東方双神録   作:ぎんがぁ!

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“思い描いた光景を、ただ想い望んだが故に”

ではどうぞ。


Secret S 言えなかったこと

 

 

 

 ――ふとした瞬間に思い浮かぶのは、いつも同じ表情だった。

 底抜けに明るくて、子供のように無邪気で、でも何処か空虚さを感じさせる儚げな笑顔。

 

 愛おしい、と思った。それは自分に懐く小動物を愛でる気持ちにも似て、しかし人としての守護欲を掻き立てるようでもあったと思う。

 今となっては分からない。もしかしたら、ただ似た者同士だっただけなのかも知れない。

 だが、血に濡れたその姿を見たとき、引き摺り込まれそうになる程の虚無感を覚えたのは確かだ。

 

 守らなければならなかった。

 失ってはいけなかった。

 そしてその事に気が付いたのは、全てが終わった後だった。

 何故あの時身を任せてしまったのか。どうしてあの時止められなかったのか。もっと早くに気が付けば、こんな事にはならなかったのに。

 なんで。どうして。なぜ、なぜ、なぜ――……。

 

 繰り返す度に脳髄を刻んでいくような呪いの問い。それはいつまで経っても答えを導かず、そしていつまでだって心を苛む。これはきっと罰なのだろうと、随分前に、開き直ったけれど。

 

 ――思い浮かぶのは、いつも同じ表情。

 空っぽのくせして無邪気に笑う。

 今となっては、その綺麗な笑顔が怖くて仕方ないんだ。

 血に濡れたその瞳は、きっと怨嗟と呪いに濁っているのだろう、と。

 

 “後悔先に立たず”という諺を知っている。

 この言葉を詠んだ賢者曰く、終わったことを後悔しても、もう元には戻らないらしい。

 それを思い出す度、何か苛つきが込み上げてくる。

 そんな事は分かってるんだ。もう何もかもが遅い。後悔しても意味はない。ただ、心はそれに着いていかなくて――。

 

 その言葉が、惨めさと一緒に現実を叩きつけてくる。

 今更後悔しても遅いなら、今更それを諭す事にだって意味はない。言うも言われるも、どちらにしろ手遅れだというのに。

 ……どうにもならない現実。確定した真実。俺はそれらを

 

 

 

 ――心底、嫌悪する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――気が付いた時にはこの場所にいた、というのが正しいだろうか。

 何せどういう訳か、ここに来るより前の記憶が曖昧で、そもそもどうやってここに来たのかも覚えていない。

 地面を踏みしめて歩いた後の僅かな倦怠感すら、双也の足には一欠片だって残ってはいなかった。

 

「……どこだ、ここ?」

 

 次第に意識が覚醒してきた双也は、徐に周囲を見回した。

 木、木、木。そこは薄暗い森の中のようで、遅れて知覚した地面の感触も、何処か湿って柔らかい。

 魔法の森のようだな――と思った。日は殆ど差しておらず、目に入る光景の中には必ず一つ二つの担子菌類が傘を広げている。僅かに鼻腔を突く瘴気の臭いは、やはりまだ少しだけ慣れない。

 いや、しかし――と。

 双也はもう一度周囲を見回して、そして目を細めた。

 

「(本当に……魔法の森か?)」

 

 広がるのは、見たことのあるような木々だ。そこに生える植物も見たことがあるようなものばかりだし、空気の湿り気や瘴気の臭いだって嗅いだことのあるようなもの。――そう、ようなもの(・・・・・)ばかりで、何かしっくりとこない。

 魔法の森だけど魔法の森でない――そんな曖昧な気が、漠然としたのだ。

 

 兎に角、動き出さねば始まらない。

 埒の明かぬ現状になんとなく辟易した双也は、静かにそう決めて一歩を踏み出した。

 ここがどこであろうと、ジッとしていては何も解決しない。もしこれが妖怪の見せる幻術なのだとしたら正直、今の双也には手加減して懲らしめる事なんて出来そうになかった。

 なんと下らない幻術を、なんと悪いタイミングでかけてくるのか、と。

 

 定かではないその可能性に、しかし沸々と憤りを感じ始めながら――双也は、ふと背後に気配を感じた。

 反射的に振り返れば、

 

 

 

 ――白い袖の裾(・・・・・)が、ちらと木々の影に消えていった。

 

 

 

「ッ!? 待て――……」

 

 引き留めるその声は無意識で、そして予想も出来ないほど小さく弱かった。

 一瞬躊躇った(・・・・)自分に苦しげな舌打ち一つ、双也はすぐに後を追って駆け出す。

 

 見覚えがあった。故に本当は怖かった。仮に引き留める事に成功しても、きっと顔なんて合わせられないと分かっている。

 でも、それでも――。

 

「待ってくれ! ……おいッ!」

 

 その姿の影は、木々の間に現れては消えを繰り返す。後を追う双也は、何故かそれを捉えることができない。

 虚ろな森の中を右へ左へ、まるで導かれるようにその後を追う。

 景色は変わらない。いつまでもどこまでも木、木、木。追いかける事に必死だからか、次第に双也の意識も白濁としていく。しかしそれでも、ぼんやりとした使命感に背中を押され、我武者羅に後を追う。

 そうして、やっとその背中に手を伸ばして――空を切った手の先には、“七色の景色”が広がっていた。

 

「はぁ……はぁ……っ、ここは……」

 

 これも、見覚えがあった。

 足元には、淡い色を大空に向けて咲かせる小さな花々。それが延々と続き、双也の前に広がっている。

 広い花畑。そこは別に、毒のある鈴蘭が咲いているとか人形の妖怪がいるとか、そんな危険の存在する場所でもなく。

 ただただ広大に、赤や黄や橙や、様々な花が静かに風に揺られている。

 

「……なんで、ここに?」

 

 森の中と同様、双也の記憶には確かにこの場所の事が残ってはいるが、やはり何処か違う気がする。

 花達はとても美しく咲き誇っているが、あまりにも静か過ぎて、なんとなく“表面だけ”の光景に思えてしまう。

 その内側を覗く気には、残念ながら今はなれない。

 

「…………なんで、こんな時に……ここに……?」

 

 この光景を目の当たりにして、浮かび上がる情景はたった一つしかなかった。

 その情景にふと微笑みが溢れそうになるも、その何百倍もの後悔が全てを黒く塗り潰して殺し切る。

 この花畑は今の双也にとって――ただ、絶対の辛苦でしかなかった。

 

 

 

「ねぇ……また、ここで遊びたいわね」

 

 

 

 かけられた声に、振り返る。そこには当然声の主の姿はなく――ただ、辛うじて認識できる程度の小さな獣道が細々と続いていた。

 

「“今度はこっち”……か」

 

 そんな声を聞いた気がして、双也は小さく息を吐く。

 こっちの気も知らないで、お前はなんだ、遊んでるつもりか――と。

 一歩、双也は歩き出した。

 先程まで追いかけていた者の姿は、しかし今度は影も形もない。ただ導かれるように、そしてそれに対して双也は素直に、細い獣道を歩んでいく。

 

 やがて見えた開けた場所は、それとなく整備された“大通り”だった。

 

「ここは……人里への道だな」

 

 踏み慣らされた地面を見下ろし、双也はぽつりと呟く。

 ここは魔法の森と人里を繋いでいる大通り。かく言う双也も、人里に用があるときは必ずと言っていいほど通る道。

 ここに何かあるのか――そう思い、双也は徐に周囲を見回した。

 改めて言うまでもないが、感じる空気は初めから同じ。

 空気は熱くも冷たくもなく、風は何処か乾いたような大気を撫で付けてくるだけ。空は青いが不思議と大きいとは思えず、そっと手を伸ばせばすぐに天井へと付いてしまいそうな錯覚があった。

 そして、もう一つ――。

 

「……香霖堂」

 

 老舗感を漂わせる古い外観。外の世界のガラクタで溢れたその周囲は、双也の知るものとはやはり寸分だけ(・・・・)違う。

 何よりも人の――霖之助の気配が、全くしなかった。

 

「(出掛けてる……って訳でもなさそうだな。そもそも生活感自体が感じられない)」

 

 確かに香霖堂は訪れる人数は少ないし、店主である霖之助も客集めには執心していない。それは、この店がもともと趣味の為だけに建てられたものであり、商売自体には霖之助が無頓着だからだ。

 だが妙なのは――人が立ち入った形跡すらもない、という事。

 手っ取り早く言えば、霖之助が使った形跡さえ無い、という事だ。

 やはり、ここは幻想郷とは少しだけ違う――そう確信を得た、その時。

 

 

 

「あの頃は、こんな事になるなんてちっとも思ってなかったのにね……」

 

 

 

 耳に届いたその声に。

 聞き覚えのある鈴のような声音に。

 双也はしかし振り向きもせず、ただ、呟く。

 

「ああ……本当に、な……」

 

 双也の言葉に返事はなかった。ただ無機質な風が吹き抜けるだけで、どんなものも反応しない。

 でも、それで良かった――と。

 むしろ、この言葉に対した“予想される返答”に、どういった言葉で返せば良いのか双也には分からないのだ。

 

 一つ、意を決める。

 次に行くべき場所は、何となく目星がついていた。

 森の中、花畑、香霖堂――そう辿ったならば、終着点はきっと一つだけ。

 双也は未だに怖がる脚を無理矢理動かして、ゆっくり歩き出した。

 その拳を、無意識の内に握り締めて――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “罪悪感”――そう言えばまだ、聞こえはいい。

 実際はもっと泥臭く、卑劣で、何よりも血みどろな理由なのだと心の何処かで分かっていた。

 こうなってしまったのは、全部自分の所為。

 自分が弱かったばかりに、抑えられなかったばかりに、失ってはいけないものを失ってしまった。その喪失感はいっそ無慈悲なぐらいに痛く切なく、隙間風が吹き込むように冷たい。

 

 だが――それでも向き合わなければならない。

 

 双也は、もうボロボロになったその心を無理矢理に奮い立たせる。

 どんな言葉も受け入れてみせる。それでも許してもらえないのなら、その時は自害でも何でもすればいい。

 双也はそう心に決め――続いていた階段の最後の一段を、登り切った。

 

 広がっていたのは、薄紅色。

 視界を覆い尽くすかと思われる程の花びらが、陽に照らされて輝くように舞っていた。

 “博麗神社”――双也の前には、幻想的なまでに美しい光景が……しかし、心の何処かで思い描いていた情景に良く似た景色が、広がっていた。

 

 鳥居を抜けて庭へと上がると、本殿の前――正確には、賽銭箱の上に座る人影があった。

 白い袖。赤い袴。長く艶やかな黒髪は絹糸のように柔らかく揺れ、舞い散る桜に負けぬ程美しく輝いている。

 脚を投げ出しながら空を仰ぐその姿は、確かに――。

 

「…………柊華(・・)

 

 その声に、人影――博麗 柊華は徐に振り返る。何処か不思議そうだったその表情は、すぐに無邪気な微笑みを見せ、

 

「……あら、見つかっちゃったわね。最後はヒントとかあげたつもりなかったんだけど」

 

 よっ、と賽銭箱から飛び降りる柊華は、改めて双也に向き直って眩しく笑う。散桜に映えるその笑顔は、いっそ儚いとすら思える程透き通っていた。

 双也は――しかしそれを、見ていられない。

 

「ん? なによ、どうしたの?」

 

「………………」

 

 変わらないその笑顔を見るのが、認識してしまうのが、怖かった。

 許されないことをしたというのに、それでも相変わらず明るく優しく、無邪気な笑顔を向けてくる柊華。それは安心するよりもむしろ、その内側にあるであろうドス黒く淀んだ感情を浮き彫りにさせているようで、とても恐ろしい。

 あれだけまた会いたいと思っていたのに、いざとなればこれか――と、双也は強く下唇を噛みしめる。

 

「何かあった? 悲しいなら、慰めてあげようか?」

 

 飄々とした口調で、柊華は俯く双也を覗き込む。それでもやはり、双也は彼女の顔を見ることもできない。

 ――仕方なさそうに、息を吐く声が聞こえた。

 

「冗談よ。……ごめんね」

 

 肩にそっと手を乗せて、柊華の声は背後へと移動していく。

 かけられたその言葉に、双也はズキリと胸を痛めた。

 だって、なんで柊華が謝る? 謝らなければならないのはこちらだと言うのに。

 庭を散策するように歩く柊華へ、双也は振り返って口を開く。

 ただ、言葉だけは、放つこともできずに。

 

「…………っ、……」

 

「……ムリしなくていいわよ、双也」

 

「え……?」

 

「分かるもの。あなたがどれだけ痛い(・・)のか。……今の私は“こんな”だからね、きっと同じくらい……すごく痛いの」

 

 胸に手を当て、顔を顰めながらも笑顔を作る柊華に、双也は開きかけた口を閉じる。

 その様子を了解したのか、柊華は小さく頷いて、またゆっくりと庭を歩き回り始めた。

 

「――“なんでこんなところにいるのか”って、初めに思わなかった?」

 

「………………」

 

 花びらの舞う空を仰ぎ見て歩きながら。

 その言葉に、しかし字面ほど“疑問がある”とは思えぬ声音で。

 

「“ここは何処か幻想郷とは違う気がする”――って、思ったでしょ?」

 

 ちらとこちらを見遣り、そう断定する柊華は、まるで“それが正しい”とでも言うように微笑んでいた。

 はた、と立ち止まり、

 

「それはね――あなたが、後悔(・・)しているからよ」

 

 柊華の言葉に、双也はハッとした。

 思い当たる節はいくつもあったのだ。

 悲しみ、己に怒り、絶望して終に、後悔する。

 この(ごろ)はそれを繰り返してばかりで、双也の心は既に焼き切れそうになっていた。

 柊華の指摘は的を射ていて、それに何処か納得する自分も、双也は認識した。

 

「うん……それも分かるわ。だってこんなに切なくて、酷く痛い……」

 

「……柊華……お前は、何でこんなところに……?」

 

「…………それは、なんとなく分かってるんじゃない?」

 

 胸に手を添えた柊華は、双也の問い掛けに苦笑を漏らす。

 彼女の言う通りだった。なんとなく理由は分かっていた。だが、それを自らの口で語るのは、何処か烏滸がましい(・・・・・・)気がして、言葉には出来ない。

 それを察したのか、柊華は双也の方へと歩み寄りながら、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。

 

「あなたが後悔して、ここに来て……だから私はここにいる。だって、そうでなきゃ始まらないでしょ?」

 

「………………」

 

「ここはね、そういう場所。あなたが望んだから、あなたはここにいる。あなたが望んだから――私は、ここにいるの」

 

 だからね――そう、聞こえた直後。

 双也のいつの間にか冷たくなった手は、柊華の暖かな手に包まれていた。

 

「言って、双也。あなたは今、どうしたいの? 私に……どうして欲しいの?」

 

 ――真っ直ぐだった。

 双也を見つめる柊華の瞳は、黒く澄んで、輝いていて、そしてどこまでも真っ直ぐで。

 まるで双也の心を見透かすように、自分の心を曝け出すように、しかしその中には、欠片の怨嗟だって篭っていない。

 

 “恐怖”が、揺れた。

 

「俺、は……」

 

「うん」

 

「………………」

 

 ――本当に、言っても良いのか?

 此の期に及んで未だに踏ん切りのつかない自分に腹が立つ。

 だが、それは未だに恐怖があるからなのだと何処かで分かっていた。

 柊華に対して負い目があるから。

 望む(・・)資格が無いのだと分かっているから。

 双也はそこで行き詰まる。言葉を紡げずに目を逸らす。

 

「……怖い?」

 

「………………」

 

「……そりゃそうよね。あなたが私を怖がるのも、普通のことだわ」

 

 僅かに諦観の篭ったようなその言葉を、双也は胸を突き刺されるが如き痛みと共に耐える。

 それを労わるようにか、はたまた彼女もそれを感じたのか――柊華は、ふらりと双也の胸に寄りかかった。

 そして、囁くような小さな声で。

 

「でもね、双也……分かって。私は、あなたの事を大親友だと思ってる。私を唯一救ってくれたのは、間違いなくあなたなの。あなたを救えるなら――死んだっていいって、思ってた」

 

「っ! お前、それ……」

 

「だから……お願い、双也……これ以上、私の為に、苦しまないで……」

 

「――ッ!」

 

 その声が、涙に濡れていたが故に。

 そしてその声に、どうしようもなく胸を締め付けられたように感じたが故に。

 双也は握られたままの手を強く握り返し、枯れそうな喉で、言葉を絞り出した。

 

「……柊華……許して欲しい……っ! 俺は、お前に、あんな――ッ!」

 

 自分勝手なのだと分かっている。

 都合がいいと分かっている。

 自分の失敗を棚に上げて、その皺寄せを一身に受けた者に対して、そう請うことのなんと浅はかなことか。

 自己嫌悪の渦に巻き込まれながら、しかし双也は必死で言葉を繰り出していた。

 ただ、赦されるならば、許してほしい――と。

 

「うん――ちゃんと、言えたね」

 

 言いながら見上げる柊華の瞳は、まだ潤んではいるものの確かに微笑んでいた。

 その露を、指で掬い払いながら、

 

「私は欠片(・・)だから、あんまりはっきりとしたことは言えないんだけれどね――」

 

 いつの間にか双也の頰にも伝っていた雫を、離れ際に掬い取って、柊華はまた境内の方へとゆっくり歩いて行く。

 その一歩を踏み出す度に、舞い散る桜が、吹き荒れていく気がした。

 

「双也。私のことは、きっとあなたが一番よく分かってる。私がどんな事を考えて、どんな事を思うのか……わざわざこんな所に来なくても、本当は分かっていたはず」

 

 柊華の言葉はどこまでも確信に満ち溢れていた。

 自らが大親友と言って憚らない者の事を、私だってよく分かっているのだから――と、公言するように。

 

 

 

「ただ――さっきの言葉を、私に言えなかった事が、心残りだったんだよね」

 

 

 

 そして、そう――双也の心を見透かすように。

 

「分かるはずよ。分からない訳がない。博麗 柊華という人間が、どんな応えを返すのか」

 

「許して……くれる、のか?」

 

「さぁて、それはあなたが考える事。初めに言ったわ、ここは“そういう場所”だって。あなたの望みを叶える為に、ここにいるんだって、ね」

 

 柊華は、そう言って微笑んだ。

 今までだって見た事がないくらい心の籠もった、優しく暖かく、何より美しい笑顔だった。

 それに見惚れていたからか、ふと気が付けば、周囲の景色は白と桜色に染め上げられて、視界に映るのは古びた神社と彼女のみ。

 

 柊華も周囲を見回して、呟くように言った。

 

「もう時間か……。案外早いものね」

 

 そして、変わらぬ微笑みのまま双也を見て、

 

「もう、ここに来ることが無いようにね、双也。それはあなたが後悔してるって事なんだから。大丈夫、他でもないこの(・・)私が、護ってあげるからさっ」

 

「柊華……ありがとう、な」

 

「うん」

 

 視界が白に消えていく。

 最早境内すらも消え失せて、目の前には優しげに微笑む柊華の姿だけがあった。

 意識すらも白み始めた最後の視界の中で、微かに見えた、柊華の口元――

 

「――……」

 

 その言葉に、双也は無意識に、言葉を返す。

 

「ああ――俺もだ」

 

 心地良い光に包まれながら、双也の意識は、白光に消え失せたのだった。

 

 また、先へと進むために――。

 

 

 

 




Plus story含め、これで全てお終いです。ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

ではでは。
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