外来人。幻想郷で、大工をする。――妖怪たちの褻(け)の日の話―― 作:ゴケット
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」
視線は地下室の奥へ向いていた。
レンガ造りの地下室。
その中で一か所だけ。
木だ。
しかも下手くそな仕事だった。
古い壁に合わせる気もない。
板を立てて隠しました、という顔をしている。
怪しさだけなら満点だ。
「玄ちゃん」
まましろが別の方向を指差した。
「木の壁も怪しいでござるが、まずはこちらでござる」
階段下の小さな扉。
なるほど。
「後ろを取られたくないのでござる」
「確かにな」
確認を怠って背後からというのはいただけない。
「まず死角だな」
魔理沙も同意する。
小瓶ごと肩へぶつかってきた。
早くしろという催促だろう。
相変わらず遠慮がない。
扉の前へ立つ。
深呼吸。
というほどでもない。
覚悟を決めるというより、
嫌な仕事を片付ける感覚だった。
扉を開いた瞬間、
銀色の何かが飛び出した。
速い。
だが見えないほどじゃない。
ナイフだ。
趣味の悪い歓迎だ。
「ぐっ―――!」
ナイフがまましろの肩へ突き刺さる。
血が飛ぶ。
「こういう趣向……」
まましろが顔をしかめる。
「いたたた」
その時だった。
刺さったナイフが震えた。
嫌な予感しかしない。
案の定。
ずるりとナイフが勝手に抜ける。
そして空中へ浮かんだ。
まるで誰かが狙っているような動きだった。
切っ先が向く。
小鈴。
まずい。
一歩踏み出した。
ナイフが飛ぶ。
真っ直ぐ。
拳が疾る。
キンッ!
甲高い音。
ナイフが弾かれて回転する。
思ったより重い。
成美には後で礼を言うべきだろう。
「玄万!」
魔理沙が叫ぶ。
「掴めるなら掴め!」
ナイフは空中で体勢を立て直した。
今度はまましろ。
飛ぶ。
弾く。
また小鈴。
飛ぶ。
弾く。
「いい加減にしろ」
踏み込む。
今度は払わない。
突き出す。
掴む。
ナイフの柄が手の中へ収まった。
「捕まえた!」
小鈴の声。
だが終わらない。
ナイフが暴れる。
捻る。
跳ねる。
暴れる。
魚でも掴んでいる気分だった。
そして。
ギィィィィィィ―――
耳障りな金属音と共に手が弾かれた。
再び空中へ。
「玄ちゃん!」
「大丈夫だ」
手を覆う唐皮を見る。
傷はない。
本当に良い物を貰った。
ナイフは今度……、
切っ先を魔理沙へ向けた。
魔理沙は笑った。
「お、やんのか?」
瓶サイズになっても態度だけは変わらない。
ナイフが飛ぶ。
その瞬間。
「甘いでござる」
まましろが動いた。
近くに転がっていた金属製のゴミ箱。
それを前へ差し出す。
ナイフは吸い込まれるように中へ飛び込んだ。
ガン!
即座に蓋を被せる。
「小鈴!」
「は、はい!」
まましろが放り投げたダクトテープを受け取る。
小鈴がぐるぐる巻きに固定する。
ガン!
ガン!
ガン!
中でナイフが暴れている。
だが出てこられない。
「よし」
持ち上げる。
そのまま収納部屋へ放り込む。
扉を閉め、転がっていた角材を立て掛ける。
つっかえ棒。
気休めだが無いよりはいい。
しばらくして。
静かになった。
まましろは壁にもたれて座る。
小鈴が手当てを始めた。
幸い傷は肩だった。
血は出ているが致命傷ではない。
「飛ぶナイフに刺されて」
まましろが言う。
魔理沙が続けた。
「最後はゴミ箱で勝つ」
「要約が雑でござる」
まましろが抗議する。
「でも間違ってないだろ」
「間違ってないな」
「ひどい話でござる」
しかし。
冗談を言えるのは血が止まったからだ。
地下室に静寂が戻る。
そして。
自然と視線が集まる。
木の壁。
どう見ても。
次はあれだった。
面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
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