東方飯机録 ~ tada meshi kuu dake ~   作:地軸

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八日目~十四日目

八日目

 

 今日は、特別なことはしていない。

 

 焼き魚。

 白飯。

 味噌汁。

 

 ここ最近では、いちばん“普通”な献立だ。

 

 机に並べて、椅子を引く。

 

「……」

 

 向かいの席には、赤と白。

 

 博麗霊夢が、もう座っていた。

 

「ほんと、代わり映えしないわね」

 

「そういう日もある」

 

 霊夢は肩をすくめて、箸を取る。

 

 一口。

 

「……うん」

 

 相変わらず、短い。

 

 しばらく黙って食べてから、ふと思ったことを口にする。

 

「色んな人来るけどさ」

 

「なによ」

 

「そんなに美味しいか?」

 

 霊夢は一瞬だけ考えてから、はっきり言った。

 

「味で言うと、普通ね」

 

「だよな」

 

 妙に納得してしまう。

 

「じゃあ、なんで皆来るんだろうな」

 

 霊夢は味噌汁を啜ってから、何でもない風に言う。

 

「そんな普通のご飯でも」

「自分で作るのが面倒って時は、丁度いいのよ」

 

「……そんなもんか」

 

「そんなもん」

 

 魚をほぐしながら、続ける。

 

「材料も変じゃないし」

「気を使わなくていいし」

「残っても罪悪感ないし」

 

「妙に具体的だな」

 

「経験則」

 

 霊夢は淡々と食べ進める。

 

 少し間が空いて、

 ぽつりと、小さな声。

 

「……まぁ」

 

 箸が一瞬、止まる。

 

「一人で食べるのが、嫌って時もあるけど」

 

 ほとんど独り言みたいだった。

 

「ん?」

 

「え、今なんて?」

 

 聞き返すと、霊夢は露骨に顔をしかめた。

 

「なにも言ってない」

 

「言ってたろ」

 

「言ってないったら言ってない!」

 

 箸で小さく机を叩く。

 

「聞き間違いよ、聞き間違い」

 

「……そっか」

 

 それ以上、追及しない。

 

 霊夢は何事もなかったように、最後の一口を食べる。

 

「ごちそうさま」

 

 手を合わせて、立ち上がる。

 

 去り際、振り返りもせずに一言。

 

「……普通でいいのよ、ここは」

 

 それだけ言って、姿が消えた。

 

 机の上には、

 空の皿と、

 少しだけ残った余韻。

 

 八日目は、

 

 普通のご飯が、

 普通じゃない理由を、

 最後まで言い切らないまま終わる夜だった。

 

 

 

 九日目

 

 今日は、少しだけ手をかけた。

 

 栗ごはん。

 豚汁。

 

 下処理に時間はかかったが、

 季節のものだと思えば、悪くない。

 

 炊き上がった蓋を開けると、

 甘い匂いが立つ。

 

「……秋だな」

 

 机に並べる。

 

 栗ごはん。

 豚汁。

 それだけ。

 

 椅子を引く。

 

「……」

 

 向かいの席に、人影。

 

 雲居一輪が、きょろきょろと辺りを見回していた。

 

「あら」

 

 棚、天井、空間。

 

「雲山、いないのね」

 

「……いないですね」

 

 正確には、来てない。

 

 一輪は一瞬だけ考えてから、

 ふっと肩の力を抜いた。

 

「そっか」

 

 それだけで、深掘りしない。

 

 椅子に座って、机を見る。

 

「栗ごはんだ」

 

「はい」

 

 一口。

 

「……うん、美味しい」

 

 素直な声。

 

 豚汁も啜って、息を吐く。

 

「こういうの、久しぶりかも」

 

「雲山さん、いつも一緒ですもんね」

 

「ええ」

 

 頷いてから、少しだけ笑う。

 

「だからかな」

「今日は、なんか身軽」

 

 箸が、軽快に動く。

 

 栗をもう一つ。

 

「ねぇ」

 

「はい」

 

 一輪は、急に声のトーンを変えた。

 

「お酒、出してよ」

 

「……え」

 

「だってさ」

 

 豚汁を一口。

 

「雲山いないし」

「お説教されないし」

「たまには、いいでしょ?」

 

 完全に、はめを外しに来ている。

 

「……弱くないですか」

 

「弱いわよ?」

 

 即答。

 

「だから、少しでいいの」

 

 間。

 

 少し考えてから、冷蔵庫を開ける。

 

「少しだけですよ」

 

「やった」

 

 一輪は、子供みたいに喜んだ。

 

 お猪口に、少なめ。

 

「いただきます」

 

 一口。

 

「……はぁ」

 

 顔が、完全に緩んだ。

 

「これは……だめだね」

 

「今さら言います?」

 

「今だから言うの」

 

 栗ごはんをもう一口。

 

「雲山がいたら、絶対こうはならない」

 

「でしょうね」

 

「でも」

 

 豚汁を飲んで、続ける。

 

「こういう日も、あっていいでしょ」

 

「……そうですね」

 

 酒は進まない。

 でも、会話は少しだけ緩む。

 

「ごちそうさま」

 

 一輪は、きちんと手を合わせた。

 

 立ち上がって、少しだけ照れたように言う。

 

「今日は、その……内緒ね」

 

「はい」

 

「雲山には、特に」

 

「分かってます」

 

 安心したように頷いて、消えた。

 

 机の上には、

 空の茶碗と、

 ほとんど減っていない酒。

 

 九日目は、

 

 一人縛りに引っかかった結果、

 少しだけ羽目を外して、

 それでも栗ごはんは、ちゃんと美味かった夜だった。

 

 

 

 十日目

 

 今日は、少し奮発した。

 

 理由は簡単だ。

 月も半ばを過ぎて、

 なんとなく、区切りが欲しかった。

 

 鮭。

 イクラ。

 

 値札を見て一瞬迷って、

 そのままカゴに入れる。

 

「……たまにはな」

 

 帰ってから、鮭を焼く。

 身をほぐして、骨を外す。

 

 ご飯をよそって、

 上に乗せる。

 

 最後に、イクラ。

 

 赤が映える。

 

 親子丼。

 

 机に並べて、椅子を引く。

 

「……」

 

 向かいの席に、もう人がいる。

 

 足を組んで、腕を組んで、

 いかにも退屈そうな顔。

 

 比那名居天子だった。

 

「ふーん」

 

 丼を覗き込んで、鼻を鳴らす。

 

「今日は、ちょっといい物じゃない」

 

「まあ」

 

「分かってるわよ」

「こういうの、普段は作らないでしょ」

 

 勝手に決めつける。

 

 でも、否定する気もしない。

 

「いただきます」

 

 先に言われた。

 

 一口。

 

 次に、イクラ。

 

「……」

 

 天子は一瞬だけ黙る。

 

「悪くないわね」

 

「それはどうも」

 

「“悪くない”って言われて喜ぶ顔じゃないでしょ」

 

「慣れてます」

 

 天子は鼻で笑う。

 

「人間のくせに、変に落ち着いてるわね」

 

「そうですか」

 

「ええ」

 

 もう一口。

 

「普通、私が来たらもっと慌てるものよ」

 

「最近、色々来るんで」

 

「私を“色々”に入れるの?」

 

「入りますね」

 

 一瞬、間が空いて。

 

 天子が笑った。

 

「はは、言うじゃない」

 

 丼を持ち上げて、豪快に食べる。

 

「でも、こういうのは好きよ」

 

「親子丼です」

 

「知ってるわよ」

 

 イクラを一粒、口に放り込む。

 

「贅沢の仕方が、ちょっと地味だけど」

 

「性分です」

 

「でしょうね」

 

 天子は満足そうに息をついた。

 

「でもさ」

 

「はい」

 

「こういうの、一人で食べるより」

「誰かと食べた方が、悔しくなくていいわね」

 

「悔しい?」

 

「奮発したのに、独り占めってのがね」

 

「……なるほど」

 

 最後の一口。

 

「ごちそうさま」

 

 天子は箸を置いて、偉そうに言った。

 

「今日は合格」

 

「何のですか」

 

「私の基準」

 

「それ、意味あります?」

 

「気分的に」

 

 立ち上がって、振り返る。

 

「また、こういう日があったら来るわ」

 

「奮発したらですね」

 

「ええ、ちゃんと」

 

 そう言って、消えた。

 

 机の上には、

 空の丼と、

 少し軽くなった財布。

 

 十日目は、

 

 偉そうな天人に合格をもらって、

 親子丼がきれいになくなった夜だった。

 

 

 

十一日目

 

 今日は、実家から届いた箱を開けるところから始まった。

 

 中身は、さつまいも。

 とにかく、さつまいも。

 

「……秋だな」

 

 土の匂いが、まだ残っている。

 

 焼き芋にするには多すぎる。

 保存するにも限度がある。

 

 考えた末、

 今日は――

 

 薩摩芋ご飯。

 薩摩芋の味噌汁。

 

 徹底的に、芋。

 

 米と一緒に炊いて、

 皮付きのまま味噌汁へ。

 

 甘さが、湯気に混じる。

 

 机に並べる。

 

 茶色と、黄色。

 派手さはないが、落ち着いた色合い。

 

 椅子に座る。

 

「……」

 

 向かいの席に、静かな気配。

 

 紅葉色の衣。

 

 **秋静葉**が、すでに腰掛けていた。

 

「……いい匂い」

 

 声は小さく、柔らかい。

 

「薩摩芋です」

 

「ええ、分かるわ」

 

 静葉は、机の上を一度見渡す。

 

「ちゃんと、秋の味ね」

 

「実家から、沢山送られてきまして」

 

「そう」

 

 箸を取り、

 一口。

 

 ゆっくり、噛む。

 

「……優しい」

 

 それだけ言って、

 また一口。

 

 味噌汁も啜る。

 

「甘さを、前に出しすぎていないのがいいわ」

 

「意識はしてないです」

 

「それが一番」

 

 会話は少ない。

 でも、落ち着く。

 

 食事が進むにつれて、

 箱いっぱいの芋のことを思い出す。

 

「あの」

 

「なに?」

 

「まだ、かなりあるんですけど」

 

 静葉は顔を上げる。

 

「……持って帰ります?」

 

 一瞬、間。

 

 静葉は首を横に振った。

 

「いいえ」

 

「?」

 

「こっちにも、たっぷりあるの」

 

 そう言って、立ち上がる。

 

 どこからともなく、

 上品な風呂敷を取り出した。

 

 包みを、机の端に置く。

 

 ずしり。

 

「……それは」

 

「薩摩芋よ」

 

 当たり前みたいに言う。

 

「選別も、乾かしも済んでる」

「少し寝かせてあるから、甘いわ」

 

「……ありがとうございます」

 

 静葉は、微笑んだ。

 

「巡るものだから」

 

 箸を置き、手を合わせる。

 

「ごちそうさま」

 

 去り際、振り返って一言。

 

「多いからといって、困らないで」

「秋は、分け合う季節よ」

 

 次の瞬間、席は空。

 

 机の上には、

 空の茶碗と、

 増えてしまった薩摩芋。

 

「……減らないな」

 

 そう呟きながら、

 風呂敷包みを持ち上げる。

 

 確かに、いい芋だ。

 

 十一日目は、

 

 実家の芋が減らず、

 秋の神様の芋が増えて、

 それでも、ちょうどいい気分で終わる夜だった。

 

 

 

 十二日目

 

 今日は、シチューにした。

 

 白い鍋。

 牛乳。

 玉ねぎ。

 ――そして、さつまいも。

 

 具を入れて、煮て、

 火を弱めて、待つ。

 

 ご飯も炊いた。

 

「……また芋だな」

 

 でも、もう数は数えていない。

 

 机に並べる。

 

 さつまいものシチュー。

 白飯。

 

 椅子を引く。

 

「……」

 

 向かいの席に、軽い気配。

 

 帽子を被った影が、どさっと座った。

 

 霧雨魔理沙だった。

 

「こっちも芋かよ」

 

 第一声が、それ。

 

「何故か、増えちゃってな」

 

「そっちも?」

 

 魔理沙は、シチューを覗き込みながら言う。

 

「今、幻想郷だとさ」

「さつまいも異変が起きてるぜ」

 

「どんな異変だよ」

 

「聞かない方がいい」

 

 即答。

 

「まぁ、今頃」

 スプーンを取って、続ける。

「霊夢が元凶をぶちのめしてるぜ」

 

「……またか」

 

 一口。

 

 魔理沙も、シチューを口に運ぶ。

 

「……」

 

 少し間。

 

「魔理沙は、解決に参加しなかったのか?」

 

「いんや」

 

 即否定。

 

「途中までは参加したぜ」

「でもな」

 

 もう一口。

 

「芋に飽きたから、逃げてきた」

 

「逃げてきた先が、ここか」

 

「そう」

 肩をすくめる。

 

「でも、これだぜ」

 

 スプーンを咥えたまま、続ける。

 

「……悪かったな」

 

「別にいいぜ」

 

 魔理沙は、もぐもぐしながら言う。

 

「まぁ、味変が出来てることは評価すんぜ」

 

「実は……」

 

 立ち上がって、冷蔵庫を開ける。

 

 取り出したのは、小さな皿。

 

 ――スイートポテト。

 

「……おい」

 

 魔理沙の動きが止まる。

 

「まだ出るのかよ」

 

「実家と、神様と、異変の合わせ技だ」

 

「完璧だな」

 

 一瞬、天井を見る。

 

「……OK」

 

 魔理沙は、箸を持ち直した。

 

「とことん付き合ってやるよ」

 

「やけくそだろ」

 

「やけくそだぜ」

 

 シチュー。

 ご飯。

 スイートポテト。

 

 芋が、減らない。

 

 でも、魔理沙は笑っている。

 

「まぁさ」

 

 最後の一口を飲み込みながら言う。

 

「異変の後に食う飯は、だいたいうまいんだ」

 

「それ、理屈あります?」

 

「ない」

 

 即答。

 

「でも、そういうもんだ」

 

 皿は、空。

 

「ごちそうさま」

 

 魔理沙は、満足そうに立ち上がる。

 

「霊夢には言っとくぜ」

「ここで、芋処理が進んでるってな」

 

「余計なことを……」

 

「感謝されるかもよ?」

 

 笑って、消えた。

 

 机の上には、

 空の皿と、

 まだ残っている芋。

 

 十二日目は、

 

 異変から逃げてきた魔法使いと、

 さつまいも異変の余波を、

 最後まで食べきれなかった夜だった。

 

 

 

 

 十三日目

 

 今日は、天丼にした。

 

 理由ははっきりしている。

 さすがに、飽きた。

 

 衣を用意して、

 油を温める。

 

 海老。

 かぼちゃ。

 舞茸。

 ししとう。

 

 別の具材を、いつもより多め。

 

 それでも――

 最後に、さつまいも。

 

 完全には、外せなかった。

 

「……これで最後だな」

 

 自分に言い聞かせて、揚げる。

 

 ご飯に乗せて、

 たれをかける。

 

 天丼。

 

 机に並べて、椅子を引く。

 

「……」

 

 向かいの席に、

 落ち着いた気配。

 

 土の色の服。

 

 秋穣子が、にこにこと座っていた。

 

「わぁ」

 

 丼を覗き込んで、目を輝かせる。

 

「いい揚げ色ね」

 

「……正直に言います」

 

「なに?」

 

「もう、さつまいもはいらないぞ」

 

 一瞬。

 

 穣子はきょとんとしてから、

 小さく笑った。

 

「それがね」

 

 箸を取って、さつまいも天を一口。

 

「異変の反動で、今は芋不足なのよ」

 

「……は?」

 

「みんな芋にうんざりして」

「畑に手を出さなくなっちゃって」

 

 さらっと言う。

 

「だから、これからしばらく」

「逆に貴重」

 

「そんな馬鹿な」

 

「ほんとほんと」

 

 かぼちゃを一口。

 

「美味しいけどね」

 

「そこは評価してくれるんだな」

 

「もちろん」

 

 穣子は、丼を持ち上げる。

 

「でもさ」

 

「?」

 

「飽きるくらい食べたってことは」

「ちゃんと実りがあったってことよ」

 

 海老天を、さくっと。

 

「不作より、ずっといい」

 

 理屈としては、正しい。

 

「……理屈は分かる」

 

「でしょ?」

 

 穣子は満足そうだ。

 

「次は、芋なしでもいいから」

「芋を嫌いにはならないでね」

 

「努力します」

 

「努力で済ませるとこが人間よね」

 

 笑う。

 

 天丼は、きれいに空になる。

 

「ごちそうさま!」

 

 手を合わせて、立ち上がる。

 

 去り際、振り返って一言。

 

「ちなみに」

「来年は、また豊作だから」

 

「……聞かなかったことにします」

 

 楽しそうに笑って、消えた。

 

 机の上には、

 空の丼と、

 胃袋の限界。

 

 十三日目は、

 

 もう要らないと言った芋が、

 実はこれから足りなくなると知って、

 天丼だけが静かに残る夜だった。

 

 

 

 

 十四日目

 

 今日は、渋めにした。

 

 きんぴらごぼう。

 鮭のハラミの塩焼き。

 白飯。

 

 油は控えめ。

 味も、強くしすぎない。

 

「……落ち着くな」

 

 机に並べて、椅子を引く。

 

「……」

 

 向かいの席に、静かな気配。

 

 青紫の影が、ふっと形を持つ。

 

 **パチュリー・ノーレッジ**が、咳払いもなく座っていた。

 

「こんばんは」

 

「……こんばんは」

 

 声は小さい。

 でも、疲れてはいない。

 

 机の上を一瞥して、眉がわずかに動く。

 

「随分、地味ね」

 

「今日は、体に優しい日です」

 

 パチュリーは、きんぴらを少し箸で寄せる。

 

「……悪くないわ」

 

 一口。

 

 噛む回数が、多い。

 

「ごぼうは、血の巡りにいい」

 

「詳しいですね」

 

「魔女だから」

 

 即答。

 

 次に、鮭のハラミ。

 

 脂の部分を、ほんの少しだけ。

 

「……これは」

 

 短く、息を吐く。

 

「脂が強いのに、塩が軽い」

 

「焼きすぎないようにしました」

 

「正解」

 

 それ以上、褒めない。

 でも、箸は止まらない。

 

 ご飯を一口。

 きんぴら。

 鮭。

 

 順番が、きっちりしている。

 

「最近、芋が多かったでしょう」

 

「……はい」

 

「今夜は、切り替えね」

 

 そう言って、味噌汁を――と思ったが、ない。

 

 パチュリーは気にしない。

 

「引き算の献立」

「こういうのは、長く続く」

 

「続ける前提なんですか」

 

「もう、続いてる」

 

 視線だけ、こちらに向く。

 

「来る側も、作る側も」

 

 少し間。

 

「……ごちそうさま」

 

 食べ終わるのが、早い。

 

 立ち上がる前に、ひとこと。

 

「本はね」

「毎日読まなくてもいいけど」

「机は、毎日使う」

 

「……はい?」

 

「今日の机は、いい」

 

 それだけ言って、消えた。

 

 机の上には、

 空の皿と、

 油の残らない匂い。

 

 十四日目は、

 

 魔女に“いい”と言われて、

 きんぴらが妙に誇らしく感じる夜だった。

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