怪人赤マントの殺人   作:卯月絢華

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白銀のフラッシュバック

 クリスマスイブの夜、ある姉妹が元町の高級アパレル店に入っていった。そこのアパレル店は、目利きのバイヤーが買い付けた服を売っている一方で、職人がオーダーメイドで一から服を作ってくれるということで評判が良かった。

 

「ねえ、仁美。私……どんな服が似合うのかしら? 私、今まであまり外に出る機会がなかったから分からなくて……」

 

「そうねぇ……お姉ちゃんなら、こういう服が似合うんじゃないのかな」

 

 そう言って、妹は姉に赤いワンピースを手渡した。

 

「赤いワンピース? 確かに、私向きの服かもしれないわね」

 

 姉がそう言ったところで、バイヤーが駆けつけてきた。バイヤーは、短い銀髪の女性で、妹は彼女の姿を見て「かっこいい」と心の中で思っていた。

 

 バイヤーは話す。

 

「いらっしゃいませ。今日はどんな服をご所望(しょもう)でしょうか?」

 

「あの、私の姉が出かけるための服が欲しいんです。私の姉って、妹である私より病弱だから……今まで、あまり外に出たことがなくて」

 

「そうですか。――それなら、こういう服とかどうでしょうか?」

 

 バイヤーの言っていることは的確だった。確かに、オレンジのジャケットは姉にピッタリだと妹は思った。

 

「これ、良いわね。買おうかしら?」

 

「お姉ちゃん、似合ってるわね。――それで、あなたのお名前はなんて言うんでしょうか?」

 

 妹の質問に、バイヤーは答えていく。

 

「私ですか……? 私は、瀬川鳴海(せがわなるみ)という者です。このアパレル店でバイヤーを務める一方、職人として服を作ることもやっています」

 

「なるほど、かっこいいですね。――それで、職人としてのあなたはどういうことをしているんでしょうか?」

 

「もちろん、服を作っています。デザインから縫製(ほうせい)まで一貫してやっているので、完全オーダーメイドなんですよ」

 

「オーダーメイドかぁ……良いですね、それ。――お姉ちゃん、瀬川さんに服を作ってもらうっていうのはどうかしら?」

 

「それ、良いかも!」

 

「それじゃあ……ちょっと待っていてください」

 

 そう言って、瀬川鳴海は姉妹の前から去って行った。

 

「瀬川さん、いい感じの人ね。多分、お姉ちゃんにとって良い服を作ってもらえるかも」

 

「そうね。――ゴメン、私……ちょっと試着室に行ってくる」

 

「試着室? ああ、良いわよ。お姉ちゃん、色々服を持ってるもんね」

 

 姉は、妹の前から姿を消した。――しかし、これが妹にとって最後の別れになってしまうとは思いもしなかった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「――美雪さん、試着室にいましたか。私ですよ、瀬川鳴海です。準備が出来ましたので、工房まで来てもらえないでしょうか?」

 

「工房ですか。瀬川さん、私にピッタリな服を作ってくださいよ? もちろん、妹にも喜んでもらえるようなモノをね」

 

「分かっています。工房は地下にありますので、そこの階段を下ってください」

 

 工房は、なんだか湿っぽく感じた。地下にあるから当然だろうけど、それにしては……やけに湿度が高いと、姉は思った。

 

「まず、体型を見たいので……一旦、服を脱いでもらえないでしょうか?」

 

「服を脱ぐということは、私に『裸になれ』って言っているんでしょうか?」

 

「はい、その通りです。――とにかく、一旦服は脱いでください」

 

「分かりました。まあ、同性ですし……少しぐらい裸になってもかまいませんよね?」

 

「もちろんです。それじゃあ、よろしくお願いします」

 

 そう言って、姉は身にまとっているモノをすべて脱いだ。

 

 姉は、雪のように白い肌で、病弱であるが故に身体は華奢を通り越して今にも死んでしまいそうなぐらい細かった。

 

「美雪さん、かなり細いんですね。妹さんから『姉は病弱だ』と聞いていましたが、それにしてはあまりにも華奢です。――でも、私はあなたのその白い肌に取り憑かれました。ああ、剥ぎ取ってしまいたいぐらいです」

 

「剥ぎ取る? 私の肌を? いや、それだけはちょっと……」

 

 姉がそう言った瞬間、彼女の頬を「何か」が伝った。

 

「えっ……?」

 

 姉の目の前には、ナイフを握った瀬川鳴海がいた。そして、彼女のナイフには――肌色の布が被さっていた。

 

「あの、これってどういうことなんでしょうか?」

 

 姉の質問に、瀬川鳴海は答えていく。

 

「知らないの? これ、あなたの肌なんだけど」

 

 肌色の布は、姉から剥ぎ取った皮膚だった。その事実を知った瞬間、彼女は冷たい衝撃を覚えた。

 

 彼女の肌は、瀬川鳴海の手によってすべて剥ぎ取られていた。顔の肌から腕の肌、胴体の肌から乳房の肌に至るまで、すべての肌という肌が彼女の手によって剥ぎ取られていた。

 

 

「お姉ちゃん、遅いなぁ……」

 

 妹は、消えた姉を探す過程で地下へと続く階段を見つけた。

 

「こんな階段、あったっけ? でも、お姉ちゃんがそこにいるんだったら……お邪魔しても大丈夫かな」

 

 姉が惨たらしい状況で殺されているとは知らず、妹は階段を降りていった。

 

「すみませーん、私のお姉ちゃんはそこにいますでしょうか?」

 

 しかし、誰もいない。仕方がないので、妹は部屋の中へと入っていった。その時だった。

 

「――な、何なの……コレ」

 

 妹は思わず両手で口を覆った。

 

 なぜなら、そこにあったのは姉……厳密に言えば、「姉だったモノ」だったからである。「姉がそう言った」は裸の状態で皮膚を剥ぎ取られ、タッセルにくくりつけられていた。

 

「き、きゃあああああああああああああああっ!」

 

 妹は、悲痛な叫びを上げた。悲鳴を上げたところで、どうにもならないのは分かっていたのだけれど。

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