叛逆の悪魔   作:あめんぼユカイ

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6-4: Cola, Coffee and the Cinnamon Soul

 

 ドタドタと廊下を叩く足音が、朝の静かな余韻を容赦なく踏み荒らしていく。

 

「飯ィ! 卵の匂いがするぞアキィ!」

「待てデンジ! ワシが先じゃ! 今日はワシが一番に座ると決めておったのじゃ!」

 

 リビングのドアが勢いよく開き、寝癖のついたデンジと、角をぶつけそうになりながら割り込むパワーが雪崩れ込んできた。二人は空腹の獣のような目をして食卓に飛びつき、椅子をガタガタと鳴らす。

 アキは深くため息をつきながら、人数分の皿をテーブルに並べた。

 炊きたての米から立ち昇る、甘く柔らかな湯気。

 出汁の香りを閉じ込めた黄金色の卵焼き。

 そして、ダンテが淹れたコーヒーの、重厚でほろ苦い香りがまだ部屋の隅に漂っている。

 

「……座れ。お前ら、手は洗ったんだろうな」

「洗った洗った! ほら、見ろよ!」

「ワシもじゃ! 水の冷たさに勝利してきたぞ!」

 

 デンジとパワーは、アキが差し出したご飯を待ちきれない様子で受け取る。

 ふと、デンジが鼻をクンクンと鳴らして、ダンテの前のマグカップを覗き込んだ。

 

「……なんだ、これ。アキの茶じゃねえな。すげぇ苦そうな匂い……」

「それはダンテの『兄貴直伝』のコーヒーだ。お前らにはまだ早い」

「はぁ!? 俺だって大人だぞ! 一口寄こせよダンテ!」

 

 ソファからゆっくりと立ち上がったダンテは、空のコーラ缶をテーブルに置き、不敵に笑ってデンジの頭を大きな手でわしづかみにした。

 

「……。よせよ。こいつを飲むと、背中が伸びるどころか、小言の多い幻聴が聞こえてくるようになるぜ。……それより、お兄さんのメシを食え。冷めると味が落ちる」

 

 ダンテはそう言いながら、アキが自分のために用意した席に腰を下ろした。

 

 「いただきます」

 

 バラバラな声が重なり、早川家の朝食が始まる。

 アキの卵焼きを口に運んだデンジが、「あちっ」と言いながらも幸せそうに頬張る。

 パワーは野菜を巧妙に避けながら、卵焼きを奪い取るように口へ放り込む。

 

 ダンテは箸を器用に使い、アキの作った味噌汁を一口啜った。

 

「……。ハッ。……悪くない。……こいつはコーラじゃ代わりが務まらねえ味だ」

「……当たり前だ。……おいパワー、ネギを避けるな。食え」

「嫌じゃ! ワシは血の通っておるものしか食わんと言っておろう!」

 

 アキは小言を言いながらも、自分の茶を啜り、一瞬だけダンテと視線を合わせた。

 さっきまでの、あの張り詰めた「剣士」の空気は、今はもうない。

 

 だが、食卓の下に目を向ければ、壁際に立てかけられたリベリオンと、布に包まれた釘の剣が、静かに、しかし確かな存在感で並んでいる。

 

 朝日の光が食卓を白く飛ばし、咀嚼する音、箸が皿を叩く音、そして他愛もない言い合いが、かもめ食堂の映画のワンシーンのように穏やかに流れていく。

 この騒がしさが、自分にとっての「救い」になり始めていることを、アキは自覚せずにはいられなかった。

 

「……。よし、食い終わったら特訓だ。……ダンテ、あんまりこいつらを壊しすぎないでくれよ」

「心配するな、お兄さん。……壊れたら、また組み立て直してやるさ。……俺は、しぶとい奴は嫌いじゃない」

 

 ダンテはコーラの最後の一滴を喉に流し込み、満足げに喉を鳴らした。

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