叛逆の悪魔   作:あめんぼユカイ

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6-1: Cola, Coffee and the Crimson Soul

 

 午前六時。

 意識の輪郭が、枕元に置いた目覚まし時計の微かな駆動音によって、ゆっくりと結ばれていく。

 俺――早川アキは、布団の中で一度だけ深く呼吸をし、肺の中に残った昨夜の重い空気を吐き出した。まだカーテンの隙間から差し込む光は弱く、部屋は薄い群青色に沈んでいる。

 布団から出ると、肌寒さが腕を撫でた。

 まずは寝室を出て、洗面所へ向かう。

 蛇口を捻ると、静寂を破って勢いよく水が流れ出した。手のひらで受け止めた水は、冬の冷たさを残して肌を刺す。その冷気が、こびり付いた眠気を削ぎ落としてくれる感覚が好きだった。

 鏡の中の自分と向き合う。

 長い髪を後ろで一つにまとめ、ゴムで縛る。

 指先に伝わる髪の感触、肌を撫でる水滴の重み。一つ一つの所作を確認するように、俺は日常を組み立てていく。

 キッチンに立ち、まずはやかんに水を張った。

 コンロのつまみを回すと、カチカチという火花が飛ぶ音の後に、ボッと青い炎が宿る。水が温まるまでの間、俺はキッチンの窓を開けた。

 ひんやりとした朝の空気が、部屋の中へ流れ込む。

 湿った土の匂いと、微かな排気ガスの匂い。遠くでカラスが鳴く声が響き、東京という街がゆっくりと脈打ち始める音が聞こえる。

 やがて、シュンシュンとやかんが鳴り始めた。

 沸騰したての湯を、急須に注ぐ。

 茶葉が躍り、独特の香ばしさが狭いキッチンに広がっていく。

 この時間が、一番落ち着く。

 これから始まる、悪魔との殺し合いや、騒がしい同居人たちとの小競り合いから隔絶された、唯一の聖域。

 ……だが、その静寂は、いつも通りの「異音」によって破られる。

 

「……おいお兄さん。……朝から随分と、丁寧な仕事をしてるじゃないか」

 廊下の暗がりから、普段は羽織っている赤いコートを片手に持ちながら影がゆらりと現れた。

 ダンテだ。

 彼はまだ寝ぼけ眼のまま、大きな欠伸をしながらリビングのソファに倒れ込んだ。

 その背中には、相変わらずあの禍々しい大剣『リベリオン』が張り付いている。

 銀色の刀身が、朝の光を反射して不吉な煌めきを放った。

 

「起きたか。朝食はもう少し時間がかかる……それと、朝からその剣を振り回すなよ。掃除の邪魔だ」

「分かってるって……こいつも、朝は機嫌が悪いんだ」

 

 ダンテが指先でリベリオンの鍔にある髑髏を軽く弾くと、まるで剣が意志を持っているかのように、ひとりでに床を滑って壁際に直立した。

 俺はため息をつき、茶を啜る。

 

 こうして、俺のいつもの朝に、赤い異物が混ざり込むのが日常の風景となってしまった。

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