叛逆の悪魔   作:あめんぼユカイ

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3-3: Katana vs Rebellion

巨大な蛇の顎(あぎと)が、ダンテを飲み込もうと頭上から迫る。

 逃げ場のない超至近距離。だが、ダンテは回避を選択しなかった。紅いコートを翻し、むしろその巨大な口内へと自ら飛び込んだのだ。

 

「……消えな」

 

 空中でリベリオンを逆手に一閃。

 放たれたのは、空間を真っ二つに断ち切る魔力の衝撃波――『ドライブ』。

 

 次の瞬間、巨大な蛇の頭部は、眉間から尾の先までを縦一文字に綺麗に割られた。内臓や肉が撒き散らされる間もなく、その巨躯は霧のように崩壊していく。この世界の悪魔が持つ「概念的な格」を、ダンテの純粋な「暴力」が上書きした瞬間だった。

 返り血一つ浴びることなく、ダンテは静かにアスファルトへ着地する。

 

「な……蛇の悪魔が、一撃で……!?」

 

 沢渡アカネの冷徹な仮面が剥がれ落ち、その瞳に初めて底知れない「恐怖」が宿った。彼女は理解したのだ。この男にとって、自分たちが呼び出した脅威は、遊び道具にすらなっていないことを。

 

「……撤退よ。……今はまだ、こいつとやる時期じゃない」

 

 沢渡の合図と共に、深手を負ったサムライソードが、苦渋の表情で後退し、影の中へと消えていく。

 ダンテは追おうとしなかった。

 背後の店内で倒れている、デンジやアキたちの「命の音」が急速に弱まっているのを感じ取っていたからだ。

 

「……おい、お兄さん。……勝手に死ぬんじゃねえぞ。まだピザの代金をもらってないからな」

 

 ダンテはリベリオンを背負い直すと、意識を失いかけているアキの傍らに跪いた。

 彼の手のひらから、微かな、だが力強い魔力が注がれる。死の淵を彷徨っていたアキの呼吸が、奇跡的に安定し始めたその時。

 背後から、血の海を全く汚さずに歩いてくる足音が響いた。

 

「……ひどい有様ね」

 

 マキマだった。

 彼女は周囲の惨状、そして消滅していく蛇の悪魔の残滓を見つめ、それから静かにダンテへと視線を移した。

 

「……少し間に合わなかったようだね。……それとも、あなたがわざと残したのかな?」

 

 ダンテは立ち上がり、マキマの同心円状の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。その視線には、媚びも恐れもない。

 

「ハッ。……俺を疑うのは、その不気味な瞳にマスカラでも塗ってからにしな、マキマ。……こいつらは生きてるぜ。……運が良かったな」

「……そうだね。……あなたの言う通りだね」

 

 マキマは淡々と答えたが、その視線はダンテの背のリベリオン、その鍔で不敵に笑う髑髏に固定されていた。

 

 支配の悪魔と、叛逆の魔剣士。

 二人の間に流れる沈黙は、先ほどの戦闘よりも遥かに重く、鋭い。

 

「……さて。……朝食の続きといこうか。……アキ、焼き魚の代わりにお前の財布でピザを注文しといてやるよ」

 

 ダンテはエボニー&アイボリーのグリップを軽く叩き、夜の帳が降り始めた街へと歩き出す。

 マキマは、その赤い背中をいつまでも無言で見つめていた。

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