「ごめんようジョカ」
:気にするな、知ってたから:
それはそれで少し複雑だ。 博士の機材でジョカを回復してもらい、凄いでしょうアピールをしてくるタッチーをもふもふしてやる。 しかし彼の素晴らしい毛並みを撫でていても心は晴れない。 自分の未熟さにため息が出る。 話せるだけじゃあ何にもなれないって事を思い知らされた。
「最初から凄いトレーナーなんて選ばれた天才ぐらいだからね。 初心者なんて皆こんなものさ」 博士からフォローが入る。 つまり今までの連勝は単純にジョカの力に頼りきったものであったと。 そういう訳でございますか。
:泣かないでー: タッチーが鼻を鳴らしてこすりつけてくる。
「泣いてないもん」 こんな事なんかで泣かねーし。
:じゃあ傍目にもわかるレベルで落ち込んでんじゃねーよ: ジョカが呆れたように言う。
「……う、うるさい」
:あ゛あ?: 頭を掴まれて凄まれる。 悲鳴が喉から漏れ出た。
「ごめんなさい!」
許してもらえた。
気を取り直して、改めてタッチーの保護のお礼を言う。 博士が言うに、ボールに入れても人をトレーナーと認める様子もないし、色々絵を書いて見せてくるので、持ち主が居るとは分かっていたらしい。 でも僕と話しててもいっこうに出てこないし、世話役の部下と裏で話したら浮気を発見した妻のような行動をしていたとの事で、一度戦闘させるべきだと思ったと。 だからこその1on1のお誘いだった訳だ。 ついでにいうと、発見された時彼はミアレシティのどまんなかで行き倒れてたらしい。 恥ずかしい。
「お前ほんと何やってん」
:人いっぱい居る所なら誰か優しいひとが拾ってくれるって思ったの。 そしたら優しいひとがケイ見つけてくれるかもって: 背中に乗せてるので、上から声が降ってくる。 ……乗せてるというか覆い被さられてるというか。
「……そんな性格だったっけ?」
「きゅるるるるる」 おうなきごえでごまかそうとすんじゃねぇ。 可愛らしくすりすりしてくるんじゃねぇ。 清純なイメージが崩壊したわ。 お前の性格あれだな? むじゃきじゃないな?
「ケイくん、タッチーくんはなんて言ったんだい?」 黙って見ていた博士が聞いてきた。
「拾ってくれる程優しい人なら再会するのも手伝ってくれるかもと思った、という希望的観測を語られました」 吹き出される。 なにこの公開処刑。 とりあえず膝の上のジョカを撫でた。
「そ、そうかい」 笑いが止まらない様子だ。 「いやしかし、本当に君って彼らと話せるんだね」
「あっ」 一気に汗が噴き出る。 そうだ何を見知らぬ人の前で普通に喋っているのか。
「実はそんな君にお願いしたい事があってだね? 協力してくれるとありがたいんだけど」
言うが早いか、立ち上がって近くの棚を漁り始めるプラターヌ博士。 なんだろう。 血とか取られたり電気ショックとか流されたりとかそんな実験とかだろうか? 二人+子供しかこちらには居ないしトレーナーの僕も未熟だし、どうしよう。 とにかく逃げる準備はしておこうか。
「内容によりますけど、構いませんよ」 笑って朗らかに了承する。 失礼だとは思うが、命がかかっているのだ。 許してもらおう。
「ありがとう。 じゃあちょっと外出ようか」 と書類らしき紙の束または何やら道具が入ったバッグを一人一つ渡され、一緒にエレベーターに乗り込む。 途中ではねださんを回収し、外に出ると何故かポケモンセンターに連れてこられた。 普段トレーナーはほぼ入ることのない裏に入っていくので、少しワクワクしながらついていく。 なんか地位が高そうかつ笑顔が怖いハピナスさんが座っている机に書類を提出して、別の部屋に行く。 そこでころころ転がり続けている一匹の子イーブイと追いかけているタブンネ&ラッキーを紹介された。
「あの子の名前と持ち主の名前、そして住んでた街を聞き出してくれないかな?」
迷子かよ。
帰り際にフィールドワークの道具と初心者の手引、そしてポケモンボールを5つ貰った。 もう研究室に置けるだけの余裕が無いのでポケセンに置いといたのだそうだ。 質問があったらいつでも電話していいからね、と言葉を残して悠々とプラターヌ博士は研究室にお帰りになりました。
:ちょうどいいからって手伝わせたわね、あのひと: と零したナースラッキーさんに事情を聞いてみると、最近あそこの研究室、研究書類の提出とか貸し出した道具の返却とかをサボっていたのだそうで。 それを今日一気に持ってきたと。
「一石……八鳥……だと?」 僕の脳に電撃が走る。
:他にも何かやってたのね。 ほんとちゃっかりしてるんだから:
パネェ。 さすが博士にまで上り詰めた男パネェ。
:ぱねぇ……: タッチーが締めた。