今回めっさ文字量多いですが、キリの良い所が他になかったのでこうなりました。 次回からは落ち着きます。
Xしか本体を持っていないため、道中の描写などは調べたものとなっております。 また、未だ淡々と進んでおります。 登場人物少ないからね、しょうがないね。
無言で横についていた小さな手を振られる。 肉食じゃないらばよし。 意思促通できるのもよし。 まあそんな事はどうでもいい、この子凄く可愛い。 楕円形の目は琥珀色に煌き、ちっちゃい口元は常に笑顔のように緩んでいる。 体の色と同じく真っ白なちょんと出た手は日本猫の尻尾のように丸くて短い。 髪型?もオシャレに段々がついてるし、上で揺らめく大きめの炎は溶けたてっぺんを青白く、体を真っ白に引き立てている。 足はそれはもう溶けた蝋燭そのままの形で、スカートのように広がっている。
幻覚だとしても構わないと思えるほどの可愛さだ。
「ね、ここから出る方法知らない? 知ってたら教えて欲しいんだけど」
:よかろう、ついてくるがよい:
……思った以上に渋い声だった。 思考が追いつかず、ん?と考えていると彼?はイタズラ成功!といった顔でまた話しかけてきた。
:びっくりした? びっくりした?: 今度は子供らしい、少年特有の高い声だった。 からかわれたらしい。
「すっごいびっくりしたよー、あんな声出せるとか凄いね」
:でしょ? でしょ? ボクのとくい技なんだー!:
「へぇ、他にどんなことできるの?」
:いろんな事できるよ! 時間あったら見せてあげるね! とりあえずついてきてー:
そうだ、とりあえずここから出なければならない。 荷物を抱えてその子について歩く。
「ねぇ、そういえば君はなんていうの?」
:ボクはヒトモシだよ:
「ヒトモシくんか、よろしく。 私の名前は だよ」
くりっとヒトモシと名乗った彼がこちらを見た。
:名前? ちがうよ、しゅぞく名だよ。 あと、そのお名前言っちゃダメでしょ?:
「え? なんで? というか種族名?」 種族名とはなんぞや?
:そうだよ。 名前はないよ。 言っちゃダメなものは言っちゃダメ、わかってるでしょ?:
「えー……まあいいや」 わからない事は先延ばしが安定だ。 テストだってとりあえず飛ばして後で戻ってくると案外解けたりする。 「名前無いと不便じゃないの? 仲間内じゃどうやって呼び合ってるの?」
彼が止まって、少し無言で見つめられる。 探るような感じを受けて、少し居心地が悪かった。 納得したのかしてないのか、また歩き始めたのでついていく。
:養殖でもこうはならないもんなぁ、なんなんだろ: ぼそっと呟かれた言葉に疑問を抱くも大人な僕はスルーする。 なんだ、天然とでも言いたいのか? 確かに人の感情を読むのは不得手ではあるけどできない程じゃあないんだぞ。 しかしそれを言ってもなんか笑われそうなので黙っておく。
「どっちにしても、種族名で呼ぶのはなんかヤダしせめてアダ名でも付けさせてよ。 ヒトモシだからモシでどう?」
:……安直すぎて笑いも出ないよ:
「ばっさりすぎて涙も出ないよ」
直接的な子すぎて心が痛い。「とりまモシ君」
:え、それで行くの?:
「それでモシ君、よくこんなとこで方向わかるね?」
:まあいいけどさ別に。 君は分からないの?:
聞こえないふりをする。「うん、真っ暗で何も見えないよ。 道も何もないし。 君は違うの?」
:あれ、あっちから来たんじゃないんだ。 真っ暗なのは同じだけど、普通はわかるよ:
「えー」
モシの導きに従って歩いていると、内容は聞き取れないが騒がしい音が突然周りから聞こえてきた。 まるで以前見学したTV局のような音の数々が流れている。 とはいえ何も見えず、触れるような物も何もなかった。 目の前にあるのはモシのちょこちょこと可愛らしく歩く小さな姿だけ。 しかし変化があったということは、進んではいると解釈しても良いだろう。
「気がついたらここに居たんだ。 ちょっといじめっ子に沼に沈められてさ」
:えーなにそれ怖い。 でもそっかー、そういう事かー:
「どういう事?」 なにやら一人だけで納得したらしい。 合点がいったようで、ただでさえ面積の少ない体で器用に頷いている。
:んっんー、なら連れだしちゃダメなのかな? でもここまで来れてるしねぇ: とか怖い事を呟いている。 怖い。 やめてくれよここに放置とか。
騒がしい音がなくなってまたしばらく歩いていると、徐々に花々の濃い香りが漂ってきた。 花畑? しかし同様に何も見えない。 風も足に感じるはずの草と土の感触も何もない。 もっと進むとまた何もなくなる。 そして次に唐突に来たのは、前の二回とは違って五感に訴えかけてくるものだった。 靴底に感じる道の質が段々とデコボコに、鼻には洞窟特有の湿った苔臭い臭いが届き、底冷えのする陰鬱した空気が少ない露出個所に触れる。 モシの青白い光が壁や天井を微妙に照らし影を躍らせた。 ここには全体的に薄く白く霧がかかっている。
部屋を進むとたまに全く同じ作りの部屋に出たり、柱が3本真ん中に立っている部屋が時々きたり、挙句の果ては歪んで揺らめいている個所まで見えたりする。 怖いのでとりあえず早く出たい。 しかしモシは必要な事だと言って曲がったり進んだり大回りして戻ったりする。 どれくらい経っただろう、ようやく一際大きい、見たことのない部屋に来た。
:まあいいや: 何事か悩んでたらしいモシはそうつぶやくと、高くなっている中央をそのまま迂回していく。 最後にモシは光が差し込んでくる穴に入っていった。 同じようにくぐってみると、崖に囲まれたそこそこ大きな泉に出た。 ここも冬なのか、冷たい空気と雪が目立つ。 向かい側の崖の上には途中で途切れた木製の橋がかかっている。 ちょうど昼なのか、太陽は燦然と弱いながらも頭上で輝いていた。 光を浴びた体に、生き返ったように気力が湧いてくる気がする。
:まあとりあえずこの水飲んで:とモシに言われたので手ですくってみた。 案外と温度はそこまで低くなく、透明で綺麗だ。 が、魚が居る。 というかなんかコイキングにトサキントにアズマオウに……果てはギャラドスっぽいのが居る。 そしてさっきから気にしないようにしていた、楽しそうにラッコ浮きしているコダックとゴルダックの親子連れ?に見えなくもない生き物も見える。 何でポケモンが現実に居るんだ、というかこれ飲んだらアカンやつじゃあないのか? 微生物とか寄生虫とか。 しかしモシは飲め飲めと執拗に薦めてくる。
……どうせ無くしたこの命、何を恐れる必要がある。 一度零し、荷物をおろして水筒に汲み、伝統的な風呂あがりのスタイルで一気飲みした。 地味に甘くて美味しい。 別にそこまでせんでもとモシの引いた顔が言っているが、生理的欲求を思い出した自分は満足するまで飲み続けた。 飢えた自分に許可を出したほうが悪い。
一息ついて洞窟側の乾いた場所に座っていたモシの隣に腰を下ろす。 :喉乾いてたの?:と聞かれたので、お腹もすいてると答えたらまたジッと見られた。 頬を赤らめてみせると少し距離を離されたので詰めてみた。 また離された。 また詰めてみた。 溜息を吐かれた。 勝った。
どれくらいか無言で座っていると、モシが唐突に立って:お別れだよ、:と言った。 慌てて立ち上がろうとすると服を引かれてまた座ってしまう。 :もうそろそろお迎えが来るから、君はここで待ってて:とモシは言う。
「……行っちゃうの?」 全力の捨てられた子犬顔でアピールしてみる。 しかし待ち合わせしてるからとモシは断る。 こいつできる。 :また会えるよ:と自分のより一回りも二回りも小さい手で腕を軽く叩かれた。 :ボクはモシ、覚えたから。 じゃあまたね:
洞窟に入っていったモシの光が見えなくなった頃、あたりを見渡してみたら誰もいなくなっている事に気づいた。 コダックのとぼけた顔も見えない。 池を覗いてみても何も居ない。 ついさっきまで色んな生き物に満ちあふれていたのに、今は何も聞こえない。 静寂だけがこの場所を支配している。
何もない場所で積まれた孤独感がぶり返してきた。 沈められた時の恐怖がこみ上げてくる。
ゆっくりと上がってくる水位。 靴やズボンに染みる冷たいぬらぬらとした沼の水。 どれだけ叩いても開かない扉、冷えて上手く動かないけど必死で打ち据えたせいで痛い手、狭い逃げ場のない暗い棺桶。 叫んでも誰にも届かない声。 身体的及び精神的ストレスによる持病の急激な悪化。 何より、ひとりぼっちで死を迎える恐怖。
喉が狭まり、うまく息ができなくなる。 こらえきれなかった涙が冷えた頬に熱い。 モシが居たはずの場所に戻って、頭を抱えて帽子を握りしめる。 本当にここは外なんだろうか。 さっき見た光景は脳が見せた幸せな夢なんじゃないだろうか。 モシも本当は居なかったんじゃないか? 本当はあの
くらい
ば
しょ
で
ま
だ
ひ
と
り
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次回更新は30とか31前後です。
あ、この作品は微妙に暗い所もあるしグロもあります。 苦手な方はお気をつけ下さい。