英雄の息子と麻帆良の子   作:お~い紅茶

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エヴァンジェリン編 大停電の夜に ②

 

 

 

 

 

「ええっ!? ついにエヴァンジェリンが襲ってきた!?」

「しっ! 静かにしてくれよ。このか姉さんが起きちまう」

 

すでにベッドに入っていた明日菜がカモからの連絡に跳ね起きる。

まさに寝耳に水であった。

 

 

「すでに兄貴達はエヴァンジェリンとやり合いに行ってる。俺っち達もいそがねぇと」

「わかったわ。それじゃさっさと行きましょ」

手早く寝巻きを着替え、木乃香を起こさないように忍び足で部屋を出る。

 

作戦上、目的の場所まで寮からは距離がある。

「飛ばすからしっかりつかまってなさいよエロオコジョ!」

「俺っちはカモっすよ姐さん!」

明日菜は持ち前の瞬足をいかし、麻帆良の夜を駆けていくのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

一方、

 

「 【氷爆】!!」

 

「うあっ」

「サイ!? 大丈夫?」

「ううっ……なんとか」

 

ネギ、サイチームは苦戦を強いられていた。

 

「ハハハッ、どうした? 攻め手がゆるんでるぞ?」

 

エヴァが嬉々とした表情で魔法を繰り出してくる。

その攻めは苛烈で、サイの防御魔法ではその全てを防ぐことはできずにいた。

 

「やっぱりスゴい力だよ。とても一対一じゃ持たない」

「でも、後少しであの場所に着くよ!」

サイの弱気をネギが励ます。

 

やがて、その目的の場所に到着する。

 

ネギとサイが降り立つのを確認したエヴァもその場に降りてくる。

 

「なるほどな……学園都市の端にあるここにつれてくる作戦か」

 

ネギ達の作戦その2

 

作戦1によりエヴァの魔法からの生存率を上げ、図書館島が浮かぶ麻帆良湖の端に架かる橋にエヴァ達を誘導すること。

 

 

「随分セコい作戦じゃないか、え? 私は知っての通り『呪い』で麻帆良の土地から出る事はできない。」

 

そう言いながら、エヴァは距離をつめていく。

油断なく茶々丸も後ろにつき、エヴァをいつでも守れる状態だ。

 

「つまり、お前達は危なくなったらいつでも逃げ出せるというわけだ」

やれやれと肩をすくめるエヴァだが、目は口よりも雄弁に彼女の考えを語っていた。

 

『簡単に逃がすと思うな』と。

 

「「…………」」

けれど、ここでネギとサイが動かない。

 

「ん……?」

一瞬、違和感を覚えるエヴァ。さっきの威勢はどうしたのだろうか?

もっと抵抗してくると踏んでいただけに拍子抜けといった感じを受ける。

 

『まぁ、お前らは良くやったよ』

 

エヴァがそう言おうとした、その時、突如光に包まれる。

 

「ッ!!」

 

足元には魔法陣。そこから幾本もの拘束魔法が身体を縛る。

「これは……捕縛結界かっ!!」

 

「………う~~やった――!!」

ネギがジャンプして喜びを露わにする。

「ふぅ、なんとかなったぁ~」

エヴァとの鬼ごっこを逃げ切ったサイも所々についた氷の粒を払いのける。

 

 

「えへへへ、ひっかかりましたねエヴァンジェリンさん」

 

これこそが、作戦2の真の狙いだった。

 

あらかじめ仕掛けておいた捕縛結界の中にエヴァを誘い、身動きを完全に封じることでこの勝負に勝つ。

 

 

「さあ、おとなしく負けを認めてもう悪いことはしないと約束してください!」

ネギがエヴァに降参を認めさせようとするが、

 

「フフフッ……」

状況を理解していないのか、エヴァの押し殺すような笑い声が漏れ聞こえる。

「……何がおかしいんですか!? 知ってると思いますが、この結界は抜け出すのは簡単じゃないですよ」

ネギはそう言いつつ、これを仕掛けた時を思い返す。

「(僕の実力とバレにくさを考慮してこのタイプの結界を選んだ……それがわからないエヴァンジェリンさんじゃないはず……)」

 

ネギが仕掛けた結界は指定した対象が結界内に侵入すると単純な拘束魔法を重ねがけし、身動きを制限するタイプの物である。

このタイプを選んだ理由は技術的に容易に仕掛けられるのに比べ、抜け出すのは困難であること。 

また、半径5メートル程度の小規模結界であるため、敵に察知されにくいからであった。

この結界から抜け出すには、例えるならば、固結びをいくつも連ねた紐を根気よく解いていくような作業が必要となる。

 

もちろん、エヴァには可能であるだろうが時間は相当にかかる。

 

「(―――のはずなのに……どうして?)」

訝しみながら、ネギがエヴァ達に近づく。

「さ、さあ、おとなしく降参を――」

「悪いなぁ、ぼーや」

「えっ?」

 

「結界解除プログラム始動します」

 

その声にネギも、離れていたサイも視線を向ける。

エヴァ共々、結界に捕らえた茶々丸が耳がある位置にアンテナを展開している。

 

「本来ならば、結界にはまった時点で私の負けな訳だがな」

エヴァ達を拘束する魔法にひびが入っていく。

 

「結界解除まで後5秒です」

「え? えっ?」

「15年間もこの手の結界にさんざん苦しめられてきたんだ。対処くらいするさ」

 

ひびは致命的な亀裂となり、

 

「ほら、この通りだ」

 

あっさりと崩壊した。

 

「そ、そんな~~!?」

こんなものは半ば反則級の所行だ。

エヴァはあらかじめ茶々丸に簡易な結界の解除手順をプログラミングさせていた。

機械である茶々丸の処理速度を利用した、学園結界と同じ魔法とハイテクのハイブリッド運用である。

確信した勝利が足元から崩れ落ちたショックからネギはすぐに立ち直れなかった。

 

「ネギッ! しっかりして!!」

サイがネギを引き戻そうとするが、茶々丸が隙を逃さない。

 

不用意に突き出されていたネギの杖を奪取すると、エヴァに手渡す。

 

「フン、奴の杖か。忌々しいな…こうしてやる!」

 

躊躇いなくエヴァは橋の上から麻帆良湖に思いっきり杖を投げる。

 

「ああっ!? ううっ……ひどいや、ぐずっ……」

大切な杖を奪われ、あまつさえ捨てられてしまいもうネギは泣くしかない。

 

 

「ひどいですよーエヴァさん! 本当なら僕達が勝ってたのに――!」

 

ズルいズルい、と泣きながらエヴァに詰め寄るが茶々丸に止められてしまう。

 

「う゛~~もう一回~~! もう一回!!」

まるで幼子がだだをこねるようだ。

 

 

 

――――ぺしんっ

 

エヴァの張り手がネギの頬を打つ。

 

「一度闘いを挑んだ男がこの程度で泣き言を言うか! お前の親父ならこれぐらいは笑って乗り越えていた!」

敵ながらもネギを叱りつけるエヴァ。

 

その言葉に同調する者がもう一人。

 

「その通りだよネギ! まだ手はある!」

 

いつの間にか箒に跨がったのか、サイはネギを再びつれてエヴァ達と距離をとる。

「サイ……僕は……」

勝手に勝利を確信し、油断した所を襲われ、一人で諦めてしまった。  

エヴァに叱られ、自らの甘さに気づいたネギはその事を恥じていた。

 

「大丈夫! もうすぐ、カモ君がアスナ姉さんを連れてきてくれる」

あくまで、サイは笑っていた。

「それまでは、僕が君を守るよ。だからここで休んでて」

「そんなっ!? 僕も一緒に――」

着いてこようとするネギを押しとどめる。

「ダメだネギ。こうなったらアスナ姉さんが来てからが勝負だ。その時に君が満身創痍じゃ勝てるものも勝てないよ」

 

深緑の瞳に決意の炎を宿したサイ。

そう、これは役割分担。

作戦1は続行されなければならない。

 

「――わかったよサイ」

サイから離れていくネギ。

サイが役割を果たす以上、ネギも放棄できない。

「(サイは明日菜が来るまで必ず自分を守ってくれる)」

今はサイを信じて戦いに向け、精神を集中させるべきだとネギは判断した。

 

 

「どうした? 仲間割れか?」

ほんの数メートル先にエヴァがいる。

相対してよりはっきりする実力差。

正直な所、こんな相手から本当にネギを守れるのだろうか?

 

「……けど決めたんだ」

「何だって?」

「僕がネギを守るって決めたんだ! 守ってみせる!!」

「ハッハッハ、なら私達を止めて見せろ! 近衛サイ!」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「ふぅ―――ぅ……」

 

まずは深呼吸。

冷静に状況観察からだ。

 

「(敵はエヴァさんに茶々丸さん……ひとりで倒すのは無理だ)」

倒せないのはもうイヤと言うほどわかっていた。

 

「(おそらく、カモ君が姉さんを連れてくるまでそんなにかからないはず)」

 

大停電で真っ暗の麻帆良学園都市がエヴァの肩越しに見える。

こんな事なら立ち位置を逆にしておくんだった。

 

 

「どうした? かかってこないのか?」

エヴァが羽織ったマントの前を開けて両手をサイへ差し出す。

先手は譲ってくれるということだ。

 

ならば――――

 

「いや、エヴァさんのその下着……似合ってないですよ。 もっと可愛いのとかどうです?」

「は、はぁ!? 貴様何を言っているのだ!」

 

翻したマントの隙間から見えた、エヴァの幼い外見とはうらはらな黒の下着。

それをこの場面で全否定する。その“口撃”たるや効果は絶大だった。

 

「すぐにそんな軽口叩けなくしてやる~~!!」

十年しか生きていないサイに自らのセンスを貶されたのだ。しかも下着の…………。

もうエヴァは黙って居られなかった。

「あっ、マスター待って下さい!」

エヴァから距離を詰めていくとは予想外の茶々丸が出遅れる。

 

無防備になる瞬間をサイは狙っていた。

「テ・トレス・テ・テラトゥルーツリー 風の精霊 縛鎖となりて 敵をつかまえろ 【魔法の射手・戒めの風矢】!!」

「それは一度そっちの坊やから受けている!」

エヴァが防御魔法を展開しようとする前に魔法の射手はあらぬ方向へ飛んでいく。

そのまま、エヴァを素通りしてしまう。

「フン、失敗か……」

魔法を撃ち終わり無防備なサイにどんな魔法を食らわせてやろうか?

そう考えたときだ。

 

「マスター……申し訳ありません」

「何が…だ……って、くそ! 最初から茶々丸狙いか!?」

エヴァが振り返ると、サイの戒めの風矢に捕まる茶々丸がいた。

エヴァがミスだと思ったサイの拘束魔法はそも、エヴァではなく茶々丸狙いだったのだ。

「よくもやってくれたなサイ先生!」

すぐさまサイの方へ向き直るがそこにサイはおらず、

 

「こっちです! 【魔法の射手 連弾・光の20矢】!!」

エヴァの目を盗み空中へと飛んだサイが頭上から撃ちおろす。

 

「そう何度もやられるか! リク・ラク・ラ・ラックライラック【魔法の射手連弾・闇の20矢】」

 

流石は魔法戦に長けているだけあり、完全に後発であったのにサイの攻撃にあわせてくる。

魔法の射手同士が両者の間でぶつかり合い、衝撃が伝播する。

ともすれば、吹き飛ばされてしまいそうになるのをサイは必死で箒の制御でこらえる。

「今度はこっちからだ!」

エヴァが飛び上がりながら詠唱を始める。

 

「リク・ラク・ラ・ラックライラック 氷の精霊29頭 」

 

「(速いっ!? 今から詠唱しても間に合わない)」

 

「【魔法の射手連弾・氷の29矢】!! これでどうだ!」

一瞬の間にて29もの矢を現出させてしまう。

今のサイはそこまで速く扱えない。

 

「(くうっ……これは避けるしかない!)」

箒の向きを変え、持てる最大速力で飛ばした。

 

「逃がすものか!」

エヴァは手掌でもって氷の矢を追尾させる。

サイは橋の鉄骨の間を縫うように飛行する。それを追尾する氷の矢だが幾矢かは鉄骨と衝突し消滅する。

なおも逃げるサイは魔法の射手――光の一矢だけだが――を撃ちながら回避することで確実にその本数を減らしていく。

そして、エヴァの矢が残り10となった所で、一気にエヴァの頭上に移動。

矢が全て下方向からくる位置に陣取り数の減った魔法の射手をで【風盾】防御する。

見事29矢全て受けきった。

 

しかし、氷が放つ冷気までは防げない。【風盾】を展開したサイの両手には鋭い痛みが走った。

だが間髪おかずに、サイはエヴァに向かい垂直降下する。

 

これに、エヴァはさらなる魔法でもって迎え撃つ。

「狙いはわからないが、ここまでだサイ先生――【氷爆】!!」

 

巨大な球状に圧縮された冷気の塊がサイとエヴァの間に現れる。

「(この魔法は奴では防ぎきれない事はわかっている……避けるか? ならばそこを狙い撃つ)」

 

サイには左右どちらかに避けるしか選択が無い。

この状況ではそれしかない。

エヴァはもちろん、サイの拘束を解きながら闘いを観察する茶々丸もそう考えていた。

しかし、それらの予想は裏切られる。

 

サイは避けるどころか、真正面から突っ込んでくる。

一切のスピードを緩めることなく。

「血迷ったか!? 自殺行為だぞ」

 

エヴァが警告も無視だ。

 

サイは進路を変えない。

 

そしてサイが冷気の爆弾に触れた瞬間――爆発。

身も凍える冷気と衝撃がサイを襲う。

 

一方エヴァの視界は細かい氷の粒で霧のように白む。

 

「終わりか…………」

エヴァが呟く。

 

だが、それに応える声が、

 

「ま…だ、です……!」

 

霧の中から聞こえ、次いでその声の主が飛び出してくる。

「チッ、しぶとい!!」

これほどまでに自分の攻撃を受け続ける奴は久しい。

大抵の奴らは敵わないと見るやあっさりと逃げ出していったからだ。

「(そういえば“あの男”にはいくら攻撃してもあしらわれるだけだったな……)」

ふと垣間見てしまう過去の記憶。

 

 

なおも、迫り来るサイとエヴァの距離はもう魔法のレンジではなくなっていた。

お互いに魔法が撃てない。

かといって、もはやエヴァも避けられない。

その状態がギリギリまで続き、

「エヴァさん! 受け止めてください―――っ!!」

「な、なに~~!?」

 

あろうことか、サイは空中で箒を乗り捨てエヴァにダイブしてくる。

スピードの乗ったサイは体当たりするようにぶつかり、エヴァ共々落下していく。

橋の上に落ちてなお、二人はゴロゴロと勢いに任せて転がる。

やがて止まった時には、

 

「はっ……はっ…い、いつかとは逆ですね」

サイがエヴァの上に馬のりになって押さえていた。

学園長室でエヴァにやられた借りをきっちり返したサイ。

 

「そうだな、してやられたよ。だが、お前はボロボロじゃないか」

エヴァの言う通りサイはこの橋まで来る間にもエヴァの魔法を受け続け、今、【氷爆】までまともにくらってしまった。

髪には氷がはりつき、吐く息は白い。手足や服には氷の破片につけられた無数の切り傷がついている。

それに比べエヴァはまだほぼ無傷の状態だ。

「へへへ、……つよ、がらなくてもいい…ですよ」

「強がっているのはどっちだ!」

 

魔法の杖を取り出すサイ。

先端に三日月が付いている練習用の杖だ。

けれども、手がかじかんでいるためポロリと落としてしまう。

なおも、取ろうとしては落としてしまうサイの姿は痛々しく映った。

 

「……どうしてだ? どうしてそこまであの坊やを守ろうとする? お前には何の関係もないだろうに」

エヴァの当然の疑問だった。

思えば最初からこの近衛サイという少年はおかしかった。

 

こちらが『真祖』だと知っているはずなのに宣戦布告してきた。

ネギとの間には楔を打ち込んだはずなのに、蓋を開けてみれば団結していた。

それに充分力の差を見せ付けてやったはずだ。

それになによりも、ここまで傷ついてもサイに得など一つもない。

 

 

それでは今自分の上にいる少年は何に突き動かされているのか?

 

サイは静かに答えた。

「関係なくないですよ……ネギは友達だから、守りたい。それだけです」

そう言い、サイは弱々しく笑う。

 

それを聞いたとき、エヴァの手は自然とサイの頬にのびていた。

その笑顔は弱々しくも輝いていたから。

その笑顔の持ち主が急に愛おしく想えたから。

“あの男”が見せたかった世界とはもしかしてこんな光に満ちていた世界なのかもしれない。

 

「エヴァさん……?」

意外な行動にサイはうろたえてしまう。

「なんとなく……こう、してみたかっただけだ」

サイの頬からは冷たさが伝わったくる。自分がやったとはいえやりすぎたかなと少し思う。

 

「えへ……エヴァさんの手、あったかいです。ほんとは、悪い…魔法、つかいじゃないの…か……も……」

ついにサイは意識を失い、エヴァに覆い被さる。

 

 

 

「ふぅ~~……茶々丸どけてくれ」

「はい、マスター」

いつの間にか自力でサイの拘束を抜け出し、傍らに立っていた茶々丸がサイの体を抱きかかえた。

茶々丸が橋の柵に寄りかからせ、エヴァは羽織るマントを掛けてやる。

「悪いな、それでも私は――悪い魔法使いだよ……サイ先生」

憂いを帯びた彼女の顔を気絶したサイは見るべくもなかった。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

サイがリタイアし、残されるネギ。

「(サイ、ありがとう。必ず勝ってみせるよ)」

懐からネギも練習用の杖を出す。ネギの物には星が付いている。

 

「さて、手間をかけたがそろそろぼーやの血をいただ――」

「ちょっ~~~と、まったあ――っ!!」

 

サイの意識は途切れても、サイの役目は既に成されていた。

 

「アスナさんっ!」

エヴァ達の背後、麻帆良の側から最後の切り札が現れる。

「やはり、神楽坂アスナも仲間だったか」

 

合流されては面倒だと判断したエヴァが茶々丸に合図を送る。

マスターの意志を汲み取った茶々丸が、

 

「ここから先は通しません」

 

明日菜の行く手を遮る。

 

「出番よカモ!」

「了解だぜ姐さん! 俺っちを投げてくれ」

言われた通りに、明日菜は肩に乗るカモを茶々丸の前に投げつける。

 

「くらえ! オコジョ108の奥義の一つ 『オコジョフラッシュ』!!」

途端、辺りが強烈な白色光に包まれる。

大停電の暗闇に慣れていた者達は視界がくらむ。

 

「すごいカモ君! そんな魔法を使えるなんて」

遠くのネギはカモが何かしらの魔法を使ったと思いこんでいる。

 

「何だか、兄貴が勘違いしてるみたいだが……まぁいいか…」

実はこの『オコジョフラッシュ』は魔法でも何でもない。

いつも持っているライターで調達したマグネシウムを燃焼させ、発光させたというバリバリの化学なのだが……。

ともかく、カモの奥義のおかげで茶々丸はかわすことができた。

そのままエヴァをも抜こうとした明日菜の横目にちらりと見える。

 

柵に寄りかかるボロボロのサイの姿が……。

 

前言撤回。

 

「私の弟に――――」

 

ここは一発与えて押し通る。

 

「なぁにしてくれてんのよ~~~っ!!」

 

「フッ、ただの人間が我が魔法障壁を破ることなどできなっ―ぷろばぁっっ!?」

明日菜の飛び蹴りが一閃。

全体重がのったいい蹴りだった。

 

またしても、頬を蹴られたエヴァはその場から弾かれながらも空中で体を立て直す。

 

「(二度も私の障壁が破れるとは……いや破られたと言うよりはかき消されたか? まぁ、どちらにせよ何かあるな神楽坂アスナ!!)」

 

エヴァをどかし、ようやく明日菜はネギの下に辿り着く。

 

「ふーん、あんたは元気そうじゃない」

皮肉っぽく言いながら来た方向に向き直り、明日菜がネギの隣に立つ。

 

「僕は大丈夫です。サイが守ってくれたから――」

 

サイが繋いだ作戦3。

最後はネギと明日菜の『仮契約』コンビによるエヴァとの正面切ってのガチンコ対決。

 

 

「――絶対に勝ちましょう!アスナさん!!」

「そうね! ちゃっちゃと問題児を片付けてサイにお礼言いましょ」

 

 

 

「大丈夫ですかマスター?」

ほっぺをおさえるエヴァを茶々丸が心配する。

「ああ、今宵はつくづく驚かされる。だが、時間もないことだ……そろそろ、けりをつけるか」

 

 

 

ついに、大停電の夜に繰り広げられた闘いも最終局面を迎える。

 

 

 

 







エヴァ編も次で最後です。
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