同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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017. 団扇

  

碌に休む事の出来なかった休日はすぐに終わり、俺達はまた水の国方面の国境警備についていた。今は小隊長以上で集って情報交換を兼ねた会議中だ。

 

「最近、敵の進行も鈍くなって来ましたね」

「そうだな、数も少ないし斥候ばかりだ」

 

ホヘトとゲンマが指摘した通り、今までの苛烈さも身を潜めている。うちは一族の動向がキナ臭くなってきたし、オビトも霧隠ればかりに構ってはいられなくなったのかもしれない。

 

「クォン!」

 

その時、周囲に放っていたコン平から霧隠れの忍が来たと知らせが来た。先日倒した敵の遺体でも奪いに来たのか?

 

「ホヘト、白眼で南東の方角を見てくれ」

「白眼!……見つけました。あれはおそらく霧隠れの暗部ですね。数は六」

 

暗部が出てきたということは、やはり敵の目的は遺体の回収だろう。やはりここで攻め入って来ないという事は、進行を一旦中断するつもりかもしれない。

 

「それなら狙撃とシスイの幻術だけで追い払えるな。たまには俺達だけでやるか」

「とは言っても、その作戦だと俺のやることは無いんだけどな」

 

ゲンマの文句に皆が苦笑しつつ、俺とホヘトは狙撃の準備に入る。シスイは瞬身の術の準備、ゲンマは敵との中間地点に配置させバックアップ体制を取らせた。

 

「ホヘト、一発だけだ。決めろよ」

「任せて下さい。組んでから一体何年経つと思ってるんです」

 

渦潮隠れの里での任務からだから、もう長いもので八年近い付き合いだ。お互いの癖や戦闘スタイルも含め知り尽くしている。おかげで今もホヘトの発射合図と俺が術を発動させるタイミングは、ほぼ同時だった。

 

「敵一名死亡。ちゃんと一発で決めましたよ」

「流石だよ。後はシスイに任せよう。ホヘトは敵を確認しておいてくれ」

 

念の為、ホヘトにシスイを確認させていたが、どうやら瞬時に敵二名に幻術をかけたようだ。

 

「なに!」

「どうした?」

 

しかしホヘトが驚いた様な声を上げた。いつも穏やかなホヘトにしては珍しい。敵が退かずに突っ込んで来たのか?

 

「敵の一人が……白眼を持っていました」

 

霧隠れの白眼使いとなると心当たりは一人しかいない。四代目水影になるメイの側近で、確か名を青といったはずだ。

 

「どうします?追いますか?」

 

奴には現水影の幻術を解いて貰わないといけない。ここで殺してしまっては困る。

 

「敵は撤退を始めたのか?」

「はい」

「なら止めておこう。追撃するにしても今は俺達しかいないんだ。人数が足りな過ぎる」

 

同族の眼という事で追いたがるホヘトを窘めた頃にはシスイ達も戻って来た。

 

「幻術で少しだけ相手の頭を覗きました。しばらく霧隠れは大人しくなるでしょう」

 

任務に就いてから間も無く三週間が経つ。そろそろ交代要員が来るが、これならば他の忍に警備を任せておいても、一時は大丈夫だろう。

 

ホヘトに敵の撤退ルートを確認して、シスイの第二小隊にいる棘糸テッセンにトラップを張らせた。

 

そして二日後に来た交代要員と入れ替わり、俺達は久々に里へと戻った。

 

 

 

「猟犬部隊任務完了。帰還しました」

 

小隊長以上で揃って三代目に報告をする為、俺達は任務の受付所に来た。今日は御意見番、つまり婆様とホムラの爺様もいる。

 

「そうか。長期の任務ご苦労であったな」

「ハイハイ、で次の任務はなんですか」

 

三代目が甘い言葉を言う時は要注意だ。今までの経験上、碌な事が無い。

 

「まあそう慌てるでない。しばし休暇を取るが良い」

 

これは本格的に何か面倒事があるに違いない。一週間とかでは無く、しばしだと?婆様もニヤニヤしているし、余程の事に違いない。

 

「どうしたんです。柄にもないこと言って」

「お前のお節介のおかげでアスマが落ち着いたからの、ヒルゼンからのご褒美じゃろうて」

 

尚も警戒していた俺に婆様が説明してくれた。二人はどうやら仲良くやっている様だ。

 

「はあ、なんだ。ただの親バカかよ」

「うるさいわい」

 

ただあれについては俺もかなり苦労したし、くれるというものを返す義理もない。ありがたく貰っておくとしよう。

 

「すみません三代目、ヨフネ隊長。それでしたらお願いがあります」

 

珍しくそう切り出したシスイに軽く驚きながら、三代目と俺は火影様邸の屋上に連れてこられた。するとシスイは俺達の目の前で膝をついた。

 

「うちはと里の不信感に心を痛めております」

「うむワシもじゃ」

 

とうとう、うちはのクーデターが現実の物になり始めたようだ。

 

「一族と里を再び信頼で繋ぐことが出来ればと思っています。その任務を俺に授けては貰えないでしょうか」

「通常任務から外して欲しいという事か」

 

俺を呼んだのもどうやらその為らしい。三代目から許可を貰えば済む話だが、猟犬の隊長である俺にもキチンと話を通しておきたかったのだろう。

 

「はい。それに加えて、俺にある程度の権限を与えて下さい」

「分かった。お前にはワシから極秘の調査任務を出したということにする。何か不備が生じた時はワシの名前を出せ。責任は全てワシが取る」

「ありがとうございます」

 

三代目のこういう所は素直に感心する。部下を信じて権限を与え、尚且つ責任を自分で取ると言える人間は少ない。

 

「ヨフネよ。お主もそれで良いな?」

「ダメです」

「「え?」」

 

しかし感心するのと俺が納得するのは別の話だ。この事はうちはだけの問題では無い。素直に、はい任せましたとはさせない。

 

「この問題、シスイ一人に押し付ける気はありません。三代目、猟犬部隊にその任務を授けて下さい。第一小隊をバックアップに回して、各種工作は俺とシスイでやります」

「隊長……」

 

死者を一人でも少なくさせる為の猟犬部隊だ。それにシスイ一人が頑張っても失敗する事は俺には分かっているのだ。退く気はない。

 

「そもそも俺がシスイをこの隊に入れた理由をお忘れですか?」

「……そうであったな。よかろう。お主に一任しよう」

「困った時は遠慮なく三代目の名前は使わせてもらいますんで」

 

そもそも三代目の甘さが招いた事態だ。それを自分で分かってダンゾウに汚れ仕事をさせているのだろうが、御す事の出来ない必要悪はただの害悪だ。火影の名前は大いに利用させて貰おう。

 

「好きにするがよい。しかしお主達を見ておると、かつてのワシの友うちはカガミと若き日のコハルを思い出す」

「まだまだ及びません」

「それだけはやめて下さい」

 

 

 

 

 

三代目から任せられた俺達は、シスイの提案に従う形でキーマンの一人であるイタチと接触をする事にした。

 

イタチが里から抜けなければ、サスケが強くなる事は無かったのか?という懸念があるが、俺はサスケの才能にかけてみる事にした。

 

それにイタチが里から抜けなければ大蛇丸もカブトも殺すことが出来るだろう。穢土転生の術式自体は切り札として入手したいが、敵に使わせる必要はない。

 

そうすればオビトを殺すだけで戦争は終わる。もしオビト殺害に失敗しても、マダラ達を殺す為に必要なのはナルトやサスケだ。だが彼等を確保していても、うちはという保険は欲しかった。

 

間も無くシスイがイタチを里の郊外にある、この渓谷まで連れてくる事になっているが、一先ず俺は隠遁を使い隠れておく。万に一つでもイタチが一族の側につく気ならば、姿を見せる事は出来ない。

 

「昔よくここで遊んだな」

「……戻っていたのか」

 

シスイに少し遅れてイタチもやって来たようだ。まずはイタチの真意を聞き出してもらうとしよう。

 

「ああ、ようやく霧隠れを追っ払えたよ」

「そうか。で要件は?」

「お前の率直な意見を聞きたい。フガクさんはどこまで本気だと思う?」

「本気とは?」

「クーデターだ」

 

クーデターと聞いた瞬間、イタチの気配が変わった。向こうもこの質問に対しては、親友とはいえ疑ってかかるしかないのだろう。彼等は一族の中では少数派なのだから。イタチは慎重に言葉を選びながら答える。

 

「うちはでは里に対する不満が高まっている。里がこのままなら、うちはも我慢の限界を超えるだろう」

「里が変わればうちはも変わるか」

「だがうちはが変わらなければ里は変わらない。双方に不信感がある以上、事態は悪化するだけだ」

「俺はその不信を払いたい」

「できると思うか?」

「さあな、だがやらねばならない。うちはがクーデターを起こせば、それは双方に不幸な結果しかもたらさない。お前はどう思っている?」

「その質問に答える前に……そこにいる奴、出て来い」

 

まじか、自来也様仕込みの隠遁だったのに気付かれるとは思ってなかった。まだ決定的な事は言ってないが、ここまでの会話からするとイタチはこちらと志を同じくする者のように思える。シスイを見ると同意見のようで頷いている。ここは大人しく出るしかないだろう。

 

俺は身を隠していた木から飛び降り、姿をさらした。

 

「凄いな、噂にたがわぬ才能をもっているようだな。シスイがキーマンに挙げるだけの事はある」

「貴方だったのですかヨフネさん。私なんて貴方と比べれば霞んでしまいますよ」

「流石にそれはない」

 

手を横にぶんぶん振りながら答える。どう頑張っても、イタチに才能で勝てる気なんてしない。それはさておき、まずは俺もこの件に関しての立場を明確にしないといけないだろう。

 

「俺もうちはにクーデターを起こさせる気は無いし、なるべく血を流さずに解決させたいとも思っている」

「良かった。……俺もクーデターには反対です。しかし阻止するには余程のことをしなければ」

 

俺の言葉に反応してか、イタチは自ら一族の厳しい現状を突き付けてきた。もしかすると、この時点でイタチは一族の滅亡についても考えているのかもしれない。

 

「それも分かっている。だが諦めるつもりもない。俺とシスイ、それにお前が協力すれば可能だと思っている。まだ詳細は知らせていないが、猟犬の第一小隊にもバックアップはさせるつもりだ」

 

厳しい現状が分かっていても、俺はシスイの別天神による作戦を成功させたい。

 

「あと協力しようとは言ったが、お前はまだ直接動かない方が良い」

「何故です?」

「警務部隊の一部がお前を疑っているらしい。シスイにお前の監視を命じて来たようだ」

 

イタチは疑われている事にショックを受けたのか、俯いてしまう。

 

「俺とシスイは三代目から任命されて動いているが、お前は誰の意思で動いている?」

「俺は俺の意思で動いています……ですがダンゾウ様と一族の二重スパイという立場です」

「つまりだ、俺達はこの件に対して異なる立場を取る三組の中心にいる事になる」

「待って下さい隊長。それはどういう事ですか?」

 

そうか、シスイは知らないのか。だからダンゾウに呼ばれてノコノコとついて行き、右眼を奪われたのだろう。

 

「ダンゾウ様はうちは一族は排除すべきだと考えている」

「そんな!」

「そうだろ?イタチ」

 

イタチはそんなダンゾウの指示で動いているのが後ろめたいのか、気まずそうな顔をしつつ頷いて認める。

 

「……そんな」

「だがイタチだってそんな結末は望んでいないさ」

「もちろんです」

「だったら、これからは俺が里の情報、シスイは一族のイタチはダンゾウの情報を集めて、この三人で共有するんだ」

 

今回は政治工作も重要となって来る。そして政治工作するには最も情報が必要だが、俺達が各陣営の中心にいる以上、最も得られる情報は多くなる。それぞれに与える情報をこちらでコントロールしてしまえば、優位に立てる。

 

「分かりました。しかし三代目には流さないのですか?」

「あの人は優しすぎる。人としては美徳だが、今回はそれが邪魔になる可能性もある。それに火影が否と言えば、俺達は動けない。三代目とは目的が一致しているんだ、裏切ることにはならないさ」

 

この協力体制がなければ、考えている作戦は上手く行かないだろう。そして一族やダンゾウはもちろん、三代目にも邪魔はさせない。

 

「分かりました。俺は隊長を信じます」

「俺達で里の未来を守りましょう。それで何か作戦はあるのですか?」

「もちろん考えてあるさ。と言ってもシスイがフガクさんに別天神を使い、里との融和を考えて貰うってだけだがな」

「父さんに……それで里と一族を守れるのなら俺に依存はありません」

「フガクさんは決して早まった事をする人ではないと思っている。今はもう望めないが、待遇について里側から譲歩して来れば、話し合いに応じていただろう」

 

もっとも自分達から先に譲歩する気は無かっただろうが。

 

「俺は少しでも歩み寄りの姿勢を見せる事が出来ればとずっと思っていた。九尾事件以降、不信感が高まっていた時に猟犬は結成された。その時に俺は、日向にうちは、その他の名家を隊員とする事で里一丸となる事をアピールしたかったんだ」

 

それが全てと言うわけではないが、そう願っていたのは確かだ。

 

「そんなに前から考えていたのですか?」

「結果として、止める事は出来なかったがな」

 

里に住む全員の意識を変えることなんて早々できやしないのだ。シスイを隊に入れてみたが、シスイの評価が上がるだけにすぎなかった。

 

「最悪の場合として今回の事も頭にはあった。その為にお前には別天神は使わせなかった。そして今こそが使うべき時だと思っている」

 

この話し合いでとりあえず、この作戦に二人も同意してくれた。そして別天神の件だけは三代目に伝えておくことになった。

 

「明後日、南賀ノ神社で会合がある事はダンゾウは知っているのか?」

「はい、既に伝えてあります」

「なら明日にもダンゾウが三代目と面会するだろう。おそらく俺とシスイも呼ばれることになるだろうが、その時はシスイお前一人で行け」

「隊長が行った方がよろしいのでは?」

「俺が介入しているという事は、まだダンゾウには知られたくない」

「分かりました」

 

話し合いは夜遅くまで続いた。

 

 

 

三代目には解散した後で俺が作戦を伝え、予想通り翌日の会議に呼ばれたシスイは、別天神を使い改心して貰う事をダンゾウの前で説明してくれた。

 

そしてついに今日が会合の日だ。イタチも何かあった時の為に会合に参加させる事にした。しかし不必要にシスイとの繋がりを見せる事は得策でない為、イタチは先に南賀ノ神社に行かせている。

 

そして俺はというと猟犬部隊の建物から神社までシスイの警護をしていた。ちなみにこの建物というのは、予算が増やされてから購入した拠点である。それからは完全休暇でもない限りは、全員ここで待機するようにしたのだ。

 

「シスイ殿、ダンゾウ様がお呼びです」

 

南賀ノ神社に向かう途中、やはりシスイはダンゾウに呼び出された。会合の始まる二十分前である。

 

「こんなタイミングでか?」

「はい、至急の用との事です」

「分かった」

 

暗部の根の者に案内されるシスイに俺も付いて行く。周囲にコン平を放っているが、道中に気配は無い。ただこの先の寺にはダンゾウだけでなく、少なくとも一個小隊は待機している様だ。

 

「何でしょうかダンゾウ様、そろそろ会合の時間なのですが」

 

寺でダンゾウと向き合ったシスイは、急かすように口火を切った。

 

「フガクに憧術をかけ、うちはをまとめたとて、里が変わらなければどうする?」

「火影様が変えてくれると約束してくれました」

「三代目が説得しても里の者の不信はそうそう消えぬぞ」

「ですが、時間をかけていけば」

「それにだ。ワシのように疑り深い者はそう簡単には考えを変えぬ。その時はどうする」

「しかし、ダンゾウ様……」

 

話がキナ臭くなってきた。それに巧妙に話をすり替えようとしている。今問題となっているのは、うちはの待遇についてなのだ。ダンゾウの様な少数派をどうするのかは、多数派をまとめてからでも遅くはない。

 

「その時には、このワシにも別天神とやらを使うのか?」

「俺は……」

「その写輪眼、わしが預かる!」

「御免!」

 

ダンゾウは会話を遮るようにシスイに手を伸ばした。しかし流石に警戒していたシスイは咄嗟に左手を掴んで防ぎ、幻術までかけたようた。

 

「ただの幻術です。じきに覚めるでしょう」

 

シスイが周りにいるダンゾウの護衛にも聞こえるように声を掛け、南賀ノ神社に向おうと背を向けた瞬間、シスイの腹部にダンゾウの攻撃が決まっていた。先ほどまでのダンゾウの姿は霞み、消えていく。

 

ダンゾウは老人とは思えないスピードで追撃を与える。しかし目を突いたタイミングで、シスイは煙となり消えた。

 

実は建物から出た時点で、既にイタチの影分身がシスイに変化していた。何故シスイでなくイタチなのかというと、シスイは別天神を使う為に余計なチャクラを使わせたくなかったのと、イタチにダンゾウの思惑を見せたかったからである。

 

一族の会合には既にシスイが出席しているだろう。無事にフガクに幻術をかけられれば良いのだが……

 

そして影分身が解けた事で、オリジナルのイタチにもこの情報は届いただろう。

 

ダンゾウの独断専行を一先ずは食い止める事ができた。早くこれを三代目に伝えて何かしらの処分を下させよう。

 

もうこの場に用はないので退散するとしようとすると、ダンゾウが言い放った。

 

「やはりお前も動いていたか、ヨフネよ」

 

どうやら退散しようと動いた事で、バレてしまったようだ。イタチといいダンゾウといい、どうしてこうも鋭いかね。俺はしょうがなく姿を現わした。

 

「どうやらお主は邪魔のようじゃ」

「そうですか。私にとっては貴方の方こそ邪魔なんですがね」

「ほう、ワシを前にしてよく言い切った。しかし逃すわけにはいかん」

 

そう言うと根の部隊、二個小隊が現れた。しかしこちらも一人で動いているわけではない。敵に呼応する様に俺の側には、バックアップの為に待機させていた第一小隊が現れる。

 

こちらは六人で相手は九人。普通なら部は悪いが、俺達なら撤退する事は可能だろう。

 

「俺達とやり合うって言うんですか?」

「それもよかろう」

「「水遁・水弾の術」」

 

一斉にこちらに向けて発射されて来る。弾幕を張るつもりなのだろうが、俺たちから見ればまだまだ連携が甘い。横一列に揃ってはいないし、射線が重なっている所だってある。

 

「先に手を出してきたのはそっちだからな」

 

ーーー土遁・土流壁

 

こっちは壁を作って水弾を防ぎ距離を取った。しかもまだダンゾウは動いていない!チャンスだ。

 

ーーー雷遁・電磁砲

 

慣れ親しんだ術を発動させ、あっさりとダンゾウの頭を撃ち抜いた。やった、これでこの先の出来事がどう変わるのかは分からないが、悪化する事は無いだろう。

 

根の者達にも動揺が広がっている。長居する必要は無い。この隙に退散しようと踵を返した。

 

「どこへ行く」

「なに?!」

 

振り返ると目の前には、何故かダンゾウがいた。

 

「風遁・真空連波」

 

虚をつかれ、身体が硬直した隙をダンゾウは見逃しはしない。息を吸い込むと口から複数のカマイタチを吹き出して来た。

 

ーーー倍化の術

 

しかし、いち早く反応したシトウが術を使い、腕を巨大化させカマイタチを防ぐ。

 

「シトウ、助かった」

 

ダンゾウを見れば異様に白い右手が服から出ている。しかもよく見れば手の平に何か球体の物が埋め込まれている。

 

(クソっ写輪眼は一つじゃなかったのか!)

 

「防がれるとはな。しかし逃す訳にはいかん」

 

当たり前の話だが、人の目は二つあるのだ。何故二つ所持しているという可能性に思い当たらなかったんだ。大蛇丸とダンゾウが裏で繋がっている事はわかっていた。そして大蛇丸は柱間細胞を入手し研究していた。その結果、テンゾウは木遁を使う事ができるのだ。

 

大蛇丸は里から抜けているが、ダンゾウはテンゾウを基に大蛇丸の研究を引き継いで既に柱間細胞が埋め込んでいたようだ。そうして右手に仕込んであった写輪眼でまたイザナギを使われたらしい。

 

「全員ここで死んでもらう」

「そうはさせない」

 

ホヘトを除く第一小隊の面々がダンゾウとの間に立ち塞がった。

 

「ヨフネ隊長!あなたはこんなところで死んで良い様な人じゃありませんよ」

「そうです。いずれ火影にだってなれる人だと信じてます。此処は俺達に任せて下さい」

「何て顔をしてんです。早く三代目の所へ!ホヘト隊長、ヨフネ隊長を頼みます」

「……分かった」

 

三人は笑顔で振り返って俺に先に行くように促す。隣にいるホヘトもだ。

 

「あいつらの意志を汲んでやって下さい」

「……すまない」

 

俺は何としても、この世界の被害を最小限にしたいんだ。ここで死ぬ訳にはいかない。

 

(だがダンゾウ、貴様は許さん。いずれ俺が仇をとってやる)

 

その決意を胸に俺は三代目の所へ向かった。

 

 

 

「取るに足らん連中だ。さっさと片付けて奴らを追え!」

 

 

 

「「「舐めるな!」」」

 

 

 

 

 

「「「吾らは木の葉の死神に率いられし猟犬なり!己が矜持にかけ何人も通させはせん!」」」

  


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