わたしが主人公の2次創作なんて…ムリムリ!(※ムリじゃなかった⁉︎)   作:れな悪教徒

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 第1エピソード〜『いつかあの子は輝いて』〜始まります。

 物語時系列は3巻前、夏休み初頭の何もない期間で設定しています。
 おそらく5話構成。
 まいあじは出ません(!?)
 …れな子が攻略完了しないと原作に干渉しちゃうからね。
 ……しょうがないね?


『いつかあの子は輝いて』プロローグ

 

 

 『黄色い線の内側に立って───。』

 

 眺めていたスマホの画面から目線を上げて。

 わたし……甘織れな子は、忙しなく文字が走る電光掲示板へと顔を向けた。

 

 季節は──夏。

 

 担任のみちる先生が直々に声をかけてくれた『夏のすたでぃデイ!!!!』と言う名の自習室…。

 じゃなくて…お勉強会!に参加するため。

 わたしはこうして、夏休みにも関わらず。

 空焼く太陽の下で、電車を待っているのだ。

 

 

 ……うぅ、朝陽がまぶしい…。

 思わず目を細めて視線を下げる。

 

「あれ? あの人。」

 

 そんなわたしの視線の先に、パンツスーツに身を包んだ灰色の髪のおねえさんが写り込む。

 家を出る時間が近いのか、毎朝見かける彼女は。

 いつも『バリキャリ!』って感じで、シワひとつないスーツを綺麗なポニーテールでキメて。

 背中を真っ直ぐに伸ばして歩いているのだが……()()()()()()

 

 ストレートに降ろされた灰色の髪。

 

 重力に逆らって横跳ねする寝癖がイヤに目立ち。

 背筋を丸く腰掛けたまま、目的地を失った視線が、ボーッと通り過ぎる電車に向けられている。

 

 

 ───大丈夫かな…。

 

 なんというか、心配になる。

 わたしも前はあんな目をしていた…と思う。

 誰かを恨むのは筋違いだってわかってて。

 おんなじような毎日を過ごすしかない。

 そんな諦観に染まりきった瞳を。

 

 だからなのかはわからないけれど。

 気づいた時にはもう遅く。

 

 わたしの身体は、勝手にそのおねえさんの方へと向かっていた。

 

「あ、あの!

 

 ふらふらと、何かに吸い込まれるように立ち上がった彼女の腕を掴む。

 

 くすんだエメラルドの瞳。

 冷たい氷の様な視線が、まるで重力を横薙ぎにしたみたいにわたしを押し返してくるけど…紗月さんと比べればこんなの怖くない! 

 

「……。」

 

 うぐ…いや、でも。やっぱりちょっと怖い⁉︎

 

「あの、エト。そのぅ…」

 

 口元をもごもごしながら、視線を彷徨わせる。

 

 掴んじゃった以上は何か言わなきゃ……え? でも、何を……。

 

 ──話題! 話題を探すんだわたし! 

 

 そんなこんなで、脳内のタンスをひっくり返し。

 ただでさえ少ない話題ストックから、一枚の紙をババーンと引き抜いたミニれな子から、それを奪い取ったわたしは──。

 

 その内容を精査することもなく口にした。

 

「わたしと、一緒に遊びに行きませんか!?」

「ぇ…?」

 

 …こ、コレ。学校の友達用のやつ───!! 

 

 驚きに見開かれ、キラリと太陽の光に瞬くエメラルドの瞳。

 

 彼女の手を両手で握り、笑顔のまま固まるわたしに、驚いた表情を見せるおねえさん。

 端正な顔立ちから自然と力が抜け、少し頬を染めた彼女は。

 照れくさそうに視線を迷わせると…。

 覗き込むような形でわたしに視線を合わせ、口を開いた。

 

「いい、よ?」

 

 丁寧に視線を合わせてくるおねえさん。

 そのキレイな翠眼に魅せられたわたしは、ナンパ紛いの言動を否定する事も忘れ。

 愚かにもその手を引いて、街の方へと繰り出したのだった。

 

 ***

 

  な。なにをやってるんだわたしはーーーー!!!! 

 

 心の中で悲鳴をあげながら、歩くバカが一人。

 

 …そうです。

 わたしが、浅慮無謀のナンパ者…。

 甘織れな子です……。

 

 先生が誘ってくれたお勉強会(自習室)をすっぽかして。

 あろうことか、スーツ姿のカッコかわいいおねえさんにナンパを決め込んだわたしは…

 ふらふらと街を彷徨ったあげく、彼女をとある場所に案内していた。

 

「ここって…」

「エト…公園です。はい。」

 

 ───そう。公園である。

 なんだその選択。小学生か? 

 

 妹が見たら間違いなく『え? 何やってんの?』とゴミを見る目を向けるに違いない。

 …いや、違うんだ 妹よ。

 お姉ちゃんも、遊びに行くならブティックとかオシャレなカフェとか、いろいろあるよなーとは思ったんだ。

 

 でもそれに気づいたのは、駅の改札を出た後で…

 

 今更駅に戻るのもカッコ悪い。じゃなくて、申し訳ないしなぁ、と悩んだ結果…。

 とりあえず落ち着くために公園を選んだのであって、最初から公園に連れてくつもりじゃ無かったんだ……信じてくれ! 

 

「く、ふふ。な、なんで公園…もっと、こう…あはははは!」

「わ、笑わないでくださいよー! いいじゃないですか公園! ちびっこ達から大人気の一大テーマパークなんですよ!」

「てっ、テーマぱ…く!? ははは!」

 

 堪えきれないといった様子で、お腹を抱えて笑うおねえさん。

 

 綺麗なエメラルドの瞳の端では、笑い涙がキラキラと輝き。

 羞恥心によくわからない理論を展開するわたしを見て、おねえさんの笑い声が更に大きくなった。

 

 ──うぅ…死にたい…。

 

「くふ、ふ! …いいね。テーマパーク! よ〜し、楽しむぞー!」

 

 心の致命傷から、地面にのの字を書き始めたわたしの隣で。

 スーツのジャケットを荷物の上に放り投げ、腕まくりをして駆け出したおねえさん。

 

「よっ…とぉ!」

 

 陸上選手もかくやという完璧なフォームで踏み込んだ彼女は、3mもある高鉄棒を掴み。

 まるで体操選手の様にくるくると回りだした。

 

「すご!?」

「れな子ちゃんもおいでー」

「へ?」

 

 …あれ? 名前…教えたっけ? 

 ──いや、それよりも…! 

 

「はやくーー!」

「いや、ムリですから! (※ムリじゃ…やっぱりムリムリ‼︎)」

「えーー?」

 

 顔の前で手を左右に振り、無理な事を全力でアピールする。

 もし、わたしなんかが真似したら。掴んだ数秒後には手は限界を迎え。そのまま派手な音と共に砂場に落下し、愉快なオブジェと化すに違いない。

 

「しょーがないなー! っと!」

 

 それが想像できたのか、遠心力で空中へ身を投げ出すおねえさん。

 

 慌てふためくわたしを他所に、身体を一捻りさせた彼女は。

 艶やかな灰色の髪をふわりと靡かせて、わたしの前へ軽やかに舞い降りた。

 

 ──すご…。

 

「んー…じゃあブランコでもやる?」

「え!? ブランコですか?」

 

 顎に人差し指を添え、小首をかしげたおねえさんの提案に、目を輝かせる。

 

 ──ブランコ…、ブランコと来たか…

 ふっふっふ。何を隠そうこの甘織れな子。

 ブランコは大の得意分野だ! 

 

 小学生の頃。

 

 陽キャの大先輩な中学生が教えてくれた立ち漕ぎのおかげで、わたしは『高速ブランコ女』の異名を持つスーパー陽キャだったのだ! 

 

「いいですね! ブランコ! どっちが高くできるか勝負しましょう!」

「お、やる気だね! まけないよ?」

「ふ、わたしの勝ちは揺るがないですから!」

「言ったなー?!」

 

 ドン! と自信ありげに胸を張るわたし。

 それに続いて、ブランコの上に立ったおねえさんは、どこからか取り出したコインを指で弾いた。

 

 

 くるくると回るコイン。

 空中で薄明の光に撃ち抜かれた真円が、キラキラと光を反射しながら地面へと近づき…。

 

 ───今! 

 

 タイミングを見計らったわたしは、膝をバネの様に折りたたみ、体重を移動させて…!? 

 

「「あ、痛ァ!?」」

 

 ()()()と鈍い音と共に倒れ伏した。

 

 

 大の字で寝転がる。

 視界いっぱいに青空が広がり…キィキィと音を響かせるブランコへ視線をやって、目が合ったわたし達はどちらともなく笑い出した。

 

「くっ、ふふ! ブランコに負けたぁ!? うっそだー!」

「ははは! いってぇ! 二人してぶつかるとか、こんな事あります!?」

 

 ──なんだろう、楽しい。

 

 今日初めて会ったはずなのに、こうして馬鹿な事をして。息苦しさを感じないのは、おねえさんが多少強引に動いてくれるからだろうか。

 いつもだったらすぐに顔を出す中学時代のわたしが、まるで()()()()()()()()()みたいに静かだ。

 

 

 …あれ? そういえば。なんでわたし、おねえさんと公園にいるんだっけ…? 

 確か、お勉強会に行くために駅に向かってそれで……あ"!? 

 

「そ、そうだ! おねえさん!」

「んー?」

 

 楽しそうに。

 それでいて優しげな笑みで、こちらを見るエメラルドの瞳。

 それを見て、言葉が詰まる。

 

 ……待て。待つんだれな子! 

 

 ここで『朝。死にそうな顔して、なんかあったんっすか〜?』と陽キャマシマシで聞くのは簡単だ。

 でも、それがわたしなんぞにどうにかできる案件である可能性は万にひとつも──いや、億にひとつもありはしない! 

 わたしは、真唯の様なスパダリでも無ければ、紫陽花さんの様な天使でも無いんだ……。

 それなのに聞いてどうする。せっかくの楽しそうなこの顔をまた曇らせるのか? 

 それはダメだろ、話題を逸らすんだ! 話題を! 

 

「えっと…そのぅ…」

 

 ……思い、つかないッ! 

 くそ、こんな時。お友達の紗月さんなら、豊富な知識から来る完璧なトークを繰り広げるだろうに……。

 今からでもLINEでアドバイスを……ハッ! 

 

 ───れな子に電流走る! 

 

「あ、その! ら、LINE交換しませんか?!」

「いいよー!」

 

『LINEの交換』

 …それは初対面の陽キャが行う通過儀礼。

 かのナポレオンも友達であるランヌとはメッセージの交換から始まったと言う。(※要出典)

 つまり、この場面での最適解──勝った! 

 

 嬉しそうにスマホを取り出したおねえさんに続いて、わたしも慌ててスクールバックからスマホを取り出し、いそいそとLINEを起動する。

 あれ? これで合ってる? QRコード? 

 …お、なんかできた。

 

「よし、友達登録完了!」

 

 達成感からガッツポーズと共に、スマホを眺める。

 

 そこには社会人らしく『寿野瀬比奈(としのせ ひな)』とフルネームが並べられたヒヨコのアイコンが追加され。

 起き上がり小法師のようにゆらゆら揺れる卵inヒヨコ! なスタンプが連続で投下されていた。

 

 ──コレが噂のスタ爆‼︎

 

「これでいつでも遊べますね!」

「うん、そうだね! でも…ふーん? 本当にナンパだったんだ?」

 

 新しい友達の表示にテンションを上げるわたしは、ニヤニヤと笑みを深める比奈さんにそう指摘されて、びくりと肩を震わせる。

 

 ──うぇ!? そうじゃん! 

 LINE交換とか、ナンパの常套句じゃん!? 

 

「あ、いや。違くて! いつもおんなじ電車で、綺麗だなぁ、話してみたいなぁって思っててですね!?」

「へ? う、うん。」

「実際お話してみたら、すんごい話しやすくて! 体操選手みたいな空中技? もカッコよくって! そんな人と友達になれるなんて光栄だなぁ。って!」

「えっと…。ありがと…」

 

 ワタワタと、考えるより先に捲し立てるわたしの言葉に。

 灰色の髪を指先でクルクルしながら、上目遣いで視線を返してくる比奈さん。

 

 脚が長くスーツの似合う彼女は、大体わたしと同じくらいの身長であるものの。

 その抜群のプロポーションにより、座るとわたしより背が低く、表情もあいまって少女のような可憐さがある。

 

 いや、かわいいな……。

 

 実はまだ学生だったりしないだろうか…違うか。スーツだし。

 

「…よし! 次はグルグルでもやろっか!」

「おー!」

 

 そんなこんなで咳払いを一つ。

 

 勢いよく立ち上がった比奈さんは、あっという間に回転遊具のてっぺんを陣取り。

 

 わたしも彼女を追いかけ、幼な子のように駆け出したのだった。

 




 と、言うわけで今エピソードのヒロイン『寿野瀬比奈(としのせ ひな)』さんのプロローグでした。
 勘のいい方は、比奈さんがどう言うポジションのキャラクターなのか察していただけたのかなと思います。
 一応年上のキャラクターではありますが、二十歳手前くらいの設定。
 灰色の髪に、エメラルドの様な瞳。
 儚げな配色に反して、活発キャラ…我ながら妄想が捗ります。

 次話の投稿は今夜中の予定!ちょっとだけまっててね!
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