走行する電車の規則正しい振動と、低い走行音。
特異4課の面々は、重要人物の護衛任務を兼ね、貸切に近い車両に乗り込んでいた。
ダンテは、三人掛けのシートを贅沢に使い、コートの襟を立ててまどろんでいた。その背中には、相変わらず剥き出しの**『リベリオン』**が、魔力によって椅子と背中の間に固定されている。
「……ダンテ。お前、さっきから寝てばかりだが、ちゃんと周囲を警戒しているのか?」
向かいの席で、アキが神経質そうに窓の外を見ながら声をかける。
「……ハッ。……寝てる間も、俺の耳はピザの配達バイクの音を聞き分けられるようにできてるんだよ、お兄さん」
ダンテは薄く目を開け、皮肉げに笑った。
その直後だった。
キィィィィィィィン!! という、耳を劈くような金属の摩擦音が車両に響き渡った。
緊急停止ではない。何者かが、走行中の車両の屋根を「切り裂いた」音だ。
天井の鋼鉄が紙細工のようにめくれ上がり、火花と共に、あの男が舞い降りた。
頭部と両腕に刀を宿した異形の姿――サムライソード。
「……見つけたぞ。……デビルハンターども」
サムライソードの着地と同時に、車両の前後の連結部から、銃を手にした黒スーツの集団が雪崩れ込んでくる。
「っ……! ダンテ!」
アキが反射的に叫ぶよりも早く、敵の銃口が一斉に火を吹いた。
――ガガガガガガガ!!
狭い車内に、鉄の雨が降り注ぐ。
だが、弾丸がダンテの身体に触れる寸前。
彼はソファから「消えた」。
「……。狭い箱の中でのパーティーか。……少しは客の好みを考えたらどうだ?」
次の瞬間、ダンテはサムライソードの背後に立っていた。
その右手には、いつの間にか背中から吸い付くように引き抜かれた『リベリオン』が握られている。
「……。貴様、いつの間に……!」
「……。挨拶がまだだったな。……『鉛のプレゼント』、昨日のお返しだぜ」
ダンテはリベリオンを軽々と回して肩に担ぐと、空いた左手でホルスターから漆黒の銃、**『エボニー』**を引き抜いた。
至近距離での射撃。
放たれた魔弾は、サムライソードが刀で防御する暇さえ与えず、彼の胸部を激しく叩き、車両の壁まで突き飛ばした。
「アキ! ガキどもを連れて後ろの車両へ行け。……ここは少し、風通しが良くなりそうだからな」
ダンテがリベリオンを水平に構える。
彼の全身から、紅い闘気が立ち上り、列車の空気を一変させた。
「……。さあ、終着駅まで踊り明かそうぜ。……アンタがそれまで生きていれば、の話だがな」