Q、今僕達はどこにいますか?
A、図書館島最深部、幻の『地底図書室』です。
Q、どうしてそんな所に?
A、魔法の本のトラップであるゴーレムに落とされて
Q、脱出は可能ですか?
A、わかりません。しかし困難であることは確かです。
Q、二日後にせまる期末テストに間に合いますか?
A、わかりません。
Q、魔法は使えますか?
A、同じく二日後まで使えません。
「つまり、僕達、結構まずいんじゃ……」
「うーん魔法さえ使えればな~」
現状確認をするネギ達は現在図書館島の奥の奥、『地底図書室』にいる。
そこを知る夕映いわく
『地底なのに暖かい光に満ち、数々の貴重な本に囲まれている本好きにとってのユートピア』らしい。
実際、地底とは思えない明るさで空間内が照らされている。
また、そこかしこから水が溢れ、湖のようにたまっている。
そこに岩肌や大きな本棚などが水面から顔を出している様子は水上都市もかくやといった感じである。
「どうしよう……ゴーレムの罠にもっと早く気づいていれば………」
「ネギ、しっかりしなきゃ! ここは先生である僕達が率先して動いてみんなを勇気づけないと!」
自分の責任を重く感じてしまいがちなネギにサイは気持ちを切り替えさせる。
「うん……いつまでもくよくよしてちゃいけないよね。 僕みんなの所へ行ってくる!」
少し離れた場所で唐突な状況に戸惑う人達にネギが呼びかける。
「皆さん、元気を出してください! 根拠はないけどきっとすぐに帰れますよ! 諦めないで期末に向けて勉強しましょう」
ネギが言い終わり皆が一瞬だんまりだったが、元気な笑い声が起こる。
「アハハ、この状況で勉強アルカー!?」
ネギの脳天気ぶりに古菲がお腹を抱えて笑うと、
「そうだね、今から頑張れば十分に及第点はとれるよ!」
遅れて合流したサイもネギに同調する。
「そうでござるな……なにせ、二人の先生がつきっきりでござるからな」
「あ、でも勉強するものが……」
「それなら問題ないですよ。」
そういいながら、そこらの本棚から取った教科書類を見せる夕映。
「よ――し! それじゃ早速授業を………」
準備万端と思ったその時、
――――グゥ~~~
「……と、その前に?」
「「「食料探しだ―――っ!」」」
そうしてみんな食べ物を探しに行ってしまう。
出遅れたネギとサイも追いかけようとするが、ちょうど腕にある封印の一段階目が解除される。
「サイこれって……」
「うん、確かネギの封印は朝日とともに解けるから後テストまで二日ってことだね」
「よし! がんばろう」
◇◇◇◇
その頃地上では――――
「なな、何ですって!? 2-Aが学年最下位を脱出しないとネギ先生とサイ先生がクビ~~?」
委員長の驚きの声が響きわたる。
「ちょっと本当ですの 桜子さん!?」
この情報を持ってきたチア部の椎名桜子が問いただされる。
「ホント――なんだって! だって職員室で先生達が話してるの聞いたんだもん!」
「何ですって? こうなったら先生達のクビを断固阻止しますわよ!」
愛しのネギサイを守るためにクラスに気合いを入れてテストに臨むよう指示するあやか。
「問題はアスナさん達五人組ですが、とりあえず、テストに出ていただいて0点さえ回避してくだされば………なんとか」
最下位脱出のメドが立ったかにみえた矢先、
「みんな~大変だよ――!」
「ネギ先生とサイ先生がバカレンジャーと一緒に行方不明に――………」
絶望の知らせをのどかとハルナが持ってくる。
「「「おわった………」」」
ある意味こちらも瀬戸際に立たされていた。
◇◇◇◇
さらに1日後―――
地底図書室―――
数学、サイの授業中
「それじゃ、この方程式の解がわかる人?」
「ハイ、ハイハ~イ!」
「では、まき絵さん」
「x=9 です」
「正解です! よくできましたね」
「てへへっ」
「丸一日たって、集中授業の効果が出てきてますね」
「そうかもっ! これならテストもいける……?」
にわかに自信が出てきたまき絵達は授業を中断し、休憩と称し水浴びに行く。
残されたのはサイとネギであった。
「いい感じだね、これなら十分テストでいい点数とれるよ!」
とネギはサイに言うが、
「…………」
サイは聞こえてないのか全く反応しない。
「サイ? どうしたの……」
今度は肩を叩きながら呼びかける。
「あっ、えっ……ごめん。何でもないんだ、少し疲れちゃったのかも」
「あっ、そうだよね! 僕達もずっと教えてるしね。 サイはここでゆっくりしてて? 僕はアスナさん達の方にいるから―」
ネギも行ってしまい、一人きりになるサイ。
もう一度あたりを見回す。
ここに来て一日、サイはこの地底図書室に見覚えを感じていた。
もっと言うならば地底図書室に似た『どこか別の場所』に行ったことがあるような気がしてならないのだ。
「(でも、こんな所に来るのは初めてだし……ただのデジャヴ?)」
考えながらいつの間にか水辺まで歩いてきていたサイは水面に自らの顔を映す。
映し出される顔は水面がゆらめくのにあわせていびつに容貌を変えている。
サイは普段自分の顔をあまり見ることがない。
なぜなら、
鏡や窓に映る顔は自分の知っている人とは誰とも少しも似ていないことを再確認するだけだから。
普段は感じない、両親がいない、という欠落した感じ、寂しさなのか? 恨めしさなのか? そんなよくわからない気持ちに支配されてしまうのがたまらなく怖かったから。
そしてそんな心を抱くのは木乃香やアスナやネギ……その他にも自分に対して暖かく接してくれている人に申し訳ないと思っていた。
「(やっぱり誰とも似てないや)」
もうこれ以上見るのはやめようと水辺を離れようとしたとき、サイの脳裏にフラッシュのように光景が浮かび上がる。
「―――ッッ! これは?」
浮かび上がったのは三つの光景。
一つ目はこの地底図書室のように広い空間。しかし、本棚などは見えない。
二つ目は、その空間の一角に佇む巨大な門。
三つ目は………
頭の中で映像を思い起こそうとしたとき、
「キャ―――――ッ!」
遠くから女の子の悲鳴が聞こえてくる。
「今のはまき絵さんの声だ!」
頭をぶんぶんふり思考を切り替えたサイは一気に悲鳴の聞こえた方へと走り出す。
自分の腕を見ると封印の腕輪は残り一本。
「(まだ魔法は使えないか……でも急がないと!)」
サイは暗い思考をそこに置き去りにするかのごとくひた走った。
「誰か~~~助けてーッ!」
同じく悲鳴を聞いていたネギ、明日菜は木乃香と夕映とともに現場へと到着していた。
案の定襲われていたのはまき絵だったが、まき絵を襲っていたのがネギ達を地下へと落としたあのゴーレムだったのだ。
「いったい何があったんです?」
状況確認のためまき絵と一緒に水浴びをしていた古菲と楓に事情を尋ねる。
「いきなり水中からアイツが出てきたアル」
「拙者たちは反応できたでござるが、まき絵殿が……」
見ると、まき絵がすっぽりとゴーレムの手の中に捕まえられてしまっている。
「ネギ君助けて――っ!」
「さ、佐々木さん!」
『フォフォフォ~~』
また例の怪しい声が聞こえてくる。
「よくも僕の生徒をいじめたな! いくらゴーレムでもゆるさないぞ!!」
ネギが珍しく怒り、杖を構え
文字通り一矢報いようとする。
「くらえ!魔法の矢(魔法の射手)!」
しーん…………
「(しまった! まだ封印が……)」
『フォフォフォ、お主らここから出ることはできぬぞ。 迷宮を歩いて帰ると三日はかかるしのう~』
ゴーレムの発言に動揺が走る。
「三日!?」
「それではテストに間に合わないアル」
「せっかくみんな頑張っとったのに――」
「みんな、あきらめないでっ!」
「でも、ネギ先生………テストは明日です……もう」
「いや、ネギの言う通りだよ! まだ諦めるには早いよ」
「サイ先生!!」
「それにほら! あの石像の首をよく見て下さい……」
「ああ―――っ!」
サイが示す石像の首には上で取り損ねた魔法の本が挟まっていたのだ。
「どうしてあんなところに………?」
「そんな事はこの際関係ないです。本を頂きます! 同時にまき絵さんも救出して下さい。 楓さん、クーフェさん」
「「オーケー! バカリーダー」」
夕映の号令の後、すぐさま駆けだしたのは古菲だ。
「さんざんやてくれたアルネ!中武研部長の力とくと味わうアルよ―」
サッとゴーレムの足元についたクーフェはよどみない動作から正拳をゴーレムの関節に繰り出す。
『フォ…!?』
足の踏み込みと同時に打ち込まれた拳はゴーレムの足にひびを入れバランスを崩させる。
後ろに倒れそうになるゴーレムがバランスを取るためにまき絵を持つ手を前に出す。
そこを待ってましたとばかりに古菲が下から蹴り上げる。
手の内にいたまき絵は宙に放り出される格好。
しかし、これも連携の一つ。古菲の後ろから飛んだ楓が空中で上手くキャッチする。そして、まき絵が楓から渡された新体操のリボンで石像の首から本を取り去る。
『あっ…』
「魔法の本ゲット――ッ!」
「三人ともよくやってくれたです。 このまま出口を探します!」
一斉に走り出すメンバー。
『ま、待つのじゃ~』
本を取り返すべく追いかけてくるゴーレムから逃げながら、
「しかし、夕映殿、本をとったもののこれからどうするでござるか?」
「その点は任せて下さい!」
夕映の代わりにサイが答える。
「あの石像、僕達がこっちに走りだしたら慌てて追いかけ始めました。おそらくは何か見られたくないもの……例えば地上への近道なんかがあるんだと思います」
そんなサイの予想通りのものを明日菜が見つける。
「みんな! あっちの滝の裏に非常口が!」
明日菜の指差す方向に目を向けると、なるほど、滝の水と水の間から見覚えのある緑の非常口があったのだ。
「みんないそいでや――」
一番後ろを走る木乃香がゴーレムの接近を言外に知らせる。
「急いでるんだけど…非常口の扉に問題が!」
そこには何故か中学生レベルの英語の問題が。
けれども、
「ワタシコレわかるアルよ!」
そう言った古菲が難なく正解を出す。
ピンポーンと言うお馴染みの音が鳴り、扉があく。
「木乃香姉さん早く!」
サイがゴーレムに捕まりそうになる木乃香の手を引き、非常口の奥へと進む。
「ありがとな……ってまだ終わりやないみたい」
その先は縦に伸びる円柱状の部屋へと続いていた。
見上げると壁に沿うように螺旋階段が延々と延びているのがわかる。
「皆さん、これを登るしかないです!」
他に上に向かう手段が見当たらないため素直に階段を登る。
魔法が使えないネギはこの状況にもどかしさを感じる。
「(ううっ……魔法が使えれば杖で上まで飛んでいけるのに……」
「ちょっとネギ、声にでてるわよ! それにこんな所で使ったらみんなにバレちゃうじゃない!」
ネギの隣を走る明日菜が注意する。
幸い、みなゴーレムから逃げるのに必死でネギの言葉は聞こえていないようだ。
「それにしても、しつこいアル! 」
「あの石像、壁を削ってきてるよー」
一旦はまいたと思ったゴーレムが階段の途中の壁を壊しながら強引に追いかけて来る。
『ならぬならぬ! 本を返すのじゃ~』
そんなゴーレムから一刻も早く逃げたい一同の前に再度、問題のかかれた石壁が立ちはだかる。
問題を見ると、数学の方程式問題らしい。
「いきなり計算なんてできないよー」
まき絵が頭を抱える。
そこで立ち止まる内にゴーレムとの距離はどんどん縮まっていく。
「僕がやりましょうか?」
見かねたサイが前に出ようとすると、それより先に本を持った楓が答える。
「うーん……x=13かな?」
ピンポーンと音とともに石壁が退いていく。
「おおお!? 長瀬さんまで!」 ネギが目を皿にして驚く。
その後も次々出題される問題を魔法の本を持った人が解答して、正解を出しながら順調に登って行く。
しかし、
「あうっ」
「夕映さん!」
ここまで的確に指示を出してきたリーダー、夕映が階段に飛び出していた木の根に躓いてしまう。
心配したサイが駆け寄り、前を走っていたネギ・明日菜達も引き返してくる。
「怪我はありませんか?」
サイが夕映の手を取り立たせようとするが、
「う………っ、あ、足がっ」
どうやら足首を捻挫してしまったらしい。
「先に行ってください………魔法の本さえあれば最下位脱出が……」
夕映が自分のことを諦めるよう言う。
「何言ってるんですか! リーダーを置き去りにするなんて作戦失敗じゃないですか!」
「サイ先生……」
「だから、夕映さんひとりを置いてかせなんてしません」
そう言って夕映を背中におぶるサイ。
「え!?……あの、その……」
夕映はうまく言葉が出ない。
「それに、夕映さんも2-Aの生徒です! ……どうせならみんなで一緒に頑張りたいじゃないですか!」
「あうっ、あ、ありがとです……サイ先生」
決して大きくはないサイの背中に乗って、サイの肩をぎゅっとつかむ。
それを確認し、サイは立ち上がり、
「よしっ! それじゃしゅっぱ、ウッッ……」
倒れた。
ここまでの階段ダッシュが足にきていたのだ。
ズコッ――とそれを見守っていた他の人がずっこける。
「何、カッコつけて無理してんのよ」
「サイ君もつかれとるんやろ」
明日菜と木乃香が失笑しながらサイを抱き起こす。
「めんもくないです……」
「では、リーダーは拙者に任せるでござる。 ニンニン!」
一番、上背がある楓が難なく夕映を抱き上げる。
「あっ…………りがとうです」
「フフフ、ネギ坊主は大丈夫アルか?」
古菲が抱きかかえるポーズをとる。
「……大丈夫です!」
ネギは震える足をビシッと正す。
『返すのじゃ~』
はるか下の方からゴーレムの声が聞こえてくる。
「そういえば、あいつの存在忘れてたわ」
「アスナ姉さん……脳天気すぎ」
わははっ、と笑いが起こり、みんなのムードが良くなってくる。
そして走ること計一時間――
「みんな見てください! エレベーターが!」
最初に気づいたネギが指を指し示す。
そこには、『1F直通 作業用』とでかでかと表示されたエレベーターが確かにあった。
「やったー! これで地上に帰れる――」
大喜びしながらエレベーターに飛び乗るまき絵。
それに続くメンバー達。
みな一様に安堵し、喜びの笑みを浮かべている。
そして最後にサイとネギが乗り、いざ地上へ! といくはずが―――
ブブ――――ッ
『ジュウリョウオーバーヤデ』
「ええ~~!?」
「それはなしアル――」
地上へと帰るはずが、一転、絶望へとおとされる。
しかし、ここで明日菜が気づいた。
「ちょっと待って! ホラ、見て片足出すだけでブザーが止まる……持ち物とか服を捨てればいける!」
「ホンマや!」
「おお 脱ぐアル! 脱いで軽くするアルよー」
やっと見つけたエレベーターというクモの糸。
手放すまいとみな必死に軽くしようとどんどん脱ぐ。
その内ネギとサイは目をつぶらざるを得ないところまで脱ぎ始める明日菜達だったが―――
ブブ―――ッ
『ザンネンジュウリョウオーバーヤデ』
「そんな……せっかくここまで来たのに……」
明日菜達はガクリとうなだれ意気消沈してしまう。
そこに、
『フォフォフォ、ようやく追い詰めたぞよー』
執念深いゴーレムがエレベーターの前まで登って来る。
「キャ―――ッ!」
もうダメッと誰もが思う中、ネギが立ち上がる。
「僕が降ります!! 皆さんは先に行って下さい!」
ゴーレムの前に立ちはだかるネギ。
「ネギ!? あんたまだ魔法が……」
「ネギ! 戻って!」
明日菜とサイが心配する。
「(たしかに魔法は使えない……けれど、僕はみんなの先生で……サイが夕映さんを見捨てなかったように僕も先生としてみんなを守りたい!!)」
その決意、その勇気はネギの言葉通りまさしく『魔法』だった。
「来い! ゴーレムめっ!! 僕が相手だっ」
『フォフォいい度胸じゃ……くらえーい』
ネギに向かいゴーレムの巨腕がのびる。
しかし、後少しで捕まるといったところでネギが首を掴まれエレベーターに引き戻される。
「あ…アスナさん」
「この期末はあんたにとっても大事な試験なんでしょ? だったらあんたもいなきゃ試験受けても始まんないでしょーが! もうっ! アンタもサイもガキのくせにカッコつけてんじゃないわ…よっ!」
そう言いながら、魔法の本をゴーレムに投げつける。
「あー……」
「やっぱりアルか……」
「仕方ないですね」
「そうでござるな」
一様に残念がっているバカレンジャーだが、その顔はむしろ清々しいものだった。
『フォ…! 本が!?』
ゴーレムは投げつけられた本を受け止めようとしてバランスを崩す。
そして、そのまま底の見えない縦穴へと落ちていく。
『フォ…フォ~~~~~』
ドップラー効果で小さくなっていく声を聞きつつ、
『オッケーヤ ウエマデゴアンナ~イ』
エレベーターが動き出す。
「ふぅ、なんとかこれで図書館島脱出ね」
地上までの数分間、今回の作戦を振り返りそれぞれが感想を言い合った。
そこに誰も魔法の本を残念がる人はいなかった。
――図書館島魔法の本サルベージ作戦 失敗。 けれど得た物はいっぱい!?
◇◇◇◇
期末テスト当日―――
予鈴が鳴り終わった2-Aに図書館組はまだいなかった。
「まだ、バカレンジャーは来ませんの!?」
あやかが激をとばす。
「委員長! バカレンジャー達が来たよ!ネギ先生、サイ先生も一緒!」
と窓際の席に座る出席番号28番、ちょっと地味な村上夏美が報告する。
「そうですかっ! みなさんこれなら我が2-Aもまだ戦えます!! ネギ先生たちのクビを阻止しましょう!」
「「「お―――――っ!!」」」
一方、図書館組は遅刻したため別室受験となった。
本当はテスト前日に帰って来ていたのだが、そのまま明日菜達の部屋で一夜漬け。
ギリギリまで点数を上げるため頑張っていたのだ。
試験教室の前で、ネギとサイは生徒達と別れる。
「試験がんばってください! 僕迷惑かけっぱなしで………こんな事言えないかもしれないけど……」
「大丈夫よネギ。私たちにだって意地があるんだからさ」
「そうアル! サイ坊を見てみるアルよ! 黙てワタシたちの成功祈てるアル」
ネギの後ろで下を向き黙祷をしているサイ。
が後ろ向きに倒れる。
「寝てるでござるな……」
「「「…………」」」
「まあとにかくしたから二番目くらいには滑り込むからアンタも休みなさいよ」
アスナがネギの頭をなでる。
「試験を受けるものは早く入室しなさ~い」
試験監督の先生が呼んでいる。
「みんな行くわよ~~」
「「「お~~~~……」」」
試験室へ向かう明日菜達の足取りは重い。
それもそのはず、三日に渡る地底探検の後ほぼ寝ずの試験勉強、これで疲れてないはずがない。
案の定、試験が始まってもバカレンジャーはテストに集中できていない。
「(やっぱりみんな辛そうだな……)」
試験を外から見守るネギは懐から花を一輪取り出す。
「せっかく魔法の封印も解けたんだ。僕にできることはこれが限界だけど……」
「――――ラス・テル・マ・スキル・マギステル
花の香りよ
仲間に元気を活力を
健やかな風を
活力全快 レフエクテイオー ―――― 」
ネギの持った触媒である花から気分をリフレッシュさせるフレグランスが流れ、明日菜たち五人の試験室に満ちていく。
「(なんか頭スッキリしてきた――)」
「(なんだかやる気が出てきたです)」
面々の集中力が目に見えて増していく。
「みなさん……」
試験の成功を祈りながら寝ているサイを引きずってその場を離れるネギだった。
数日後――――
「それでは、改めまして、新学期も我らA組を担任することに決まったネギ先生とサイ先生を祝う会を始めたいと思います!!! 司会進行は『麻帆良にスクープあらば即参上!』こと出席番号3番 朝倉和美が務めます。まずは主役のお二人から一言!」
「「というわけで新学期もよろしくお願いします!!」」
すでにお分かりのようにネギたちのクビをかけた学期末テストはなんとか最下位を回避し事なきを得た。
クラス平均をいつもより高くした原因はやはりバカレンジャーの得点が軒並み高かったことだろう。
しかし、サイから言わせればまだまだ伸ばせるとのこと。
「それでは、次に今回のテストで大活躍したバカレンジャーの皆さんにお話を聞きましょう。では、代表してバカレッドのアスナさん、どうぞ!!」
「ちょっと、大活躍したならバカレンジャーはやめなさいよ!」
「そんな事より、今回テストでいい点が取れた理由は何でしょうか?」
「それは……」
言いづらそうにする明日菜。
しばらくして意を決したように話し始める。
「えっと、私の近くに私なんかよりもちゃんと目標を持って頑張ってる奴がいて……
そいつのこと見てたら自分もテストくらい頑張んなきゃって思って、それで……」
「アスナ姉さん、それってネギのことでしょ」
サイが外野から茶化す。
「――――ッ! コラ――ッ! なんで人がせっかくぼかしてるのに言っちゃうのよ!」
明日菜がサイの首をしめる。
「ねっ…さん……くるし……」
「アスナさん今の本当ですか?」
「うっ……ネギ……」
明日菜を見上げながら、真意を聞こうとするネギに頬を掻きながら答える。
「まあね、そう思ってたのは事実だし。アンタも一生懸命教えてくれたしね」
「ありがとうございます……アスナさん」
ネギは感極まってなきそうになる。
「あああちょっと泣かないでよっ! もう……先生でしょ?」
「はいっ! そうですね、新学期もよろしくお願いします。アスナさん!」
「こちらこそよろしくね、ネギ」
波乱万丈、奇奇怪怪、なネギとサイの教師生活はまだまだ終わらないようである。
次回からエヴァ編
ネギサイド、サイサイド、と別視点から書いていこうと思います。