死んだはずの奴らが、今夜、街に牙を剥く。


時代は205X年。
ネオンとホログラムがきらめく巨大都市「ノースシティ」。
企業と政治家が癒着し、メディアは沈黙、警察は腐敗、一般市民は監視社会の中で無気力に生きている。

その頂点に立つのが、街を実質支配する巨大複合企業〈アークコーポレーション〉。
裏社会・政治・警察―街全てのあらゆる権力を掌握している。

だが、アーク及び権力者の影に葬られた“6人の亡霊”がいた。
かつてそれぞれの立場で「正義」を求め、そして潰された者たち。
今、ひとりの男が彼らを集め、権力への復讐を誓う。


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現在、別の作品を書いてますが煮詰まったので
息抜き代わりに短編を書いてみました。
ノリと勢いだけです。続きも多分ありません。

そんな感じですが見てもらえると有難いです。
よろしくお願いします。


デッドマンズ・スクワッド<DEADMANS・SQUAD>

 

北の海に面した大都市——ノースシティ。

かつては港湾と工業で繁栄し、「北の宝石」と呼ばれるほどだった。

 

だが、ある時期から街の景色は変わった。

 

それは数十年前。

街の立ち上げ時からの市長が死亡し、後継選挙を巡る争いが泥沼化した頃——ひとりの男が、裏社会と政財界の両方を手中に街の全てを収め始めた。

 

ー男の名前はグランド・ヘリオス。

 

政治資金の提供、企業買収、マフィアの吸収、そして治安組織への根深い浸透。

 

その頂点に立つのが、街を支配する巨大複合企業〈アークコーポレーション〉。

裏社会・政治・警察―街全てのあらゆる権力を掌握している。

 

そしてこの街は物流、金融、娯楽、すべてが集まり、昼夜を問わず光を放つ街だった。

 

彼は「街を安定させるため」と言いながら、治安改善の名の下に武装組織を作らせ、街の外敵を排除しつつ内部の抵抗勢力も“処理”した。

 

結果、街は確かに安定した。犯罪件数は減り、富裕層は増え、観光客も戻ってきた。そして、彼は本性を現したのだ。

 

だが同時に、反抗した者は消えた。その家族も行方不明になった。

企業は彼の息のかかった者だけが生き残った。

 

ノースシティは繁栄した独裁都市となった。

 

そして、その裏では——何百もの遺体が海に投げ捨てられていた。

だが今、その名を口にする者はいない。

人々はこう呼ぶ。

 

――檻(ケージ)。

 

街は一人の男によって支配された。

最高権力者――名を表に出す必要もない。

政治、警察、司法、マスコミ、裏社会。

すべてが一本の線で繋がり、その線の先に彼がいる。

 

彼は銃を持たない。

命令するだけで人が死ぬ。

金を動かすだけで法が歪む。

 

最初に壊れたのは、警察だった。

 

内部告発をした警官が失踪し、次に見つかったのは“麻薬密売容疑者”としての死体。

裁判官が正義を貫こうとすれば、スキャンダルが流れ、職を追われる。

政治家は賄賂を拒めば、選挙前に事故死する。

 

市民は学習した。

逆らえば消える。

 

ノースシティでは、夜に銃声が鳴っても誰も窓を開けない。

救急車は呼ばれない。

倒れている人間は「運が悪かった」だけだ。

 

そして――

この街を蝕む七人の権力者たちが、最高権力者の下でそれぞれの“利権”を守っていた。

 

麻薬。

武器。

人身売買。

違法医療。

情報操作。

私兵部隊。

 

法は形骸化し、正義は死語になった。

 

その中にアーク及び権力者達の影に葬られた“6人の亡霊”がいた。

かつてそれぞれの立場で「正義」を求め、そして潰された者たち。

今、ひとりの元探偵が彼らを集め、権力への復讐を誓う。

 

 

 

そんな街に、正面から戦う者はいない。

 

――正面から、では。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

冷たい霧雨が街の路地を濡らす。

 

灰色パーカーのフードを被った派手な髪色の少女が街の中央区を見下ろしていた。彼女の名はガムシロップ。まだあどけなさが残る顔付きだが、その瞳は夜の雨よりも冷たく、しかし熱く燃えていた。

 

「……あの男が支配する街は、もう街じゃない。ただの檻だよ、ノーバディ」

 

傍らで煙草を吸う男。

ノーバディ、33歳。元探偵。

かつては真実を追い求め権力に真っ向から戦った男だが、ある企業の不正を世間に公表し、そして全てを失い、酒と孤独だけで生きてきた男。

 

「それでも、まだ救えると思うか?」

 

ガムシロップははっきりと頷いた。

 

「分かんないけど、救わなきゃいけない。こんな地獄が、私の故郷のままであってほしくない」

 

ノーバディは煙を吐き、濁った街を見下ろした。

 

「復讐か?」

 

「違うよ。……“終わらせる”んだ、この支配を」

 

雨が強くなる。ガムシロップの睫毛に光が宿った。

 

「だから……力を貸して。あなたの目で見てきた真実を、街の闇に突き刺して」

 

ノーバディはわずかに笑う。

 

「……死人同然の俺の人生はもう終わってるし、今さら間違う余地もない」

 

彼女は手を差し出した。

 

「一緒に戦って」

 

ノーバディは迷う事なくその手を掴む。

 

「任せろ。地獄の底まで付き合ってやるよ」

 

——ここに、闇を切り裂く死人達の部隊“デッドマンズスクワッド”の始まりが生まれた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

あれから1年の時が経ち、錆びた倉庫を改造した拠点。

乱雑な机。壁に貼られた地図。違法の銃や電子機器が雑多に広がる。

 

これが彼らのホーム。

 

その中央に立つのは、5人。

 

その内の1人が腕組みをしながら、呟いた。

 

「で、例のとんでも話本気なんだな?何を信じていいのか分からない。

だが、俺自身の正義までは捨てちゃいない。この街の腐った構造がどこにあるのか、俺の目でもう一度確かめたい」

 

オフィサー(34)——元警官

 

警察内部の不正を内部告発した結果、逆に罪を擦りつけられ家族を殺され、組織を辞めた。鋭い眼をした理想主義者。

 

次に隣に立つ銀髪のボブカットの女性が拳銃を弄りながら、オフィサーの発言に被せる。

 

ヴェンデッタ(29)——元殺し屋

 

かつて裏社会で「リーパー」と呼ばれていた凄腕の元殺し屋。企業同士の暗殺に利用され、裏切られて瀕死の状態になるがなんとか生き延び権力者達に復讐を誓った。

 

「焦る必要はないわ。初任務で躓くのは最悪の滑り出しよ。準備を練るのは当然」

 

 

「おいおい、みんなピリつきすぎだろ。殴るべき相手がいるなら、後は簡単さ」

 

他の人物より倉庫の隅に立ち、拳を合わせながら大胆に笑う男。

 

ナックル(26)——元ボクサー

 

元々はプロボクサーで名を馳せていたがある試合で八百長を拒否したことで、権力者の興行システムを怒らせ、報復を受けて引退。

地下格闘技で日銭を稼いでいたが、再び“戦う理由”を探している。

 

「ノーバディからワケアリの人材を集めた部隊を作るって聞いたけど、本当の話だったなんてね」

 

黒のセミロングの髪を束ね、溜め息を吐きながら、椅子に座った人物。

 

Dr.アンラッキー(30)——元医者 

 

元外科医。

とある権力者の手術を拒否し、救うべき別の患者を優先した結果、医療免許を剥奪。それ以降は地下で違法クリニックを営んでいた。

 

「まぁまぁ、落ち着けよ。俺達を集めた野郎の説明が来るまで軽く肩をほぐしておけ。なんせ、全員今日が初対面なんだ」

 

ブラックハート(48)——元マフィア

 

韓国系マフィアの元幹部。散々荒事に利用され、用済みとあらば切り捨てられた存在。そして自分の組を壊滅させたのがアークの裏工作だったと知り、復讐を誓う。

 

5人が互いの存在を訝しむ中、倉庫の扉が開き、ガムシロップがノーバディと共に入ってくる。

 

「みんな、待たせたね。これからが本当の“始まり”だよ」

 

この場に似つかわしくない少女により、倉庫内の空気が緩みそうになるが、傍らに立つノーバディの存在が自分達が集められた理由の本気さを感じた。そして場の空気が一気に締まった。

全員が揃ったのを確認し、ノーバディが前に出る。

 

「今日から、お前らの名前はそれだけだ。過去の名前は捨てろ」

 

誰も反論しない。

 

「この街は、一人の権力者と、その手足である六人に支配されている。

俺たちは"正義の味方"なんて大層なモンじゃない」

 

彼は全員を見渡す。

 

「だが――消すべき相手は、はっきりしている」

 

そんな張り詰めた空気の中、ガムシロップはパソコンを操作して壁にある大型モニターを点けた。

 

映し出されたのは、黒いスーツの男。街を支える権力者の一人“グレッグ・ヴォルテージ”。麻薬、人身売買、殺人。悪行を裏で操る“合法の怪物”。

 

「最初のターゲットはこいつ。グランド・ヘリオスを支える1人で、街の麻薬ルートや人身売買を牛耳ってる」

 

ノーバディが眉を動かす。

 

「相手はクズだ。だから気にしなくていい」

 

「彼を消せば……街の麻薬の流通が一度止まる。一般の人が被害に遭う数も減る筈」

 

ガムシロップはキーボードを叩く手を止めない。

モニターには次々と建物の見取り図、内部の設備の詳細が映し出される。

 

「潜入して、暗殺して、逃げる。典型的だけど……最初の任務にはちょっと厳しいかもだけど皆なら出来るって信じてる」

 

その様子を見ていたヴェンデッタは淡々と言う。

 

「こんな情報をどこから?アンタみたいな子供が知るには余りにも危険な情報」

 

 

オフィサーも頷く。

 

「あぁ、ソイツの言う通りだ。一般人が知り得ない情報だらけだ」

「お前らの疑問は分かる。普通なら有り得ないだろ?理由は簡単、俺の前職のコネを活用した。何か問題か?」

 

「「…」」

 

ぶっきらぼうに告げるノーバディを見て、2人は押し黙る。

 

ナックルは拳を鳴らす。

 

「コイツをブッ飛ばせばいいんだろ?派手に行くぞ」

 

Dr.アンラッキーは苦笑しながらも道具の確認。

 

 

ブラックハートが低く笑う。

 

「やれやれ。初日から死人が出るかもしれねえな」

 

そんな中で、ガムシロップの声が響いた。

 

「絶対に死なないで。あなたたちは、ヘリオスの“悪夢”を壊すための光なんだから」

 

全員の視線が彼女に集まった。

 

そしてノーバディが一言。

 

「行くぞ、デッドマンズ・スクワッド。初任務だ」

 

彼等の存在は、まだ影に過ぎない。

だがその影は、確実に街の喉元へ忍び寄ろうとしていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ノースシティの夜は、静かすぎた。

 

ネオンはある。

音楽も鳴っている。

人も溢れている。

 

だが、そのすべてが「作られた平穏」だった。

 

路地裏では銃声が鳴り、港では人が消え、ビルの上層階では、金と命が同じ重さで取引されている。

 

街の北部にある巨大クラブ。《CLUB ELYSIUM》

権力者ヴォルテージの“本拠地”でもある。

 

夜になると、不自然なほど煌々と光を放ち、その裏側で金と薬物と死体が流れていく。

 

建物から少し離れた場所に一台の黒い車が停車している。

外見はどこにでもある配送車。だが中身は、違う。

車内には防弾ベストを着用し、フル装備の部隊が乗り込んでいた。

 

車内は最低限の照明だけが灯されている。

金属と油の匂い。

電子機器の低い駆動音。

 

全員がそれぞれの席に腰を下ろしていた。

 

ノーバディは助手席側に立ち、

ガムシロップはノートPCを膝に置いている。

 

「……改めて言うね」

 

ガムシロップが画面をタップすると、

モニターにクラブの立体図が映し出された。

ノースシティでも指折りの会員制クラブ。

政財界、裏社会、どちらの人間も出入りする“交差点”。

 

「ターゲットは、この男」

 

別の画像が浮かぶ。スーツ姿の中年男。

 

「麻薬と人身売買の仲介役。表向きはクラブオーナー。裏では“商品”の受け渡しと、口封じを担当してる」

 

ナックルが低く唸る。

 

「……顔がもう気に食わねぇ」

「気に入らなくていい。でも感情は後回しだ」

 

ノーバディが即座に釘を刺す。

 

ナックルは一瞬ムッとしたが、すぐに肩をすくめた。

 

「分かってるよ」

 

 

「よし、確認だ。まず俺達の存在はどこにも露呈しない。監視カメラの事も気にしなくていい。俺達は戸籍上死亡しているからな。顔を見られても見た奴を消せば大丈夫だ。まぁ、とは言え万全を考慮してフェイスガードはしておく」

 

ノーバディが言うように部隊のメンバーは戸籍上死亡しているので照会をかけても引っかからず、そしてわざわざご丁寧に葬式まで挙げているので

監視カメラに映っても大丈夫という判断だ。

 

「で、俺達は本職の軍隊でもない寄せ集め集団だ。基本、指示は俺とオフィサーが出す。ガムシロップはここで後方支援だ。ヴェンデッタは狙撃メイン、ナックルは前衛、ブラックハートは火力支援だ。Drは俺と一緒に動く。以上だ」

 

「俺は元警官だから、お前らよりは遥かにこういう現場には慣れているつもりだ。だから死にたくないなら指示に従え」

 

ノーバディとオフィサーにそう言われ、流石の我が強いメンバーも静かに頷く。

 

その無言の肯定を皮切りに全員車外に出た。

 

 

 

「ガムシロップ」

 

『監視カメラ、今から三十秒間だけループかける。動体センサーは……はい、今オフ』

 

淡い光が一瞬、消える。

 

「やはり警備が多いな。さすが麻薬王ってわけか」

 

「正面から行こうぜ。お膳立ては済んでる」

 

警備兵二名が声をかける。

 

「おい、お前ら——」

 

ナックルの拳が一瞬で鳴った。鞭のような鋭い一撃が顎を撃ち抜く。

警備兵は無音で崩れ落ちる。

 

「今日の仕事は終わりだ。静かに寝てろ」

 

オフィサーが迅速に倒れた警備兵をケーブルで拘束し、ガムシロップがカメラをハッキング。

 

ヴェンデッタが最初に扉へ触れた。電子ロックに細い端末を差し込み、数秒。

 

「……解除」

 

ほぼ同時に、オフィサーが体を滑り込ませる。

 

「手際がいいな」

 

「昔の癖」

 

二人は影のように中へ消える。

 

その直後、残りのメンバーも合流した。

 

「侵入ルート、オールクリアだ」

 

 

クラブの中は別世界だった。

 

低音のビート。紫と青の照明。酒と香水の匂い。

 

だが、彼らが見ているのは“客”じゃない。

 

警備兵の動き。視線の流れ。死角。

 

「二時方向、二人」

 

オフィサーが囁く。

 

ナックルが頷き、滑るように近づく。

 

一人の喉元に肘。

もう一人の顎に、静かな一撃。

二人の警備兵は音もなく床に崩れた。

 

ブラックハートが笑う。

 

「静かだな。気持ち悪い」

 

「これからだ」

 

ノーバディの声は低い。

 

『内部、問題なし』

 

ガムシロップの声が無線に乗る。

 

『警備網、再構築される前に動いて』

 

「分かってる」

 

ノーバディは指示を出す。

 

「オフィサー、ヴェンデッタ、ナックルは左回りで二階制圧。Dr、ブラックハートは俺と来い」

 

「了解」

 

一瞬の視線交換。言葉はいらない。

 

 

二階への階段――警備兵が三人。

 

一瞬、目が合った。

 

「――ッ!」

 

警備兵が叫ぶ前に、

ヴェンデッタのサイレンサー付き拳銃が火を噴いた。

 

パンッ。パンッ。

 

二人が倒れる。

 

三人目が無線に手を伸ばす。

 

「させるか」

 

ナックルが飛び込み、鞭のように腕をしならせ、警備兵の顎を打ち抜く。

 

ドサッ。

 

静寂。

 

オフィサーが小さく舌打ち。

 

「今ので気付かれるかもしれん」

 

『あー、今のは大丈夫かな。だって既に他の警備兵達がざわついてる』

 

監視カメラのモニターに映し出されていたのは最初に無力化した警備と連絡が取れない為、様子を見に来た別の警備兵だった。

 

ガムシロップの声が少し早口になる。

 

『時間ないよ』

 

「予定通り行く」

 

ノーバディに迷いは無かった。

 

 

「ガムシロップ、例の部屋は?」

『最上階のVIPフロア』

 

指示の通り、内部を進んでいくとターゲットがいると思しき部屋に辿り着く。廊下の突き当たり。重厚なドア。

 

 

「中に1人…いや、3人」

 

ヴェンデッタが耳を澄ます。

 

ノーバディは一瞬だけ目を閉じる。

 

「終わらせるぞ。突入」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

VIPルーム。

享楽と酒の臭いの漂う部屋。

 

ヴォルテージが女を抱きながら笑っている。

 

「次の荷は明日の夜だ。港の連中に伝えろ」

「なんともボロい商売だ」

「この街で随分稼がせて貰った」

 

コンパニオン達は作り笑いを浮かべ、ヴォルテージ達のグラスに酒を注ぐ。その作られた笑顔の裏には嫌悪感が見え隠れしている。だが、決して表には出さない。権力者の機嫌を損ねれば積荷の中に自分達が入るかもしれないからだ。

 

 

そんな空気を切り裂くようにドアが蹴破られる。

 

悲鳴。

 

「な、なんだ……!?」

「何者だお前達⁉︎」

 

オフィサーは悲鳴を上げる女性達を外に連れ出していった。

 

男達は立ち上がろうとして、足がもつれた。

 

ノーバディは銃を構え、ただ、静かに言う。

 

「座れ」

 

男達は反射的に従った。

 

「き、君たちは……誰だ?」

 

「それを知る必要はない」

 

ノーバディの声は淡々としている。

 

「ま、待ってくれ……金なら出す。いくらだ? 二倍? 三倍?」

 

ブラックハートが鼻で笑う。

 

「自分達の命の値段にしちゃ安いな」

 

男は震え始める。

 

「違う……俺は、ヴォルテージに命令されただけだ!本当の黒幕は――」

「貴様!裏切るのか!」

「こんな目に遭うなんて私は聞いてないぞ!」

 

ノーバディは一歩近づく。

 

「喚くな」

 

男達の言葉が詰まる。

 

「……え?」

 

「お前は、ただの“部品”だ」

 

男の目に、理解が浮かぶ。

 

「……や、やめてくれ」

 

命乞いだった。

 

床に膝をつき、

高価なスーツが汚れるのも構わず、

額を床に擦りつける。

 

「家族が……子どもが……」

 

一瞬、空気が止まる。

 

ヴェンデッタが、ノーバディを見る。

 

ノーバディは、ため息をついた。

 

「今更何言ってんだ。お前に同じ事を言った人達も沢山いた筈だ」

 

「安心しろ」

 

男が顔を上げる。

 

希望が、ほんの一瞬だけ宿る。

 

「お前がいなくなっても、この街はまだ何も変わらない」

 

銃が上がる。

 

「だから――」

 

ノーバディは、淡く笑った。

 

「お前が死ぬ理由も、誰も覚えない」

 

――パン。

 

銃声は短く、乾いていた。

 

男は倒れ、血が、静かに床を染める。

 

「う、撃ちやがったぞ!コイツ!」

「た、助けてくれ!私は関係ない!」

 

残った男達もヴォルテージと同じように命乞いをする。

だが、ここにいるという事はヴォルテージの元で甘い汁を啜ってきた権力者達に過ぎない。

 

ノーバディは引き金を2度引いた。

 

床に3人の権力者の死体が転がる。

 

 

その瞬間だった。

 

廊下の奥で、銃声。

 

「さーて、やってきたぞ!」

 

オフィサーが叫ぶ。

 

『増援呼ばれた!』

「そろそろ時間だと思ったよ!」

 

キーボードを叩く、ガムシロップの声が切迫する。

 

『警備兵、全フロアからそっちに動いた!エレベーター封鎖!』

 

「撤退だ!」

 

通路に飛び出た瞬間、銃弾が壁を削った。

 

ブラックハートが前に出る。

 

「伏せろ!」

 

散弾銃が火を吹く。

 

照明が砕け、クラブの音楽が止まる。

 

悲鳴。

 

逃げ惑う客。

 

ノーバディとヴェンデッタが並走しながら撃つ。

 

「左!」

 

「見えてる!」

 

警備兵が次々と現れる。

壁を削ってくる大量の銃弾の中、ブラックハートは笑った。

 

ブラックハートが笑いながら撃つ。

 

「こうじゃねぇとな!」

 

Dr.アンラッキーが後方から牽制射撃。

 

「当たらなくても文句言わないで!」

 

「十分だ!無理すんな!」

 

壁が崩れ、硝煙が漂い、警備兵達の血が床を濡らす。

 

デッドマンズ・スクワッドは、影ではなく――暴力そのものになって、夜を切り裂いていく。

 

この夜、ノースシティはまだ知らない。静かに街が変わろうとしている事を。彼等の存在は誰も知らない。だが彼等の行いはやがて皆が知る。

 

今、この瞬間確実に、“何か”が始まった。

 

 

 

クラブ《ELYSIUM》の裏口が爆ぜた。

 

硝煙と火花が暗闇に散り、重厚な鉄扉が歪んで地面に転がる。

 

「出るぞ!」

 

ノーバディの声に、全員が走った。

 

外に出た瞬間、銃弾がナックルの頬を掠める。

 

「あっぶね!」

 

負けじとナックルも弾が飛んできた方向に銃を撃ち返す。

 

「俺が押さえる!」

 

ブラックハートの重火器が火を噴き、狭い路地に轟音が反響する。

 

弾幕が壁を削り、追撃してきた警備兵が伏せる。

 

「今だ、行け!」

 

交差点を曲がった瞬間――大型車両が路地に突っ込んできた。

 

「クソッ、塞がれた!」

 

ナックルが叫ぶ。

 

「二手に分かれる!」

 

状況を瞬時に判断した、オフィサーの判断は早い。

 

「ノーバディ、ヴェンデッタ、右!Drも右だ!残りの3人は左を抑える!」

 

一瞬の迷いもなく、全員が動いた。

そして闇に溶けるように走る。

 

背後から迫り来る足音。鳴り止まない銃声。跳ね返る火花。

 

「大分近い、どうする?」

 

ヴェンデッタが低く言う。

 

「迎え撃つまでだ」

 

ノーバディは振り返り、遮蔽越しに銃を構える。

 

――パン、パン。

 

確実に一人、二人と倒れる。

 

「行くぞ!Dr!撃たれてないか!」

「今のところは!」

「よし、走るぞ!」

 

 

 

ノーバディ達とは違う別ルート。

 

開けた道路。遮蔽物は少ない。

 

「派手に来やがったな!」

 

ブラックハートが笑う。

 

「笑ってる場合か!」

 

オフィサーは怒鳴りながらも、的確に指示を出す。

 

「次の交差点で煙幕!俺が引く、カウントで動け!」

 

「あ、ヤベ!こっちはパトカーまで来やがった!」

 

ナックルの声が路地に響く。

 

「殴りたいが、今日は我慢だ!」

 

彼は車の陰から銃を何度か撃ち、タイヤを撃ち抜く。

スリップしたパトカーは壁に激突し、停止した。

 

「案外当たるモンだな…」

 

「煙幕投げるぞ!」

 

オフィサーがそう叫んだ直後、煙幕が転がり、白い煙が一気に広がる。

 

「3、2、1、―今だ!」

 

 

3人は同時に飛び出した。

飛び出してしばらく走っているとノーバディ達と合流した。

 

「そっちは全員無事だな」

「そっちもな」

 

合流したメンバーに特に怪我がない事に一安心はするものの、依然として脅威が消えた訳ではない。

 

インカムからガムシロップの声が入る。

 

『3ブロック先、地下駐車場!監視薄い、今がチャンス!』

 

「分かったよ、よっしゃ移動だ」

 

全員が、最後の力を振り絞り再び走り出した。

 

やがて一台の停車していた黒いバンに乗り込んだ事を確認したガムシロップは即座にエンジンをかけ、アクセルを踏み込んだ。

そのまま夜の街を駆け抜けていった。

 

 

 

 

廃ビルの屋上に立つ七人。

まだ不完全で、未熟で、まとまりもない。

それでも――確かに「チーム」だった。

 

ノーバディが煙草に火をつけ、言う。

「よし、これで部隊の初任務成功だ」

「まさか本当にこんな事を始めるとはな」

「これで信じたな?」

「実際に目の当たりにしてな」

 

オフィサーは肩を竦めながら言った。

 

 

「結構やるじゃねぇか、俺ら」

「“結構”じゃなくて、“奇跡的に”の間違いでしょ。」

 

ナックルの発言にDr.アンラッキーが冷静に返す。

 

「おい先生、もっと褒めろよ。」

「怪我人ゼロなのは褒める。でも、危ない場面は沢山あった」

「うるせぇ、こんな事してりゃ当然だ」

 

ヴェンデッタがその光景を見て微かに笑った。

 

「賑やかね、悪くない。」

「だろ?」ノーバディが笑い、タバコの煙を吐き出す。

 

ガムシロップの笑い声。

 

「バカばっかりだね。でも、嫌いになれない」

 

ノーバディが空を見上げた。

朝焼けが灰色の街に溶けていく。

 

「これが始まりだ。そして俺たちは死人だ。だが死人にしか出来ない事もある」

 

オフィサーが苦笑しながら呟く。

「……お前の台詞、映画のキメ台詞っぽいな」

「もしかしたら映画監督でも出来るかもな」

「何言ってんだ。自惚れんな」

 

そして笑い声が夜明けの街に消えていった。

――デッドマンズ・スクワッド、最初の任務は成功。

 

まだこの街は、彼らの名を知らない。

だが確実に、“何か”が動き出していた。

――だが確かに、この街を変える第一歩を踏み出していた。

彼等は止まらない。走り続ける。

 

奪われた者達は死人となり、奪った者達に牙を剥く。

 

 

彼等の名は

 

デッドマンズ・スクワッド<DEADMANS・SQUAD>

 

 

 

 




上でも書きましたが完全にノリと勢いだけです。

展開や文法めちゃくちゃかと思いますが熱意だけはあると思うので
なんか書いてるわくらいで見てもらえたら幸いです。

見てくださった方ありがとうございました。

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