螺旋の唄 (裏)   作:Ahoo

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短め
次話は長め


13. お話

それは僕達が夕飯を食べ終わった頃の事だった。

 

無機質な電子音が腕輪から響く。 画面を見ると、母さんからと表示されていた。 少しワクワクしながら緑のボタンを押す。

 

「……ケイちゃん? 私よ」

「こんばんは母さん」

「はい、こんばんは」 :ケーイ! ケイ! 聞こえてる? ケイ!:リリと母さんの声は嬉しげだ。 「今どこに居るの? 夜ご飯食べた?」

「バトルシャトーの近くで野宿の準備してるよ。 焚き火も起こせたし、夜ご飯も食べたよ。 リリ、ちゃんと聞こえてるから落ち着こうね」

「……そう。 練習は大事だものね」 声のトーンが低くなった。 怖いです。 「そこらあたりに危ないのは居ないはずだけど、きちんと気をつけてね?」

「はーい」 野生の子達に情報を貰っているので大丈夫です、誰も危ない系はいないそうです。 バトルシャトーで働いている人達が警備もしてるから、との情報をもらいました。 近くに住んでる人達が散歩とかに来るからだそうな。 一流の所は見えない所も一流なんだよ、とお話してくれたドーブルさんが言っていた。 

「ケイ、なんとかやってけそうで嬉しいよ。」今度は父さんだ。「いいか、やばくなったら、というかやばそうな感じだけでも良いからなんかやばかったらすぐに逃げるんだぞ?」 ふわっふわしたアドバイスはやっぱり父さんらしくて、実は好きだ。

「おにいちゃん」「どしたのイライザ?」「じょかちゃんいる?」 お兄ちゃんの心配はないんですか愛しの妹よ。

:おう、居るぞ: ジョカが隣に来た。 

「じょかちゃん、またあそぼーね」

:……おう:

迷ったあげく了承した。 思わず笑ってしまったので、脇腹に軽く拳を入れられた。 痛い。

「おにいちゃん?」「なぁに?」「きーつけてね」「もちろんですともぉ!」

ようやく貰えた妹のグッドラック。 嬉しいです。 今日は良い夢見れそうだ。

「ケイちゃんってシスコンよね」「だな、なんでこうなったんだろうな」

両親がうるさい。 聞かなかった事にしよう。

「じゃあもう切るよ、明日も早いし」

「はいはい、ちゃんと暖かくして寝るのよ」:こっぽこっぽよ!:

「おやすみ、いい夢を」

「おにいちゃんおやすみー」

:おやすみ: 居たんですかリデン師匠。

「おやすみー」 電話を切って、焚き火を消して寝た。

 

 

 

 

「帰ってきましたよミアレシティ! 一週間かかったけど!」 5番道路の入り口に立って、行程を振り返ってみる。 はねださんは僕の髪の巣でぐっすりとお休み中だ。

 

:わりと長かったな:

「ゴーストタイプが出る観光名所とか行くしかないし」

:出なかったけどな:

「会いたかったよヒトツキちゃん達……」世界とはなんと非情なのか。 

:だからと言って、あのでかい家周辺に2日も通うのはどうかと思うわ:

「だって浮いて彷徨う剣とかロマンじゃん」 というかヒトツキどころか誰も居なかったです。 なんでや。

 

:すまん意味がわから:「だよね」

想定外の方向からの聞き慣れない声に揃って左をむくと、細身の体に白衣を羽織った、どこか海藻的なウェーブの髪の変なおっさんが立っている。 「いいよねヒトツキ。 あの無機質さの中にちらっと見える感情が最高だよね」 僕達は手を取り合った。 そこには年齢なんてものを超えた、確かな友情があった。

「あとまだ「お兄さん」の歳だからね」 バレた。「さて、ボクが誰かわかるでしょうか?」  

 

無駄に色っぽくお兄さんが言うので、僕は言った。「その髪と白衣という事は、プラターヌ博士でしょうか」

「髪ってどういう事かなあ」だって助手さんからそう言えって言われてるんだからしょうがない。 僕は悪くない。 「ま、いいさ。 そのとおり、ボクがプラターヌ。 カロス地方の研究者の最高責任者さ! よろしくねケイくん」

 

何故ついた事が分かったのかは知らないが、さすがに博士には話が行っていたようだ。 「今後ともよろしくおねがいします」と腕を広げて嬉しそうな彼の前で頭を下げる。何かなんでもいいからアドバイスとか貰えないだろうか。 

 

「じゃあちょっとボクの研究所に来てくれるかな? 話も聞きたいし、ボクも一応フィールドワークをかじった事があるし。 後、助手くんから聞いたんだけど、いままで道具は貸出だったんだってね。 お古でいいならいくつかあげられるよ」

「喜んで!」 畑違いとはいえ、その道の権威者のお古とか嬉しいサプライズだ。 マニアなら涎モノだ。 助手さん知ってて黙ってたな? 後で手紙を出そう。

「そうこなくっちゃ!」

 

 

「……ま、このぐらいかな。 ボクが教えてあげられるのって」 優雅に紅茶を一口飲む博士のその姿は、助手さんよりサマになっていた。 ジョカは僕の隣の椅子になんともしずかーに座っていてちょっと怖い。 はねださんはお話つまらないのーと言うので、下の部屋で預かってもらっている。 

「いえ、とても参考になりました。 ありがとうございます」 裏ワザとか、合体技とか、だいたいのポケモンが好む撫で方とか教えてもらいました。 ありがてぇ。 ノート持って来といて良かったわ。

 

「どういたしまして。 代わりと言っちゃなんだけどさ」

「はい?」

「ボクと勝負しようよ」

 

唐突である。

 

「……あの、こっちジョカしか居ないんですが」 手を挙げる。

「うん、だから1on1でね。 ダメかな?」

「んー」ジョカを見ると、横目で見られた。

:構わんぞ。 そこそこ楽しめそうだ:

「あれ、バトルジャンキーだっけ君」 ジョカが久しぶりに悪い顔してる。 可愛いなぁ。

:お前が居るから鈍りそうなんだよ:

「? ふーん」

凄いガンつけられた。 怖い。 

 

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