スキル「コンティニュー」を持った、TS提督が艦これ世界で無双してみた 作:木村スバル
シミュレーション仮説は二次元世界においては定説であるという、私の予感はかなり実感に近いのではないかと思う。
良き友よ。
ああ、私はわかっている。
この戦は負け戦である、と。
始まる前から悪い予感はしていた。
どこかの記事で、イージス艦は、零戦百機に勝てるか? みたいなのを読んだのを今更思い出した。
もうわかる。勝てるわけがないというのが結論で。
目の当たりにすればわかる。
武蔵対曙って感じ。(いや、艦娘の話ではなく……)
あの電波ホーミング誘導(?)の強いこと強いこと。
他の鎮守府からも、艦隊が二つほど集まってきていたが、航空戦力がバカバカしいほどに破られていくのが恐ろしかった。
航空戦艦が二つほど轟沈した。それから、駆逐艦が八隻ほど、海に沈んだ。
それから、大和の土手っ腹に、敵の主砲の砲撃が当たる。
怖いほど、当たる。
大和の主砲を撃つまでの時間が鬱陶しい。魚雷を撃つも、精度が低すぎる。
やっぱり、戦艦なんて使うんじゃなかったなぁ……。
私の戦艦嫌いは根っからだ。
ぽつりと、雨が振ってきた。
悪天候、天気の具合は次第に悪くなり、眼前が曇って見えなくなるような、雨脚をともなって、甲板を叩いた。
雨は、静かに……、海上を濡らした。
爆音が、私の乗っている船体を直撃した。
そして、艦橋の硝子の破片が飛び散り、右腕が赤に染まった。
〈コンティニューしますか?〉
▶はい
いいえ
(なんだこれ?)
〈コンティニューしますか?〉
はい
▶いいえ
〈ちょっと待ちなさい。本当にそれでいいのですか?〉
(――あなたは誰ですか、私は、まだ生きていていいのでしょうか?)
〈コンティニューしますか?〉
▶はい
いいえ
押しが強いなぁ……。
まぁ、しょうがない。行けるところまで、やってみるか。。
点滅する、やじるし。
私は、息を吸った。
そして、吐いた。
目まぐるしく、外界が変わる。
目を開けると床の間に居た。
困惑気味の、日めくりカレンダーは九月六日。
出港した時は九月八日の未明だった。
今は……、昼の十二時半である。
私は佐世保鎮守府の茶の間で、憤りを隠せなかった。
そして、大本営に怒りの電話をかけた。
「自衛隊のイージス艦など、勝てようはずがない! 大体、あいつらはこちらが侵攻しなければ、攻撃してこないだろうが!」
◆◆◆
雪がちらついていた。シロエは
白いマントをはためかせながら、雪中戦の厳しさを痛感していた。
吹雪いている。
風で飛んでくる雪化粧には、全くと行っていいほど人間への慈悲などは存在しなかった。
眉毛に氷雪がつく。
自然の凄まじい猛威にさらされ、数分と目を開けていられない。
フードを深く被る陸軍兵士たちの目には、その尋常ならざる意志がみなぎっていた。
第七師団、第二旅団、第一歩兵連隊は、戦車をともなって進軍を開始した。
雪は、戦車のキャタピラの音をも、静かに吸い取ったが、さすがに砲撃の音までは隠せず、その熱に戦車に積もった雪片が、水のように溶けた。
その溶けた雪が、車体を滴って薄く煤けた斜面に一筋の線を作った。
涙のようである。
外套に深く顔を隠した陸軍の男たちが、あとからあとから、身を低くして、九五式歩兵銃を手に敵兵に狙いをつけるともなく、「斉射!」の声とともに発砲を始める。
シロエは、戦場が戦慄いている音を聞いていた。
展開する魔法は、攻撃魔法一択。
なぜならば、このワールドの異世界人にHP、MPという概念はなく、ただ人の肉体のみで戦っているからだ。マナコントローラーであるシロエは、局地的な戦い方を必然として迫られる。
「ソーンバインド・ホステージ!」
彼は虚無感を覚えていた。
戦場というものに立つことが、悲惨である理由。
楽しいはずがない。こんなものが楽しいと嬉しそうにしていた、ダイホンエイのあいつらは。
まともな精神であるならばこんな場所には、二度と立っていたくない、と彼は思う。
――PvPというのならば、まだマシだが。
高官たちが馬上から斬り下ろしたサーベルは、氷の刀のように、人を蔑ろにした。
白の中を血の色がぱっと花咲くように散った。
シロエは思わず、目をつぶった。
雪原は誰をも許容しなかった。
そこに立つ付与術士ですら、それは例外ではなかった。
シラカンバの木々が、この夏の日に目を突き刺すように立っている。
その、木々木々の中で、敵――同じ人間であるというのに――、はやはりこちらと同じように、同じように銃を向けてくるのだ。
シロエが〈思慮する木菟の杖〉を掲げる。
銀色の霧が、眼前を覆う。それには敵の注意を逸らす意図があったが、結局のところ彼はその目で戦場を確認したくはなかった。
人が死ぬのをもう見たくはなかった。
流れ弾にあたって、横で人が死ぬのだけは勘弁してほしかった。
だが、完璧な戦争など存在しない。
そんなものが存在するのなら、きっと脇方はそれは全滅だと言うだろうし、私であればこの戦いに意味はないというだろう。
(人が死ぬ。守りきれない、とは言えない……)
この一個大隊の数五百名を、MPの尽き果てるまで、彼は守り抜くと決めた。
少しの焦りがあった。
敵は、鏡面のように存在していた。
どこか違和感があった。
それは、代わり映えしない日常がそこに存在しているように、どこかふと我に返ると気づく。
この戦場で、戦場を俯瞰することができる者など、彼を置いて存在しなかった。
この敵は、幻術だ。