わたしが主人公の2次創作なんて…ムリムリ!(※ムリじゃなかった⁉︎) 作:れな悪教徒
こういう、神域が一般解放されてる神社は、意外と存在したりします。
おふだは現地で受け取るけどね()描写と現実が違うのはご愛嬌。
紗月さん家近くの神社は、まずこのタイプでないこともご愛嬌です。
神社でかわいい☆(怪異)を、お祓いしてもらうんだぞ…れな子!
放課後。
一度帰ってお出かけ用の服に着替えたわたし達は、紗月さんの家近くにある駅で、改めて集まっていた。
「お待たせ! 待った?」
見覚えのある背中に声をかける。
小柄な身体に黄色いお花の髪飾り。
切り揃えられたおかっぱ髪が少し揺れ。
それがゆっくりと振り返り───
「いえ…今しがた…来たところにございます…」
───わたしは言葉を失った。
聞こえてきたおとなしい声。
森の中で聞こえてくるせせらぎの様な、リラックス効果を発揮するその声の主は。
まさしく、現在に降り立った平安少女そのものだった。
「かわいッ!?」
飾り袖で手元が隠れるみかん色の服に、ふわふわのスカート。
小柄おかっぱな鏡花ちゃんが着ると、着物を着たお人形さんのようで───。
──コレは確かに心配になる可愛さだ…。
紗月さん、紫陽花さんもそうだけど清楚なかわいい女の子好きだからなぁ…
あんなに対応ダダ甘なのも頷ける…
「ンッン…今日はよろしくね。
「こちらこそ…お願いいたします…
咳払いを一つ。改めて挨拶をする。
お互いに名前で呼んだのは。
この三時間を楽しむための軽い意思表示だ。
三時間後、紗月さんのアルバイトが終わる。
その時間まで、わたし達は一緒に遊び…
もし、それを中断してまで見に行きたくなったら佐上さんの勝ち。
───運命の人は、紗月さんだった。
もし、そうじゃなければわたしの勝ち。
───運命の人なんていなかった。
佐上さんは、紗月さんと友達として向き合ってみる。
これはそう言うゲーム…と言うのが鏡花ちゃんに説明した話。
つまり、わたしは三時間。
彼女を楽しませてあげればいいのだ。
…ふ、余裕だな。
なんていったってわたしは、あの王塚真唯と何度もお出かけして、楽しんでもらった女!
「それじゃ、行こっか。」
「…はい…」
いざ、ゲームスタートだ!
*
和服姿の美少女を引き連れて、わたしはとある場所に足を運んでいた。
朱に塗られた大鳥居、自然に囲まれたこの場所は……
「こちらは…神社…でございますか?」
そう、神社である。
なぜわたしが、神社を選んだのかと言うと…紗月さんにすぐ会える距離、と言うのが理由の一つ。
もう一つが…
「うん、鏡花ちゃんって騒がしいの苦手かな、って思ってさ」
「それは…そうかもしれません」
鏡花ちゃんの耳の良さを気遣っての選出だった。
なにせ───
「自分の事なのにわかんないんだ? ……なら。」スッ
話しながらさりげなく耳元に近づき。
香穂ちゃんの音声をイメージしながら、声を出す。
「耳が弱いことも気づいてない?」コソ
「ふぁ…や、やめてくださいませ」サッ
余分な力を抜いた、色気のある声。
思ったより、それっぽい声が出たとはいえ…
肩を跳ね上げ、軽く吐息が漏れる鏡花ちゃん。
──少し囁いてあげるだけでコレだ。
わたしも、香穂ちゃんのせいで少し弱くなった自覚はあるけど。
鏡花ちゃんはソレの比じゃない。
……もうちょいからかっても……バレへんか…?
「あ、こら。逃げないで……だって、囁かれるの、好きでしょ?」ギュ
「フゥ…ん…くすぐったい…だけで…ございます…」
腕の中で耳まで真っ赤にして、弱々しく震える少女。
加虐心を誘うと言うか、なんというか…。
この状態の彼女を見てると開いてはいけない扉が開きそうになる。
───ハッ!? 深呼吸! 正気に戻れ、わたし!
「……スー…。」
なけなしの理性にしたがって。わたしは胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
「…れな子様?」
…そう、鏡花ちゃんを抱きしめたままで、である。
新鮮な空気と共に、ガツンと鼻腔を打つ椿の香り。
上品な甘さが、わたしの心を甘く溶かし。
早っていた気持ちが急速に整っていく…
「スー……」
───これがアニマルセラピー……。
SNSで流れてくる、猫吸いなるものの良さがわかってしまったかもしれない…
このまま一緒に、おふとんに入ってお昼寝してくれないかな…
「ン…れな子さま…くすぐったく…ございます…」
「ハッ!? ごめんごめん!」
身じろぎする鏡花ちゃんに、慌ててパッと距離を取る。
おかげさまで落ち着いたわたしと対照的に、頬を赤く染めた鏡花ちゃん。
先程と同じはずなのに、今度はとてつもない庇護欲に駆り立てられる。
わたしが護らねば!
「よし、じゃあ行こうか」
「…はい」
そうして手を差し出し。わたし達は一緒に歩き出した。
*
入り口の大鳥居を抜け。
鳥のさえずりを聴きながら。
手水舎で手を清めた後、客殿の方に足を進める。
「…そちらは順路では…ございませんが…。」
鏡花ちゃんの困惑する声。
それに内心キタキタ! と思いつつ、口を開く。
「あぁ、今日はこっちで大丈夫なんだよ」
「?」
「はい、これ」
そうしてわたしが取り出したのは、今日の秘密兵器───!
「こちらは…おふだ。でございますか?」
───そう、おふだ。だ。
しかもコレはただのおふだではない。
持っていることで、マップが開放されるタイプのアイテムなのだ!
「そ、これ持って御祈祷してもらうと。神域に入れるんだって!」
「それは…興味深く…ございます…」
…神域…カッコいい響きだ。
そのまま過去の世界に行けちゃったりするんだろうか!
はたまた、世界樹的な物があったりして!
勇者の剣が突き刺さってるパターンも捨てがたい!
「ふふふ…ワクワクで…ございますね…」
***
ご祈祷も終わり、案内を受け。
わたし達は本殿の裏手にある小道へと案内されていた。
他のお客さんに先に行ってもらい、二人きりになった事を確認したわたしは、胸いっぱいに深呼吸をする。
「おぉ…さすが神域。空気が澄んでるや」
マイナスイオンを感じさせる爽やかな風。
表とは明らかに違う自然の香りに、感性の鋭くないわたしですら。
厳かな特別感を感じていた。
「…涼風や…葉擦れの奏で…うつくしく…木漏れ日差すは…隠り世のみち……にございます。」*1
そんなわたしの隣で、鏡花ちゃんが流れる様に言葉を紡いだ。
独特の音節で区切られた短い歌。
古文の授業で少しだけ習った覚えがある…。
五七五に追加で2節だから……。
「短歌…かな? 誰の唄なの?」
「祖母に…ございます。」
「おー!」
鏡花ちゃんの言葉に感嘆を返す。
おばあちゃんっ子…すごい、イメージ通りだ……。
きっと一緒にお手玉とかして遊んでたんだろうなぁー!
……そういえば、短歌って、短歌で返すものだって聞いたような…。
「良い唄だね…なら、わたしも返してみようかな。」
「ふふ…ぜひ。」
鏡花ちゃんの期待するような声色に、慌てて材料を探す。
お返事だから鏡花ちゃんは外せないとして…わたしが綺麗に思ったもの……あ、いい感じのお花!
「唄の音を、奏でるきみはそこにいて…瞳映すは、現世の花…どうかな?」*2
ちょっと自信ありげに、彼女の方を見て唄う。
五七五にもなってるし、いい感じのお返しにもなってるはず!
「……はずかしく…ございます……」
「そ、そんなに…? 上手く唄えたと思ったんだけどなぁ…」
フイと顔を背ける鏡花ちゃん。
どうやら、恥ずかしいレベルの出来だったらしい…。
な、何がいけなかったんだ……
──ハッ! 季語か! 季語が無かったんだ…!!
気づくのが遅いんだよわたし!!
*
少し歩き、まるで日本庭園の様なスペースについたわたしは、あるものを見つけて鏡花ちゃんに声をかける。
「ねっ、鏡花ちゃん」コソコソ
「ん…どうか、されましたか?」ビク
「かわいいよ!」コソコソ
「ふぁ…か、かわいい…ですか?」
茶色くてふわふわした身体。
湧水をツンツンついてる子もいれば、気ままに歩いてる子もいる。
「うん。あそこ、ちょこちょこ歩いてる」
「…あ、あぁ…雀にございますね……」
───そう。雀である。
最近見なくなったよなぁ…いや、そもそも都心じゃ見かける方が稀か?
そんなことを考えながら鏡花ちゃんを見ると、なんとも言えない無表情。
よく見ると、少し眉根が下がっている気がする…
「あれ? 雀。嫌いだった?」
「いえ…れな子様と同程度には…好ましく思っております…」
「それは…どのくらいなんだ…?」
嫌いってこと?
…いや、でも。なんだかんだで付き合ってくれてるしな…
「ふふふ……ちなみに…あちらにはネコ様もおります」
「え! 本当だ! かわいい!」
改めて指差す彼女は、いつも通りの無表情+軽い微笑み。
とりあえず、楽しんでくれてるみたいだし…大丈夫か。
「えぇ、とってもかわいく…ございます…ね?」
そう呟く彼女は、優しくこちらへ微笑んでいた。
*
「んぐんぐ…こ、コレが本物のお抹茶!」
何故か神域に併設されていた御茶屋さん。
わたしは、そこで出されたお抹茶に舌鼓をうっていた。
目の前の机には山吹色のお菓子が並べられ、気分はまさにお貴族さまだ。
「ふふ…一気に飲まれるものでは…ありませんよ?」
柔らかく笑いながらお茶碗を手に取る鏡花ちゃん。
綺麗に正座した彼女は、とても慣れたもので。
きっとわたしとは違って、足も痺れてないのだろう。
お上品に手を添えた彼女は。
お椀の縁をなぞるように回し、一度置いてから口を開く。
「うつわを回し…三口ほど…。お茶菓子と合わせていただくと…美味しゅうございます。」
モナカをサクリと口にして、お椀を回してゆっくり味わう様に飲む鏡花ちゃん。
「へー…。ん! ん〜♪ す、すごいまろやかだ!」
それを視て、わたしも見様見真似で飲んでみる。
モナカは、本当に残念なことに、一口分だけしか残っていなかったが。
餡子の甘味は、抹茶の渋みに見事に調和し、まさしく正解! としか言う他ない味わいであった。
「ふふふ、和の味わいは…久しぶりに…ございます…」
それを見ながら、柔らかく微笑む鏡花ちゃん。
わたし達だけの時間は、誰にも邪魔される事なく。
そうして、穏やかに進んでいくのだった。
と、いうわけでデートパートでした。
こう言う時、昔ながらの短歌を流用すると味があっていいんだろうけど、鏡花ちゃん家族大好きだからね…頑張って考えたよ……。
しっかり意味を込めたから、味わってくれよな!れな悪!
それでは、次話をしばしお待ちください。