英雄の息子と麻帆良の子   作:お~い紅茶

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可能な限りは投稿を続けて行くので気長にお待ちください。


エヴァンジェリン編 ネギ②

 

 

~ネギ、その2~

 

 

 

 

ネギがエヴァと茶々丸の正体を知った翌日の朝。

 

「こら――っ! いいかげん起きなさいよ!」

「ゴホンゴホン、なんだか風邪っぽくて」

ネギが明日菜の布団をかぶり、学校を休む素振りをしていた。

「もう……」

もちろん、そんなものは仮病だと分かっている明日菜は強引にネギから布団を引き剥がす。

 

「先生が登校拒否なんて認められるはずないでしょ。サイはとっくに出てるんだから」

「わあ~ん、行きたくないです~」

嫌がるネギを無理やり着替えさせ、明日菜は肩にネギを担いで登校する。

子供とは言えネギを楽々担ぐ、明日菜とは一体・・・

 

「お、降ろしてください! エヴァンジェリンさん達がいたらどうするんですか!」

「もし学校で襲ってきたら校内暴力で停学――とかにしちゃいなさいよ」

「そんな簡単な問題じゃないんです―――っ!」

ネギは昨夜のエヴァを思い出す。

「(エヴァンジェリンさんは魔力を呪いで封じられているけど、本物の吸血鬼だし……)」

 

 

『パートナーのいないお前では私には勝てないぞ』

 

「(それに、相手にはパートナーの茶々丸さんもいる…)」

 

『悪いが死ぬまで吸わせてもらう』

 

「(勝てない……次に会ったら殺されちゃう)」

 

 

『お前は大事な友達を危険な目にあわせられるのか?』

 

「(かといってサイに迷惑をかけるわけにはいかないし……)」

 

 

「ど~~~しよう!?」

現状パートナーがおらず、サイに助けを求められないネギがエヴァに勝てる見込みは限りなくゼロである。

ネギがそんな現状を憂いている内に教室に着いてしまう。

 

 

「みんなおはよ――!」

「あ! アスナ~」

元気よく挨拶をして入室した明日菜にまき絵が手を振る。

 

「まきちゃん、もう平気?」

「すっかり! 昨日サイ君がお見舞に来てくれたしね」

「えっ、サイが?」

そのまま、話し始める明日菜の後ろからそっと首だけ出して教室内を見渡すネギ。

 

「あ……いないや。エヴァンジェリンさん」

恐ろしい吸血鬼の姿が無いことに一安心する。

 

「―――マスターは学校には来ています。つまりサボタージュです。サボりです」

「わぁっ! 茶々丸さん!?」

いつの間にかネギの背後に立っていた茶々丸に出し抜けに声をかけられる。

 

「……お呼びした方がよろしいですか?」

「けっ結構です! いなくていいんですぅ~」

ネギは両手をブンブン振って全力で遠慮する。

 

 

その後授業が始まってもエヴァは現れなかったが、頭の中は二人の事でいっぱいだった。

「(エヴァンジェリンさんだけでなく、パートナーの絡繰茶々丸さんまで自分のクラスの生徒だったなんて)」

 

授業中だが、教卓にもたれかかるネギ。

 

「(はあぁ~~……新学期早々大問題だよ。 やっぱり魔法使いとしてパートナーを見つけるしか……)」

 

顔を上げると、授業ノートを取る生徒達。

「(この中に運命のパートナーがいたら………)」

良いのにな、と思いつつもそんなむしのいい展開が期待できるわけもなく、

「ハァ~ダメか…」

ため息ばかりがネギの口からこぼれていく。

 

 

そんなネギの様子にクラスの生徒達も違和感を感じ始める。

 

「なんかネギ先生の様子おかしいよ?」

「どうしたんだろ……? 元気ないみたいだけど」

学内散策系部活動『さんぽ部』に所属する鳴滝姉妹がヒソヒソ話している。

 

 

他の場所でも心配の声が聞こえてくるが、

それらの声にネギは一切反応していない所を見るによっぽどだな、とわかる。

 

「あの……ネギ先生、ど、どうかしたんですか?」

「のどかさん!?」

ポーッとしてるネギにいち早く声をかけたはのどかだった。

「なんだか元気ない様子だったので……」

「いや…何でもないですよ。――けど、そのつかぬ事をお聞きしますがのどかさんがパートナーを選ぶとしたら10歳の年下の男の子なんてイヤですか?」

多少恥じらいながら聞くネギ。しかし、ネギのパートナー(魔法使いとしての)発言にクラスが騒然とする。

 

「パパ、パートナーですか!? 」のどかもふんわりと恋心を抱いているネギからの質問に慌てる。

 

「(キターー!! チャンス――!!)」

「(言うのよ!『私はOKです』と――!)」

のどかの恋を応援する会のメンバー、ハルナと夕映はのどかに念を送る。

 

そんな思いが通じたか、はたまたのどか自身の想いか、

「わ、わたしはお…おけ、オーケ―――」

です、と言おうとしたのどかだったが、

 

「ハイッッ!! ネギ先生、私、雪広あやかなら全然大丈夫ですわ~~!」

 

あえなく邪魔が入ってしまう。

「ははっ、ありがとうございます。いいんちょさん。」

 

その言葉と同時に終業のチャイムが鳴る。

 

「もう終わりですね…スミマセン授業と関係ないこと聞いちゃって忘れてください。じゃ今日はこの辺で」

そう言い残し出て行くネギはいつになく落ち込んだ顔をしていた。

「ちょちょ、ネギ!?」

心配した明日菜がネギを追いかけて教室を出て行こうとする。

「待ちなさいアスナさん! 何かご存知じゃなくて?」

明日菜を呼び止めて、あやかが質問する。

 

「え~~と、何かパートナーを見つけられなくて困ってるみたいよ。 見つけられないとなんかやばいことになるみたいで……」

それだけ言うと明日菜は走っていってしまう。

 

「アスナ姉さんどこに行くんだろう? 次は僕の授業なのに」

明日菜と入れ違いにサイが数学を授業しにやってくる。

サイはいつも教室に来るのが早いのだ。

 

「皆さんは知ってますか――」

 

「やっぱり、ネギ君のパートナーが関係してるんだよ!!」

「あんな元気ないネギ君初めて見るよー」

「じゃあ私が立候補しようかな~」

「いけませんわ、桜子さん! ネギ先生のパートナーは私以外あり得ません!」

「――って言ってもネギ君の気持ちもあるしね――」

「ほら、のどかも立候補しないと」

「う、うん。……私も――」

「それなら私、自信ある――!!」「何ですって!? 冗談はよしてください!」

「こうなったらいっそみんなでネギ君を励ます会を設ける?」

「「「さんせ~~い!」」」

 

 

そのまま、サイの質問どころか始業のチャイムすら無視してキャイキャイと女子の話は続いたという。

 

 

 

 

―――放課後

 

「だから、アンタは心配しすぎだって。」

「そんなこと言っても―」

寮の廊下を歩く明日菜とネギ。

「そうだ!サイに協力してもらうのはダメなの?」

ひらめいた! とばかりに明日菜がネギに提案する。

「ううっ、それはなるべくしたくないんです。 友達を自分の都合で危険な目に合わせるのは……ほんとはアスナさんだって――」

「何言ってんのよ! ネギも見たでしょ、私の華麗なキックを! だから、私は大丈夫!」

「アスナさんはあの人達の恐ろしさを分かってないんですよ~~」

明日菜は知らないのだ。吸血鬼の『真祖』が一体どれほど凶悪でおそろしいのかを。

 

「とにかく、今度何かあったら私が追っ払ってやるから元気だしなさいよ」

 

全く能天気な考えの明日菜だが、ネギを励まそうとしているのは確かだった。

 

 

その二人の背後、怪しい黒い影が忍び寄る。

廊下の門で明日菜がネギより先に曲がる。

一瞬、ネギが明日菜から離れた隙を見逃さず影はネギに頭巾をかぶせ、拘束する。

 

「―――! アスナさ…もがっ!」

助けを呼ぼうとするネギの口をすばやく塞ぎ、某所へと連れ去ってしまう。

 

 

「ネギ? あれ、どこいったの?」

明日菜が振り返ると、そこにはネギがいつも持っている杖しかなかった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「(……一体なにが!?)」

突然の誘拐に困惑するネギ。

ようやく移動が終わったと思ったら次は服を丸々剥がれてしまった。

 

そして、頭巾をとられ、水の中に放り込まれる。

「わぷっ!? ここは?」

水中から顔を出したネギの目に見覚えのある光景が飛び込んでくる。

 

「―――大浴場? なんで?」

ネギが連れてこられたのは寮の大浴場だった。

事情がつかめないネギにこれまた聞き覚えのある声が。

 

 

「「「ようこそーネギ先生!」」」

 

「えっ!?」

声のする方をむくとそこには、

 

【ネギ先生を元気づける会】

 

と書かれたのぼりと、

 

水着姿の3-Aの女子(一部を除く)が全員揃っていた。

 

 

「こ…これは?」

ネギは思わぬ展開に驚く。

 

「えへへ、ネギ君が元気なさげだったからね。 みんなでネギ君を元気づける会を開いてみたよ―」

水玉ビキニを着た桜子がネギに近寄りながら説明する。

 

それに続いて、クラスの生徒達がお菓子やジュースなどを次々ネギに進めていく。

 

 

「あの、みなさん……こんな僕のためにありがとうございます」

気分の落ち込んでいた所に生徒達からの思わぬ励ましにホロリとしてしまう。

 

「愛するネギ先生のためにこのくらい当然ですわ」

「いいんちょさん…」

あやかがネギにジュースをお酌しながら語りかける。

 

が、事態は急変する

 

「―――ところで、ネギ先生のパートナーの件ですがこの私、雪広あやかなどどうでしょう!」

「えっ!?」

 

「ああっ! いんちょーずるい! ハイッハイハ~イ、椎名桜子も立候補しまーす!!」

二人の立候補をきっかけに我こそはと名乗りを上げる者が続出。

場は一転してネギ争奪戦へと移り変わる。

 

「あなた方っ、ネギ先生のパートナーに相応しいのは私だと、何度言えば気が済むのですか?」

「ええ~? そんなの委員長が勝手に言ってるだけだよね?」

早乙女ハルナは曇ったメガネをクイッと上げる。

すかさず、夕映がのどかを前に押し出す。

「結局、パートナーを決めるのはネギ君であって私達じゃあないんだよ。 ……ねぇ、のどか?」

「う、うん…私もそう思う」

「それでしたら、どうやって決めるんですの?」

「そ・れ・は……夕映オープン!!」

「はいですっ!」

夕映はハルナの合図で掲げられていた、のぼりを裏返す。

 

 

【ネギ先生のパートナー争奪!? ネギ先生を洗いっこ対決~】

「「これは!?」」

まさかの展開に騒然とする一同。

 

「あの……僕の意思は…?」

置いて行かれるネギ。

 

「フフフ、パートナーならネギ先生の身体くらい洗ってなんぼ! 一番ネギ先生に気に入られた人が優勝だ~」

ハルナの掛け声とともに、

 

「おおー!!」

 

「み、皆さん落ち着いて下さい。 パートナー選びと洗いっこには関係なんてないですし、そもそも昼間の話は忘れて下さいって――おぷっ!」

 

ネギのなだめすかしなど届かない程の『場』がそこには出来てしまっていた。

 

どこにそんな力があるのか、ネギの体は四方から強く引っ張られる。

いつの間にか、腰に巻いてあったタオルも取られていた。

 

 

ネギ先生を励ます会はこうして瓦解した。

 

 

数分後、居なくなったネギを探しに来た明日菜に助けられるまで『洗いっこ』という名のむちゃくちゃな暴力は続いたという。

あンな所や、こンな所を隅々まで洗い尽くされたネギは真っ白になっていた。

 

 

そんな事件を見ていた奴が1人――いや、1匹いた。

 

「ホゥ……なかなか上玉が揃ってやがるじゃねぇっすか。ククク……」

 

物陰からひっそりと伺う怪しいこいつの正体は……?

 

 

 

 

 

 

「カモく~ん、久しぶりー!」

「アニキ~俺も会いたかったっすよ~」

命からがら風呂から上がったネギを部屋で出迎えたのは、ネギのイギリスでの友人(?)だった。

「ネギの友達って、しゃべるフェレット……? なんかキモい…」

明日菜がストレートに発言する。

ちなみに、木乃香もサイも部屋には居ない。

 

「オイオイ、俺っちは由緒正しきオコジョ妖精なんだぜ、そこんとこよろしくな神楽坂の姐さんよ」

「誰が、姐さんよ! ねぇ、ネギこいつとはどういう関係なの?」

「えっと、僕がまだ小さかった頃に、草むらで動物を捕まえる罠にかかってるオコジョを見つけたんですけど、それがカモ君で――」

ネギの説明に割って入り、カモが語り始める。

「そうっすよ! 俺っちが不注意でチャチな罠に引っかかて、『あ……これは助からねぇな』と覚悟した時に颯爽と現れたのがアニキなんす。アニキはすぐに俺っちの動きを封じる罠を外してくれただけじゃなく、傷の手当てまでしてくれてよぉ……。後で大人達に怒られる事なんて気にしないで俺っちを助けるその心意気! 一発で惚れちまったぜ!それ以来、ネギのアニキは俺っちの心のアニキなんすよ!」

 

一気にまくし立てるカモに明日菜が若干引き気味になる。

「ふーん。それでぇ、そんなオコジョが一体何しにきたのよ? 」

「よくぞ聞いてくれやした! 俺っちはアニキのパートナー作りを手伝いにきたんすよ!」

胸を張り、堂々宣言するオコジョ妖精カモミール・アルベール。

さらに彼は続ける。

 

「姐さんはアニキが魔法使いの修行中なのは知ってるよなぁ?」

「うん、まあね。」

「アニキはこの修行中、一人前の魔法使いになるために必要なものを手に入れるわけだが、その一つが『魔法使いの従者』つまりは、パートナーってわけだ」

 

 

本来なら、このカモの話は時期尚早な話である。なぜなら、『魔法使いの従者』は『主人(マスター)』となる魔法使いと『従者』となる者が長い時間を共に過ごした上で契約するからである。むしろ、この修行中にパートナーを作る魔法使いの方が稀な存在である。

しかし、ネギは先日エヴァに襲われたばかりである。

この願ってもないタイミングで現れた助け舟。食いつくのも無理はなかった。

「うんうん、それで? カモ君!」

「おっ! アニキは乗り気じゃねえか。 なら話は早い! 俺っちはそのアニキのパートナー候補にクラスの女子を推すって訳よ!」

そう言ってカモは短い手で机に広げられた、クラス名簿を指差す。

 

「ちょっと! どうしてウチのクラスの子を推すのよ。 何か理由があるの?」

「フッ、俺っちにはパートナーに相応しい人物がわかっちまうのさ……」

カモの瞳が不敵に光る。

 

「カモ君、それって本当なの?」 ネギもカモの言に困惑する。

 

「そうっすよ! 見てくだせぇ、この俺っちの尻尾を! ここに来てからビンビン反応してやすから!」

そう言われてみれば、確かにカモの尻尾の毛が逆立っている。

「それに、アスナ姐さんからもさっきからビンビン感じてるんだぜ」

「アスナさんから!?」

思わずアスナの方を向いてしまう。

 

「えっ……私が…?」

「どうっすかねぇ? いっちょアニキの為に一肌脱ぐってのは」

「ううんと……その…」

 

ちらりとネギの顔を見るアスナ。この少年がこちらに来てまだ間もない。しかし、一緒に過ごして分かった事もある。

確かにネギは優秀だが、まだほんの10才の子供であることもまた確かだということだ。

 

なぜなら、明日菜はそんなネギの弱さを見てしまった。

エヴァンジェリンに怯え泣きべそをかいてしまうような弱さを知ってしまった。

知ったからにはほっておけないのが明日菜の性分だから。

 

 

「私でいいんだったら―――」

 

 

「待って下さい!!」

ネギが明日菜の言葉を遮って大きな声をあげる。

「ど、どうしたんだよ……アニキ……」

「やっぱり駄目だよ……魔法の事を秘密にしてもらってるのに、パートナーまでなんて……」

 

思い詰めた顔をするネギ。

「さっきも言ったでしょ?私なら大丈夫だって」

「いいえ。 これ以上僕のせいでアスナさんに迷惑はかけられません。それに、これは僕自身の問題だから………」

 

「ネギ……」

「アニキ……」

暗い雰囲気が部屋を包み込む。

 

「ま、まあ候補はまだいるから大丈夫だぜ!」

「そ、そうね! 私がやらなきゃいけない事じゃないんだし」

「そうですね……それじゃカモ君、明日からよろしくね。 今日は早いけどもう寝るから」

「ネギ、ご飯はいいの?」

「すいません、食欲がないので今日はいいです……おやすみなさい」

重い足取りでロフトに登っていくネギに明日菜もカモもそれ以上声をかけることができなかった。

ネギがいなくなった後も、しばらく沈黙が続いたが、

 

「アニキ…なんか相当まいってんな……そんなに修行はつらいもんなのか?」

「いや、違うと思う。実はね――」

今日初めて麻帆良に来たカモに明日菜がエヴァと茶々丸について話す。しかし、明日菜も二人の正体はよく知らないので問題児がいるとしか説明できないでいると、部屋のドアが開けられる。

 

「そこは僕が説明するよ」

「サイじゃない。どこ行ってたのよ?」

「ちょっとね……、ところでカモ君だっけ? アスナ姉さんが言ってたのはこの二人の事なんだ」

サイはカモに見せるように、名簿の二人の写真を順に指差す。

 

「おぅ、こいつらがアニキを困らせる不届きもんか! 特にこのエヴァンジェリンって女はいかにも悪い顔だぜ!」

エヴァの写真を足蹴にしながら息巻くカモにサイが告げる。

「エヴァンジェリンさんは吸血鬼なんだ。しかも『真祖』で……」

「え?」

 

そう言って懐から取り出したのは、まほネットのエヴァの記事と、ネギが狙われていることとその理由をまとめたもの。

それをカモと明日菜はじっくりと読む。

そして読み終える頃には、ネギがとんでもない奴に目を付けられているのだと認識した。

 

「オイオイ……これってかなりまずいんじゃねえか?こりゃ多少強引にでもパートナーを作ってやらねぇとアニキがやばいぞ!」

「エヴァンジェリンさんってちょっと変わった子だと思ってたけど……まさか吸血鬼だなんて」

二年間クラスメイトだった人か吸血鬼でしたなんて俄には信じがたい。

「それは、普段は呪いによって魔力が極端に押さえられていて、普通の人間と大差ないんだ。だから、アスナ姉さんが気づかないのも無理ないよ」

 

その説明にカモが閃く。

「じゃ、じゃあよ、今ならこの『闇の福音』も弱いってことだろ? だったら――」

カモは思う、やられる前にやってしまえばいいと。

 

「ううん、そう簡単にはいかないんだ。エヴァンジェリンさんのそばにはパートナーである茶々丸さんがいるし、多少なら力を押さえられている状態でも魔法が使えるみたいだし……」

「そうなるとやっぱりネギにはパートナーが必要って事になるのね……」

明日菜がポツリと言ったこと。今の状況を鑑みれば、結局はそこに行き着く。

「ほんとは、僕が直接守ってあげたいんだけどね…。なんだか、今日一日ネギに避けられてる気がして。ネギの口からは何も言ってくれないんだ。一言『助けて』って言ってくれれば十分なのに……」

「と、とりあえず早急にアニキのパートナーを見つける事が目標だな」

「そうね、パートナー作りは私たちに任せてサイはエヴァンジェリンさん達を見張ってて」

 

きっとネギはサイには話せないのだろう。

 

日本に来てできた初めての友達。

 

魔法に関わり、同じクラスを担当する同僚。

 

そして、共に両親が行方知らずという似た境遇。

 

近しいが故に相談しづらいこともある。素直になれないこともある。

そう考え、明日菜はサイを敢えてネギから遠ざける。

 

 

「分かりました。アスナ姉さん、カモ君、ネギの事は任せるね」

ようやく話しが一段落し、サイは荷物を置きにロフト上がっていった。

引き続き明日菜とカモが今後の方針について決めていると、サイが降りて来た。どうやら出かけるようだ。

 

「サイ、またどっか行くの?」

「うん、図書館島に調べもの。何か吸血鬼に関する情報がないか探しにね」

「そう……ほどほどにね。アンタ昨日も帰って来るの遅かったでしょ? 木乃香心配してたわよ」

「ごめん、木乃香姉さんには僕から言っておくよ」

 

それだけ言って、サイは部屋から出て行った。

「あの人もなんだか思い詰めてんな」

カモがタバコをふかしながら、サイが出て行った扉を見て言う。

「そうかも……」

明日菜が部屋の窓を開ける。

 

しばらく外の桜通りを見ていると、図書館島の方へ駆けていくサイが姿を見せる。

友達の為に走るサイ。

明日菜はこれまでも誰かの為に走るサイを見てきた。

『麻帆良のみんなのために』と言って働く姿はとても印象に残っている。

 

けれど、今もネギの為に走っているはずなのに、その後ろ姿が明日菜にはひどく小さく思えた。

 

 

「もぉ~~~~っ!! どうしてどいつもこいつもガキのクセに何でも一人でやろうとすんのよ~~!!」

頭を抱え、ツインテールを振り回す明日菜。

「ちょっとはお姉さんに頼りなさいよ……」

 

ネギ、サイ、明日菜の全員が他人の為に行動している。

なのに、揃わない足並み。

彼、彼女らは吸血鬼の『真祖』エヴァンジェリンを前にして、何とか対抗する以前の問題を抱えていた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「(眠れない……)」

ロフトで布団にくるまるネギ。時間はまだ7時過ぎたところだ。普段なら次の日の授業の準備をしてる頃だろう。

だけれども、今のネギにはそんな余裕は無かった。

イギリスから友達のカモが来てくれたのは心強かったが、まだ現状は好転していない。

「「いただきます!!」」

明日菜と木乃香の声だ。

 

「そんでー、この子はネギ君のペットなん?」

「そうそう、カモって名前だってさ」

「カモ君やな。よろしくなー」

ご飯を食べながら談笑する二人。

「ところで、ネギ君大丈夫? 学校でも元気ないみたいやったし…」

 

自分の名前が会話に出てきて体がピクッと反応する。

「あ~~大丈夫よ。疲れがたまっただけみたいだし」

「そうなん? なら良かったわ。最近、サイ君も夜どこか行ってまうからウチ寂しいねん」

「ほ、ほんとね―、どこほっつき歩いてんだか、アハハ……」

「アスナからも言うたってな、一緒にご飯くらい食べよって」

「……うん」

 

 

「(サイが僕のために動いてる?)」

実はネギ、サイが明日菜達と話していた時からこうして会話を聞いていた。

 

 

―――『助けてくれ』って言ってくれれば十分なのに

 

 

本当はネギだって助けて欲しかった。

だが、仮に助けをサイに請えば、無関係だったサイもエヴァンジェリンとの対決を強いる事になる。

そうなればサイを間接的に傷つけることになるかもしれない。日本でできた最初の友達をだ。

自分の父親探しを手伝ってくれるような優しいサイにそんな真似はできない。

 

 

――お前は大事な友達を危険な目にあわせられるのか?

 

 

「(できない。少なくとも僕からは『助けて』なんて言えない……)」

 

その夜、ネギはサイの言葉とエヴァの言葉が絡み合いながら頭の中を渦巻いているのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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