呆れ果てたことに、高橋圭一は――
この世界で「無双する術」を知っていた。

在中戦場などという言葉は、ただの建前だ。
現実の戦争はもっと生々しく、もっと理不尽で、
そして何より「悪」そのものだった。

私は高橋圭一。
体は男だが、精神は女性。
それがこの世界で与えられた名前であり、立場であり、逃れられない現実だった。

かつて私は戦争を知り、
中尉から提督へ、提督から大将へと駆け上がり、
スパイと呼ばれ、捕虜となり、
そして――悪として生き延びた。

目を覚ますと、私は大日本帝國海軍の中尉として、
佐世保鎮守府に立っていた。

九四式水上偵察機のエンジン音。
軍服の重み。
肩章が示す階級。
違和感はあったが、理解は早かった。

ここは「艦娘」が存在する世界。
艦艇が少女の姿をとり、
人類の敵と戦う――あの艦隊これくしょんの世界だ。

鳳翔、赤城。
かつてゲームでしか知らなかった艦娘たちが、
今は確かな体温と感情をもって、私の前に立っている。

そして告げられる。
――明日から、戦闘が始まる。

休息を勧められても、私は動じない。
なぜなら私は知っているからだ。
この世界の戦争が、
「可愛い艦娘たちの物語」では終わらないことを。

死は遠く北極の果てにあり、
同時に、死は近く――艦娘たちの中にある。

これは、
一人の人間が、
一人の提督が、
そして一つの「悪」が、
再び戦争の渦中へと身を投じていく物語。

平和の中では理解されない、
だが確かに存在する「戦争」という実態を、
私は再び、生きることになる。

――これは物語である。
同時に、これは戦争だ。
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