練馬区外れ、解体工事が中断されたまま放置された巨大な廃ビル。
埃と錆の匂いが充満する広大なフロアに、四人の影があった。
「さて……。修行と言っても、俺は座学なんて教えちゃやれないぜ。ダンスのステップは、体で覚えるもんだ」
ダンテは広大なフロアの中央で、リラックスした様子で立っていた。その背中には、禍々しい髑髏が刻まれた銀色の大剣、**『リベリオン』**が鎮座している。鞘はなく、剥き出しの刃がダンテの魔力によって吸い付くように固定されており、彼の意志一つでいつでも手に吸い付く準備ができている。
「ワシの血の武器を食らって、泣いて謝るがいい! 死ねぇ!」
パワーが自身の血で生成した巨大なハンマーを振りかざし、一直線にダンテへ突っ込む。
ダンテは動かない。ハンマーが鼻先をかすめる直前、最小限の動きで首を傾げた。
「スピードは悪くないが、軌道が素直すぎるな」
ダンテの姿が、かき消えた。
直後、パワーの背後に現れた彼は、剣を抜くことさえせず、指先で彼女の角を軽く弾いた。
「ひぎゃっ!?」
「隙だらけだ。……おい、そっちの坊や(Kid)。お前も突っ立って見てるだけか?」
デンジは後頭部を掻きながら、ダンテの動きを凝視していた。
速い。いや、速いというより、まるで最初からそこにいたかのような自然さだ。
「……なあ、ダンテ。あんた、悪魔と契約してねえのに、なんでそんなに強いんだよ。……俺は、ポチタがいねえと、ただのバカなんだわ」
デンジの言葉に、離れた場所で見ていたアキが僅かに目を細める。
ダンテは、背中に手を回すこともなく、ただ意識を向けるだけで『リベリオン』を右手に手繰り寄せた。重厚な金属音が響き、髑髏の瞳が赤く輝く。
「契約か。……この世界の連中は、何かを差し出して力を得るのがルールのようだが。……俺に言わせりゃ、そいつは自分の魂を安売りしてるのと変わらねえ。……大事なのは、何を持っているかじゃない。……その力を、自分の意志(Will)でどう振り回すかだ」
ダンテはリベリオンの重厚な刀身を肩に担ぎ、不敵に笑う。
「デンジ。お前の中にある『何か』は、お前の所有物か? それとも、お前を食い潰す呪いか?」
「……。わかんねえよ、そんなの」
「なら、試してみろ。……殺す気で来い。……来ないなら、こっちから行くぜ」
ダンテの全身から、紅い魔力が陽炎のように立ち上る。
そのプレッシャーに、パワーは本能的な恐怖で膝を震わせ、アキは無意識に刀の柄を握りしめた。
デンジの心臓が、激しく警鐘を鳴らす。
この男は、本気だ。本気で「遊びの相手」を求めている。
「……。ちっ、わかったよ! 死んでも知らねえからな!」
デンジが胸のスターターロープを、力任せに引き抜いた。
――ガガガガガガガガ!!
エンジン音が廃ビルの中に響き渡る。
デンジの頭部と両腕から、凶悪なチェンソーの刃が突き出した。
初めてその姿を目の当たりにしたダンテは、一瞬だけ驚きに目を見開いたが。
「……チェンソー、か。……ハッ、最高にクールな顔面だな。……気に入ったぜ、坊や」
ダンテはリベリオンを軽々と回し、挑発するように手招きした。
「さあ、ショータイムだ。……『大当たり(Jackpot)』を引かせてみろよ」