【完結】ぬ〜べ〜ご立派様   作:烏何故なくの

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最終話 最後は爆発オチ(#274 見よ! これが愛の最終形態!!)

 

 今日はぬ~べ~とゆきめの結婚式。

 カーマ形態の灰耶は学校のグラウンドにゆきめの力で作られた氷の教会を見つけ、巨大オウムの背中から降りた。

 

 音もなく地面に着地して、椅子に座っていた広たちに声をかける。

 

「よ! ひさしぶりじゃの」

「……?」「だれなのだ……?」「けっこうイケメンじゃない?」

 

 ひそひそと話し合う5-3の生徒を見ながら、灰耶は自分の失敗に気付いた。

 

「すまんすまん、この姿ならわかるじゃろ?」

 

 カーマの姿に血管のように青い線が走り、シルエットが小さくへと変わっていく。

 現れたふにゃちんスライムを見て、5-3の生徒たちがどよめいた。

 

「え?! 灰耶なのか!!」

「じゃあさっきのイケメン灰耶!!? そんな~!」

「ひさしぶりだなこのやろー! 覇鬼の封印が解けたり大変だったんだぞ!!」

 

 広が驚き、美樹が嘆き、克也が喜んで話しかけてくる。

 

「まあそう言うな。覇鬼に関してはワシがいなかったことがプラスに働いたじゃろう」

 

 戦闘狂の自分と破壊の権化である覇鬼が居合わせていたら、覇鬼とぬ~べ~が和解する未来はなかった。

 灰耶の言葉に克也は納得する。

 

 タイミングを計って、郷子が話しかけてきた。

 

「ねぇねぇ、世界旅行いってきたんでしょ? どこが楽しかった?」

「どこも楽しかったぞ。飯も宿もいらん悪魔の旅じゃからあまり人間の参考にはならんと思うが。印象深いのはインドかな。新技手に入れたし」

 

 灰耶は触手を顎に当てて「あとはギリシャじゃな」と呟く。

 

処女神(アルテミス)に『存在がセクハラ』と言われて出会いがしらに殺されかけた。アダマスの鎌で切られると本当に死んでしまうからな……流石に逃げた。いつかリベンジしたいわい」

「悪魔ならではの悩みもあるのね……」

 

 いつか外国旅行にいったとき助けてもらいたかったんだけど、と郷子は残念そうだ。

 

「じゃあ、悪魔の彼女とかできなかったのか?」

 

 克也の言葉に、灰耶は首を振る。

 

「淫魔に誘われたことはあるが、やりたいことがあるから、そういうのは全部断っておいた。ケンジもしっかり振ったぞ」

「そっか……ケンジ、なつかしい名前だな」

 

 適当に話したところで、灰耶は5-3から離れた。

 向かう先は本日の主役、地獄先生ぬ~べ~だ。

 

「お~す。ぬ~べ~久しぶりじゃのう」

「お、おう、久しぶり。お前……本当にとんでもない霊能者になったな」

 

 ぬ~べ~は横目で、ゆきめと話すスーツ姿の女性を見る。

 

「【アメノウズメ】の分霊……。いったいどうやって口説き落としたんだ?」

「金じゃよ。魔ッ貨(マッカ)さえつめばどうにかなる」

「いや、そもそも交渉の席につくのが尋常じゃない難易度だろう。……もしかして、他にも神霊と契約しているのか?」

「北欧の【ロキ】とも契約しておる。ロキにはギリメカラさんと一緒に、この結婚式の警備をしてもらっておる」

 

 灰耶の言葉からきな臭いものを感じたぬ~べ~は、目を細めた。

 

「……警備が必要だと思っているのか。この結婚式に。そういえば、妖怪の力で結婚式をあげようと言ったのはお前だったな」

「妖怪の力ならどんな演出だってできるだろうというのが一つ。あと……ワシもお主も、山の神の怒りを買っておる。万が一があると不味い」

 

 灰耶が呟いた瞬間に、轟音が式場に響いた。

 スーツを着た金髪の男が、灰耶に駆け寄ってくる。

 

「サマナー!! 分霊の俺じゃ結界を維持できねぇぜ!!」

「お主の力でも無理か、ロキ」

 

 ロキが叫んだ瞬間、結婚式会場を包んでいたドームに亀裂が入る。

 

斬地風(くにきりのかぜ)!!」

「ぐううっ……老人には堪えれん風ぢゃ!!」

 

 出席していた人間への攻撃をその巨体で受け止めたギリメカラが、膝から崩れ落ちる。

 

「鵺野! そして灰耶! 眠りについている山の神に変わって、山最強の妖術使い、岩天狗さまがお前らを地獄に招待しにきた!!」

 

 岩のような硬質な肌を持った天狗が、空からぬ~べ~たちを見下ろしていた。

 漲る妖力は並大抵ではなく、覇鬼と和解したぬ~べ~ですら簡単にはいかないだろう。

 

「ロキ、アメノウズメ! やるぞ。結婚式場には相応しくない祓魔じゃが、本日の主役に手を煩わせるわけにはいかんからな」

 

 灰耶はふにゃふにゃだった体に精気を集め、天を刺すように体を屹立させた。

 硬く、太く、貫けないものはないだろう存在感。

 辺りに魔王の濃厚なオーラが充満しだす。

 灰耶はすでに魔王の側面を乗りこなしている。

 

「な。なんだ? その程度のご立派具合でわしとやる気か?」

 

 岩天狗は自分の鼻を負けじと伸ばした。

 ぬ~べ~、玉藻、ゆきめは霊気のバリアを張って、式に参加した人間たちに被害が及ばないよう衝撃に備える。

 

「魔王の少年……この短期間で、どれほど強くなったのか見せてもらうぞ」

 

 玉藻は真剣な眼差しで灰耶を見つめた。

 

 

「いくぞォッ!【道化音頭神楽(マラマラダンス)】じゃ!」

 

「でっかいマーラ! なっがいマーラ!」

 

 ロキが勢いよく、掛け声を放つ。

 それに合わせて、灰耶の体は勢いよく上下した。

 

 ふりっふりっ。ふりっふりっ。

 

「かったいマーラ! くっさいマーラ!」

 

 ふりっふりっ。ふりっふりっ。

 

 アメノウズメは灰耶の後ろで腰を振った。

 まるでアメノウズメの腰から、太い逸品が生えているかのようだ。

 

 

「なにをやっとるかァ~~~~!!」

「「「ぶぇーっ」」」

 

 突然かなまら祭りを目の前で始められた郷子が、ぶち切れて3柱を殴り飛ばした。

 鬼の手ですら成し遂げたことのない神霊3柱討伐の余韻に浸ることもなく、郷子が灰耶の胸を掴み上げる。

 

「結婚式場で何やってんのよ!」

「結婚式場にはふさわしくないと先に言ったではないか」

「限度ってあるでしょ!」

 

 郷子の後ろから、広も顔を出す。

 

「そうだぜ! どうして急にちんちんぶらぶらソーセージを……」

「いや、この術のキモは金玉が揺れていると思わせるところでな。正確にはきんたまぶらぶらソーセージであって」

「どっちでもいいだろ?!」

 

「……ぷっ、ぷはははっはははは! こ、こりゃたまらん……」

「ほら! 敵に笑われてどうすんの!!」

 

 笑いすぎて地面に落下した岩天狗を指さして、郷子は灰耶に怒る。

 しかし灰耶は取り乱したりせず、ゆっくり郷子に語り掛けた。

 

「あれでええんじゃ」

「笑われることの何が……!!」

 

 そこまで言って郷子は気が付く。

 笑い声が、岩天狗のものだけではない。

 

 結婚式に参加した妖怪たちが、皆笑っている。

 

「……っ、これが、笑いの感情だとでもいうのか。理袋の時とは違う、胸から暖かいものがこみ上げてくる……」

「くすっ、くすくす……。やだ、私ったらあんなので……。は、恥ずかしいわ」

 

 人のお笑いが理解できない玉藻も、ゆきめも、笑っている。

 

「だ~っはっはっは!! 灰耶のやつ、あの巨体で禹歩の動きしてやがる! こんな複雑な術、親父でもやらんぞ!!」

 

 だれよりも大声で、ぬ~べ~も笑っていた。

 

「【スカディを笑わせるために、ロキが自身の陰嚢と牝山羊の髭とを紐でつないで綱引きをするという余興をした逸話の再現】。ロキが叫んで権能を使って、それをアメノウズメがどんな文化圏にも届くように神楽の形に整えて、男根と同一視されるワシが踊る。霊格が高いほど、おもわず笑ってしまうという術じゃ」

「……お前、妖怪相手に、お笑い芸人やってんの?」

「いつも笑顔を忘れずに、ってな」

 

 広の困惑した声に、灰耶は笑って答える。

 

「あとお笑い芸人とは限定してないぞ」

 

 灰耶の体に青い線が走り、シルエットが槍から人間に変わっていく。

 アメノウズメが琵琶を弾き、ロキがワインを開け、ギリメカラがソファを用意する。

 

 笑って腰砕けのようになった岩天狗に、真っ黒なドレスを着た女神マレーナがワイングラスを差し出した。

 

「お主のことを教えてくれ。……お主を好きになりたい」

 

 くれてやるのではなく、対等な立場で愛を求める女神マレーナ。

 岩天狗の瞳が、ぽっとハートマークになった。

 

 

 

「灰耶ちゅわ~~んまたくるからね~~~!!」

 

 べべれけになって帰っていく岩天狗に手を振る灰耶。その顔が恋する乙女にしか見えないので、ぬ~べ~は灰耶のことが心底恐ろしくなった。

 

 式場から離れたところで岩天狗の接待をしていた灰耶たちだったが、その楽しそうな様子は氷の教会の中にも伝わってきたので、結婚式に参加した半数が灰耶の接待に参加している。

 

「お笑い芸人兼キャバ嬢か……そりゃ恋愛してる余裕ないよな」

「そんなことないぞ? デビルサマナーとして経験も積んだ。責任を取れる立場じゃから、良い人がいたらな」

 

 ぬ~べ~の言葉を、灰耶は笑って否定する。

 

「それにしても、なんでこんな道を? お前はてっきり、妖怪と戦う道を選ぶのかと」

「戦うことも選べるし戦わんことも選べる。強さってそんなもんじゃないか?」

 

 それはそれとして、と灰耶は飲んでたぶどうジュースをテーブルに置く。

 

「こんなことを言って申し訳ないとは思うんじゃけど。……ワシ、アメノウズメとロキには金を払って働いてもらっていてな? 1000マッカずつ払わないといけないんじゃ」

「……それって日本円にすると……?」

「これくらい」

 

 灰耶が出してきた紙に書かれたレートを見て、ぬ~べ~は白目をむきそうになった。

 

「別にこれだけの金を払えというつもりはなくて。ただこのままじゃと減る一方じゃから……ワシのデビルサマナーとしての仕事を、良いタイミングで手伝ってもらえんか?」

「あ、ああいいぞ! なんでもする!!」

「……なんでも、ね」

 

 冷や汗をかきながら頷くぬ~べ~に、灰耶はニヤリと笑った。

 

 

 

「うひょうひょひょ!! ぬ~べ~のやつ、魔王相手になんでもするとか言い出しおったわ!!」

 

 5-3の教室で、灰耶は悪役めいた笑いを見せた。

 クラスの児童たちは、なんだなんだと灰耶を囲む。

 

「なによ、ぬ~べ~が何かしてくれるとしてもそんな甲斐性のある人じゃないでしょ?」

「経済力は問わん。ぬ~べ~にはワシの霊力電池になってもらう」

「……?」

 

 美樹は灰耶の言葉に不穏なものを感じ取った。

 いやな予感に突き動かされるまま、疑問の言葉を投げかける。

 

「霊力電池って、具体的には……?」

「ぬ~べ~をパンツに、ゆきめをブラジャーにしてマレーナ状態ではきっぱなしにする」

 

 教室に緊張が走った。

 灰耶が冗談を言う性格ではないのは全員が知っている。

 

「世界を見て思ったんじゃけど……夫婦を片方だけでなく両方抱けばそれはもう浮気ではなくて夫婦の形が変わるだけなのでは?」

「日本の人間の常識で考えて欲しいのだ!!」

 

 灰耶の言葉にまことが素早く反論する。

 美樹もまけじと声を張り上げた。

 

「なんでラブコメ終わったこのタイミングでそんなこと言い出すのよ!?」

「今しかないんじゃ!! 生徒をやめて、霊能者として実績を積んで……実力もコネも金もある、責任を取れるのは今しかないんじゃ!! イヒ—————!!」

「何であの二人なのよ! そんなそぶり全然なかったじゃない!!」

「ぬ〜べ〜はワシが死んだら泣いてくれるし……ゆきめはなんかもう萌えの塊じゃん」

「カスの性愛野郎!」

 

 灰耶は素早くマレーナの形態に移行すると、教室の廊下に出て職員室まで走りだした。

 

「お、追え!!」「囲め!!」「逃がすな!!」

 

 5-3の生徒たちは必死の形相で灰耶をおいかけた。

 

「のろちゃん、いこ!」

「う、うん………だ、だいじょうぶだとおもうけど。灰耶くんなら……」

 

 

 

「どうしたんだ、灰耶?」

「………ッス………アノ………」

 

 ぬ~べ~の前で、顔を真っ赤にする灰耶。

 冷気でできたマレーナの体が溶けそうなほどに体温を上げている。

 その口からは死にかけのセミのような掠れた声しか出ていない。

 告白とかそういう段階になかった。

 

「あほくさ!」「世界回って童貞治ってねぇのかよ」「灰耶が何文字言えるかトトカルチョしましょ」

 

 呆れる者、突っこむ者、賭けをする者。

 ぬ~べ~クラスは今日も逞しい。

 

「は、灰耶、体が溶けてきてるぞ? カーマの姿になったらどうだ」

「そ、そうじゃね、えへ、えへへへへ………。………もういい! 死ぬ!! 【破壊神の怒り(バイナルストライク・パスパタ)】」

「え?」

 

 辺りの空気が変わり、ぬ~べ~の背中に鳥肌が立つ。

 灰耶はカーマの姿でのみ発動できる権能を振るった。

 【カーマ神がシヴァ神に灰にされた逸話の再現】。自分を中心にシヴァの怒りを再現した天罰の炎を召喚する。ゲームで例えると【自分と任意の対象に万能属性の特大ダメージ+防御力を最大まで低下】とかそんな感じ。

 シヴァの火が最大まで圧縮された一本の槍が、灰耶だけを打ち崩そうとした瞬間だった。

 

「まちなさい!」

 

 冷気が吹き荒れ、灰耶の両手足を拘束する。

 灰耶の瞳に、ゆきめの姿が映った。

 

「ゆ、ゆきめ……!」

「灰耶くん。きみとの魂のラインから、きみの気持ちは伝わってきたわ」

「な、なら……」

 

「夫婦両方抱けば合法なんてあるわけないでしょ!!」

「ぐぇーっ!!」

 

 ゆきめは氷のグローブを纏った拳で灰耶を殴る。

 灰耶の慕情は終わった。

 

「あとなによさっきの【破壊神の怒り(バイナルストライク・パスパタ)】って!! なんで自分が傷つくこと前提なのよ!!」

「ぶぇーっ!! ぐぇーっ!!」

「比丘尼さんのこと忘れたの?! 変な技ばっかり覚えるなら旅なんていかせるんじゃなかったわ!!」

 

 ゆきめは氷のグローブを纏った拳で灰耶を何回も殴りつける。

 ボロボロになった灰耶はゆきめの家に連行されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・アメノウズメ
デカジャデクンダからマカラカーンまで使える。
現代の倫理観があんまりないので灰耶の背中を押した。

・ロキ
氷結魔法と状態異常がついた物理攻撃が得意。
トラブルを解決する道化としての側面を強調した分霊なので現代の倫理観はあるが面白いので灰耶の背中を押した。
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