契りの里
「メイ様、各地の制圧が完了しました」
「では、これでようやく……」
部下の青からの報告を聞いて、自分がようやく五代目水影になるのだと実感して来た。この里では一番強い者が水影になるのだ。そして今の里では私が一番強い。あとは大名に信任を得るだけである。
「これでようやくあの人との約束が果たせた」
「あの人とは?」
思わず口に出していたようで青に聞かれてしまった。今まで誰にも話した事がなかったのだが、彼のおかげでクーデターが成功したと言っても過言ではない。最も信頼している部下の一人でもある。クーデターが成功した今、話してあげても良いかもしれない。
「第三次忍界大戦の時、私は奴隷兵として渦潮隠れの里襲撃に参加していました」
「死を恐れないよう呪印を施された、あの奴隷だったのですか?!しかも渦潮隠れ襲撃はかなりの激戦だったと聞いています」
あの激戦で生き残る事のできた奴隷兵はほぼいない。生き残った者にしてもその後も続いた戦闘で相次いで亡くなっている。自分が生き残れたのは血継限界を二つ持っていたのとあの人に呪印を解放してもらったからである。
「私はその時の戦闘で負傷し敵地に取り残されてしまいました。しかしそこに一人の木の葉の忍がやって来て治療をしてくれたばかりか、呪印の解放までしてくれたのです」
「それは……なんとも木の葉らしい甘い人ですね」
今では冷酷無情とか言われているが、少なくとも私にとっては優しい人だった。あの人は呪印の効果が知りたい等と色々理由を言っていたが、それだけならば自陣に連れ帰って人体実験されていた筈なのだ。治療も行う必要はない。不審に思って尋ねるとあの人は私の事をか、かか可愛い等と言ってくれた!
「水影様?顔が赤いですが大丈夫ですか?」
「大丈夫よ!それでその人は治療してくれた後に逃走ルートまで教えて逃がしてくれたの。革命を起こして霧隠れの里に平和もたらして欲しいと言ってね」
それに平和になればまた会えると言ってくれた。今は二人とも立場があるが、いずれ国交が結ばれれば会う事ができる筈だ。
「なるほどそういう約束だったのですね。それでその人は誰なんです?この里にとっても恩人ではないですか」
「貴方もよく知っている人よ。木の葉のうたたねヨフネよ」
「猟犬連隊を率いるあの死神ですか?!連隊規模でありながら一人の死者も出さずに小国を落としたというあの!恩人である事には変わりないかもしれませんが、奴は信用できるような人間ではありません!」
「黙れ、殺すぞ」
「ひぃ」
青は確か猟犬に何度も煮え湯を飲まされていた筈だ。だがあの人を侮辱することは許さん!青はこっそりと白眼を私に使っているが幻術に操られたりはしていない。この想いに気づいた時に真っ先に自分で調べたんだから。
「私達の里も木の葉のように平和にしたいわね」
「はい、私もそう願ってはいますが血霧の里といったイメージはそう簡単に覆るものではありません……」
三代目水影から続いた血霧の里という名称はあまりに広く知れ渡ってしまった。何か新しい俗称を付けられたなら良いのだが……
「そうね、自分達の結束を示す為にも“契りの里”というのはどうかしら」
「なるほど、良いかもしれませんね」
青に文字で書いて見せてあげると賛同してくれた。ヨフネ、私は貴方との契りを守りましたよ。いつか会える時まで私はこの里を立派にしてみせます。
「まずは悪名高いアカデミーを改革するわよ!」
学び舎の日常
「なあそろそろ卒業試験だけどよ、シカマルは卒業したら行きたい部隊とかあんのか?」
朝からキバを中心に何を騒いでるかと思えばそんな事かよ。こっちは朝が苦手だっていうのに面倒くせえ。
「んなもんねえよ。忙しくなくて生きていけるだけの金が貰えりゃそれでいい。間違っても猟犬連隊なんかにははいりたくねえよ」
「なんだとテメぇ!猟犬連隊格好良いじゃねぇかよ!」
少し言っただけなのにすぐにこれだ。そういやキバはあそこに入りたいんだったっけ?
「悪りぃ悪りぃ、でもよ一族にダエンさんって人がいるんだけどよ、元々忙しかったってのに中隊長になってからなんて過労死するんじゃないかってくらい働いてるぜ。俺はごめんだね」
「おまえ知り合いに猟犬の中隊長がいんのかよ!?すげえな!」
「お、おい俺の話聞いてたか?」
ったく自分に都合のいい話しか聞きゃしない。そりゃさ小隊規模が中心のこの世界で連隊規模で活躍すりゃ話題にもなるし憧れるってのも分からなくはねえ。ただ俺もポリシーには反するんだよな。
「なあ、みんなは猟犬に知り合いいんのか?」
「秋道家からはマルテンさんって人が中隊長だった筈だよ。確かイノん所にも中隊長がいたと思うよ」
「油女家からはムタさんが出ている。なぜなら俺の一族は遠距離攻撃に優れた秘伝忍術を持つ一族だからだ」
「なんだよ、みんな知り合いがいるんじゃねえか。なんで俺の姉ちゃんは連隊入りを断ったんだよ!獣医よりよっぽど夢があんだろうが」
なんだ結構周りに関係者がいるんじゃねえか。でも一番憧れてるキバの周りにいなってのは皮肉だな。
「なんの話してんだってばよ」
また騒がしいヤツが増えやがった。ナルトとキバが揃うと静かになった試しがねえ。
「なんだナルトか。猟犬に知り合いがいるかどうかって話だよ」
「それってなんだってばよ」
思わず全員こけそうになる。こいつは馬鹿だとは思っていたが、そんなことも知らねえのかよ。
「いいか、猟犬ってのはだな十三歳で上忍になった、うたたねヨフネって人が作り上げた部隊で連戦連勝の木の葉最強の連隊なんだぜ!ま、猟犬を知らないおめえに知り合いがいるとは思えねえな」
「うげ、ヨフネの兄ちゃんそんな凄え人だったなんて知らなかったってばよ」
ナルトの言葉に驚かされた。まさか猟犬のトップを知ってるなんて誰も思ってなかったはずだ。ってかヨフネさん知ってて猟犬の事を知らないなんてどこまで馬鹿なんだよ。ただキバはそれどころじゃなさそうだ。
「おまえヨフネ連隊長の事知ってんのかよ?!」
「ん?だってさだってさ俺の事たまに面倒見てくれるタシ姉ちゃんって人がいるんだけどさ、よく一緒にいるから俺も会った事があるんだってばよ。あの人にイタズラやって殺されかけたけど」
「おいいいいいい!てめえ何やってんだよ!それにタシっていや、連隊長の補佐役だろ?なんでお前なんかの面倒みてくれんだよ!」
「俺なんかってなんだよ!母ちゃんの知り合いで出産にも立ち会ったからって、たまに飯作りに来てくれんだってばよ」
「なあ……姉ちゃんって聞いてたけど俺らが生まれた時にその場にいたって事はいくつなんだよ?」
「キバ!それ絶対姉ちゃんの前で言ったらダメだってばよ!死ぬってばよ!」
ナルト……おまえはどんだけ猟犬の上層部に殺されかけてんだ?あいかわらずわけわかんねえヤツだな。
「くそーみんなばっかり狡いぞ!俺は卒業したら猟犬に入ってやる!こうしちゃいられねえ、今から火影様ん所に行って直談判してやる!」
「キバ!待てってばよ」
意外なことにキバを止めたのはナルトだった。なんだかんだ卒業も近付いたし落ち着いてくれたなら……
「そっちから行くと途中で捕まっちまうってばよ!爺ちゃんの部屋に入り込むならこっちが近道だってばよ!」
思わず頭を抱えてしまう。どうせそんなこったろうと思ったぜ!少しでも期待した俺が間違ってたよ!そんな時、教室の扉が開いてイルカ先生が入って来た。
「コラーーーーお前達どこに行こうとしてんだ!さっさと席に着け!!!」
……静かな部隊に入れるよう火影様に頼めねえかな
井戸端会議
ナルトにも困ったものじゃ。唆されたとはいえ秘伝の書を盗むとは。まあ里外に持ち出される事はなかったのだから、今回も大目に見てやるしかあるまい。それにあやつが合格した事で卒業生は二十七名じゃ、ちょうど九班作れるのじゃから悪い事ばかりでもない。
「ヒルゼン入るぞ」
そう言って我が物顔で入ってきたのはホムラとコハルじゃった。せめてノックくらいして欲しいものじゃがまあ良い。それに呼んだのは儂なのだからの。
「今日呼んだのは今度アカデミーを卒業する下忍の班編成とその担当上忍について意見を聞こうと思っての」
「早いの、もうそんな時期か」
「それで今年の卒業生はどんな面子なんだ?」
ホムラに聞かれたので手元にある書類を差し出してやる。こやつらも興味を持つに違いない。
「そうか九尾の人柱力にイタチの弟、日向の本家に御三家の本家筋の者までいるのか」
「という事であれば担当上忍を選ぶのに慎重となるのも無理はないの」
なぜか優秀な年というのは出てくるものである。弟子筋にあたるカカシに今年こそ弟子を取ってもらいたいものだ。
「そこでじゃ第一班から第六班までの編成と担当はこうして……あとは第七班にはナルトにサスケ、そして座学で優秀な成績を残している春野サクラとしようと考えておる。第八班には日向や油女に犬塚を入れた感知タイプをいれ、第十班は御三家の三人とする」
「班編成に異論はない、だがやはりナルトを里の外に出すには反対じゃ」
「そうだヒルゼン、いい加減考え直さぬか?」
里とすればそれが正しい選択なのかもしれない。その事は重々承知しておるが儂としてはナルトにも外の世界というものを見せてやりたい。それにあやつが成長するには仲間という存在が必要であろう。
「お前達もいい加減諦めてはくれぬか?儂はこの事について考えを変える気はない」
「ではせめて優秀な担当上忍をつけることが条件じゃ」
「それについては考えておる。はたけカカシに任せてみようと思っておる」
カカシは今は少なくなってしまった写輪眼を使える忍だ。写輪眼を用いれば九尾をコントロールする事も出来ると言われている。シスイも考えたが儂の信頼でいえばカカシであった。
「ふむ、それであればリスクも小さくなるやもしれんの」
とりあえず一番揉めそうだった七班の担当上忍はこれで決まった。残る班の担当を誰にするかじゃが……
「第十班は……アスマにやらせてみようと思っておる。今はガイの奴も担当上忍をやっておるし、あの世代に任せてみようかなと」
「御三家と繋がりの深い猿飛一族であるし問題ないのではないか?お前が息子だからといって選んだのではない事くらいは分かる」
結婚しても相変わらず世話のかかる息子じゃが、儂に似ず体格に恵まれ体術も上手い。それに守護忍十二士として働いたのも決してマイナスではなかったようで、戦況の把握や技の豊富さで既に担当上忍としても高い評価を残していた。どうやらこれも問題ないようじゃの。
「第八班なんじゃが夕日紅はどうかの?」
「ふむ……担当上忍はまだやった事がないのだろう?それに優れた幻術使いではあるが、感知タイプの班は難しいのではないか?今までなら心構えや基礎を学ばせる事が目的じゃったが、猟犬の功績を考えると早い内に連携や専門分野について造詣が深い者に教わった方が圧倒的に成長が早いしの」
一番これといった上忍が見つからなかった班でもある。儂の迷いを感じたのかホムラは反対らしい。
「この年代の感知タイプで優秀な忍といえば、飛竹トンボがおるではないか」
「あやつはまだ特別上忍になったばかりじゃ。日向の事を考えると担当上忍は任せられん」
「となると残りは……」
どうやらコハルも気づいたようじゃの。この年代で感知に優れておる優秀な忍はヨフネしかおらんのだ。
「しかしあやつは連隊長。連隊長となり現場に出る回数が減ったとはいえ、動かせばまた怒鳴り込んでくるぞ」
「あやつめ、手のかかる孫よ」
元々一人暮らしをしていたヨフネじゃったが、うちは一族の事件以降コハルとはほとんど口を聞いていないらしい。もう二人しかいない一族なのだから早く仲を直して欲しいものじゃ。二人とも頑固だからそうは上手くいかぬだろうが。
「となると夕日家の娘しかおらんじゃろう」
「そうだな、家系にも問題は無いし、日向も文句は言わんじゃろう」
これで解決かと思った時、やはりノックもされずに息子のアスマにより扉が開け放たれた。相当焦っているのか、ホムラとコハルは視界にすら入っていないらしい。そして儂の前まで駆け寄って来た。
「親父!俺にも子供が出来たぞ!」
「でかした!」
思わず立ち上がってしまった。ふと視線を逸らすと二人はニヤニヤしてこっちを見ておった。しかしこういう親子らしい会話をしたのは久し振りだのう。
「……しかしヒルゼンよ。担当上忍はどうするのじゃ?」
「あっ」
演習場に立つ
俺が下忍の担当上忍か。そう考えながら歩いていると、またここへ来てしまった。ここはミナト先生とリンにオビトとの四人が初めて揃った第三演習場だ。あの鈴取りの演習の時、俺はチームワークなんざ考えていなかった。俺はチームワークとみせかけて二人を利用しただけだ。
あの時ミナト先生が俺にチームワークの素養が欠けていると判断してくれればとも思ったがそれは違う。あれはミナト先生のせいではない、俺が偽ったからだ。だからこそ俺は担当となる下忍を見極めなければいけない。
しかし三代目から暗部の任を解かれてから何度か下忍を割り当てられたが、未だ俺は合格者を出していない。俺の考えは間違っているのだろうか。こういう時、ヨフネならどうするだろう……いやあいつは参考にならないか。一定の忍びとしての素養があれば、余程酷い性格をしていない限り矯正してしまうだろうし、チームワークだって体に覚え込ますだろう。
あいつは嫌だ面倒くさいと言いながらでも何だってやってしまう奴だ。確かにチャクラは少ないかもしれないが、その代わりに術の知識なんかは俺と比べ物にならない。電磁砲だってコピーして使ってみれば、チャクラを馬鹿みたいに使ってしまう。コツを聞いてもチャクラに圧力をかけるイメージとかさっぱりわけが分からなかった。
次の火影に一番近いのはヨフネだと俺は思っている。チャクラが少ない事により戦闘時間の短さや多数の敵を相手取れないという欠点もある。だがあいつはそれを補う力、猟犬連隊を作り上げてしまった。既に猟犬という名は俺の父“白い牙”の名声をも超えている。あれだけ強い部隊にする事が出来たのだ、火影となれば木の葉はより盤石の体制となるだろう。
俺を推す声があるのも知っているが、下忍一人育てられない俺にはとてもじゃないが務まらないだろう。ヨフネの事を考えていたら自分がどうしようもなくダメなやつに思えてきた。俺がお手本とすべきは木の葉の三忍だろう。大蛇丸は置いておくとしても、ミナト先生に教えた自来也様やシズネの師匠である綱手様はどういう基準で忍を見ていたのだろう。
一度綱手様からも話を聞いてみたい。
報われない旅
「おいシズネ、さっきから何浮かない顔をしてるんだ」
綱手様から心配されてしまった。というのも原因は綱手様なんですけどね!
「いや、こんなデートスポットの温泉地に借金取りから逃げながら女が二人……その事を客観的に見てしまいまして……」
「そんな事を言うな!私まで落ち込ませたいのか?あぁ?!」
「あひぃ」
酷い、あまりに酷いです。同期の紅はとうとう結婚しちゃうし、三十路が近くなってきているのだから焦る気持ちを分かって欲しい。
「綱手様はまだ良いじゃないですか。ダン伯父さんがいたじゃないですか、それに比べ私ときたらこの年までまだ付き合った事すらないんですよ!!」
「シズネ興奮するな!周りからの同情の視線が痛い!」
いけない、いけない。私とした事が紅の白無垢姿を思い出して興奮してしまった。しかし紅がアスマとくっついてくれて良かった。
「まあそう気落ちするな。それにお前の世代には優秀な奴がまだいるじゃないか。カカシやヨフネにあと…………ガイも」
「優秀かもしれませんけど、絶対に選択肢には入らない珍獣が混ざってます!」
「すまなかったシズネ、だからそう興奮するな。でお前的にはカカシとヨフネどっちが良いんだ?」
綱手様が肘でつついてくる。既に答えは決まっているのだが……恥ずかしい。
「お、その顔はどっちかに惚れてるな?どっちだ?いや待て当ててやろう……ずばりカカシだな?!」
「違います!ヨフネです!!」
はっ!しまったつい乗せられて答えてしまった。綱手様はもうニヤニヤが止まらないといった顔をしている。どうやら逃げる事は不可能らしい。
「ほれほれ、さっさと色々白状しな!」
「んーもう!分かりましたよ。気付いたのは私が綱手様と修行の為に里を出る直前です!」
「それはまた随分タイミングが悪い時に……」
それは良いのだ別に綱手様のせいというわけではない。情けない話なのであまり話したくなかったんだけど……
「里を出る前にトンボから言われたんです『ヨフネに気持ちを伝えなくて良いの?』って、私はトンボにそう言われるまで好きだって事に気付いていなかったです」
思い返してみれば昔からヨフネが事あるごとに紅の事を褒めてたけど、私は張り合って自分はどうなのかって聞いていた気がする。たぶん思い返してみるとあの頃からヨフネの事が好きだったんだろう。
「おい、こういう場合は普通男が鈍感で気付かないってのが定番だろうが!そもそも本人が気付いてないのに相手が気づくわけないだろう」
「おっしゃる通りです」
綱手様の言葉に素直に頷くしかなかった。私が情けないのもそうだけど、当人達が気付いていないのにトンボはなんで気付いたんだろう。
飼い主の居ない小屋
「お、トンボさんじゃないですか。今日はどうしたんです?」
「ヨフネから頼まれていた物の解析結果を持って来たんだよ。ヨフネはいる?」
一週間前にヨフネから頼まれていた物を持って猟犬の施設にやって来たのだが、ヨフネの友達というだけで自分を見た隊員は即座に立ち上がって挨拶してくれる。君らは一体どんな教育受けてんのさ。
「連隊長はさっき出かけましたよ。預かって良い物なら代わりに渡しときますが」
連絡無しで来ちゃったからしょうがないか。それにこの人達なら別に勝手に見ないだろうし、見られた所でどうなる物でもない。素直に預ける事にしよう。
「はい、それじゃお願いね」
「確かに受け取りました」
一々仰々しいんだって!こんな事だから、ここに立ち寄るのは気がひけるんだよ。
「それにしても今日は静かだね。なんかいつも慌ただしいイメージがあるから別の場所みたいだよ」
「最近ようやく連隊の編成と訓練が落ち着いたんですよ。残る部隊は連隊長の所だけですね。優秀な下忍なんかは他の大隊長に優先的に配置してましたから少し遅れてるんです」
「昔から無駄に背負込む性格をしてるからね」
巻き込まれやすいっていうのも勿論あるけど、改めて思い出すとヨフネは昔から自分の手が届く範囲で無理をしている気がする。またその手が届く範囲が広いもんだから余計に苦労してるんだよね。
「よく愚痴もこぼすけど、半分以上は自ら手を出した事だから、結局なんだかんだ頑張って解決しちゃうんだよね」
「さすが同期の人はよく見てますね。自分達にはあの人が人間じゃないように思えるくらい完璧に見えるんですけど」
「そんな事ないよー。実際恋愛だって出来てないし」
そう言った所で全員がガタッと音を立てて立ち上がった。なんだと言うのだろう?
「おい、今日アレ持ってるか?」
「あ、俺持ってるぜ!」
「すまん、頼む」
そう言って取り出したのは巾着袋だろうか?隊員の一人がそれを開くと甘い匂いがした。砂糖?そうするとどこからともなくコン平が現れた。おそらく緊急連絡用に留守番させている分裂体だろう、普段よりサイズが小さい。
「コン平さん、これをどうぞ!トンボさんが帰るまでどうか屋上で召し上がってて下さい」
「コンッ!」
コン平は頷くと巾着袋を咥えて走り去っていった。あの様子から見ると中身はどうやら好物の金平糖だな。
「すみません、お待たせ致しました。でその恋愛が上手くいっていないとは?!」
どうやらこれが聞きたくてコン平を追いやったのだろう。でも果たしてここで喋って良いのだろうか、後で自分までヨフネに怒られる気がする。紅をかけた決闘の事とかシズネの事なんかネタはあるんだけどな……ヨフネは怒らせたくない。
それにシズネの事なんてヨフネだってよく知らないんだから、話したらマズイ気がする。というよりもシズネ本人が自分に言われるまで気付いて無いって事に驚かされたよ。一緒の班にいた自分だから気付けたのかもしれないけど、シズネは気が付くとヨフネを視線で追っていた。目を合わす事すらほとんど無いっていうのにヨフネに気付けって方が酷だよ。
「貴方達そんな所でお客様を囲んで何やってるのかしら?」
「「「「姐さん!!!!」」」」
階段から降りてきたのはタシさんだった。何やら隊員たちは見つかってしまったとでもいう表情で固まってしまっている。ここは代わりに自分が答えてあげよう。
「みんなにヨフネのれんあっモガっ」
「連隊長の昔話を少し聞かせて頂いていただけです!」
ほとんどの隊員が自分とタシとの間に立ち上って視線を遮り、その隙に左隣の隊員に口を塞がれた。
『お願いします!姐さんに本当の事は言わないで下さい!扱かれちゃいますんで!』
小声で叫ぶとは器用な事をする。どうやらタシさんは恐れられているようだ。それにしても流石は猟犬、コンビネーションが抜群だ。とりあえず頷いて口から手を離してもらう。
「あ、ヨフネに頼まれていた物を届けに来ただけなんでそろそろ帰りますね。あ、ヨフネは今どこに?」
「火影様に呼ばれて出ているわ、おそらく執務室じゃないかしら」
礼を言って施設から出た後に悲鳴が聞こえたのは気のせいだと思いたい。それにしてもこの時期に三代目に呼ばれるなんてまた面倒事に巻き込まれたかな?
今度お祓いの為に火ノ寺にでも連れて行ってあげよう。
シリアスじゃ無いって凄く筆の進みが良いです。書いてて楽しかった。