旅人の見た幻想郷   作:千思万考

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今回はいつもよりも長いです。前後編にしようかとも思いましたが、結局1話に纏めました。


旅人、機と魔を携えて月を駆ける

 座敷牢から解放され、一応の自由を与えられてから一週間程。

月からの脱出計画を密かに練りつつ表面的には穏やかに過ごす日々を過ごしていた俺は、いつものように豊姫に連れ出されていた……が、今日は普段と異なる点が幾つか。

 

 

 「珍しいな、君が休みだとは」

 

 「私を何だと思っているんですか、田澤さん……私だって休日にはしっかり休息を取ります」

 

 

 そう、今回は依姫も隣に居るのだ。普段何かしら働いているように見える彼女だが、流石に休日返上で動いている訳では無いらしい。

任務の性質上、何か急を要する事態が発生したら別なのだろうが常に仕事の事のみ考えている訳でも無いらしい。それでも刀を離さず凛とした雰囲気を乱さない辺りは真面目だ。

その真面目さが、何故豊姫には備わらなかったのか。

 

 

 「……」

 

 「な、何かしら? そんな冷たい視線を……」

 

 「……いや、何でもない。で、今日は何処へ行くつもりなんだ? 見たところ、都からは離れているが」

 

 

 そしてもう1つ普段と異なる点は、豊姫が月の都の外を目指して歩いている事だ。いつもなら彼女が俺を連れ出すのは都の中の場所なのだが。

 

 

 「今日は海に行こうかと思って」

 

 「……姉さん、それは」

 

 「何時かは連れていくべきだって、話していたでしょう? 田澤さんにとっては故郷なんだから」

 

 「……?」

 

 

 俺の問いに豊姫は一応答えてくれたのだが、その後の依姫とのやり取りで更に疑問が増えた。海なのに俺の故郷とはどう言う事だろうか。

物凄く遡って深読みすれば、まあ確かに生命種の故郷は海なのだが……状況から考えてそのような意図で言っている訳でも無さそうだ。

 

 

 「海だとか故郷だとか言われても、いまいち要領を得ないんだが」

 

 「着けば分かるわ。それまでのお楽しみって事で、ね?」

 

 「あまり人の来ない場所ですし、田澤さんが気後れする事も無いと思いますよ」

 

 

 結局この場では何処へ行くのか具体的には分からなかったが、二人の様子を見る限りでは地上に関わりが有るような場所にでも行くのだろう。

それにしては海と言う単語がミスマッチなのだが……まあ、それこそ行けば分かる事か。現在進行で向かっているのだし、考えていても仕方の無い事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……そうか、故郷とはこう言う事だったんだな」

 

 「もしかしたら、あれが田澤さんの居た地上だとは信じられないかもと思ったけど……」

 

 「星について、理解しているようですね。一応説明の用意もしてきたのですが、やはり不要でしたか」

 

 

 二人に連れてこられたのは、澄んだ水を湛えた『海』。そして、漆黒の空に浮かぶのは白と青に彩られた星。月人にとっての地上こと、地球だ。

俺は地上から来た存在、地球を故郷と判断するのは普通の流れか。……厳密に言えば『俺』の故郷は全く異なるのだが、少なくとも否定する気は無い。

 

 

 「……しかし、此処へ俺を連れてきてどうするつもりだ?

  俺としては故郷を見ることが出来て嬉しいが、君達にとってはそうも行くまい」

 

 「田澤さんに喜んで欲しかった、と言うのも理由の1つでは有るんだけどね。この場所、『静の海』に連れてきた本題は違うわ」

 

 「地上が見えるこの場所で、改めて貴方に聞きたい事が有るんです。……田澤さん、地上に帰りたいですか?」

 

 「……唐突だな」

 

 

 あまり予想していなかった言葉が依姫の口から飛び出す。この問いかけ自体は今までにも何度かされているが、それは雑談の中での話だ。

しかし今回は、俺に地上への郷愁を煽る場所で、真剣な雰囲気を伴っての質問。これまでのように、半ば冗談として聞かれている訳では無い。

つまり本心から俺の答を聞きたいと言う事なのだろうが……どう返すべきだろうか。素直に帰りたいと言って、脱出手段を潰されると非常に困る。

かと言って、月に留まりたいと答えてしまうのにも同じような問題が有る。このような場合、曖昧に答えるのが俺の常套手段なのだが、それは最も悪手だろう。

 

 

 「……俺は、出来るならば地上に帰りたい。戻るべき、帰るべき場所は、俺にとって月では無いんだ」

 

 

 数秒迷った結果、誤魔化さずに返す事にした。彼女達が俺を此処へ連れてきた真意を考えれば、この期に及んで適当な言葉で調子を合わせる気は無い。

それが俺に世話を焼いてくれた彼女達に対する礼儀だろうし、これで俺への監視や封印が厳しくなっても甘んじて受けよう。彼女達には、これまで本当に助けられているのだから。

 

 

 「どうして田澤さんは、地上に帰りたいの? 地上に良い所は無いとまでは言わないけど、月の方が優れているのは確かな筈よ」

 

 「遥かに進んだ技術と知識、無駄に傷付けあう事の無い人々、高度な精神性。確かに、月は地上と比べて楽園とも言える。それは俺も同意見だ」

 

 「なら、何故? 遠慮していると言うのなら気負い過ぎです。田澤さんも月で暮らす権利は有ると、私が保証します」

 

 

 豊姫と依姫は、俺の答えに落ち着いた様子で問い返してくる。この様子だと俺の答え自体は予想がついていて、続ける質問も準備してあったのだろう。

しかし、俺の地上に帰りたい理由は月に遠慮しているからと言う後ろ向きな物では無い。月人である二人にこれを言うのは正直心苦しい所も有るのだが、しっかり伝えよう。

 

 

 「前にも何回か言っているが、俺は地上に住まう者達の生きようとする姿勢が好きなんだ。明日に向かって懸命な、その姿が」

 

 「それが他者を蹴落とした先にしか無い、血塗られた闘争の歴史でも? あまつさえ、その足掻きこそ生命に死を与える穢れで有ると言うのに?」

 

 「それに、月人もより良い明日を求めて日々を過ごしているのですよ。田澤さんの言い方では、その…… 私達が自堕落に生きているように聞こえます」

 

 「他者と争い殺しあう歴史と言うのは反論のしようが無いが、その中で何とか傷付けないよう互いを理解しようとする、その努力は尊い物だ。

  ……月人を非難する意図は無いが、そう聞こえたのならば謝る」

 

 「田澤さんは、穢れもまた尊いと言うのですか? 私には理解出来ません……」

 

 

 依姫は俺の返答を受けて、困惑したように言葉を発する。まあ仕方無い事か、月人の価値観からは遠く離れている思想だ。俺も、押し付ける気は無い。

 

 

 「理解出来ないのであれば、受け入れる必要は無い。ただ、俺はそう考えていると言う事を伝えておきたかった。君達には、知っていてもらいたい」

 

 「……でも、本当に帰りたい理由はそれだけ? 月をそもそも嫌いとか、月人が生理的に無理とか、そう言うような理由は無い?」

 

 「なんでいきなり自分達を卑下したのか分からないが……月も月人も個人的には好ましいよ。ここで生活するのも楽しいだろうな、とは思う。

  ただ、俺は本質的に旅人なんだ。1つ処に留まるのはどうも性に合わない。まだまだ未知に溢れた地上をこの足で歩いてみたいと思う。……残している人も居るしな」

 

 

 月で暮らすにしても、自分の意思で此処を訪れてからでなければ納得出来ない。

強制されたような形になるのは嫌いだ。こう言う事は、あくまでも自分の判断で決めたい。

 

 

 「……残している人って、まさかあの八雲ですか?

  そう言えば、そもそも田澤さんはあの妖怪を助ける為に月に来たようですし、もしかして……」

 

 「え、なになに? 田澤さんの好い人? きゃー、どんな人どんな人!?」

 

 「……そこに食いつくのかい」

 

 

 結構本気で自分の思いを語ったのだが、最後にこぼした言葉の方に印象を持っていかれたらしい。依姫は何を思ったのか八雲を話題に出し、豊姫はそれを本気にする。

 

 

 「八雲との交友は殆ど無いぞ、共通の知人の頼みで彼女を助ける形になったが……会ったのはあれで2回目だ」

 

 「ああ、安心しました。田澤さんの好みにケチを付ける訳では有りませんが、あの妖怪だけは駄目ですよ。何を考えているのか分かった物じゃ有りません」

 

 「んー、でもその言い方だと他に居るのは確実のようね。詳しく教えて欲しいわ、お願い!」

 

 「そうですね、宜しければお話を聞かせてもらいたいです」

 

 

 ……何だか二人とも妙に活き活きし始めたな。豊姫は言うに及ばず、依姫も一見冷静だが目が輝いている。

この類いの話題に女性が特別興味を示すのは、場所も時代も世界も超えて共通なのだろうか。あまり食い付いてこられても困るのだが……

 

 

 「君達は何か勘違いしているようだが、別に色気のある話では無いぞ。弟子を置いてきてしまったから、放っておけないと言うだけの話だ」

 

 「うーん。でも、そのお弟子さんって女の人でしょ?」

 

 「……まあ、そうだが。何故分かった」

 

 「女の勘って所ね。何となく、そんな感じがしたのよ」

 

 「弟子とは言っても、それ以外の面でも大切な人なんでしょうね」

 

 「む、むう」

 

 

 有無を言わさない二人の雰囲気にどうも圧倒されてしまう。この手の話題はあまり得意では無いのだ、余裕を漂わせて誤魔化すのにも限度が有るし。

と言うか、豊姫の直観も結構凄い物が有るな……まさか、殆ど何も言っていないのに弟子の性別まで見抜かれるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『海』のほとりで暫く世間話に花を咲かせた後は、普段通りに月の都を巡り遅くなってきた時間帯で屋敷に帰って来た。

依姫も入って三人だったとは言え、概ねいつもと変わらぬ一日だ。依姫の用意した食事を頂き、豊姫の面白おかしい話を聞きながら酒を舐め、床に就く。

客観的に考えて、とても罪人の待遇では無いだろう。普通に客人として持て成されているような気がするし、かけられた封印が無ければ自分の立場を忘れそうだ。

 

 

 「……しかし、何故今日は唐突に俺をあの場所へ? 俺を月に留めたいのであれば、故郷への思いを募らせると容易に予想できる場所へ連れて行くのは逆効果だろうに」

 

 

 暗がりの中、横になりつつ窓の外を眺め一日中ついて回った疑問を口に出してみる。

豊姫は良く分からないが、少なくとも依姫は俺を月に留めたいと考えている事は把握している。そして、そうだとすると今日の行動はしっくり来ない。

うやむやにして誤魔化さず故郷が見える場所にも案内した上で、地上よりも月を選んでほしいと言う正々堂々とした考えと言うのも彼女の性格を考えれば有りそうだが……

 

 

 「まあ、彼女達の好意として素直に受け取っておこう。最近、どうも疑り深くなっているな」

 

 

 囚われている立場なのだから全く警戒しないのもおかしいとは思うが、警戒し過ぎて荒唐無稽な陰謀論を展開するのも良くない。

そのように思い至り、今日はもう休もうと目を閉じる……のだが妙に胸騒ぎがする。彼女達が信用できないと言う訳では無く、理由の分からない焦りのような物だ。

 

 

 「……こう言う時は、動いてみるに限るな」

 

 

 この類いの胸騒ぎは意外と軽視出来ない。良くも悪くも、状況が大きく動く前に感じる物だ。

どうせこのままでは落ち着いて休めないし、胸騒ぎを感じる原因でも探しがてら夜風にでも当たってこよう。

 

 いつもの黒コートを羽織ろうとして、今は俺の手元に無い事を思い出す。防御用とは言え武装だし、寒いから返してくれと言っても通用しないだろう。

仕方なく、薄着のままで部屋を出る。耐えられない程寒くは無さそうだし、歩いている内に慣れる筈だ。まあ、気分的に嫌なだけで体調を崩すと言う事も無いのだし。

 

 

 「そう言えば、刀とコートも取り返さないといけないんだよな」

 

 

 この辺りはジレンマだ。取り戻す事が出来れば、脱出時に避けられないであろう戦闘が幾分有利になる。少なくともコートさえ有れば防御力は飛躍的に高まる。

だが取り戻すのは現時点では非常に難しい。何処に有るか分からないし、厳重に保管されているだろうから見付ける頃には戦闘が発生してしまう。それでは本末転倒である。

魔法が使えれば全ての問題は解決するんだが……最終的には、封印さえ無ければと言う結論になる。

 

 悩んでもどうしようもない事なので、それ以上は考えないようにしつつ寝室を出て外へ向かう。

流石に遅い時間帯なので屋敷の敷地内から出ようとすれば門番に止められるだろうが、庭を歩き回るくらいならば余程挙動不審でない限り見逃してくれる筈だ。

そのように予定を立てつつ、綿月達に迷惑がかからないよう極力静かに廊下を進んでいると。

 

 

 「……月の……田澤さんに……」

 

 「でも……彼が封印……」

 

 

 近くの部屋から綿月姉妹の会話が漏れ聞こえてきた。それだけなら盗み聞きをしないように立ち去るのだが、耳に入ったワードに反応して足を止めてしまう。

かなり失礼な事をしているとは自覚しつつも、気配を可能な限り隠蔽し忍び足で部屋に近付く。会話が普通に聞こえるギリギリの距離まで接近し、そこで聞き耳を立てる。

 

 

 「姉さん、本気なんですね? 田澤さんを能力で地上へ帰すなんて、冗談では済みませんよ」

 

 「ええ、本気よ。貴女も今日の田澤さんを見て、彼をこれ以上月に縛る訳にはいかないって思ったでしょ?」

 

 「思いましたが、それとこれとは話が別です。彼の刑期が終われば身柄も解放されます、その時まで待てば……」

 

 「依姫。本当に、そう思ってる?」

 

 

 やはりと言うべきか、内容は俺の処遇に関する物だ。しかし俺を帰すどうこうまで話が進んでいるとは、驚きを感じる。

純粋に嬉しさを覚える反面、話が上手く行き過ぎているのではないかと言う気もしてくる。殆ど濡れ衣とは言え、一応俺は立場として大罪人。

そんな俺を勝手に解放するのは、個人的に便宜を図ると言う次元を超えている。ほぼ確実に彼女自身が重罪を負わされるだろう、そこまでする理由が分からない。

 

 

 「『穢れた神をその身に宿す地上人』、そんな声も上の方では根強いのよ。予定されている刑期が終わって……いいえ、そもそも刑期が終わると思う?」

 

 「……」

 

 「今でも月への侵略は田澤さんの引き起こした事とされているくらいなのよ。色々と理由を付けて刑期を引き伸ばす光景なんて容易に想像出切るでしょう?」

 

 「……それは」

 

 

 予想していた事ではあるが、月の俺に対する処遇は決して温情ある物にはならないだろう。

今の二人の会話を聞く限り、このままでは今現在与えられている僅かな自由すら奪われそうである。

そして、彼女達は独断で俺を解放しようとしてくれているらしいが……これ以上俺の事情に巻き込む訳にはいかない。

 

 ……月で綿月姉妹と過ごす日々も楽しかったが、そろそろ頃合いか。

出来ればもう少し時間が欲しかったが、脱出計画は一応纏まっている。今すぐにでも行動は開始できる、彼女達が動く前に決行しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 限界まで高めた集中力で周囲の気配を探りつつ、夜の帳が下りた月の都を闇に紛れて進む。

目的地は月の羽衣や牛車型宇宙船を展示している例の博物館。まずはそこまで行かなければ、計画のスタートラインにも立てない。

武器も何も無いので文字通り着の身着のまま、おまけに魔法も身体能力を少し強化する程度の物しか使えない。だが、やるしかないのだ。

 

 

 「……ここまで追い込まれた状況だと、笑いさえ出てくるな」

 

 

 進んだ科学力を持った相手に身体能力強化のみで挑まなければならない上に、その強化も心細い物である。

捕らえられてから毎日数時間は瞑想の時間を取った事で、当初とは違いごく短時間なら戦闘にも耐えうるのが不幸中の幸いと言った所か。

 

 誰にも気付かれぬよう身を隠しながらも着実に進み、綿月の屋敷を出てから一時間程かけて博物館の前まで辿り着く。

まずは博物館に入る事が、俺が立てた脱出計画の大前提。そして、ここから先は引き返せない。流石にこの中に侵入すれば気付かれるのも時間の問題だ。

 

 

 「……今更躊躇する気は無い」

 

 

 だが、関係ない。引き返す理由も、必要も無いのだから。

予め目星を付けておいたポイント、行動開始地点に最も近い場所まで移動。外壁を駆け上り、博物館の屋根の上に登る。

そのまま館内に光を届ける天窓の前まで歩き。

 

 

 「……ッ!」

 

 

 飛び込む。割れる天窓、響く破砕音、起動する警報。

脚力強化の恩恵を受けている事で、高所からの着地でダメージを受けると言う間抜けな真似はしないで済む。

ここからは時間の勝負だ。数回訪れ、脳内に地図を描き、完全に記憶したルート。計画の第一段階、最初に目指すのは武器の調達。

警報音が鳴り響く中、ミリタリー部門の展示スペースに駆け込む。強化ガラスを拳で無理矢理砕き、ディスプレイされていた武器を強奪していく。

勿論展示物だから実弾・エネルギーは抜いてあるし、鑑賞するのはともかく兵器としてはガラクタばかりだ。しかし、中には……

 

 

 「よし、自力で動力をチャージできるタイプの武器も有る……予想通りだ」

 

 

 この世界において、魔力とは普通月の持つ力の事を指す。妖怪が夜に活性化するのも、魔力を妖力として自分に取り込むからだ。

俺が目当てにしている宇宙船も動力は月の魔力との事。ならば同じように月の魔力で動く武器も有るだろうと考えていたが、当たったようだ。

一分程あさり、月兎の使っていたライフルのプロトモデルと扇型の広範囲攻撃兵器とやらが一応の実用に耐えうると判断。あまり時間はかけられないので次へ進む。

 

 

 「侵入してから二分、ここまでは良い」

 

 

 次に目指すのは計画の第二段階、脱出手段の確保だ。宇宙船の展示スペースを目指しつつ、廊下に飾られている月の羽衣を一つ拝借していく。

月の羽衣は時代遅れの物と言う事らしく、ミリタリー部門と違って扱いは適当。俺としても出来れば使いたくない手段な訳だが、選択肢を増やすに越した事は無い。

 

 宇宙船に走り寄る。入館者用のパネルと豊姫の解説、そして俺の持つ『他の世界』の知識から殆どの操作法は分かっている。

操縦席……牛車で言う屋形部分に乗り込み、設定を弄る。月人文字も、図書館に通いつめ大体は覚えた。ニュアンスは理解する事ができる。

 

 

 「……予想してはいたが、動くまでにはまだ時間が必要か」

 

 

 仕方ない事では有る。この宇宙船は展示用であり、そもそも動かせるだけで御の字なのだ。月の魔力を取り込み、十分な動力を得る為には暫く待たなければならない。

本音を言えば、ここですぐにでも動いてもらいたかったが贅沢は言えない。最低限のチャージを終え、少なくとも自力で移動可能になるまでは耐えるしかない。

……そろそろ時間切れと言う事なのか、警備の者達の慌てた声が近づいてくる。後は俺がどれだけ上手く切り抜けられるか、そこにかかっている。

 

 

 「なっ、お前はあの地上人!? 何故、此処に!」

 

 「捕えろ、捕えろ! どうせ地上人に月の武器は扱えん!」

 

 

 目の前に現れたのは月人の集団。侮っているらしい面々に向けて、無言でライフルから光弾を連射する。

まさか地上人が銃の扱い方を知っているとは夢にも思わなかったらしく、警備兵達は面白いほどに動揺してくれた。

 

 

 「ぐおっ……!?」

 

 「馬鹿な、何故あいつが!」

 

 

 このライフルから放たれる光弾は殺傷性の無い物では有るが、一発でも当たれば痛い。それを纏めて叩き込まれた警備兵達は崩れ落ち、悶絶する。

運よく着弾を逃れた者達は動揺しつつも表情から油断を消して武器を構えようとするが、調達した二つ目の武器を掲げながら発した俺の言葉に凍りつく。

 

 

 「動くな。これが何か、分かるだろう?」

 

 「扇子? それが一体どうした」

 

 「……っ、馬鹿、止めろ! アレ、振るった先に有る物を分子レベルで分解するとか言う最新兵器だぞ!?」

 

 

 ……何やら凄い兵器らしいと言うのは見たが、詳しい事を知らなかったので俺も内心驚いてしまった。

だがそんな素振りは少しも見せず、努めて無表情を維持し言葉を続ける。元々使うつもりは無かったが、これなら抑止力として十分過ぎる。

 

 

 「全員、武器を後方に放り投げて床に伏せろ。塵になりたくなければ、妙な動きはするな」

 

 

 悔しげな表情を浮かべる警備兵達だが、俺の脅しには逆らえない。悶絶している者達の銃は動ける者達が放り投げ、全員が床に伏せる。

その様子を確認し、念のため弾幕を放って警備兵達を気絶させる。……悪いとは思うが、俺としても自由がかかっているのだ。運が無かったと諦めてくれ。

 

 操縦席に戻り設定を再び弄ると、低空飛行程度なら可能なエネルギーがチャージされたと言う事が分かる。

どうせ今の戦闘音で人は集まってくるだろうし、これ以上待っていては動かす時に邪魔が入ってしまう。今のうちに都から離れよう。

 

 システムを起動させる。蓄えられた月の魔力を力の源として、牛車を模る宇宙船が重力に反発。床から徐々にでは有るが離れていく。

まだ、月の重力から離脱する程の推進力は得られていない。しかし今の所は低空を高速移動できると言うだけで俺にとっては十分だ。

移動に関する基本的な操作を軽く確認した後、宇宙船を本格的に動かす。近くに有った大窓に向かって突進させ、突き破って博物館を出る。

 

 

 「……ちっ、流石に対応が早いな」

 

 

 博物館の周囲には既に結構な数の武装した月人や月兎が集まり始めていた。先遣隊の連絡が途切れた事を不審に思ったのかもしれない。

だが、地上人が宇宙船を奪ったと言う事は彼等の度肝を抜けたようだ。自分達の上を飛びぬけていく俺の姿を見て、茫然とした表情をしている。

俺は屋形部分から身を乗り出してライフルを構え、牽制として弾幕をばら撒いていく。威力としては時間稼ぎにもならないだろうが、士気は削がれる筈だ。

 

 夜の都を眼下に、燐光を纏う牛車を駆って空を飛ぶ。そんな幻想的な状況だが、雰囲気に浸っている余裕は無い。

包囲さえ抜けてしまえば、後は純粋に追いつかれるかどうかの勝負。脱出計画の第三段階、脱出可能になるまで逃げ切る!

 

 

 「脱出が可能になるまでは後数分か……不味いかも知れないが、弱音は吐けん」

 

 

 地上人が月の兵器を奪い、自在に扱っていると言う事に今は恐慌を起こしているようだが、そう時間をかけず立ち直るだろう。

俺があっさり彼らを撃退出来たのは全てにおいて意表を付いたからであり、冷静に対処されると非常に不利だ。絶対的に戦力が足りない。

宇宙船に武装は無く、正面からの撃ち合いになればライフルはあまり役に立たず、扇子は威力が強すぎて逆に使いどころに困る。ナイフとミサイルを持って戦闘している気分だ。

 

 ただ、最近まで戦闘力がほぼ皆無だった事を考えれば有りがたい悩みである。手札さえ有れば、動く事は出来るのだ。

 

 

 「……よし、都を抜けた。このまま……っ!?」

 

 

 宇宙船が被弾、強い衝撃が走る。どうやら後方から放たれた弾幕に当たってしまったようだ。

レーダー機能を呼び出して確認すると、相当な数の兵が俺を追跡し攻撃を仕掛けてくる。上昇と旋回を行い、追撃を何とか回避。

ライフルは最早牽制にも使えないと判断、扇子を取り出して真下に向けて振るう。放たれた波動が地面を撫でた直後、生えていた草花や樹木が灰になって崩れ落ちていく。

この光景を見せられては流石に戦意を喪失したらしく、激しく続いていた攻撃は非常に散発的な物となり、追手も二の足を踏んでいる。時間は稼げるだろう。

 

 ……扇子の力で灰となって崩れ落ちる草花を見た瞬間、俺も使う気は失せた。俺が『田澤昴』である以上、この武器を二度と使う事は無い。

 

 

 「……嫌な事を思い出した。この扇子、『塵を踏む者』とでも名付けてやろうか」

 

 

 悪態を付きながらも扇子は手離さない。使うかどうかは別として、持っているだけで威圧感は与えられる。個人的な好き嫌いで捨てる訳にもいかない。

ともかく、今追ってきている者達を振り切れば障害はクリアされる。月を出るまで、もう少しの辛抱だ……そう思っていた矢先。

 

 

 「馬鹿な、攻撃と接近に勢いが戻り始めた? この扇子の破壊力を見て、何故……まさか」

 

 

 突如勢いを取り戻した兵達の様子を見て一瞬疑問を抱いたが、嫌な予感が走り咄嗟に先頭に立つ存在を確認する。外れていて欲しいと言う俺の願いとは裏腹に、迫る『彼女』は……

 

 

 「依姫!? くそっ、ここまで早く合流してくるとは……」

 

 

 不味い、彼女がこの段階で来るのは想定外だ! 彼女には最悪でも脱出の直前まで来てもらいたくは無かった、今の俺には勝ち目が無い!

無理をしてでも引き離し、遠ざからなければやられてしまう。エネルギーのチャージを考慮していた制限を無視し、機体の安全圏ギリギリの速度を引き出す。

しかし、そんな俺の苦肉の策も依姫の前では無力だった。何かしらの神の力を借りたのか、彼女達は凄まじい速さで宇宙船に近付いてくる。俺は限界近い速度を出していると言うのに。

 

 俺は逃げる事にしか集中出来ず、依姫率いる警備兵達は高揚した士気のままに強烈な攻撃をしかけてくる。

俺も急上昇・急旋回・急下降と言った操作で幻惑しつつ何とか回避に専念するが、これらの機動は宇宙船にも操縦者である俺自身にも負担を強いる。

 

 

 「ぐ、う、うおおっ!?」

 

 

 遂に無理が祟り、安定性を失った機体は弾幕の直撃に致命的なダメージを受けてしまう。推進機関に異常を起こしバランスが崩れ、俺は外に放り出される。

防具も魔力防壁も無く、超高速の宇宙船から放り出された俺は無事では済まなかった。落下に加え、100メートルにも及ぼうかと思える距離を生身で滑らされる。

扱える全ての魔力を身体能力ではなく肉体自身の強化に回し、受け身を取って衝撃を可能な限り受け流し、掴んでいた月の羽衣を自分と地面の間に挟み込んでせめてもの悪あがき。

 

 

 「か、はっ、がっ、ぁぁぁ……」

 

 

 意識が飛びかける。体の内側も外側も、全てが焼けるように熱い。肺が損傷したのか、息が出来ない。苦しい、痛い、壊れる……!

 

 

 「やりましたね、隊長!」

 

 「二度も捕えるなんて、流石は依姫様です!」

 

 

 声が近づく。頼みの綱の宇宙船はもう使えないだろう。月の羽衣も、単なるボロ布になってしまった以上役には立たない。

武器も、放り出された時に失ってしまった。まあ、扇子も脅しに使えるか微妙ではある。この警備兵達は、俺が扇子の威力を見せても追いかけて来た者達なのだから。

そもそも、動けない。体を動かそうとしただけでも気絶しそうな痛みが全身に走る。……まあ、諦める気は、無いが。

 

 

 「……レイセン、彼を縛りなさい」

 

 「分かりました」

 

 

 どうする、どうすれば良い? 武器は全て失ったし、なけなしの魔力も使い切ってしまった。ただ動く事すら満足に行えない状況。

『我等』を解き放てば問題は解決するが、『俺』が消えると言う意味では自殺と変わらない。本来なら力の一部を呼び出す事も出来るのだが、封印のせいで不可能なのだ。

待て。『我等』の封印を、俺ではなく他者が緩めたとすれば、どうなる? 少なくとも、加減の利かない俺よりは、制御可能なレベルで力を解放出来るのではないか?

……どうせ、後は無いと言って良いのだ。この追い詰められた状況で無ければ思いつきもしなかった奇策、失敗を承知で試すのも悪くは無い!

 

 レイセンが来てくれたのは、俺に与えられた最後の幸運と言って良いのかもしれない。

常に自らへ施している、精神干渉への心理防壁。これを取り払いレイセンの持つ『狂気の瞳』を見つめ、その精神干渉をダイレクトに受ける!

 

 

 「ぁぁぁぁaaaAAAAAA'AAAAAAA!」

 

 「た、隊長、何か急に叫び始めましたけど」

 

 「……っ!? いけない、彼を止めて!」

 

 

 俺が座敷牢でレイセンの狂気の瞳を見ても狂わなかったのは心理防壁が有ったからで、あえてそれを解除すれば影響を受けない訳では無い。

俺の力の根源は、狂気の世界から来る禁忌の叡智。ならば、自らを律する仮面を外し、奥底に潜む狂気を引き出せば、どうなるか。答えは単純極まりない。

 

 

 「……『大地を縛る星の網』!」

 

 

  内界に宿る記述を励起、溢れる狂気を魔力へと変換、時空干渉能力を重力操作術式に転用、異界の法則を以て世界を攻撃する。

『我等』の力によって突如引き起こされた局地的な重力異常は、俺を取り囲んでいた警備兵達を容赦なく地面に縛り付け、無力化する。

月人も月兎も地面に押し潰され苦悶の声を上げる中、唯一依姫は耐えている。しかし、彼女も刀を杖代わりに膝を付いて歯を食いしばるのがやっと。動ける状態では無い。

 

 

 「きゃぁぁああっ!?」

 

 「そんな、あの地上人の力は封印されている筈じゃ!?」

 

 

 魔力の一時的な回復に伴い、肉体は回復に成功し普通に動けるレベルまで戻った。しかし、俺にかけられた封印自体を解除した訳ではなく、無理は出来ない。

『我等』の封印は一部解放したとは言え、それは本来なら抑えられている筈の物を力技で引き出しただけの事。このままでは遠からず破綻する。

それに、依姫をこの攻撃でいつまでも縛る事は出来ないだろう。神の力を借りられれば流石に分が悪い、今のうちに遠くへ離れて『扉』を使おう。

 

 

 「これまで有り難う、依姫」

 

 

 最後にこうして恩を仇で返すような形になったのは心苦しい。せめてもの感謝として、小声で謝辞を呟き……背を向けて駆け出した。

 

 

 「……お元気で、田澤さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十分に離れすぐには捕捉されないであろう地点まで辿りつき、肩で息をしつつ立ち止まる。

魔力回復と魔法の一部解放を代償として、狂気が俺を蝕む。落ち着いた思考をしようとしても上手くいかず、謎の高揚感と鬱屈した感情が襲い来る。

この狂気を抑え込もうとすれば、せっかく解放した魔力と魔法が再び封印されてしまう。当初の脱出手段を失った俺には最早『扉』しか残されておらず、それは出来ない。

狂気の感情を発露させたまま、精一杯『扉』に意識を集中させるが中々上手くいかない。空間に裂け目を作る事は出来ても、それを安定させられない。

 

 

 「畜生、ここまで来て、ふざけやがって、クソがっ!」

 

 

 感情を抑える事も出来ず、近くにあった石を激情と共に蹴り飛ばす。意味の無い行為だと、頭では理解出来ても心ではそうもいかない。

 

 

 「もう一度、まだやれるまだやれるまだやれるまだやれる……!」

 

 「田澤さん」

 

 「……豊姫か。近寄らないでくれ、君に八つ当たりをしてしまいそうなんだ」

 

 

 唐突に後ろから声が、豊姫が現れる。転移したのだろう。俺はこうして四苦八苦していると言うのに、苦労も知らず羨ましい事だ。

いや、それは今考えるべき事では無い。豊姫が俺を攻撃しにきたのであれば、先手必勝だ。振り向きざまに魔法を叩き込んで……違う! 彼女は、そうじゃない!

 

 

 「すぐに離れるか、そうでなければ攻撃してくれ。俺にも見栄が有って、君に醜悪な姿を見せたくない」

 

 

 限界が近い。理性的な人格を『取り繕う』のは得意だから何とかなっているが、そろそろ無理だ。

最後の抵抗として、豊姫から意識を外す。自分の意識の中に深く潜り込み、『扉』の発動にのみ全ての狂気を集中させる。

……だからだろうか、気配も何も感じられず、豊姫の行動に心の底から驚いたのは。

 

 

 「……田澤さん」

 

 「なっ……豊姫、何を」

 

 

 豊姫が後ろから俺を抱きしめる。全ての集中が途切れ、意識に空白ができた瞬間に、豊姫は俺の腕に嵌められた腕輪、その錠を持っていた鍵で外す。

全ての力が元通りとはいかなかった物の、狂気を抑え込んでも魔法の使用に制限がかからなくなったのは確かである。狂気を心の奥底に押し込み、『我等』の封印を魔力でかけ直す。

魔力を全身に流し、身体能力を強化。同時に魔力防壁を身に纏い、攻撃に対する防御力を高める。俺は、力を取り戻した。

 

 

 「豊姫、何故君は……」

 

 「私が田澤さんの力になってあげたいと思ったから。理由なんて、それだけよ」

 

 「……」

 

 「貴方の帰りを待っている人が居るんでしょう? 女の子を待たせちゃダメよ。元気な顔を見せてあげてね」

 

 

 そう囁いて、豊姫は俺から離れる。振り向こうとすると、慌てて止められた。

 

 

 「ま、待って。ちょっとした事情が有るから、そのままでお願い」

 

 「う、うむ」

 

 「ほら、これ。大事な物なのよね」

 

 

 後ろを向いたまま手渡されたのは、愛用の刀と黒コート。月に捕縛されてから、俺の手元を離れていた武具だ。

……腕輪については豊姫が鍵を扱っていたから納得はできたが、これも豊姫が管理していたのか。早く返して欲しかったと思うやら、保管してくれて有り難うと思うやら、微妙な気分。

 

 

 「よし、これで大丈夫。地上まで送る? それとも、もう一人でも帰れるのかしら」

 

 「君が封印を解いてくれたおかげで、『扉』を開く事に問題は無くなった。一人でも帰れるよ。

  ……今更だが、君は大丈夫なのか? 俺の逃走を手助けしたと、罪に問われてもおかしくは無いだろう」

 

 「あら、心配してくれるの? でも安心して、ここに来る途中で拾ったこの扇子を持って帰るわ。

  『地上人が攻撃してきたので、やむなく反撃しました』とでも言えば、田澤さんが居ないのも、その刀や外套が無いのも誤魔化せる」

 

 「そう単純な話でも無いと思うが……」

 

 「……ふふっ、これでも私、月兎とか男の人達から人気有るのよ?」

 

 「……君も計算高い人だな」

 

 

 どうにも天真爛漫な姿が浮かぶから忘れてしまうが、依姫の話では八意の教えをとても良く理解したと言うし、頭脳派である事に違いは無いのだ。

天然で明るい姿も嘘では無いのだろうが、中々の策士である。それでも周囲を和ませ、人に好かれるのが、彼女の魅力なのだろう。

 

 

 「それじゃあ、お別れね。……田澤さん、さよなら」

 

 「豊姫、俺はまたいつか君達に会いに行く。だから、さよならじゃない。また会おう、だ」

 

 「懲りないのね、また捕まっちゃうわよ? 冗談でも言う物じゃないわ」

 

 「そうか、だったら隠れて行く事にするよ」

 

 「もう。頑固な人ね」

 

 

 黒コートを羽織り、刀を左手で掴む。右手を虚空にかざし、『扉』を開く。繋げる先は地上、寅丸の寺。元来た場所に帰るルートだ。

空間の裂け目、『扉』に足を踏み入れる。大変な苦労を強いられたが、終わってみれば貴重な経験であると言えなくも無い。全く、我が事ながら呑気な物だ。

 

 

 「……またね、田澤さん!」

 

 「ああ!」

 

 

 『扉』に身を沈めていく俺に、豊姫のやや上ずった声が聞こえる。それに万感の思いを込めて返して……月を離れた。

こうして、俺の数週間に渡る月での生活は終わりを告げ。旅の舞台は再び地上、地球に戻ったのである。




幼い頃はクリスマスと言えば意味不明にテンションが上がった物ですが、最近は特に何も感慨が湧かず寂しい気も。
ただ、毎年クリスマスには映画の『ホームアローン』シリーズを見る事にしています。何となく、恒例行事になっているんですよね。
今年は自分へのクリスマスプレゼントとして、アマゾン辺りでフィギュアでも買ってみようか……
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