英雄の息子と麻帆良の子   作:お~い紅茶

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話は全然進まんよ。だんだん展開は速くしたい・・・


ふたりのスタートライン

麻帆良学園、世界樹広場――

 

 

そこでサイは手を合わせ世界樹にむかって、何か懸命に祈っている。

風にそよぐ世界樹の葉が朝日を照り返しきらきらと輝き、葉や枝の間からこぼれる木漏れ日がサイを包み込む。端から見ればまるで一幅の絵画のようにさえ見える光景。

そこに約束通り1人の男性が現れる。

彼の足音を聞いたサイはお祈りをやめ、挨拶をする。

 

「おはよう、タカミチ」

「うん、おはようサイ君。あれっ、もしかして邪魔しちゃったかな?」

「ううん。タカミチが迎えに来ること昨日学園長に聞かされてたから」

「そうかい?ならよかったよ」

 

高畑・T・タカミチ。それがサイと話している彼の名前である。

麻帆良学園の広域指導員であり、短髪にメガネで常にスーツ姿、くわえタバコが印象的で優しそうな顔をした人物である。

しかし、その見た目とは裏腹に指導員としての彼は別人のように振るまい、たてつく生徒を問答無用で黙らせる。そんな彼に付いたあだ名が、『デスメガネ』,『笑う死神』……などなどである。ちなみに、サイがそのことを知った後はタカミチの前では粗相をしないようにと固く誓ったらしい。

また、彼は魔法側の人間であり、その界隈では有名だったりする。

 

 

どうして、タカミチとサイが親しげに話しているかというと、サイは近衛近右衛門に引き取られ麻帆良で育てられたが、幼少期の彼の保護者として、すでに少女、神楽坂明日菜を連れていたタカミチが選ばれたからである。

 

今現在、サイは麻帆良女子中学校に通う明日菜と学園長の孫娘である近衛木乃香の寮部屋を間借りしているため一緒に住んでいないものの、自分を育ててくれた、タカミチを本当の親のように慕っている。

 

だから、サイは家族と話すように会話する。

 

「それで、今日からの僕の仕事ってなに?」

「お、いきなりだね。でも、それを話す前にサイ君に質問だよ」

 

タバコをくわえてタカミチは言う。

 

「また~? 数学はできるって学園長に言ったけど?」

昨日の繰り返し? と思ったサイだが、タカミチの真剣な雰囲気に気付き、はっとする。

 

それを待っていたかのようにタカミチは続ける。

 

「今日からサイ君に頼む仕事はね、今までと違って他人の人生を左右するかもしれないものなんだ。今まで以上に大変だし、正直、10歳やそこらの子供ができることじゃないのかもしれない」

 

いつになく、真剣な眼差しでサイを見るタカミチ。

 

「それでも、サイ君、君は引き受けるかい?」

タカミチの本気の忠告。

しかし、サイは迷わない。彼の信念はそれぐらいの脅しじゃ揺るがない。

 

 

「もちろん、引き受けます」

 

 

あまりの即答にタカミチは呆気にとられ、タバコを落としそうになる。

 

「え、えっと理由を聞いていいかな?」

 

サイは広場の周りを取り囲む手すりに向かい、そこに手を置き、少し小高い広場から麻帆良の街を見渡す。

 

「僕は、タカミチや学園長、それに明日菜姉さんや木乃香姉さん達のこと本当の家族みたいに思ってる。僕がこうして生きていられるのはタカミチ達のおかげなんだとも思ってるんだ」

 

感謝の気持ちが溢れ出たような言葉。

 

 

――だけどね、と、さらにサイは続ける。

 

「それだけじゃないんだ。僕にとって麻帆良に住むみんなが家族なんだ。本当の両親に捨てられた僕を受け入れてくれて、優しくしてくれた麻帆良のみんなが好きなんだ」

 

サイの言葉をタカミチは黙って聞く。

 

「だから、今度は僕が恩返ししたい。その仕事が家族のためになるっていうなら、何だって頑張れる。……それに、みんなのために頑張っていたら本当の両親もいつか迎えに来てくれるかもしれないしね」

 

サイの強い意志を感じとりつつも、最後の言葉を苦々しく受け取ったタカミチはサイに言う。

「うん、それだけの意志があれば大丈夫だね。安心して僕も後を任せられるよ」

「うん、どーんと大船にのったつもりで任してよ!」

そう言ってサイは腰に手を当て胸を張る。しかし、ここではたと気付く。

 

 

「でも、あれ? タカミチの後? 任せる? …………もしかして、新しい仕事って……」

「そう、麻帆良女子中学校で先生だよ。といっても、サイ君は僕が持ってる2ーAの副担任をしてもらうことになってる。担任は今日新しく来る僕の友人がする事になってるからね。それと、サイ君には彼の事もサポートしてあげてほしいんだ」

「わかりました。でも副担任かぁ~、ちょっと安心し…………ないよ!! タカミチのクラスには、姉さん達がいるじゃないか!? うぅ~大丈夫かなぁ……?」

 

頭を抱えて、2人の姉の先生をしている自分を想像して身悶えるサイ。

見ていてなかなか面白いなと、思ったタカミチがふと腕時計を見ると、学園長が指定した時間が迫っていた。

 

「サイ君、大変だ。新しく来る先生と君を会わせる約束があったんだ。悪いけど走って学園長室まで急ぐよ」

 

そう言いながら、サイの手を引き走り始める。

 

「ええぇー! ここから学園長室まで結構遠いよね。……空飛んでいっちゃ――」

「ダメだよ」

「はぁいぃ~」

 

諦めたサイとタカミチは学園内を走り抜ける。

 

途中、「あぁ~、サイ君だ~。おはよー」という、女子の声や、「むむっ、サイ坊、今日も元気だな」という男子の声が飛び交う。その一つ一つに挨拶を笑顔で返すサイ。

 

学園内の何でも屋として働いていた彼だからこそ、生徒達はサイの事を好ましく思っているのだ。

 

そして、タカミチはさらに強く確信する。サイならば彼の友人で新しく来る先生であるネギ・スプリングフィールドとともによい先生になれると。また、ネギの良き友達になってくれると。

 

 

「ところで、今日来るタカミチの友達ってどんな人?」

「そうだな、彼はね――――」

そんな期待を込めつつネギのことを語り始めるタカミチはどこか嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

麻帆良学園学園長室――

 

 

朝から神楽坂明日菜はイライラしていた。

原因は明白。この目の前のガキんちょの所為だ。

 

 

「ネギ・スプリングフィールドです。この度、英語教師として、イギリスから来ました」

 

 

と、礼儀正しくお辞儀して学園長のに挨拶するネギを後ろから睨む。

明日菜は苛立ちからつま先を床にタップしているので、体が揺れ、トレードマークであるツインテールを結ぶリボンについている鈴が先ほどからチリンチリンと一定のリズムで鳴っている。

 

それを見て、となりにいた近衛木乃香が明日菜に話しかける。

 

「どうしたん、アスナ? 具合でもわるいん?」

「どうしたん? じゃ、ないわよ! 何で私達があのガキの付き添いしてるわけ? おかしいでしょ!! どう考えても!!!」

「うーん、でも、うちじいちゃんから頼まれてたし~」

「そもそも、あたしはねガキが大っっ嫌いなの!」

「あかんわ、アスナ、うちの話し聞いてへん」

 

なだめることを諦めた木乃香を尻目に、明日菜は学園長に迫り、事態の説明を要求する。

「学園長先生、一体どうゆうことか説明して下さい!」

「む? いま彼がいっとったろ? この学園の新しい先生じゃよ」

 

学園長はあっけらかんと答える。

しかし、明日菜は納得できない。

 

「待って下さい!こんなガキんちょが先生できる訳ないでしょ!」

「だから、それはじゃな……」

 

 

「彼はいいんだよ。アスナ君」

 

学園長が答えるよりも先に部屋へと入って来た人物が代わりに答える。

 

「あっ! タカミチー、久しぶり!」

 

ネギが入室したタカミチを見て声を上げる。

「久しぶりだね、ネギ君」

 

「な、な、なんで高畑先生が!? それに、2人は知り合い!?」

 

状況についていけない明日菜の代わりに、木乃香がタカミチに尋ねる。

 

「先生、この子はええてどうゆうことなん?」

「ネギ君は頭がいいからね。授業は問題ないと思うよ。」

「高畑先生、そんなこといわれても………」

 

この期に及んでまだネギを認めない明日菜にタカミチの後から部屋に入って来た少年がとどめをさす。

 

「いい加減認めなよ、アスナ姉さん。それに、その子新しく姉さん達のクラスの担任になるんだよ。」

「ええっっ~~!? ってこの声は!!」

「サイ君や~。今朝ぶりやなぁ。ここに何しにきたん?」

 

そう言いながら、タカミチの後ろから出てきたサイに抱きつき頬ずりする木乃香。

 

「木乃香姉さん! ちょ、や、やめて下さい! は、恥ずかしいです!」

「なんでぇ~、ええやんかぁ。サイ君、お姉ちゃんのことキライなん?」

「そうじゃないけど……、とにかく今は止めて下さい!」

は~い、と名残惜しそうに木乃香はサイから離れる。

 

「うおっほん」

学園長の咳払いで室内が静まる。

 

「まずは、タカミチ君、サイを連れてきたということは、そういうことなんじゃな」

「はい、サイ君なら問題ないと断言できます。」

タカミチがはっきりと言う。

「そうか……、うむ、ご苦労だった。下がってよいぞ」

 

失礼しますとタカミチが退出。部屋に残された内、ネギ、明日菜、木乃香はいまだ何のことかわからない。

 

 

「次に、ネギ君」

「は、はいっ!」

「おそらく、この修行は大変じゃぞ? 失敗したら故郷に帰って二度とチャンスはないが、覚悟で来とるのじゃな?」

 

 

 

 

学園長による、最終確認。意志を確かめるためネギは目を瞑る。思い出されるのは、あの冬の日。

 

 

 

――――お前がネギか――――

 

 ――――大きくなったな

 

 

 

 

助けてくれたあの人に……

 

 

 

――――この杖をやろう――――

 

 

 ――――元気に育てよ

 

 

 

もう一度会うために……

 

 

ネギは身の丈以上の杖を握り締め前を向く。

“立派な魔法使い/マギステル・マギ”になるために、もう答えは決まっていた。

 

「はい! やります! いや、やらせてください!!」

 

「フォフォ、いい表情(かお)じゃ。……うむ、ではここに、ネギ・スプリングフィールドを2-A担任、近衛サイを副担任に命ずる!」

 

「「はいっ!!」」

2人の返事が室内に響く。

 

 

……が、

 

「木乃香、あたし、まだ夢見てるみたい。ネギとかいうガキんちょがあたし達の担任で、サイが副担任だって。笑っちゃうわよねっってイタタタッッ!」

 

木乃香が明日菜のほっぺたをつねる。

「なぁ、夢やないやろ。それにええやん、2人ともかわえーし。ネギ君はともかく、サイ君が頭ええてアスナも知ってるやろ」

「でもっでも!!」

「言い忘れとったが、ネギ君の住む所まだ決まっとらんからの。悪いんじゃが、木乃香達の部屋に住まわせやってくれ。」

 

「ええ~、無理無理、ぜっ~~たい無理!」

 

明日菜、拒絶!!

 

しかし!!!!

 

「ええよ~」

 

木乃香、あっけなく了承。

 

「ぼくも、木乃香姉さんがいいならいいですよ。先生同士お互いを知ることも必要ですし。」

 

サイもまた了承。

 

「うむ、では、2対1でオーケーということじゃな」

 

「そんな~」

自分の意見が無視され若干涙目になった明日菜は、キッ、とネギを睨む。

 

「言っとくけど、あたしはまだあんたが先生だって事も、ましてや一緒に住むなんて許してないんだからね!」

 

明日菜のきつい一言にネギも顔をむっとさせる。

 

「もう、私達は教室にいきます!!」

「じゃあな~、サイ君、教室でなー」

ぷりぷり怒った明日菜が木乃香を連れて出て行ってしまった。

 

 

「なんですかあの人は~~~? 日本の女性はみんな優しいって聞いてたのに……」

ネギが困ったようにうつむく。

 

「アスナ姉さんはいつもあんな感じなんだ。でも本当は優しい人だからネギ君にも分かってほしいな」

「君は、ええっと……」

「はじめまして、近衛サイです。ネギ君のことはタカミチからいろいろ聞いてるよ」

「あうっ、どうも、ネギ・スプリングフィールドです」

 

サイの自己紹介に慌ててネギも返し、二人そろってお辞儀をする。

 

「はるばる、イギリスから修行なんだってね。立派な魔法使いになるのも大変なんだね」

「っっっっ!!!」

 

ネギは自分の正体がばれていることに驚き、あわわっと慌てふためく。

 

「ふぉふぉ、心配せんでも、サイも魔法のことは知っておる。だからこそ、サイを副担任にしたんじゃ」

「ふぅーーー。なんだぁ」

 

あまりの驚きに腰が抜けてその場にへたり込んでしまうネギ。

 

そこに、サイの手が差し伸べられる。

 

「ふふ、驚いた? なにはともあれ、これからよろしくね、ネギ君」

 

にっこり笑うサイの手をネギもまた笑いながらつかむ。

 

「こちらこそよろしく。サイ君」

 

お互いの顔を見ながらがっちり握手する二人。

しばらく、そうしていると学園長から声がかかる。

 

「仲良くなれたようで結構じゃが、そろそろホームルームが始まるからの。…………ほれ、クラス名簿と学校の見取り図じゃ。」

 

自身の座っていた机の中から取り出した名簿と地図をネギに渡す。

 

「二人は優秀じゃが、一人でできる事は限られる。そこで、お互いに支え、励まし合いながら頑張ってほしい。二人ならきっと生徒達を正しく導けると信じておるよ」

 

 

「「はいっ! 任せてください」」

姿勢を正した二人は息ぴったりに応える。

 

「行こう!! ネギ君!」

「うん!」

 

元気よく二人の新人教師は学園長室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

教室に向かいながらサイはネギに話しかける。

 

「まずは、アスナ姉さんに認めてもらわないとね。今日のネギ君の寝床のためにも!」

「う~ん……、できるかなぁ?」

 

学園長室での明日菜の様子を思い出し、不安がるネギ。

 

「大丈夫、僕も手伝うからさ! 真面目に先生できるだぞ! ってところを見せれば、きっと認めてくれるよ」

「そっか、態度で示せばいいんだね! よ~~し頑張るぞーー」

 

 

「「おーーー!!」」

 

 

ネギとサイ、二人の教師生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




しずな先生は犠牲になったのだ・・・・・
もしかしたら出るかも、しずな先生ラバーズがいたら申し訳ない。
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