わたしが主人公の2次創作なんて…ムリムリ!(※ムリじゃなかった⁉︎) 作:れな悪教徒
このお話だけ、地の文が鏡花ちゃん視点になります。
見なよ、私の鏡花ちゃんを……(言葉にできない感情)
そして見なよ…れな子の真骨頂を……!
やっぱり陰の部分から滲み出すのが、れな子の旨みなんだよ…
楽しい時ほどあっという間に過ぎて行くもので、わたくしとれな子様が神社を出る頃には、日も傾き…。
気の早いコオロギの音楽隊が、歌を奏でるあぜ道を二人並んで歩くこととなりました。
「いやー楽しかった! まさかお抹茶も飲めるなんてびっくり!」
「とっても…楽しくございました…」
天真爛漫に笑みを浮かべるれな子様に、相槌を一つ。
そのまま手を繋ぎ、しばらく歩いたところで…わたくしは、ふと疑問を口にする。
「それで…残り時間は…何をされるのでしょうか…?」
紗月様のお勤めが終わるまで、残り半刻ほど。
決して長くはありませんが…
目の前の彼女は今日のお出かけを、紗月様との運命を試すゲームと語っておりました。
で、あるならば、次なる目的地も存在しているはず…
「んー…」
そんな疑問に返されたのは曖昧な悩み声。
改めてコチラを見たれな子様は、真剣な表情で口を開きます。
「鏡花ちゃんはさ…なんで紗月さんをずっと見てるの?」
一見すると、文脈を無視した唐突な質問。
それに、ドキリと心音が鳴り。
それを誤魔化すように口を開く。
「なんで…で、ございますか?」
「いや、ほら。始めはすごい紗月さんの事が好きなんだなぁって思ってたんだけどさ。」
「はい」
れな子様の言葉に、少し鼓動が早くなる。
何か、よくない事を指摘されるような、そんな予感に、少し、息が狭くなる。
「このデートでさ…鏡花ちゃん。ちゃんとわたしのこと見ててくれたでしょ?」
「それは…」
確信を持った声色。
わたくしが、れな子様だけを見ていた。
それはつまり、最初から、ゲームを放棄していたと言う事で…
「…そんなことは……」
思わず、あえぐように口を開く。
掠れた言葉では、れな子様には届くかわからなかったが。
それでも、それだけは否定しなくてはならないと。心が叫んでいた。
「あるよ…だって。鏡花ちゃん、わたしのこと。待っていてくれたじゃん。」
「…」
その言葉に絶句する。
そうだ、私は待っていた。
紗月様のお店に向かえば、その時点で終わっていたはずなのに。
足を進める事なく、駅の前で待っていたのだ。
「ねえ、聞かせて。紗月さんへの想いは…好きとか嫌いとか…そんな単純な話じゃないんでしょ?」
言葉を紡いだ彼女が、首を傾げコチラを覗いている。
紗月様とは、重なるところの一切ないピンクの髪。
その優しげで温かい瞳を前にして…
誰かが重なり、思考が止まってしまう。
「……」
───あぁ…気づいてはいけなかったのに…
心の中のキラキラが、ぼろぼろと崩れ去っていく。
「鏡花ちゃん?」
「…わたくしは…」
きっと、私は今。酷い顔をしているのだろう。
暗い森の中で動けなくなった迷い子のように、情け無い姿を晒しているのだろう。
でも、この口は、止まることを知らない。
それを知りたいと問われてしまったのだから。
答える事しか、私にはできない。
「昔から…誰かの後ろを進むことしか…できなかったのです…」
だから私は、嫌いだった。
ただ、言われるがままに。
傀儡の様に物事を成すしかない自分が…
ソレを強要する周りの環境が。
「そうなんだ…」
「自分では何もわからなくて…。つい、重ねていました…強く眩い月の輝きに…わたくしの憧れを…」
記憶が蘇る。
私とは違い、崩れる事のない完璧な所作。
自信家で、今も実家を支えているのだろう姉の姿。
幼い私の憧れで…美しい黒髪の姫君。
姉は強かった。そして、優しかった。
それでも私とは違い。
血統と言うただ一つの格が足りていなかった。
だから無茶に無茶を重ねて生きていた。
まさにそれは、紗月様の様に。
「ですが…同時に、彼女は…可愛らしい少女でもあるのです。」
私は知っていた。
いかに強く見せていても、傷つく心があると言う事を。
強くあろうとすればするほど、心は、柔らかい部分から削れてしまうのだと言う事を。
「それならせめて……わたくしはあのお方を支えるべきだ、と…。そう、思ってしまったのです。」
でも、紗月様は姉さんとは違った。
目指すべき目標が、常に隣で道を照らし。
彼女の周りにはれな子様のような、素敵な仲間がいた。
だからきっと、自己満足だったのだ。
もう、会いに行くことは叶わない姉の代わりに。
本当は姉に向けたかった愛を、紗月様に押し付ける。
そうする事で、私は…姉を忘れていたかったのだ。
「それで…紗月さんを」
──ぽろぽろと、涙が落ちるのを感じる。
言葉足らずな私の説明では、半分もわからなかっただろうに、れな子様が悲痛な面持ちで私を見つめている。
きっと理解はされていないだろう。
それでも構わない、これ以上───。
「優しいんだね。鏡花ちゃんは───」
「…ぁ」
そっと、柔らかく抱きしめられる。
女の子らしい甘い香り。
優しい言葉が、耳から入り込み。
ぐちゃぐちゃな思考を甘く溶かしていく。
「やさしく…なんか…」
「ううん、優しいよ。」
ゆっくりと、頭を撫でられる。
涙で服が濡れてしまうのも構わずに、大切なものを扱う様に、優しく強く抱きしめられ…心が彼女の熱に溶かされる。
でも、それはダメだ…私はこの人にまで頼ってしまってはいけない。
「確かに、最初は誰かを重ねちゃったのかもしれない。」
あぁ、そうだ。
私は重ねようとしている。
今この時だって貴女の事を…
この場にいない誰かとして見ようとしている。
「何かをしてあげたいのに、やり方がわからない…そんな自分が…嫌になっちゃったのかも、しれない」
あぁ、貴女の言う通りだ。
私は私が嫌いだ。
正しいことなんてわからなくって、言われたことばかり上手にこなす自分が。
何者にもなれない自分自身が!
「でも…でもさぁ……」
ぽつりと、額を水滴が打つ。
……雨…? でも、雨音なんて……。
滲む視界を空に向ける。
当然、空なんて見えなくて───。
そこにあったのは鮮明な桜色。
綺麗に整った可愛らしいお顔立ちの彼女は……。
「れな子…さま…? 泣いて…おられるのですか…?」
「だって…だってぇ! 鏡花ちゃんが悲しいこと言うからぁ…!」
頬を打つ涙。
涙も引っ込み、オロオロとするわたくしにぶつける様に、れな子様が言葉を紡ぐ。
「わたし、知ってるよ。鏡花ちゃんが、困ってる人をほっとけない、優しい女の子なんだって!」
涙が舞い。波打つ桜色が、夕陽に照らされてキラキラと光る。
彼女の声以外が消えて、世界が止まった様に錯覚する。
「わたしは、そんな鏡花ちゃんが好き! 唄を奏でる神秘的な鏡花ちゃんも、あんこをほっぺにつけて笑う鏡花ちゃんも、紗月さんを語るキラキラした鏡花ちゃんも、大好きだから!」
スッと空気が入り込む。
まるで今。水面から陸に上がったかの様に、胸いっぱいに青い風が入り込む。
「だから、自分が嫌いだなんて…自分に何も無いようなこと、言わないでよぉ…!!」
私の…わたくしの胸に、縋り付くのは。
───れな子様。
自慢するくらい可愛くて、それでも自分は一番では無いと。
お友達の良さも語る変なお方。
そんな方の体温は、火傷するくらいにあったかかった。
***
「あら、いらっしゃい。今日も来たのね、鏡花。」
とあるドーナツ屋さんのカウンターで黒髪の美少女…琴紗月が振り返る。
彼女は、入店した小柄な人影に、余裕のある笑みを浮かべ歓迎すると。
少女の好きな、一口サイズのバラエティパックと、シナモンドーナツを紙袋に入れ始める。
「…紗月様。お時間…よろしいでしょうか?」
そんな彼女に向けた、少女の言葉。
そこに真剣さを感じ取った紗月は、一度立ち上がると。ドーナツの紙袋を抱え、奥の席を指差した。
「構わないわ、ちょうど上がるところだもの。あっちのテーブル席でいいかしら」
「はい。」
───吹っ切れたみたいだし。
今日は奢ってあげるとしましょうか。
*
私服に着替え。
コーヒー…いや、緑茶を2つ拝借した紗月は、テーブル席にちんまり座る少女の元へ向かうと、口を開いた。
「それで、何かしら。」
…まぁ、おおよそ予想はできているのだが。
なんだかんだで、人の心を揺さぶるのが上手い甘織の事だ。
予定通り、今までのストーカー行為を自覚させるなりなんなりして。私と向き合う覚悟を決めさせたのだろう。
「…。紗月様…。」
そんな私の予想通り、真剣さを帯びた瞳で、鏡花は私を見る。
いつも通りで、しかし、どこか違う瞳。
それが一度、ゆっくりと瞬きをして。
彼女が口を開く。
「お慕い…しておりました!」
予想通りの告白の言葉。
なら、私は予定通りに───ん?
「そう…知ってたわ。でも、…ん? していた?」
お慕いしていた…?
今、過去形にしたか? この子は…?
「はい…わたくしは…。大切な方を見つけてしまったのです。」
遠く、窓の外を見つめる瞳。
そこには、スマホをいじっているピンク髪がいて…
「は…?」
つまり、どういう事だ?
もしかして私は、告白を受ける前にフラれたのか?
「ですので…これからは。わたくしは妹として…紗月お姉様を支える事にしました…。」
私の困惑を無視して話が進む。
この感覚は少し覚えがある…。
上級階級特有のアレだ……真唯以外にも使い手がいたのか…
「……言ってることがめちゃくちゃね…。そもそも、同年代の妹とかいう。わけのわからない存在は遠慮したいのだけど…」
「では…魂の姉妹ということでここは一つ…」
「貴女と盃を交わした覚えは……。」
そこまで言って視線が走る。
チャラチャラした金髪の男。
夏休みからずっと、鏡花にナンパするフリを仕掛け続けていたあの男だ。
「はぁ…。わかったわ。」
ため息を一つ。了承する。
面倒事はゴメンだ、自分の金がかかっていないとはいえ、小旅行は御免被る。
「それでは…!」
「好きに呼びなさい…ただ、一つ。忠告しておくわね」
ため息は飲み込んで、鏡花に伝えるべき事を伝えておく。
「…なんでしょう」
小首を傾げる少女。
彼女はやはりまだまだ、理解していないのだろう。
「貴女はいずれ、自分の姉と向き合う機会に恵まれるわ…。その時に、姉と話す覚悟は持っておきなさい。」
「…忠告。感謝いたします…」
妹が妹なら、姉も姉だという事を…
エピローグ
あの後。
予定通りにたどり着いたドーナツ屋さんで。
鏡花ちゃんは、紗月さんに想いを伝えられたらしい。
らしい、というのも。
自分の意思、自分の力で伝えたいと言う鏡花ちゃんの想いを聞いて、わたしはお店の前で待っていたのだ。
その結果。『後で覚えていなさい?』なんて怖いLINEが送られてきたりもしたけれど。
今ではすっかり、紗月さんと鏡花ちゃんは仲良くなり、学校でも話しているのを見かけるほどだ。
…結局。あのLINEは何だったのだろうか…?
ところで、最近。
わたしには困っていることがある。
困っている…というより…
「あれ? れなちゃん。今度は新しい消しゴム買ったの?」
「いやー…あはは…買ったといいますか…妖精さんにもらったといいますか…」
「妖精さん? あ、ブラウニーってやつだよね! いいなー家事妖精さん! ウチにも来ないかなぁ…」
さすがは紫陽花さん。物知りだ…
きっと旅行雑誌とかでそのステキな妖精さんを知ったんだろうな…。
わたしはブラウニーって言われても。
デカい木槌を持った2Pカラーのアイツしか、思い浮かばなかったよ……
会心のいちげき! れな子はたおれた!
「あら、甘織…。あなたにしては良い消しゴムを使っているじゃない…。お揃いにするのはやめてくれないかしら?」
そこへ、新たに現れたのは紗月さん。
いつも通りな様に見えて口角が上がっている…
───この人、からかいにきたな!?
「ええ!? そうなの? れなちゃん!」
「わかってて言ってますよね!? 偶然! 偶然ウチの妖精さんがこのメーカー好きなだけだから」
「あら、良い目を持った妖精も居たものね。賞賛に値するわ…」
軽く拍手までつけて言葉を紡ぐ紗月さん。
そんな彼女の後ろに、スッと小さな人影が現れる。
「…光栄に。ございます…紗月姉様…」
大人しくも聞き取りやすい、綺麗な声。
ギギギと背後を向いた紗月さんが、肩をすくめる様にして口を開く。
「…。学校ではやめてくれないかしら。」
「イヤでございます…こう見えて…わたくしは妹なので…」
鏡花ちゃんだ。
うわぁ、しっかりと気持ちを伝えられる様になったんだなぁ。
方向性はそれでいいのか…? まぁいいか。
「ふぅ…仕方ないから殴らせなさい? 甘織。」ベシィ
「イデッ!? な、なんでー!?」
「私、鏡花には手を出せない呪いにかかってるのよ」
「理不尽だぁー!」
わけのわからない理由で叩くのやめてください! ただでさえ少ない脳細胞が死ぬぅ!!
そんな風に痛みに悶えるわたしを置いて、周りのみんなは話し出す。
「ふふふ、最近。紗月ちゃん楽しそうだね。」
「…ええ。残念なことに、おせっかい焼きが増えてしまったのよ」
「えー? じゃあわたしは用無しかなぁ…」
「いえ…引き続き…逢引きを続けていただければ…」
「あ、逢引き!?」
紫陽花が笑い、紗月さんがやれやれと首を振る。
そこに小さな友だちが加わって。それでも変わらず騒がしい。
これはわたしの、新しい日常の1ページだ。
というわけで。『追いかけるは誰の影』完結です。
最初はれな子(かわいい)で脳を焼きたい気持ちから、書き始めたエピソードでしたが。
原作を見直してみると、金曜日時点でようやく効き目が表面化している様子…。
どうすんのこれ…となりつつも。なんとか書き切りました。
その分クライマックスが、れな子らしい涙で飾れたときには、スタンディングオベーションで全てを許しました。
ちなみに私が一番書きたかったのは。
「お慕いしておりました」←「は?」 の流れになります。
あと、鏡花ちゃん耳の良さは。
かわいい☆れな子が攻略する時の、メインルートの名残りになります。
そんな感じのエピソード2でしたが、今回もいいれな悪だった!と思っています。
最近、他のわたなれssも増えてきたし、わしゃ満足じゃ…
てか、アレだな…。
原作沿い再構成じゃなくて、オリジナルエピソード軸にしてる私異端だな……まぁいいか。一介のれな悪教徒だし…
今後とも妄想の産物をよろしくお願いします!