剥き出しになった天井から、凄まじい風切り音が車内に吹き込む。
サムライソードは壁を蹴り、姿勢を低く保ったまま、列車の揺れを吸収するように床を滑った。
「……舐めるなよ。……さっきまでの俺とは違う!」
サムライソードの姿が掻き消える。
超高速の抜刀術。一瞬で数十回の斬撃がダンテの全身へ、あらゆる角度から放たれた。それはもはや肉眼では捉えきれない「死の網」だ。
だが、ダンテは一歩も動かない。
リベリオンを右手に、左手を軽く構える独特の構え――『ロイヤルガード』。
キン! キィン! キン!
激しい金属音が車内に連鎖する。
ダンテはサムライソードの神速の刃が触れる「刹那」にだけ、左手に魔力を集中させ、最小限の動きですべてを弾き返していた。一撃ごとに、ダンテの周囲で紅い火花が爆ぜ、衝撃波が車内の座席をなぎ倒す。
「……。悪くない。……だが、リズムが一定すぎて欠伸が出るぜ」
最後の一撃。サムライソードが全力で放った横一閃。
ダンテはその刃をあえて掌で「受け」、溜め込んだ衝撃を自らの魔力へと一気に変換(リリース)した。
「……お返しだ。とっておきの一撃をやるよ」
爆発的な魔力を乗せたダンテの拳が、サムライソードの腹部にめり込んだ。
轟音と共に、サムライソードの巨体が隣の車両へと突き飛ばされ、連結部の鋼鉄の扉を紙屑のように歪ませて消えていく。
「……。ふぅ。……さて、掃除の時間だな」
ダンテが周囲を見渡せば、銃を構えた黒スーツの集団が、狼狽えながら引き金に指をかけていた。
その時、列車の屋根がさらに大きく弾け飛んだ。
「ギヒャハハハハ! ド派手にやってるのう、ダンテ!」
「おいダンテ! 俺の獲物残しとけよ!!」
降ってきたのは、血のハンマーを振り回すパワーと、エンジン音を唸らせるチェンソーマン――デンジだ。
「……ハッ。……二人まとめてお出ましとは。……賑やかなパーティーになりそうだな、ガキども」
ダンテがリベリオンを回し、挑発するように不敵に笑う。
だが、その直後、列車の窓ガラスが外側から一斉に割れた。
「……。手こずっているみたいね。……『蛇、吐き出し』」
列車の外側、並走するように出現した巨大な蛇の悪魔。
その口から、死霊のような姿に変えられた公安のデビルハンターたちが、異形の「武器」として吐き出された。
「……。死人を使い潰すか。……地獄の沙汰も金次第ってか? ……気に食わねえな、お姉さん」
ダンテの瞳から、余裕の笑みが消える。
リベリオンを構え直し、本格的な戦闘スタイルへ移行しようとしたその時――。
――グチャリ、と。
何百キロも離れた京都の神社から、マキマが「不可視の指」を突き立てた。
ダンテの周囲にいた黒スーツの男たちが、突如として捻り潰されたトマトのように、肉の塊へと変わっていく。
「……。ハッ。……こいつは驚いた」
ダンテはリベリオンを背負うことなく、その凄惨な光景を冷めた瞳で見つめた。