わたしが主人公の2次創作なんて…ムリムリ!(※ムリじゃなかった⁉︎)   作:れな悪教徒

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 エピソード1〜誰かの傷は〜いわゆるイベントパートになります。
 著者はSASUKEに出た事があるわけではないので、言うほどそれっぽい設備にはなってないかもしれませんが…
 許してください!なんでもしますから!(れな子が)
 


〜誰かの傷は誰かのために〜

 

 

「おーーーーー!!!」

「クオリティ高!? もはや、SASUKEでは!?」

 

 イベントゲートをくぐった先。

 広々としたスペースに広がる光景に、二人して目を輝かせる。

 

 まず目に入るのは、飛び石のように等間隔に置かれた斜めの足場。

 間には、怪我防止の為かカラーボールが敷き詰められ、その奥に3mほどの壁が設置されている。

 そこを抜ければ揺れる吊り橋と、ターザンロープがあり、その先にあるクライミング施設へと繋がっているようだ。

 

 ──既存設備も最大限利用したガチ設計じゃん! 

 

「いらっしゃいませ〜、お二人ですか〜? お二人ですね〜」

 

 そんな風に感心するわたしの耳に、聞き覚えのある声が届く。

 

 そちらに視線を向けると、立っていたのはジャージに着替えた係員さん。

 片手に駅員さんが持ってるホッチキスみたいなヤツを持った彼女は、嬉しそうな笑顔と共に駆け寄ってきた。

 

「係員さん!? 着替え早!?」

「係員さんさっすがー!」

「どもども〜! では、こちらへ。お着替えはあちらで〜す。」

 

 係員さんに案内されたのは、プレハブ小屋の様な特設の更衣室。

 彼女の案内で一緒に更衣室へ引っ込んだわたし達は、銭湯とかにある鍵付きロッカーに荷物をしまって、ジャージを手に取った。

 

 黒字にピンクのラインが入ったジャージは貸し出しにしてはデザインが可愛らしく。

 ともすれば、PRも兼ねて貸し出されているのかもしれない。

 

「…ん。ちょい、キツイかも…」

 

 袖を通し、ファスナーを上げたわたしは思わず顔をしかめる。

 

「んー? れな子ちゃん何? ダイエット失敗中?」

「あ、いえ…胸が…」

「胸? ……あー、立派なの持ってるもんね」

「そうなんですよ……」

 

 そこにひょいと寄ってきた比奈さんに、少し頬を染めて説明する。

 胸元に集中する視線。

 ジャージを着ているとはいえ、そこまで注目されると恥ずかしいものがあるなと、思わず腕で抱き寄せる。

 

「………。」

「ひゃっ……。ちょ、何するんですか!?」

「え? どのくらい指沈むかなーって」

「さ、さすがに怒りますよ! もー!」

 

 それが良くなかったのか、無言で横から胸をつつく比奈さん。

 反射的に言葉は返せたが、恥ずかしさから思考がこんがらがる。

 

 ───なになになに!? 

 陽キャって、こんなコミュニケーションするの!? 

 やった事ないよ!?正解は…なに!?

 怒っていいの…!?わかんないって!! 

 

「ゴメンゴメン。代わりに触ってもいいよ? 面白くはないかもだけど…」

 

 そんな、混乱状態のわたしに差し出される蜘蛛の糸。

 等価交換の法則と言う、わかりやすい回答を得たわたしは手を伸ばす。

 

「なら…遠慮なく!」

 

 伸ばした指先。

 真っ直ぐに進んだそれが、二つの整った山の頂点へと迫り。

 

「ぇ? いや、冗談で…。ふぁっ…!」

「え?」

 

 指先が。ズムッと、柔らかいものを押しつぶしながら、潜り込む。

 びくんと震える比奈さんの身体、咄嗟に後ろに下がった彼女は。

 真っ赤に染まった顔を下に向け、両手で身体を抱きしめると。

 搾り出す様な声で呟いた。

 

「さ、流石にソレは無しかも…」

「…え?」

 

 ガキンと固まるわたし。

 

 そのまま慌てて着替えを済ませた比奈さんは、鍵を外すのも忘れたまま。

 耳を赤く染め背を向ける。

 

「わ、私先に行くから…!」

「……え?」

 

 指に残る柔らかい感覚と、艶やかな声。

 脳内にこびりつくソレを思い返しながら、指先をギギギと見つめたわたしは、頭を抱え。

 心の中で盛大な叫び声をあげた。

 

 …よ、陽キャのコミュニケーションわかんないよーー!!! 

 

 ***

 

「入場後は5回まで参加できますからね〜、ゴール目指して頑張れ! フレフレ! ひなちゃん!」

「おー!」

 

 更衣室を出ると、楽しそうに拳を振り上げる二人の姿が見え、少し安堵しながらわたしは近づいていく。

 

「やっぱり知り合いなのでは…?」

「「違う(違います)よ?」」

「ホントかよ…」

 

 わたしの呟きにハモリで返す比奈さんと係員さん。

 明らかに初対面ではないほど、息ぴったりだと思うんですけど……

 

「んじゃ、お先にー!!」

 

 

「行っちゃった…」

 

 まだ少し恥ずかしいのか、チラッとこちらを見ると走り出す比奈さんを見送る。

 タイムアタックの準備なのかスタート地点で準備する別の係員さんにも話しかけた彼女は、いまか、いまかと目を輝かせていた。

 

「比奈さん。楽しそうだなぁ…」

「いいですよね〜ひなちゃん…」

「うわっ!? 係員さん!?」

 

 呟くわたしの隣にスッと現れ、独り言に同意してくる係員さん。

 思わず声を上げちゃったけど、笑顔と共に声をかけてきたもんだから。

 不思議と不快感はなく。

 純粋な驚愕だけだ……陽キャってすげぇ…

 

「知ってますか〜? ひなちゃんって、この辺りではちょ〜っと有名人だったんですよ。」

「え、そうなんですか?」

 

 自慢げな係員さんの言葉に、視線を向ける。

 彼女の横顔は、真っ直ぐに比奈さんへ向けられ、細められた瞳からは複雑な感情が流れ込んできた。

 

「それはも〜。次期オリンピック選手と言われるほどのアスリートだったんですから〜」

「え、それじゃ、なんで……」

 

 彼女の言葉に思わず疑問詞を浮かべる。

 視界の端ではちょうど飛び石エリアを抜けた比奈さんが狭い足場を走り、壁登りエリアに入る所だった。

 脚力は十分で、余裕を持って高鉄棒にも掴まれる彼女なら、そう難しい事はないだろう。

 そう思ったわたしは、会話に集中しようと係員さんの方を向き───。

 

「えっ? きゃあ!?」

「ッ!?」

 

 ──悲鳴が聞こえ、視界から係員さんの姿が消える。

 

「ウソ!? 比奈さん!?」

 

 追いかけた視界の先には、剥がれかけ傾く壁。

 

 歪み折れ曲がった壁は、運悪く裏方通路側に向けて傾き。

 比奈さんが手を離そうにも、障害物が多すぎる。

 

 ──そこに、係員さんが滑り込む。

 

「イタタ…ありがと、係員さ…ん……?」

「…セ〜フ。怪我はな〜い? 比奈ちゃん?」

 

 キャップはいつの間にか風に飛ばされ、広がる黄色の髪。

 ぶつけた拍子に外れたスポーツサングラスに隠された水色の眼が優しげに向けられるのに反して、比奈さんの顔が真っ青に染まる。

 

「あ…ウソ……。」

「係員さん!? 足挟まってる!!」

「嬢ちゃん達どきな!」

 

 慌てて駆け寄ったわたし。

 通りがかった他の挑戦者だろうか?

 体格のいい男の人が走って寄ってきて。

 水筒を隙間に押し込むとゆっくり壁を持ち上げ、抜ける手助けをしてくれた。

 

「でぇじょうぶだ! 腫れてるが、大したこたねぇ!」

「よ、よかったぁ…比奈さん! 大丈夫だって!」

 

 男の人の言葉に、顔色の悪い比奈さんに声をかける。

 係員さんが庇ったとは言え、急に落ちるのはかなり不安になったはずだ。

 こういうときは少しでも情報は伝えて、安心させてあげたい。

 

「ッ…。」

 

 怪我一つなく両脚で立ち。 しかし俯いて表情の見えない顔。

 その瞳は、不安そうに係員さんの脚に向けられている気がする。

 

「比奈さん?」

「ゴメン…っ!」

「え、比奈さん!? どこ行くんですか!? 比奈さん!!!」

 

 心配の気持ちからあげた疑問の声。

 それに弾かれたように肩を振るわせた比奈さんは。

 制止するわたしを無視して駆け出していく。

 

 慌てて追いかけたわたし。

 しかし、普段運動もしないわたしが追いつく筈もなく。

 ようやくたどり着いた更衣室には、グシャグシャに脱ぎ捨てられたジャージだけが残されていた。

 

 ***

 

 ──比奈さん…。

 

 あの後、比奈さんが居なくなってしまってからも、安全なコースだけ解放してイベント自体は継続された。

 

 係員さんも、脚を冷やしながら『大丈夫だよ〜』なんて笑っていたけれど…

 それ以上に何か気になる様子で、すごい曇った顔をしていた。

 思えばお昼の香穂ちゃんも、立ち去る時には、何か暗い顔をしていた様に思う。

 

 

 きっと、比奈さんの周りでは、何か重大な事が起きていたんだ…

 でも、わたしはそれを知らない。

 

 知っているのは、比奈さんが純粋で真っ直ぐで、すごい楽しい人だってこと。

 そして優しい気遣いのできる大人だってことだけだ。

 

 だから、はっきりと言える。

 何も言わずに逃げる様な真似は、比奈さんらしくない。

 

 なら、知らなくちゃ。

 

 彼女に何があったのか…

 彼女が、何を抱えて今を生きているのかを…

 

 ***

 

 ショッピングモールの休憩スペース。

 そこでわたしは、スマホを片手に。

 迷う事なく、ある人物へ電話をかけていた。

 

『おっすー、れなちんからとか珍しいじゃん?』

 

 小柳香穂ちゃん。

 小柄でありながら事情通で、何か知っていそうな頼れるクラスメイトだ。

 

「香穂ちゃん! 突然ゴメン! それでね!」

『うお。マイクちかっ、音デカいって。なになに? なんなの?』

 

 そんな彼女に、わたしは先程の事を話した。

 比奈さんを庇って係員さんが怪我をした事。

 ソレを見て比奈さんが走り去ってしまった事。

 

 ──紛れもないただの事故の話を…

 

『ははぁ…ひなちゃんパイセンの事か…』

 

 なんとも煮えたぎらない声が届く。

 …やはり、比奈さんには何かあるんだ! 

 

「そう! 香穂ちゃんなら何か知ってるでしょ? 教えて!」

『んー…別に知らなくていいんじゃない? どうせ今日限りの関係っしょ?』

 

 珍しく香穂ちゃんの歯切れが悪い。

 普段ならこんな事はないのに、まるで、比奈さんから遠ざけようとしてるみたいに。

 かわいい声を低くして、冷たく突き放すように言い捨ててくる。

 

 …確かにそうだ、比奈さんとは、今日会ったばかりの関係。

 これからの人生ですれ違う事はあっても、今日みたいに並んで歩く事はないのかもしれない。

 

 ───それでも…

 

「そう、かもしれないけど……そうじゃないの! 教えて香穂ちゃん、何でもするから!」

『何でも?? ただの知り合いに本気だにゃあ』

「知り合いじゃないよ…比奈さんはわたしの──」

 

「───友達だから!」

 

 そう、友達だ。

 明日になれば違うかもしれない。

 それでも今日は…今日だけは、わたしの大切な友達なんだ!

 

『友達…ね……』

 

 わたしの言葉に、電話越しの香穂ちゃんの声が遠くなる。

 カタと、何かを動かす音が電話越しに届き、わたしのスマホに、メッセージファイルが表示される。

 

『んー……。しゃあなし。…ホレ読んでみ?』

 

 それは、何年か前のスポーツ紙のようだった。

 

 芸能人のスキャンダルだの…野球の点数差だの…

 わたしにとっては面白味もない記事が並び。

 その内一つに見覚えのある文字列を発見し、思わず口にする。

 

「寿野瀬スポーツジム事故? …コレ! 比奈さんの!?」

『んにゃ、実家。そして、この街指折りスポーツ選手の拠点だったらしいよ』

「でも、わたし。聞いたことない…」

『だろうにゃー。六年前、この事故が起きてから、このジムの主任インストラクター、寿野瀬穂氏は半身不随の重体。信用を失ったジムは解散したみたいだから。』

 

 冷静な香穂ちゃんの声に、言葉を失う。

 

「そんな…じゃあ、比奈さんはソレを思い出して……?」

 

 家族を事故で失いかける。

 ソレはどんなに辛いのだろう。

 わたしには想像もつかない。

 それでも、それがトラウマになっているならきっと……。

 

 

『いんや、もっと深刻かもね。』

 

「え───。」

 

 香穂ちゃんの言葉に、記事から視線をあげ、耳を傾ける。

 彼女の声は先程にも増して冷静で。

 しかし、複雑な感情が乗せられたものだったから…。

 

『アタシは塾で比奈ちゃんパイセン見たことあったからそんな事無いって信じてたんだけどさ…あったんだよね、変な噂が。』

「う、噂?」

 

 

『「あの事故は比奈が起こしたんだ」って…』

「は? え?」

 

 ────一言一句逃さずに、わたしの耳に入り込んだ。

 




 というわけで、今回も香穂ちゃんに登場していただきました。
 わざわざ『塾』って言うワード出してるのに、それどころじゃないから気づかれもしないの悲しいね?
 実際、このくらいの匂わせはしてておかしくないと思うの…
 ちなみに、れな子が男相手に大丈夫そうなのは、最大のコレじゃないポイントだと思います。…が、実はれな子。助けてくれたおじさんにお礼すら言ってないレベルで、比奈さんに注目しています。
 無意識で男性を避けたのか、それとも純粋な心配か。
 そのあたりの塩梅は、読みながら補完してみてください。

 それでは、次話をしばしお待ちください。
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