テレビでニュースがやってる。
なにやらどこかの監獄の中で「プチ脱走」があったらしい。
どうも屋外で作業をしていた囚人が唐突に走り出して、すわ荒事かと色めき立つ看守たちと鬼ごっこをしたのだという。それも一時間少々。
でも刑務所敷地内のことだし、けが人もなし、そうした囚人も、理由は「なんとなく」だそうだから、「プチ」なんだと。
ふーんって思いながら夕ご飯を食べきる。楽しかったのかな。
お母さんとお父さんにおやすみって言って、自分の部屋でアイマスクをつけて寝る。
はみがきはしたんだっけ。
ふと目を覚ますと窓の外はまだ暗い。暗闇の中、ぼんやりとした時計を眺めるとたぶん3時くらい。
なんとなく、パジャマのまま、きのみきのまま、外に出る。アイマスクは額の上。
どこにいこうかな。最近は行ってないちょっとだけ遠いブックオフがいいかな。そうしよう。
歩く。くつははいたかな。
早めに寝たし、早めに起きたのにすごく眠い。なんとなく目を閉じて、また開くと、歩いていて、気分がいい。寒くはない。なんだか暖かい。
歩いてると考える。
ブックオフはやめようかな。やっぱり遠いしな。でもな。また目を閉じる。
そういえばいまやってるのかな。そういえばやってないかもな。また目を開ける。
でももう半ばくらいにはきてるしな。あれでもこっちであってたっけ。
閉じて
開けて
閉じて
開けて
夜の街はいつもと違う、なんていうけど別にそんなことはない。いつもの街、いつもの景色、いつもの自分、いつもの地元。人はいないけど。いつかは違った気もするけど。
徘徊老人、なんて言葉がよぎる。こんな気持ちなのかな。思ったよりも気分のいいものらしい。
なんとなく、足を止める。なんだかめんどうだな。それに眠い。ああでも、止まるなら帰らなくちゃ。ここからどうやって帰ろう。もうずっと遠いのに。
周りを見渡す。アイマスクをおろす。
何かを言われた気がする。ぼんやり。
横に家が見える。あれ、ならアイマスクは額の上?
車の中だ。横にハンドルを握ってるお姉さんがいる。
なんか、夜はあぶないとか、魔法少女のつとめがどうとか。魔法少女がいるのって聞いたら困らせちゃった。冗談だったらしい。
たぶん道のまん中で立ってたから心配してくれたんだと思う。いいひとだ。
クルマに乗った覚えはないけど、ねむかったから、そういうこともあると思う。
家に入った気がする。お姉さんはまだなにか話してたような。お父さんにもお母さんにも今日はまだ会ってない。まだ夜だ。
おしまい。