わたしが主人公の2次創作なんて…ムリムリ!(※ムリじゃなかった⁉︎)   作:れな悪教徒

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 お待たせしております。
 わたなれ書くのならお風呂回は必須だよなぁ!と言うことで蛇足。
 エピソード1〜お風呂回〜になります。
 最初に言っておくと、今回のれな子は空気です。
 


エピソード1 おまけ

 灰色の空の下。

 コレまた灰色の髪を靡かせて、一人のアスリートが住宅街を走っていた。

 

 無心のまま前に向けられたエメラルド瞳。

 頬を撫でる雨など関係ないと言った様子で、その足を進めていた女性がふと。クシャミを一つ。

 今まさに気づいたと眉をひそめて、空を見上げる。

 

「うぅ…さぶ……急に雨が降ってくるなんて、ついてないなー?」

 

 まるでつい先ほど降り始めたかのような口ぶりで語るのは、寿野瀬比奈(としのせ ひな)今を輝くアスリートの卵である。

 

 しかしまぁ、降り始めたのは家を出て20分ほど経った頃…

 軽く5分近くは小雨に打たれていたわけだが、どうやら彼女にとっては、汗も雨もさして変わらないものであるらしかった。

 

「どうしよ、家までちょっとあるし……」

 

 とは言え、その鈍感さにも限度はあったようで。

 こうして大粒の雨に変わってしまえば、脚を進めるわけにもいかず。

 雨宿りできる場所を、探さざるを得なくなってしまったらしい。

 

「あれ? そういえばこの辺って…れな子ちゃんの家近くだ!」

 

 そうして、木陰から辺りを見渡して気づく。

 自分が今立っているのは、おぼろげながら記憶に残る通学路の一つ。

 その中でも、思い出の一幕に鮮明に焼きついた少女の自宅がある通りに違いない。

 

 つい最近。縁を繋ぎ直して。

 心の底から、友達と言える関係となった今なら…

 彼女に頼ってみるのも、悪くないかもしれない。

 

「大会前…風邪ひくのは。流石に困るし…。頼っちゃおうかな!」

 

 そう結論づけた彼女はランニングコースを修正し、雨粒を弾きながら見覚えのある屋根に向けて駆け出したのだった。

 

 ***

 

 降りしきる雨の日。

 出かける予定が立ち消えとなり、不満たらたらだった妹とリビングでゲームをしていると、玄関のチャイムが鳴り響く。

 

 ピンポーン

「はーい!」

 

 郵便だろうか? 

 雨の中でも、持ってきてくれる配達員さんには頭が上がらない。

 ここはわたしなんかではなく、妹の完璧な外行きスマイルでほっこりしてもらおう。

 

 そんな言い訳をして。

 テコでも動かないわたしと違って、しっかり者の遥奈はゲーム中でもお家の仕事をこなしてるのだから凄いと思う。

 

 わたしができることがあるとしたら、動かないキャラクターの前で煽りエモートを繰り返すことくらいだ。

 

 ───なんか、惨めな気持ちになってきた…

 アイテムくらい拾ってもバレへんか…

 

「お、お姉ちゃん!!?」

 

 そんな私のもとに、慌てた様子の妹が駆け寄ってくる。

 やばっ、気づかれたか? 

 

「いや、ちゃんと待ってたよ!? コレはほら、距離を取ることで仕切り直しをだなぁ」

「そんなこといいから! 比奈さん! 比奈おねぇさん来てるよ!!?」

「は? …ぇ? な、なにゆえ!?」

 

 玄関を指差し、ブンブンと腕を振る妹の言葉に目を白黒させて立ち上がる。

 

 ───比奈さんが家に!? なんで!? 

 ドッキリ!? 雨降ってんのに!? 

 ……気合い入ってんな!! 

 

「わ、わかんないけど…とりあえず水浸しだったから、お風呂入ってもらってる!」

「よ、よくやった! そしたらわたしは……。」

 

 妹の言葉にサムズアップを決めてキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 ……え? 比奈さんと室内で遊んだ事なんてないんだけど…? 

 

 ──何用意すれば良いの? ダンベルとか? 

 

 そもそもこんな天気の日に来るなんて…

 よっぽどの事があったんじゃ…!? 

 なら、あったまる飲み物とか用意しよう! 

 ハチミツ! ハチミツは…あった! 

 

「あっ」ガシャン

「は?」バシャァ

 

 そうして手を伸ばした戸棚の下。

 ちょうど来客様のコップを取り出そうとしていた遥奈は、上から降ってくるハチミツ瓶に気づくことなく。

 頭からハチミツをかぶってしまうのだった。

 

 ***

 

「で、二人ともお風呂に来たんだー?」

 

「うぅ、すみません、シャワー浴びさせるだけなので…」

 

 お風呂の淵に両腕を置いて、にこにこと笑う比奈さんに頭を下げる。

 隣には服を脱ぎ、タオルで体を隠した妹。

 ハチミツがかぶさり、いっそう増した艶髪は、普段とはまた違う甘い香りを漂わせていた。

 

「比奈さんとの再会がこんな形とか、一生恨むから…」

「そんな殺生な…」

 

 妹の鋭い視線が突き刺さる。

 …いや、まぁ、わかるよ? 

 お前、比奈さんのこと昔から好きだったもんな? 

 私がタイミング悪くあの日に会っちゃったせいで、お別れもできてなかったし。

 本当ならゆっくりお話ししたかったんだよな? 

 

「いいよ? 気にしないで。そもそも私がいきなり来ちゃったのが悪いんだし…ごめんね? 遥奈ちゃん」

「いえ! 比奈さんはお気になさらず! ゆっくり浸かってください!」

 

 外行き100%スマイルでシャワーノズルを取った妹が、手首を振るジェスチャーと共にわたしを追い出す。

 半透明なドアは閉まってしまったので、とりあえず二人分。替えの服を用意しながら聞き耳を立てる。

 

 ───いや、さすがにおもしろそうじゃん? 

 

「それはちょっと申し訳ないかなー…あ、じゃあ。洗いっこして、そのままローテーションで入ろっか?」

「えぇ!? い、いやでも…」

 

 ……珍しく遥奈がタジタジだ。

 いくら外行きモード搭載のパーフェクト妹とは言え、裸の付き合いは早々ないのだろう。

 すりガラスの向こうでは、比奈さんが風呂桶から上がり、遥奈の背後を取るのが見える。

 

「姉妹で背中流すのやってみたかったんだよねー。ちなみに、インストラクターの卵としてマッサージも心得てるから、期待して大丈夫だよ! まかせて!」

「うっ」

 

 声色だけでわかるキラキラとしたエメラルドの瞳。

 どうやら比奈さんは、わざわざ向かい合う位置に移動して。目線を合わせて宣言しているらしかった。

 

「ね? 一緒に入ろ?」

「…よろしくお願いします…。」

 

 ───ふ、大人になれよ…遥奈。

 

 ***

 

 住み慣れた家の、使い慣れたお風呂場の中。

 本来ならくつろぎ、リラックスと共に身体をほぐしている筈のその場所で。

 

 私。甘織遥奈は混乱の渦中にいた。

 

「痒いところはありませんかー?」

 

 原因は彼女。

 寿野瀬比奈さん。

 

「いえ…大丈夫です。」

「んー…それにしても……。綺麗に鍛えてるねー」

「あ、ありがとうございます。光栄です。」

 

 私が小さい頃にすごい足の速いおねえちゃんとして憧れだった存在が。

 なんの因果か、丁寧に泡立てたボディーソープ越しに私をマッサージしてくれている。

 

「特にこの脚! 揉み応えあるよ! 運動する人のこり方!」

「えへへ、まぁ部活は、頑張ってますので…」

 

 場所はお風呂場。

 当然、お互いに裸。

 部活終わりに友達と仕切り越しに話しながらシャワーを浴びるのとは違い。

 文字通りの裸の付き合いを強要されている。

 

「いいねー、青春の汗は黄金の輝き! 楽しむんだよー?」

「ッ! が、頑張ります!」

 

 輝くような笑顔。

 グッと握られた両手。挟まれた形のいい胸が強調されて……ッ!? 

 

 ───目のやり場に困る! 

 

「さてさてお次は…おぉ、やっぱり腕も張りがあるねー。これは…テニス? いや、バトミントンとかかなぁ」

「や、やっぱりわかっちゃうんですね!」

 

 腕を取られ、耳元で囁かれるくすぐったさに軽く身体が跳ねる。

 インストラクターとしての彼女に見抜かれたのが少し嬉しくて、それでいて変な動きをしたのがバレていないかドキドキして。

 熱に頭が浮かされる。

 

「まぁね! …と自慢したいけど、逆だよ。遥奈ちゃんがすぐ分かるくらい基礎を大切にしてる証拠! 使ってない筋肉は、すぐ衰えちゃうからねー」

 

 耳元で褒められ、幸せな感覚に襲われる。

 それと同時に警笛、残された理性がこのままでは何か大変なことになると警告を発し。

 断腸の思いで身を離す。

 

「あ、ありがとうございます。…お返しに洗ってもいいですか?」

 

 大丈夫。私はノーマルだ。

 私は、お姉ちゃんとは違う。

 美人モデルを狙う面食い女でも無ければ、度の過ぎたシスコンでもない! ───よし! 

 

「いいよー、遥奈ちゃんも今は立派なスポーツ選手みたいだからね、ちょっと期待してみようかな?」

「では、失礼します…」

 

 断りを入れて手を伸ばす。

 視線はマッサージをする為に綺麗なおみ足に固定し、無心のまま指先に意識を向ける。

 

「おー…わわ、コレはきもちぃかも…」

 

 弛緩した声が耳をくすぐり、脳内を甘く染めるのをシャットダウンしながら、一通り。

 脚をほぐし終わった私は、口を開く。

 

「…やっぱり。」

「? …どうかした?」

「比奈さん。最近までは、あんまり動かして無かったんですね…」

 

 指先の感覚を反芻する。

 アスリートらしい負荷のかかった表面筋。

 押せば解れるソレの奥にある深層筋は、特に長年の蓄積が現れる筋肉群だ。

 

「まー、そうだね? わかっちゃう?」

「はい、全然硬いし…何より、比奈さんの名前。最近まで聞かなかったですから…」

 

 ───それが、硬い。

 ソレはつまり、最近まで彼女がスポーツからは離れていたことを意味する。

 走ることが大好きで、みんなの憧れだった比奈さんが…だ。

 

「それは…ずいぶんと、期待されてたんだねー…」

「はい。私はもちろん、きっとお姉ちゃんも。」

 

 彼女の言葉に、重くうなづく。

 幼い頃。

 お姉ちゃんからは、どうして比奈さんがいなくなったのかは聞けなかった。

 それはきっとお姉ちゃんなりの優しさで。

 後日、あの噂を知ったときには、やるせない気持ちになったのを覚えている。

 

「うん、そうなんだろうねー…れな子ちゃんには、また。助けられちゃった。」

「また?」

「うん。小さい時にねー? れな子ちゃん。つらかった私の側にいてくれたんだー。何も知らないはずなのに、一生懸命優しくてね?」

 

 比奈さんの言葉に、泣いてる少女のそばにいるお姉ちゃんが思い浮かぶ。

 ワタワタとする心の中を覆い隠して、お姉ちゃんらしく背伸びした。

 そんなカッコいいお姉ちゃんが。

 

「あー…昔のお姉ちゃんなら…、やるかも。」

「ふふふ、そうでしょ? いいお姉ちゃんだよねー」

 

 だから。

 愛おしげに目を細めて語る彼女の姿は、私にとって意外でもなんでもなかった。

 心の中が誇らしさでいっぱいになって。

 自分の事のように嬉しくなった私は。

 

「はい! 自慢のお姉ちゃんです!」

 

 胸を張ってそう返したのだった。

 

 ***

 

「お姉ちゃん、お風呂出たよー!」

「いいお湯でしたー!」

 

 元気な二人の声がリビングに響く。

 それを聞いたわたしは、鍋いっぱいに入った牛乳にサッと蓋を閉めると。

 カップにいれた牛乳にハチミツを2杯スプーンで入れて立ち上がった。

 

 ───ふふん、わたしは自慢のお姉ちゃん…!

 

「はいはい。ホットミルク作っといたからどうぞ。」

 

 リビングの入り口には、まるで姉妹のようにわたしのダボTに身を包んだ二人が、湯気に包まれながら笑い合っていた。

 

「え、珍しく気が利くじゃん」

「お前のためじゃねぇよ?」

 

 遠慮なく受け取る妹に軽口で返す。

 この憎まれ口もかわいいものだ。

 今なら何を言われても許せる気がする。

 

「じゃあ私も遠慮しとこうかな?」

「ええ!? ウソウソ! ちゃんと二人の分だから飲んでください!」

 

 そこにイタズラっぽく入ってきた比奈さんに慌ててカップを渡す。

 …流石に飲んでもらわないと何のために作ったのかわかんないからね!…本当に!

 

「そこまで言うなら飲んでやらんこともない…」

「ではでは、毒味は私めが…」

「客人よりカーストが上だと!?」

 

 そうして、わちゃわちゃと過ごし始めたわたし達。

 星のエアライダーで盛り上がり、思い出話を挟みながら。

 急に降り始めた雨の1日は、明るい笑い声と共に過ぎていくのだった。

 

 

 ちなみに…牛乳の無駄遣いがバレてお母さんに怒られたのは、また別の話。

 




 以上。おまけでした。
 やっぱり血には抗えないんだなって…さすが遥奈!理性強くて偉い!
 そしてれな子。お前はクリームシチューでも作るつもりか?
 電子レンジという文明の力を使えばいいものを…
 どれがレンチンできるコップかわからない?…それはそう。
 みんなも慣れない料理をする時はしっかり下調べしてからやろうね!
 れな子との約束だぞ!
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