英雄の息子と麻帆良の子   作:お~い紅茶

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今回からエヴァンジェリン編突入
いつもより文字多目?


エヴァンジェリン編 ネギ①

 

 

春うららかな日射しのもと、

麻帆良学園は新学期を迎えた。

 

学園の生徒達は学年が一つ上がり、また新たな気持ちで制服に袖を通して学校に登校する。

 

 

それは、先生の方も同じである。

 

 

年度末にいろいろあったとはいえ、めでたくネギとサイも2-A改め3-Aの担任・副担任を続ける事を認めてもらい、意気込みも新たにホームルームの教壇に立っていた。

 

 

 

 

「はい、改めまして3-A担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。 副担任のサイ先生と一緒に頑張っていくので、よろしくお願いします」

 

「「「はーい! よろしく―――っ!!」」」

 

ネギの挨拶に元気よく返す生徒達。

 

そんな彼女等を教壇から見るネギはまだまだ話していない生徒が多いことに気づく。

 

 

「(これからクラスのみんなと仲良くできるといいなぁ)」

 

ひそかに自分のなかに先生としての目標を付け加える。

 

そんな新学期のありふれたスタート。

 

 

しかし、ネギはそこに不和を感じる。

 

「(……何だ? この嫌な感じ………まるで誰かに見られているような)」

 

強烈な不快感に冷や汗が滲む。気取られないようゆっくりと教室内を見回し、その視線の原因を探る。

 

そしてネギは教室の一番後ろに座る生徒と目が合う。

その生徒は他のクラスメートが浮かれている中、つまらなそうに頬杖をつきジッとネギの顔を注視していた。

その氷のような視線にネギはまるで冬に逆戻りしたかのような寒気を覚える。

 

 

「……ネギ、どうかした?」

 

隣のサイから声をかけられる。

 

「うんっ!? いや何でもないよ……」

 

もしかしたら勘違いかもしれないと思いサイには彼女の事を教えないで、自分はクラス名簿で彼女の顔を探す。

 

「(いた! えっと…あの娘は出席番号26番 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさん――――囲碁部、茶道部か……)」

 

名簿から顔をあげ、再びエヴァンジェリンの方を見るが、もう彼女はこちらを向いてはいなかった。

 

 

気になるネギだったが、この日はホームルーム後、身体測定になるためサイと一緒に廊下に出て待つことに。

 

 

教室で身体測定が始まり多少賑やかさが廊下にまで伝わってくると、サイがそういえばと切り出す。

 

「今日はまき絵さんいなかったね。 どうしたんだろうね?」

 

「あ…たしかに…」

サイに言われてネギもまき絵がホームルームにいなかった事に気づく。

 

いつも、元気がいい生徒だけに少し心配する。

 

その時、よそのクラスの生徒達が保健用具を運びながらネギ達の前を横切る。

彼女達はある話題で盛り上がっていた。

 

「ね、ね! あの桜通りのウワサ知ってる?」

「ああ、知ってる知ってる! 何でも半年くらい前から満月の夜に桜通りに吸血鬼がでるっていうやつでしょ」

「なにそれ~~、どうせデタラメでしょ?」

「違うよー実際に血を吸われたっていってる女の子がいるんだって!」

「うわっそれマジ!? 『今日はきれいな満月でしょう』って天気予報に出てたじゃん」

「なんか気味悪いよ……今日は寄り道しないで一緒に帰ろ」

 

と奇妙なウワサ話をしながらネギ達の前を通り過ぎていく。

彼女達がいなくなり、ネギはサイに言う。

 

「サイ……今の話どう思う?」

「吸血鬼の件でしょ?… 分からない、その襲われた女の人が本当にいれば別だけど……」

二人が考え込んでいると、教室のドアが勢いよく開かれる。

 

「うわっ! ……って、和泉さん!?」

おどろくネギの後ろ、開かれたドアには出席番号4番の運動部娘の和泉亜子が立っていた。

「どうしたんですか?」

サイが聞く。

 

「まき絵が……まき絵が保健室に……」

 

「「えっっ!まき絵さんが!?」」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

春、それは始まりの季節。

 

 

我々人間にとっても様々な事が始まっていく特別な季節。

 

 

けれど、始まりが全ていいこともたらすとは限らないように、

今回のこの始まりもネギとサイにとって新たな事件の始まりを意味していた。

 

 

前回の期末テストでは、先生として認められたネギとサイ。

 

しかし、今回のこの事件、二人は先生ではなく魔法使いとしての素養を問われる。

 

その中でネギは強大な敵に直面した時に立ち向かう心を、

 

サイはそんなネギに自分は何ができるのかを探していくこととなる。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

~~ネギ・その1~~

 

 

 

 

亜子に知らされたネギは、サイと共に保健室を訪れた。

 

そこには、ベッドでスヤスヤ眠るまき絵の姿があった。

保健室の先生によると、桜通りで寝ている所を見つかって運び込まれたらしく、体には別段異常が無いらしい。

 

 

だが、ネギは気づいていた。

 

「(……まき絵さんが桜通りで居眠り? いや違うぞ!)」

ネギは寝ているまき絵に近づき、かもしれないを確信に変える。

 

 

「(やっぱり……ほんの少しだけど『魔法の力』を感じる)」

 

それは、ネギの知り合いはもちろん、この前感じた図書館島の魔力とも違っていた。

とりあえずのまき絵の無事を確認したネギとサイは保健室を後にする。

 

 

「ネギ……まき絵さんから……」

 

サイが小声でネギに話す。

 

「…うん、僕も魔法の力を感じた」

「やっぱり……それじゃ、あの桜通りのウワサもあながち間違いじゃないのかもしれない」

 

先程聞いた吸血鬼の噂。

ネギは今夜、一緒に桜通りに張り込み様子を見ることをサイに提案する。

 

「いや、ここは別行動にしよう。 現場の桜通りはネギに任せるよ。その間に僕は例の被害にあった人達に会って情報収集してくるよ!」

「わかった。 何か分かったら今日の夜に教えて」

 

そう言って二人は別れ、早速それぞれの準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、煌々とした満月が夜に映える。

 

明日菜と木乃香、それに夕映、のどか、ハルナは買い物をしてすっかり帰りが遅くなってしまっていた。

 

 

「いやぁ~すっかり夜になっちゃったね」

「パルがいつまでも漫画を買うのを悩んでいるからです」

 

ぷんすか怒る夕映は『豆乳コーラ』というおいしそうでおいしくなさそうな謎パック飲料をストローで吸う。

 

「それよりも、こんな満月の夜は桜通りに吸血鬼がでるってもっぱらのウワサらしいよ」

「…え、そうなの?」

「のどか、信じない方がいいですよ。 パルの話しているのはただのウワサ。きっとデマに決まってるです!」

「そやな~~ホンマに吸血鬼なんておらんやろ、なぁアスナもそう思うやろ?」

「えっ…う、うん」

 

木乃香の質問に思わず答えてしまった明日菜だったが、

 

「(……ネギやサイみたいに魔法使いがいて、それにこの前の図書館島での一件……もしかしたらってこともあるのかも)」

内心は吸血鬼の存在を否定していなかった。

 

「あっ……わたし、下駄箱に図書館の本置きっぱなしにしちゃったかも……」

 

のどかが立ち止まってカバンを探り、借りてきた本が無いことに気づく。

 

「パルが下駄箱でのどかを急かしたからですね……のどか、私も一緒に行きます」

 

と、夕映がハルナを小突きながら言う。

ハルナは申し訳無さそうにテヘッと舌を出して謝る。

 

「い、いいよ……夕映に悪いし……それに忘れたのは私だから一人で行くよ」

 

「そうですか……? それじゃあ先に帰るです」

 

そのまま、のどかは別れて本を取りに戻る。

 

 

 

その後別れてからしばらくして、

 

「………本屋ちゃん大丈夫かな?」

 

と明日菜が心配するも、

 

「何も心配あらへんやろ?」

木乃香は吸血鬼の噂を全く信じていないのでどこ吹く風といった様子。

 

「う~んやっぱ、気になるから本屋ちゃんとこ行くね」

「あ、アスナ待ってー―――ウチも行く」

 

結局、明日菜と木乃香はのどかを探しに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、のどかは件の桜通りに差し掛かろうとしていた。

 

 

 

そもそも、桜通りとは麻帆良女子中からその女子寮に通ずる桜並木の通称である。

 

春真っ盛りの現在は道の両側に並ぶ桜が満開であり、夜になると明かりに照らされた桜並木が幻想的な光景を作り出す事で有名になっている。

 

 

家路をひとりで帰るのどかは普段なら何とも思わずにこの桜通りを通っていた。

 

だが、いかんせん今日は吸血鬼の噂を聞いたばかりであった。

それに、この日は風も強く、木々のざわめきが余計にのどかを不安にした。

 

 

「怖くない~、こわくない~」

そう言い聞かせ、のどかは歩く速度を速める。

 

しかし、次の瞬間のどかの体は恐怖のあまりに強張る。

 

視線の先には街灯。

 

 

だが、その上に立つ人物がいた。

 

 

真っ黒のぼろ布を纏い、頭には魔法使いのようなトンガリ帽子をかぶっている。

 

 

「……ひっ」

恐怖が喉をつく。

 

「27番宮崎のどかか……恨みはないが貴様の血少しだけ分けてもらうよ」

そう言うや否や黒衣の人物は一気にのどかに迫る。

 

のどかは恐怖に耐えられなくなり、気絶してしまう。

抵抗しなくなった獲物に牙を突き立てるライオンのように、黒衣はその異様に発達した犬歯をのどかに近づける。

 

 

あわや、このままか? と思われたその時、

 

 

 

「待て―――っ!」

「!!」

「僕の生徒に何をするんですか!」

 

桜通りの噂の調査をするために張り込みをしていたネギが杖にまたがり接近する。

 

「(やっぱり噂は本当で、あいつがまき絵さんやほかの生徒を襲ったんだ) 動きを封じさせてもらいます!」

 

ネギは手を前に出し、始動キーを唱え、

 

「風の精霊11人 縛鎖となりて 敵を捕まえろ 【魔法の射手・戒めの風矢】」

空気を用いて相手を拘束する魔法の矢を放つ。

 

 

 

「……もう気づいたか 【氷楯】」

 

しかし、ネギの魔法は相手が出した氷の楯に全て防がれる。

 

 

「(!! 僕の魔法が全部はじき返された。やっぱり犯人は魔法使い!?)」

 

自分の知らない魔法使いの存在に驚くネギ、

 

そして呪文の衝撃で噂の犯人の帽子が飛ばされる。

 

その素顔がネギをさらに驚かせる。

 

 

「えっ!? 君は……エヴァンジェリンさん!?」

 

そう、なんと噂の犯人の正体はネギの担任するクラス3-Aの生徒の一人で、今朝ネギのことを見ていたエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル その人であった。

 

 

 

「フフ……てっきり2人揃って来ると思っていたが、まあいい、新学期に入ったことだし初めましての挨拶でもしようか先生?」

堂々とした様子で話すエヴァンジェリン。

 

 

ネギは倒れているのどかを抱きかかえながら続きを聞く。

 

 

「それにしても驚かせてくれる……10歳にしてこの力、さすがに“奴”の息子だけある」

 

「(……え? ……“奴”?) 何者なんですかっ、あなたは! 魔法使いのくせにどうして人を襲うんですか?」

 

魔法使いは人助けをするものという考えのネギはエヴァンジェリンを責める。

 

 

「この世には…いい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよネギ先生」

そう言うとエヴァは魔法薬を取り出し呪文を唱えた。

「 【氷結・武装解除】」

「うあっ!」

エヴァが取り出した魔法薬のビンがネギ達の前で破裂する。

とっさにネギは魔法障壁を出してエヴァの魔法の威力を軽減する。

しかし、それでもネギの服の袖が氷のように砕けてしまう。

 

 

「抵抗したか……」

「ふう……宮崎さん大丈夫!? って服がー!」

気絶しているのどかの服はそのほとんどが破れてしまっている。

慌てて着るものを探すネギだったが、

 

 

「何や、今の音!?」

「あっネギじゃない!?」

 

折り悪くちょうどそこにのどかを迎えにきた明日菜と木乃香が現れる。

 

「どうしたの………あんたそれ!?」

素っ裸ののどかを抱きかかえるネギを見て明日菜の顔が引きつる。

 

「ネギ君って吸血鬼やったんか!?」

「ち、違います!」

なんとかネギは弁明しつつエヴァを見やる。

 

すると、その場を離れようとしていた。

 

「(逃がすもんか) すみません、のどかさんを頼みます。 僕はこれから犯人を追いますので、それじゃあ!」

 

そう言って、ネギは魔力を足に集中させ走力を強化する。

 

 

高速で走りながら先程のエヴァの言葉を反芻する。

「( “奴”の息子ってエヴァンジェリンさんは僕のお父さんを知ってる……?)」

 

やがてエヴァの後ろ姿を捉える。

 

「待て!」

「はやいな、坊やの得意分野は風だったかな」

 

走りでは分が悪いと判断したエヴァはさしかかった歩道橋の上から月夜に飛び出す。

「(杖も箒も無しに飛んだ! ただの魔法使いじゃないぞ)」

ネギは内心驚きつつも、すぐさま杖にまたがる。

 

 

麻帆良学園上空を舞台に魔法使い同士の追いかけっこがスタートした。

 

 

「待ちなさーい! どうしてこんなことするんですか! 先生としても許せません」

「はは、それは怖い。 しかし待てと言われて待つほど私は素直でもない!」

ネギとエヴァは空を切りながら互いに言葉を交わす。

 

それにとエヴァは続ける。

「先生、“奴”のことを知りたいんじゃないのか? 私を捕まえたら教えてやるよ。それとも、仲良しのもう一人の先生がいなきゃできないのかな?」

 

「………本当ですね?」

エヴァの言葉に本気で彼女を捕まえることに決めたネギ。

 

「いきます! 【風精召還・剣を執る戦友】」

 

詠唱と同時にネギと同じ姿をして、手に武器を持った分身が8体現れる。

 

「【捕まえて】」

 

そしてネギの号令により分身ネギ達は一斉にエヴァへとかかっていく。

 

「(8体同時の精霊召還!? いよいよ10歳とは思えん魔力だ……)」

 

エヴァは魔法薬を後方へ投げる。すると、薬にぶつかった精霊達が風船のように破裂していく。

そうしてエヴァが対処しているのをネギは後ろから冷静に分析していた。

 

 

「(また魔法薬? そういえば、一番最初から呪文の発動に魔法薬を使っていた。 それに呪文の威力もスゴ腕の魔法使いにしては全然弱い。………なぜかこの人魔力が低いんだ! だとしたら、勝てる!)」

 

相手の弱点をつかんだネギはエヴァの横へと躍り出る。

精霊に気を取られていたエヴァは対応できていない。

 

「追い詰めました! これで終わりです。 【風花・武装解除】!」

「――ッ!」

 

【武装解除】を使用した事によりエヴァの身につけていたぼろ布が散り散りになって吹き飛ばされる。

飛行能力をそれに頼っていたのか、エヴァはそれ以上飛行を続けずに近くの建物の屋上へと降りていく。

 

 

 

「……やるじゃないか先生」

「もう逃げられませんよ。 約束通り何でこんなことをしたのか教えてもらいます! ……それに、お父さんのことも」

「お前の父親……つまり『サウザンド・マスター』のことか?」

「(―――そこまで知っているのか!)とにかく、僕の勝ちです。大人しく捕まってください!」

 

「フフ…先生はこれで勝ったつもりなのか?」

 

ネグリジェ姿で仁王立ちするエヴァの背後に人が落ちてくる。

 

「新手……!? 仲間がいたんですね」

「さあ、お前の得意な呪文で私を捕まえてみろ」

 

「(仕方ない、二人まとめて捕まえる!) 風の精霊11人 縛鎖となりて 敵を捕まえろ 【魔法のしゃ――あたっ!」

ネギが【戒めの風矢】を放つ前に詠唱を止められてしまう。

それも、新手がネギにデコピンをしただけで、である。

 

ネギは何が起きたかわからなかった。

理解できたのは、呪文を唱える前にはエヴァ達と十分に距離を取っていた筈なのに、自分の詠唱終了よりも早くその距離を敵が詰めて来たということだった。

 

「いててっ………て、あれ!? あなたはウチのクラスの……」

ネギはデコピンをお見舞いされた新手を見てさらに驚く。

 

「紹介しよう私のパートナー、3-A出席番号10番 『魔法使いの従者』 絡繰 茶々丸だ」

「そんな……エヴァンジェリンさんだけじゃないなんて」

 

「フフッ、いいか? 元々『魔法使いの従者』とは戦いのための道具だ。たった今身をもって知った通り、我々魔法使いは呪文詠唱中に完全な無防備となる。そこに攻撃を受ければ魔法は使えない。そこを剣となり盾となり守護するのが従者の使命というわけさ。」

「(そんなの知らなかったよ~。パートナーがそんなに重要だったなんて)」

「つまり、パートナーのいないお前では私には勝てないぞ」

 

「で、でもサイだっているし……」

 

ネギはパートナーこそいないが友達といえるサイならいる。

だから二人でエヴァに向かえば、と考えていた。

 

 

「だが、現に今お前は一人ではないか。」

「それは、たまたまで……」

「それに、私なら二人を引き離し別々に倒す。そうなるとやはりパートナーのいないお前らは私には勝てないということになるな。」

「ううっ」

 

 

「……ふぅ、しゃべり過ぎてのども渇いた。 茶々丸」

「はい。……それでは、申し訳ありませんがネギ先生」

 

そういって、茶々丸はネギの体を持ち上げ、羽交い締めにする。

 

「ネギ先生よ、私はこの時を待ちわびたよ。 これで奴が私にかけた呪いも解ける……」

「の、呪いですか…!?」

「そうだ真祖にして、最強最悪の魔法使いの私がなめさせられた苦汁……それは――」

「それは……?」

 

ゴクリと唾を飲み込むネギ。吸血鬼の真祖を苦しめる呪いとは一体どんなに恐ろしいもの何だろうか。

 

 

「それはだな――私はお前の父サウザンドマスターに敗れて以来、極限まで魔力を封じられ、も~~~15年間もあの教室でノー天気な女子中学生と机を並べてるんだよ!!」

 

エヴァはネギの胸ぐらを首が締まるほどつかみ、不満を爆発させる。

「げほっ…げほっ……う――そんなの僕知らない」

 

「このバカげた呪いを解くには奴の血縁たるお前の血が必要なんだ! 悪いが死ぬまで吸わせてもらうぞ」

完全に立場が逆転し、逃げられなくなったネギはなす術なく首からチュ~~っと血を吸われてしまう。

「うわあ~~ん、誰か助けて~~っ!」

 

その叫びは誰にも聞かれることがないかに思えた。

 

だが、

 

「コラ――ッ! 変質者どもっ!ウチの居候になにすんのよ――――っ!」

 

屋上のドアから大声を出し、駆けてきた少女はエヴァと茶々丸にドロップキックをかます。

 

「うばぁっ」

 

変な声を出し、顔を蹴られたエヴァが吹っ飛ぶ。

「なんだこの力は!……神楽坂明日菜!?」

「ん? あっあれー?」

蹴られた方も蹴った方も意外な相手だった事に驚く。

 

「マスターお怪我は?」

茶々丸がエヴァに近寄る。

「うう……顔がイタい……」

 

「ちょっとあんた達ここでネギに何してたのよ? 桜通りの事件とも関係してるみたいだし―――答えによってはタダじゃすまないわよ!」

 

ネギを二人から守るように立ち、睨む明日菜。

 

「ふんっ、よくも私の顔を足蹴にしてくれたな…覚えておけよ!」

エヴァは蹴られた頬を押さえながら屋上から茶々丸と一緒に飛び出す。

 

一旦は明日菜達の視界から消えたが、すぐに茶々丸のジェット噴射で飛ぶエヴァが見えるようになる。

去り際にエヴァが忠告する。

 

「坊や、今夜は見逃してやるが次にお前を襲うときは容赦しない。―――そうそう、先程言い忘れたが、別にサイ先生と二人で迎え撃っても構わんぞ。 お前が大事な友達に『自分の命が危ないから一緒に危険な目に遭ってください』なんてお願いできるならな!」

 

 

そう言い終わると、夜の闇に消えていった。

 

 

 

 

残されるネギと明日菜。

「あんた大丈夫? 一人で犯人捕まえるなんてまたカッコつけて! 心配して来てみれば案の定ピンチだったじゃない」

 

明日菜は警戒を解きネギの体にケガがないか確かめる。

「ちょっと! 首から血でてるわよ大丈夫なの……ネギ……?」

 

ネギの体が小刻みに震えている。

「どうしたの?………ん!?」

 

顔を上げたネギは目に涙を溜めていた。

そのまま、明日菜にひしっと抱きつき泣きはじめてしまう。

 

「うう、うわ――ん、あずな゛さぁ~ん」

「どうしたのよ、もう!」

「こ、こわかった、怖かったんです―――っ!」

「わかったから、落ち着いて。……ね? そんなひっつかないでよぉ~」

 

その後、泣きじゃくるネギを明日菜は10分以上あやし続けたという。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

飛び去ったエヴァと茶々丸。

エヴァは自らの作戦が思い通りにいっていることに思わずニヤリと笑みを浮かべてしまう。

 

初めてネギがこの学園に来ると知ったのが半年前。

 

そこから呪いをかけられた状態でもネギという魔法使いと渡り合うためにコツコツ血を学園の生徒から集め、力を蓄えてきた。

そして、今夜遂にネギと相対したというわけだ。

 

 

しかし、当初の予定に無いイレギュラーが二つ。

 

 

一つは、神楽坂明日菜の救援。

 

 

今夜で決めても良かったのだが、魔法薬も切れていたし仕切り直すのが得策だと判断した。

 

もう一つは、近衛サイの存在。

 

見習いとはいえ魔法使い二人を力が抑えられた状態で相手どるのは分が悪い。

だから、そうならないように最後にネギの心に楔を打ち込んできた。

ネギが容易にサイに手助けを求められないように仕向けた。

 

 

「アハハハッ! 今の所多少の邪魔があるが、坊やはパートナーもいない、友に助けをも求められない。次の夜には確実に仕留められる!」

 

茶々丸の肩に乗って一人ほくそ笑むエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

その顔はまさに悪い魔法使いそのものだった。

 

 

 

その時、茶々丸が空中で急に止まる。

考え事をしていて振り落とされそうになるエヴァは慌てて茶々丸の服を掴む。

 

「何してるんだ茶々丸! 危ないぞ」

「すみません、マスター。 ですが前方に……」

「うん?」

 

エヴァは茶々丸が片方の腕で指し示す方向に顔を向ける。

 

 

「……ほう?」

 

「…………」

そこには月明かりをを背中に受けて、空飛ぶ箒の上に立つ少年の姿があった。

 

 

「ここで会えるとは思ってなかったよ……サイ先生」

 

 

「こんばんは、エヴァンジェリンさん」

この夜、二回目の戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。




次回はサイ視点です
多分全5~6話くらいを想定中・・・
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