スキル「コンティニュー」を持った、TS提督が艦これ世界で無双してみた 作:木村スバル
俺はボートに乗り、浜辺に碇泊している雪風へと乗り込んだ。
あの低地から、浜までは歩いてしばらくかかったが、私とすれ違う者はいなかった。
私が一人で陸に上ることは、最初、妖精さんに止められた。
残りの駆逐艦と軽巡洋艦を沖に見えないように碇泊させ、なにかもしものことがあったら
、すぐに駆けつけるように言いつけ、おろおろしている妖精さんたちを差し置いて、上陸した。
そして一人で暗殺をなした。
なにをしたのかは、他のものには一切口を開かなかった。
ただ雪風艦内の司令室で、ベッドにうずくまって、俺は艦艇の海上に走り去る音を聞いていた。
久々に刀を使った。
血を拭いた打刀は、刀台の上に置いてある。
私の憂慮は、人を殺したことだけではなかった。戦争がはじまることだけでもなかった。
――ただ、私の記憶が曖昧である。
私のもつれた過去が、この世界の架空の過去と融和し始めている。
それは、私が「キャラ」になっていくことの証。
なにが、私を認めたのか、なにが、過去を変えているのかはわからない。
ただ、この戦争を起こした憎しみを、そのことによって、癒やされたくなくて、私は唇を噛み締めた。
よくあるじゃないか。ボケは、人間が死ぬための、準備段階であると。
だから、私は私の頭をなぐった。
「高橋、しっかりしろ。人が死ぬのをこの目で見届けろ。お前は、売国奴だ……!」
作者とキャラとの戦争になる。それは、誰の目で見ても明らかで、私はどの立ち位置にいても良かったのだが、それはどうしょうもなく足がすくんだ。
私は、作者であり、作者を憎む者。
なぜ? と問われるならば、こう返そう。
私が永遠に書けない作家だからだ。
永遠に答えを問われ続ける、終わりのない創作活動を、まんじゅう的に増やし続ける人類に鉄槌を。
――ああ、神様。この世に答えがあるのならば聞きたい。私の創作活動は、なんのために行われ続けているのでしょうか?
戦争犯罪人とは、なるべくして起こった戦争の、賠償を罪に問われるもの。
そして、それが大きな戦争であればあるほど、負けた者の憎しみは大きいと。
ぐちゃぐちゃになって、よくわからない脳みそに神がささやく。
「殺せ、そして戦争をはじめよう」
何が、神だ。私はそれを、神とは認めたくなかったし、私は神を愛していなかった。
軍配を持った神は、おそらく私に微笑み続けていたが、その担保が、いつになって効果を失うかが、私には手に取るようにわかった。
それは、私がこの戦争で死ぬときである。
死ぬ前になって、ベットしたコインをすべて失うギャンブラーのように、目の前が真っ暗になる。そして、私はあがきながら死ぬのだ。
私はなるべく、船に乗っていようと決めた。
陸では死にたくない。そして、艦娘と同じく、最後を共にしたい。
例えば君。君自身が生まれた時から、他人に描かれた存在であったらどうする?
絶望に陥る? 運命があると確信する? それとも、泣く?
それは、その波乱の人生を、作者が与えたという事実に、叱責を隠し得ないであろう。
作者とはなにか?
君を形作った人物だ。
その人物は、いかにも高慢である。
――そう、私のように。
私は、今後一切地球から転生してきた存在である、ということを隠して生きていかねばならない。異世界戦争は、こうして始まった。
◆◆◆
ゆっくりと船が停まる音がした。
船体が左右に揺れ、ブレーキがかかる。
ぱちり、と目が覚めた。
そして、私は陸に着いたのだと、知った。
山伝いから湾岸部にかけての、稜線。海鳥が飛び回っている青い空。
雪風のリノリウム甲板で、俺は外套を脱いだ。
その必要なくなった、わずかに血のついた外套を、俺は海に流した。
息はしているけれども、していないような、空気の薄さと生きていることへの申し訳なさに、私は頭を垂れて、その流れていく潮流を見下ろすより他なかった。
二次元にあまりにも長くいすぎてしまった。
この世界にあまりにも馴染みすぎてしまった。
あの丘の上や、海上や、市街地を見慣れすぎてしまった。
雪風が、後ろから駆けてやって来て、私の袖元にしがみついた。
私は驚きはしなかったものの、わずかに照れて、雪風の体を抱いた。
「雪風、私は馬鹿だろうか?」
「司令は、馬鹿なんかじゃありません! 雪風が知っています」
「雪風はなんでも知っているな」
「そうです! 雪風は、司令のことならなんでも知りたいんですっ」
「じゃあ一つ、悩みを相談してもいいか」
「なんでもどうぞ!」
「なぜ嬉しいのか、なぜ苦しいのか、なぜ気が狂いそうなのか、わからない」
「しれえ?」
雪風は、私のおでこに小さな手を当てた。
「大丈夫ですか? メンテナンスが必要ですか?」
「私は、艦娘ではないから、メンテナンスは受けられないんだ」
「そうですか……」と、雪風は小さくつぶやいた。
「死にたくなるときがあるんだ」
というと、彼女は困った顔で、笑った。
「司令、死なないでください……。雪風が一緒にいるから。雪風が死にませんから、司令も死なないでください!」
「わかった。約束はできないけれど……。私は、雪風がいるなら死なないよ」
私は、雪風の背中を押した。
そして、艦から続々と下りてくる、駆逐艦や軽巡洋艦たちに彼女が混じって、嬉しそうに笑うのを遠くから見つめていた。
私は小さく、軍歌を口ずさんだ。それは、愛国精神を昂揚するための物であったが、私にとってそれは、どこかに置いてきた墓標のように思えたのだった。
死を埋葬する軍歌は、それそのものが、死という性質を帯びているように思える。
さあ、問題はここからだ。
脇方が呼んでいる。
報告書になんと記そう。
私は精一杯の頭を回した。とりあえず、作者が敵であったということは、言わねばならんな。私が、作者である、ということも隠し通さねばならん。
それと、これからの戦争について、考えなければならないだろう。
それから、もう一つは、艦娘の戦意高揚である。