ウマ娘競バ史   作:geko

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第40話:黄金の星、輝きの忘年会

 12月末。

 休養していたローリンとグリーンが栗東へと戻り、チーム・ルミナスは久々に五人全員が顔を揃えていた。

 だが、今日の舞台はいつものトレーナー室ではない。

 都内の高級ホテルで開催される「URA賞授賞式」。

 

 煌びやかなシャンデリアの下、正装に身を包んだ俺たちの視線の先。

 隣には、真珠色のイブニングドレスを優雅に着こなすローリンと、慣れない黒のパンツスーツの襟元を「……チッ、窮屈だね」と何度も直す、男装の麗人のようなタイフウがいる。

 

 そして、ステージの上でまばゆいスポットライトを浴びていたのは、新緑の勝負服からライムグリーンのドレスへと着替えた、我がチームの末っ子だった。

 

「――最優秀ジュニア級ティアラウマ娘。受賞者は、キョウエイグリーン!」

 

 万雷の拍手の中、彼女は満面の笑みでブロンズ像を受け取った。

 ファンタジーSを4バ身差で圧勝し、阪神JFで女王の座を射止めたその実績が、最高の形で証明された瞬間だった。

 

「……あすかさん、見てください。グリーンちゃん、あんなに堂々として。……私まで鼻が高いです」

 

 隣で拍手を送るローリンが、少しだけ潤んだ瞳で俺を見つめた。

 彼女自身もカシオペアSでの独走劇、そして鳴尾記念での死闘を経ている。この栄誉は、間違いなくチーム全員で切磋琢磨し、勝ち取ったものだ。

 

「ケッ、ガキが先に壇上に上がるとはね。……ま、いいさ。あたしの強さは、あんな銅像がなくたって、砂を被った連中が一番よく知ってる」

 

 タイフウが不敵に笑いながら、けれど誰よりも強く、誇らしげな拍手を送っていた。

 由衣さんも、感極まった様子で何度もハンカチで目元を拭っている。

 

◆1971年の終わりの乾杯

 

 授賞式を終え、栗東に戻った大晦日の夜。

 俺たちはトレーナー室でささやかな、けれど今までで一番贅沢な忘年会を開いていた。

 外は深々と雪が降っているが、部屋の中は温かい。

 テーブルには由衣さんが腕によりをかけた年越し蕎麦やオードブルが並び、中央にはグリーンが持ち帰った記念の盾が、黄金の星のように部屋を照らしている。

 

「……改めて。グリーン、最優秀ジュニア、本当におめでとう。そして、みんな。激動の一年、本当にお疲れ様」

 

 俺の音頭で、五人のグラスが重なり合った。

 カチン、という澄んだ音が、静かな夜のトレーナー室に響く。

 

「えへへ! この盾、トレーナーさんの部屋の一番いいとこに飾ってよね! アタシが一番頑張った証拠なんだから!」

 

 グリーンが頬を赤くして笑えば、ローリンが「ふふ、来年は私の分も飾ってもらいますから、場所を空けておいてくださいね?」と優雅に微笑み返す。

 タイフウはと言えば、「あたしのプロキオンSから始まる伝説、しっかり見とけよ」と、蕎麦をすすりながら早くも1月の始動戦に向けて闘志を燃やしていた。

 

「……あすかさん。本当にお疲れさまでした」

 

 片付けをしながら、由衣さんが静かに、けれど確かな熱量を持って俺に告げた。

 新米トレーナーと、個性豊かな三人のウマ娘。そして彼女たちを支える最高の助手。

 1971年。大井での旋風、京都での独唱、阪神での戴冠。

 そのすべてが、今、俺たちの絆という一本の線となって繋がっていた。

 

「……ああ。俺たちの『正解』は、まだ始まったばかりだ。来年は、もっともっと眩しい景色を、みんなで見に行こう」

 

 遠くで、除夜の鐘が鳴り始めた。

 ゴーン、と重厚な音が夜気を震わせる。

 その音に合わせるように、三人の少女たちが小さな声で呟いた。

 

「……来年は、桜の女王」

 

「……一番上の栄誉を」

 

「……砂の絶対王者」

 

 それぞれの願いが、湯気の中に溶けていく。

 1972年。

 クラシックの熱狂と、シニア級の重圧が待つ新しい年へ。

 チーム・ルミナスの放つ光は、さらなる高み、まだ誰も見たことのない頂へと届くだろう。

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