もしユメ先輩が居なくなった直後のホシノが現代のアビドスに来たら 作:気弱
ホシノが屋上でお昼寝に出かけた、のどかな昼下がり。
部室に残ったメンバーが装備の点検をしていると、シロコが唐突に、メンテナンス中の銃を置いて口を開いた。
「ん。……私、また気づいたことがある」
「ん。……同じ私だけど、懲りないね」
隣でクロコが呆れたように溜息をつく。「昨日あんなにシゴかれたのに、まだ先輩の分析をするなんて、よほど筋肉痛が足りないみたい」
「ん。痛い。けど、これはアビドスの未来に関わる重要な推論」
シロコは無理やり立ち上がろうとしたが、昨日の模擬戦のダメージが残っているのか、足がガクガクと震えて生まれたての小鹿のようになっている。
「……それで、今度は何に気づいたんですか?」
アヤネが半眼で尋ねると、シロコはセリカをビシッと指差した。
「ん。ホシノ先輩は、私たち後輩を等しく大切にしてくれている。……けど、**セリカを一番気に入っている。**そんな気がする」
「わ、わわっ、私!?」
急に名前を呼ばれたセリカが、顔を真っ赤にして飛び上がった。「な、なによ急に! 私はいつも通り、あのダラけた先輩を叱ってるだけじゃない!」
「えっと……シロコ先輩、どうしてそう思うんですか?」
アヤネが少しだけ不服そうな顔で聞き返すと、シロコは淡々と分析を述べた。
「ん。よく考えて欲しい。確かに罰とかは一緒に受けさせてるけど、基本、セリカには甘い。……セリカが怒ると、ホシノ先輩はいつもより少しだけ楽しそうにしてる。まるで、セリカの強さを誰よりも信頼しているような……」
「……あはは、シロコちゃん、鋭いねぇ」
その話を聞いていたユメ先輩が、困ったような、けれど温かい苦笑いを浮かべた。
(……これは私が言ったらダメなやつだよね。ホシノちゃん、未来に行った時に一番最初にお世話になったのがセリカちゃんだなんて。孤独だったホシノちゃんに一番に寄り添ってくれたり、初めて水族館に連れて行ってくれた時の話を、あの子、本当に宝物みたいに楽しそうに話してくれたもんね)
ユメだけは、ホシノからみんなには教えられていない「未来の出来事」まで聞いていた。だからこそ、今のホシノがセリカに向ける、どこか特別で深い「慈愛」の理由を知っていたのだ。
そんな二人の秘密を知る由もないシロコは、ガクガクする足を必死に押さえながら続けた。「ん。正直、少し羨ましい。……何か、私たちの知らない『絆』があるみたい」
「な、なによそれ! 私が1番頼りないから、心配で見張られてるだけでしょ!」
真っ赤な顔で反論するセリカ。その時――。
「…………うへ。私の居ない間に、また面白そうな話をしてるねぇ?」
背後から聞こえた、聞き慣れたのんびりした声。振り返ると、いつの間にか戻っていたホシノが、ドアに寄りかかってニヤニヤと笑っていた。
「ホ、ホシノ先輩! いつからそこに……!」
「ん? セリカちゃんが一番可愛いって話のあたりからかなー?」
(……危ない危ない。シロコちゃんの勘の良さは、相変わらず心臓に悪いねぇ。あっちの世界で、あんなに頑なだった私が最初に気を許しちゃったのがセリカちゃんで、こっちのセリカちゃんに当時の面影を重ねちゃってたなんて……口が裂けても言えないよ)
ホシノは内心の冷や汗を隠し、セリカの隣に歩み寄ると、真っ赤になっている彼女の頭を乱暴にかき回した。
「ま、セリカちゃんは怒ってても可愛いからねぇ。『おじさん』、ついつい構いたくなっちゃうんだよ」
「もうっ! 子供みたいに撫でないでよ!」
セリカが手を振り払うが、ホシノは楽しそうに笑っている。その瞳の奥には、未来で自分の凍りついた心を溶かしてくれた「アビドスの良心」への、消えない感謝の色が宿っていた。
「……さ、面白い話も終わったところで。シロコちゃん、足がガクガクしてるみたいだけど、リハビリにもう一回模擬戦、行ってみようか♪」
「ん!!!(嫌だ!!!)」
結局、アビドスの部室には、いつもの絶叫と筋肉痛の予感が戻ってくるのであった。
こちらのお話が元になってます
こんな事があったら無意識に特別扱いしますよね〜
https://syosetu.org/novel/397928/2.html
すみません!編集前のを載せてました!(02:53)