ド・レ)残骸(イズ・デッド)に満たされ、それら1つ1つは魔術王の生み出した柱の使い魔である。憐憫の理はその獣性(あい)を汚染され、生粋の人類たる反英雄の使役からは逃れられない。

 

 

 ここに第3の使命(オーダー)は確定した。

 冠位というほどのことではない。失敗したところで滅ぶのは人類だけだからだ。宇宙にも惑星にも野生生物にも、さしたる影響は及ばない。

 敵は王ではない。異聞世界でも根源でもない。ただの人だ。ただし死なない限りは止まらない。本人の望み故ではなく、そのように望まれた故に。人類がそう望む故に。

 

 

 人のために人を殺せ。罪を背負わされただけの悪を殺せ。

 矮小な独善に従って。それを人類的な善と信じて。

 

 それが新たなオーダー。星なき黒は、ニヤニヤと嗤いながらその達成を待っている。

 

『安心しなって。俺を殺すなんて簡単なことだし、なし遂げた後も今度は何一つ忘れやしないぜぇ?』

 

 


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