叛逆の悪魔   作:あめんぼユカイ

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2-1: Pizza, Blood and Junkies

東京、公安対魔特異4課。

 早朝の事務所に響き渡るのは、爽やかな鳥のさえずり……ではなく、誰かの盛大な欠伸と、ジャンクフードの箱がぶつかり合う音だった。

 

「……おい。そこで寝るなと言ったはずだ、ダンテ」

 

 早川アキが事務所のドアを開けるなり、眉間に深い皺を刻む。

 視線の先では、深紅のコートを脱ぎ捨てたダンテが、応接用のソファに器用に足を引っ掛け、頭を下にして寝そべっていた。手には半分溶けたストロベリーサンデーのカップが握られている。

 

「……ん? ああ、おはよう、お兄さん。ここのソファ、事務所のより寝心地が良くてな。つい長居しちまった」

 

 ダンテは重力を無視したような動きで跳ね起き、寝癖のついた銀髪を雑にかき上げた。

 アキは溜息をつき、自分のデスクに鞄を置く。

 

「昨日の報告書はどうした。お前が勝手に新宿の『ビルの悪魔』を倒したせいで、被害総額の計算が追いつかないと会計課が泣いている」

「報告書? そいつは俺の辞書にない単語だな。……それよりアキ、この街の『一番高いピザ』ってのはどこで食える? マキマのお姉さんに『経費で落としていい』って言われたんだが」

「……。マキマさんがそんなことを言うはずがないだろう。嘘をつくにしても、もう少しマシな相手を選べ」

 

 アキが呆れ果てたように言うと、背後の扉が勢いよく開いた。

 

「おいダンテ! ワシの修行を始めるぞ! 今日こそは貴様を屈服させ、ワシの家来にしてくれるわ!」

「おー、ダンテ。ピザ食わせろよ、ピザ」

 

 乱入してきたのは、頭に角を生やした魔人のパワーと、眠そうに目をこするデンジだ。

 パワーは昨日のダンテの戦いぶりを見て、内心では怯えつつも、持ち前の傲慢さで「こいつの技を盗めばワシが最強になれる」と踏んだらしい。

 ダンテは二人を見やり、不敵に口角を上げた。

 

「修行、ね。いいぜ、ちょうど退屈してたところだ。……だが、俺のレッスンは高くつくぞ? 死にたくなければな」

 

 ダンテは壁に立てかけていたリベリオンを、指一本で軽々と拾い上げ、肩に担いだ。

 

「デンジ。お前、その胸のヒモ……引っ張るとどうなるんだ?」

「あ? これか? ……いや、こいつはマキマさんに見せる時以外は、あんまり使いたくねえんだわ。なんかこう……疲れるしよ」

 

 デンジは適当に濁した。ポチタのことは、まだ誰にでも話せるようなことではない。

 ダンテはそれ以上追求せず、ただ面白そうに目を細めた。

 

「そうか。まあ、出し惜しみはしないことだ。……悪魔狩りの戦場じゃ、一瞬の迷いが命取りになる。……お前の中に眠ってる『何か』、そいつが吠えたがってるのが、俺には聞こえるぜ」

 

 その言葉に、デンジの胸の奥がドクン、と脈打った。

 昨日会ったばかりの、この正体不明の男。

 言葉は軽いが、その瞳の奥には、地獄を何度も踏破してきた者だけが持つ、底なしの静寂が潜んでいる。

 

「……よし、決まりだ。今日の修行場所は――練馬の廃棄ビルにしよう。あそこなら、多少暴れても苦情は来ない」

 

 アキが監視役として同行を申し出る。

 ダンテは「監視役なんて必要ない」と言いかけたが、アキの手にある財布を見て思い直した。

 

「わかった、お兄さん。……その代わり、帰りに特上のピザを奢ってもらう。……いいな?」

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