英雄と奇跡を幻視した怪物たち   作:シビトバナ

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今回の終末鳥はLORの方を参考にしたため己が受けたダメージが卵にフィードバックされています。


「あなたは使徒である。この岩の上に私の教会を建てよう、死の門もそれには打ち勝てない。」

 

 

流動する体を持ったゴライアスだった“ナニカ”が階層内の中心に佇む。

それから放たれていた先程までの威圧(プレッシャー)が嘘のように失くなっている。

 

周りの冒険者たちが「死んだのか?」と疑問と困惑を浮かべる中、その目の前で未だ佇む黒き黄昏の鳥の脳内では先程までと比べ物にならない警報を放っていた。

 

理由は分からない。だが今すぐに此処から退かなければいけないと判断し、その体を光で包む。

 

その瞬間、溶けた体に一つの口と二つの赤い目が現れた。

“ナニカ”は溶けた体を流動させ不定形の体を起き上がらせる。

 

そこには先程と変わらず威圧(プレッシャー)を感じなかったがまるで幽霊のような不気味さを含んでいた。

 

“ナニカ”はその赤い目を体にすべらせ周りを確認するとその体にいくつもの口を出現させた。

その全ての口には先刻までの咆哮(ハウル)のような赤い光が集まっていく。

 

冒険者は経験(直感)によって理解する。

終末鳥は直感(経験)によって理解する。

 

 

 

 

……終末鳥が己の体を光で包み。次には“ナニカ”の目の前に現れる。

すると巨大な2つの爪を単眼の顔?の前に持ち上げ空を叩き。赤い嘴がある体を反らしその嘴で“ナニカ”の体を貫いた。

 

だが、その流動する体には無意味に終わってしまう。

赤い嘴が貫通するが咆哮の魔力が止まる気配はしない。終末鳥は少しの間迷いその大きな羽根で“ナニカ”を包む。

 

隙間から黒と黄色の光が漏れ出ていく。数秒後その光が止まったかと思うと先程までと異なる光が隙間から漏れ出た。

 

 

パキンッ――

 

 

【遠くを見通せた大鳥の目は見えなくなりました。】

 

 

終末鳥がその羽根を元に戻すと“ナニカ”の体に傷はなく、また終末鳥の体にも傷はなかった。

 

終末鳥はまるで忌々しい相手に向けるような目を向ける。

 

 

流動する体が終末鳥の爪をつたい体を拘束していく。

それに終末鳥は無関心を貫き、今度は単眼の顔?の首を伸ばす。

 

すると終末鳥の頭上に天秤が現れ片方に傾く。

チーンという音とともに“ナニカ”の体がごそっと削れる。

 

だがそれも一瞬で再生し、もとに戻っていく。

終末鳥の体が4割ほど流動する体に取り込まれた次の瞬間、

 

ゴォン、ゴォォン!という大鐘楼の荘厳な鐘の音が戦場に高く鳴り響いた。

 

その音を聞いた“ナニカ”の脳内では警鐘が高々と鳴っており急いで終末鳥の拘束を解除し、音の発生源に狙いを付ける。

 

終末鳥もあれが“ナニカ”を倒しうる脅威になりえると察知し“ナニカ”を行かせまいと翼を大きく広げ立ち塞がる。

 

その時、視界の端で疾走する何かを捉える。

苛立ちを宿した“ナニカ”がそれを捉えることはなく、終末鳥に向かって流動した拳を何度もぶつける。

 

「【―――今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々】」

 

きれいな声の詠唱が聞こえる。

躍起となっている“ナニカ”は聞こえていないのか見る素振りもしない。

 

「【愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

 

詠唱が戦地の中心で行われていく中、少しはなれた場所でも詠唱を紡ごうとしていた者がいた。

 

「【掛けまくも畏き――】」

 

全精神をこの一撃に込め、言の葉を放つ。

 

「【いかなるものを打ち破る我が武神(かみ)よ、尊き天よりの導きよ。卑小のこの身に巍然たる御身の神力を】」

 

「【救え浄化の光、破邪の刃 払え平定の太刀、征伐の霊剣(れいおう)今ここに、我が()において招来する】」

 

「【―――来れ、さすらう風、流浪の旅人。空を渡り 荒野を駆け、物事よりも疾く走れ。星屑の光を宿し敵を討て】!」

 

2つの詠唱が結ばれていく。

そして一つ先に詠唱を完成させた。

 

「【ルミノス・ウィンドウ】!!」

 

“ナニカ”と終末鳥の間に割って入り木刀を“ナニカ”に向ける。

すると緑風を纏った大光玉、一斉放火された星屑の魔法が“ナニカ”へと次々に着弾する。

 

だがそんな光玉の中を突進するように体を滑らせる。

突然の不意打ちに正面にいたリューは逃げ遅れる。

 

そして“ナニカ”の体当たりがリューを弾き飛ばそうとした時、リューの少し横から大きな爪が現れ“ナニカ”の体を拘束し、そのまま押し返す。

 

取っ組み合いになるように怪物たちはリューから離れていく。

 

「【天より(いた)り、地を統べよ――――――神武闘征】!!」

 

「【フツノミタマ】!!」

 

そんな中もう一つの詠唱が完成した。

 

取っ組み合っている怪物たちの直上に一振りの光剣が出現し、振り下ろすように直下する。

同時に発生する魔法円にも似た複数の同心円。

 

そして深紫の光剣が怪物たちを通り抜けた時、重力の檻が完成した。

半径10Mにも及ぶドーム状の力場が流動する体を地に縛り付け、終末鳥の身動きを遅くする。

 

そんな中でも終末鳥は“ナニカ”の体を上から押さえつける。

だがそれでも流動する体には相性が悪く次第に押し返されていく。

 

「ぐ、ぅぅぅぅぅぅぅ……!?」

 

少しはなれた場所で、この重力の檻を完成させた張本人である(ミコト)の顔が苦痛に歪む。

 

何故かは知らないが終末鳥の助力も会ってか最初こそは縫い付けられていた“ナニカ”が少しずつ立ち上がっていく。

 

純粋な力負けと、2つの巨体を縫い付けるだけの技量が足りず歯が立たない。

未だ逆転の一手が完成しない中、檻は着々と綻びを見せていた。

 

 

 

◆−−−−→◇

 

 

 

 

そうして檻の中で数秒が経った頃、

 

「破られますっ……!?」

 

魔法をかけていた張本人の命の宣言通り、触手のようなものに流動する体を変形させた“ナニカ”が結界の壁を強引に突き破る。

 

終末鳥はそれでも“ナニカ”から離れることなく拘束を続ける。

そんな怪物たちを見て、目を鋭くさせ、雄々しく。

 

一撃。

 

たった一撃のため声を張り上げるものがやってきた。

次の瞬間、

 

「火月ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 

視界が真紅の轟炎に染め上げられた。

本来は燃えぬはずの己の体が、羽根が、羽毛が薪に焚べられたように炎を宿す。

 

パキンッ――

 

【いつも空を見上げていた長鳥の頭は下を向きました。】

 

終末鳥は燃え盛る中、流動していた体が炎によって炭化し固まっていく“ナニカ”の拘束を緩めること無く、逆に強くしていく。

 

炭化し固形となった体に爪を突き刺し、己ごとその場に固定する。

何かが削られていくのをひしひしと感じながら、『その時』を待った。

 

 

◇→■

 

 

(――三分)

 

ベル・クラネルは時が満ちたことを悟った。

片時も逸らすこと無く怪物たちを見据えていたその瞳には覚悟が決まっていた。

 

 

【英雄願望】

思い出し、幻想し、憧憬する存在は『英雄ダヴィド』

一人で大いなる脅威に立ち向かい打ち勝った古国の覇者。

 

体を前に倒した―――。

 

「―――みんな、道を開けろぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

発走する。

白い光を帯びた黒大剣を携え、大鐘楼の音を高らかに響かせながら赤く燃える怪物たちへと迫る。

 

脅威が直ぐ側まで来ていることを悟った“ナニカ”が激しく暴れ出す。

6割ごと炭化し固形化したその体では満足に抵抗すること無く終末鳥に押さえつけられている。

 

 

埋まる距離。

押しつぶすような巨躯。

そして自身の両手に満ちる英雄(ダヴィド)の奔流。

ベルは己の光剣に全てを賭け、その一撃を放った。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

炸裂する。

 

 

 

パキンッ――

 

【どんなものも飲み込める小鳥の口は閉じられました。】

 

「                」

 

純白の極光が階層内を埋め尽くす。

極光が収まった時、目に入ったのは炭化した体の上半身をほとんど失った“ナニカ”と無傷の終末鳥だった。

 

冒険者たちに緊張と絶望が広がろうとしたその時、終末鳥はその大きな爪を地面に伸ばし、羽根は次第に小さくなっていく。

 

そうして灰となった“ナニカ”の近くで黒い羽を撒き散らせながら消えていったのであった。

 

 

 

次の瞬間

 

『――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

大歓声が起こった。

周囲から途切れることのない歓声と喜びがベルと階層を包みこんだのであった。












バキッ――





はい、第一章はこれで終わりです。
長くなって申し訳ありません。これからも頑張っていきます。
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